アオハル単位が足りません!〜卒業したくば青春しなさい!〜   作:夜野千夜

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楽しんでいただければ幸いです。


卒業の危機!?

日本のどこかにある私立高校青桜高校。今日は青桜高校の始業式だ。

ここ青桜高校は青春することに力を入れている高校ということもあり、青春ぽいことをすることで得られるアオハル単位制度という制度が存在しているほどだ。

新入生はこれから待ち受ける青春に期待を膨らませ、二年生はなおさら青春を謳歌し、三年生は単位を獲得しこれまでの青春に思いを馳せながら進路に悩む。それが青桜高校に通う生徒達の姿なのだが……中にはアオハル落ちこぼれと呼ばれる生徒達もいるわけで。

 

 

 

「…………」

 

顔色の悪い少女ーー白江美乃は、渡されたプリントを手ににらめっこしていた。

 

「美乃どうだった……って、聞かなくてもわかるなこれは」

 

美乃の幼馴染みである高峯夕湖(たかみねゆうこ)は、紙パックのいちご牛乳を手に持ちながら美乃の席に歩み寄った。

 

「ゆこちゃん聞いてー……。わたし卒業の危機だぁー……」

「うん、だろうね。あんたほとんどの行事休んでんだから、アオハル単位とれるわけないじゃん」

「うぐっ。みなちゃーん、ゆこちゃんが厳しいよぉー……」

「おーよしよし。まったく夕湖はひどいやつだな。こんな可愛い俺の妹をいじめるとかさ」

 

話を隣で聞いていた、美乃の双子の兄である白江湊は両腕を広げ、泣きついてきた美乃を慰めた。

 

「黙ってろシスコン。どうせあんたもアオハル単位取れなかったんでしょ?」

「まぁな。仕方ないだろ、美乃が心配だったんだから」

 

そう、美乃と湊のこの二人は先程出てきたアオハル落ちこぼれなのである。

白江美乃はアオハル単位獲得に積極的なのだが……いかんせん体が弱い。そのためしょっちゅう体調を崩し、学校行事にもほとんど参加できなかった。それもあり、アオハル単位を獲得できなかったのだ。

一方白江湊はと言うと、美乃と違い体が弱いわけではないのだが……シスコンなのだ。美乃が心配だからという理由でしょっちゅう学校を早退し、美乃がいないならと行事にも出ない。そんな状態でアオハル単位をゲットできるわけもなく、美乃同様にアオハル落ちこぼれとなってしまった。

 

「どうすんの、もう三年生だよ?どう挽回するわけ?」

「そうなんだよねぇー……もうわたし達三年なんだよねぇー……」

「まぁどうにかするしかないわな」

「どうにかって?」

「それを今から考えるんだよ」

「はぁー……」

 

ピーンポーンパーンポーン……

 

『お呼び出しします。今から呼ばれた生徒達は至急校長室に向かってください』

 

呼ばれた名前の中には美乃と湊の名前があった。

 

「何やらかしたの?二人とも」

「何もしてないよー!」

「あらかた今話してたアオハル単位絡みのことだろ。何言われんのかねぇ」

 

美乃と湊は夕湖と別れ、校長室に向かった。

 

 

 

「「失礼しまーす」」

 

校長室にはすでに美乃と湊以外にも呼ばれていた二人の生徒がいた。

 

「あ、お茶ちゃんだー」

「白江、僕の名前は岬和茶だと何回言えばわかるんだ?」

 

絵画の中から飛び出してきたかのように整った見目の青年ーー岬和茶は呆れたように大きなため息を吐いた。

 

「お、橘じゃん。お前もか」

「あ、し、白江くん……。そ、そうだね、私も呼ばれて……」

 

化粧っけの感じられない地味めな少女ーー橘葵は、湊に話しかけられ大きく肩を揺らした。

 

「おや、君たちみんな面識があったのだね」

 

その様子を見ていた青桜高校校長の鐘巻仙太郎は、微笑ましいものを見るかのようににこにこと笑っていた。

 

「予め知り合いなのは良いことだ。これから君たちにしてもらうことも有利に運ぶだろうし」

「俺達にしてもらうこと?」

「一体何なんですか、それは」

「えぇ〜知りたい〜?気になっちゃう〜?」

「気になります気になりますー!だから早く教えて下さい校長先生ー!」

「白江妹くんはノリが良いねぇ〜!気に入った!よし、じゃあ早速教えちゃおう!君たちにしてもらうこと、それはーー!」

 

鐘巻が壁をダンッ!と叩くと、上から掛け軸が現れた。そこには『アオハル委員会結成!』と書かれている。

 

「ズバリ、アオハル委員会の結成だよ!」

 

(掛け軸に書いてあるのに言う必要あったのかな……)

 

その時四人の心の声が一つになったとか。

 

「君たち四人は、三年生だというのにアオハル単位を取得できていない!これは非常に嘆かわしいことだ。なにせ私は君たちのような若人に青春を謳歌してもらうためにこの学校を創ったのだから。このまま青春を謳歌できずに卒業させるわけにはいかない!ということで、君たちにはアオハル委員会を結成してもらい青春を謳歌してもらいます!」

「あ、アオハル委員会……」

 

葵が戸惑ったような声を漏らす。それもそうだ。みな突然このようなことを言われれば戸惑うに決まっている。

 

「アオハル委員会……!」

 

訂正。一人戸惑っていない者がいた。白江美乃である。体は弱いがノリはどこまでも良いこの少女だけは目を輝かせていた。

 

「具体的には何をするんですかー!?」

「ふっふっふ、良い質問だね。なに、簡単さ。月ごとに私から与えられる課題。これを協力してクリアしてもらう。それだけだよ」

「課題、ね……」

「その課題をすべてクリアできたなら、君たちにもアオハル単位を与えようじゃないか!」

「!わたしでも卒業できるんですかー!?」

「もちろんさ!」

「校長先生……!」

 

感激している様子の美乃と、芝居がかった身振りで誇らしげにする鐘巻。この二人が劇のようなやり取りをしている横で、三人はというと。

 

「美乃楽しそうだなー」

「……はぁ」

「委員会……」

 

湊は美乃を微笑ましく見守り、和茶はまた呆れたようにため息を吐き、葵はおろおろしていた。

 

「ただねぇ、問題があるんだよねぇ」

「問題?」

「何ですかそれは」

「青春するには人数が足りないだろう?でもアオハル単位を満たしていないの君たちしかいないし、どうしたもんかなと」

「具体的にはあと何人必要なんですかー?」

「最低でも四人かなぁ」

「四人なら、私達で探しますよー!」

「え!?」

「おい白江!」

「おや、良いのかい!?ならおまかせしちゃうよ〜。集まったら顧問に教えてね。あ、顧問はさすがに私が話をつけておくから」

 

じゃあね〜と校長室から出された四人。和茶はまたこれ見よがしに大きなため息を吐いた。

 

「白江、お前何を考えている?」

「だって校長先生は卒業のチャンスくださったんだよー?それなのにこれ以上お仕事増やしたら申し訳ないよー」

「美乃は良い子だなぁ……」

「で、でもどうやって……その……アオハル委員会に入ってくれそうな人探すの?」

「それはこれから考えよー。今日はさすがに色々あり過ぎて疲れたしー。明日また集まろうよー」

「だな。つーわけで、今日は解散!」

 

こうして、アオハル委員会(仮)が結成されたのである。

 

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