アオハル単位が足りません!〜卒業したくば青春しなさい!〜 作:夜野千夜
アオハル委員会(仮)が結成された翌日。
「そんじゃ、アオハル委員会メンバーをどうやって増やすか会議を始めます」
湊の言葉に美乃はわー、と軽く拍手し、それにつられ葵も小さく拍手した。和茶は我関せずといった態度を崩さない。
「今日は顧問も来てるぞ。保健医の園村先生だ」
「あ、そのその先生ー!」
「やぁ、美乃くん。今日も顔色悪いねー」
湊が紹介したのは、青桜高校保健医の園村紫苑だ。人当たりの良さそうな印象を与える美丈夫は、軽く屈んで美乃とハイタッチを交わした。
「こ、顧問園村先生になったんですね……」
「そうだよ、葵くん。これからよろしくね」
「ヒエッ」
柔らかなイケメンスマイルを浮かべられ、葵は短く悲鳴をあげて美乃の後ろに隠れた。小さな声でずっとイケメンコワイ……と呟いている。
「はい、そんじゃ改めて会議始めるぞー。橘、自分の席に戻れ」
「そ、そんなぁ……」
美乃の背中から剥がされ、葵はまた自分の席に戻らされた。園村はその間ずっとにこにこと笑っていた。
「しっかしどうやってメンバー増やすかねぇ」
「地道に勧誘してくー?」
「時間がかかりすぎるだろう。却下だ」
「取り付く島もない……」
美乃の提案を即却下した和茶の様子を見ていた葵が呟いた。
「じゃあ他に何か方法あんのかよぉ、お茶野郎よぉ」
「その呼び方はやめろ白江。……方法、というわけではないが」
「お、お茶ちゃん何か思いついたのー!?すごーい!?」
「意外だな、お前が意見出すなんて」
「……僕も卒業できないのは嫌だからな。一人、いるだろう。こういうのに進んで参加しそうなのが、二年生に」
「二年生……あ!」
「あ、なるほどな」
和茶の言葉に湊と葵は誰か浮かんだようだが、教室よりも保健室にいることの多かった美乃ははてなマークを浮かべている。
「だれだれー?誰の事ー?」
「知らないのか?この学校の有名人だぞ」
「そこは優しく教えてやるところだぞ岬。そんなんだからお前は『顔の良いハリネズミ』なんて言われるんだ」
「誰だその名付け親は」
「俺☆今つけた」
「良いだろう、喧嘩なら買ってやる」
「お、やんのかコラ」
なぜか男子二人は喧嘩は始めてしまったので、美乃は葵に改めて尋ねた。
「誰のこと話してたのー?」
「え、えっと……あれ止めなくて良いの?」
「良いんだよ、うちのクラスじゃいつものことだもんー」
「よく保健室に一緒に運ばれてたのはそういうことか。まあ俺としては患者が増えて何よりだけど」
「そのその先生危ない顔してるー」
美乃はケラケラと笑っているが、園村は人一人消しそうな顔をしていた。そんな園村と喧嘩する二人を見ながら葵はまた怯えていた。
「で、たっちー」
「え、わ、私のこと……?」
「うん、橘だからたっちー。さっき言ってた人のことだけど、誰のことなのー?」
「た、たぶんだけど、二年の立山くんのことだと思う……」
「立山くん?」
「あぁ、立山証くんか。たしかに彼なら喜んで協力してくれると思うよ」
「そのその先生も知ってるんですかー?」
「彼有名だからね。なにせ運動神経が良すぎて、色んな運動部に助っ人として呼ばれるほどだ。そんなの漫画でしか見たことがないだろう?だから有名なんだよ」
「へぇー……そんな子なら、たしかに協力してくれそうー!たっちー、早速行ってみようー!」
「わ、私も!?」
「?当然だよー。ほらそこの二人も行くよー?」
美乃が声をかける頃には湊と和茶の喧嘩は一段落ついた頃だったようで。二人とも肩で息をしながら床に転がっていた。
「い、行くって……どこに……」
「立山くんのところー。さっき話にあがってた子ー」
「あ、あぁ……立山な……。りょーかい……」
「はい二人とも鏡ー。ちゃんと身だしなみ整えてね、上級生なんだからさー」
「そ、園村先生。立山くんって何組ですか?」
「たしか一組だよ」
「たっちーナイスー。聞いといてくれてありがとー。じゃ、行こっかー」
まず四人は立山証が在籍している二年一組の教室に向かった。……が。
「立山くんいないね……」
「いないのー?」
「いないな。帰ったか?」
「あいつのことだ、どこかの部活で助っ人でもしてるんじゃないか?」
「なるほどなるほど。それもあるかー。じゃあ聞いてみようー。へいそこのカノジョー」
「え、私ですか……って、み、岬先輩!?」
「……」
自分を見つけた途端に顔を赤らめた女子生徒の反応に、和茶は辟易したようにため息を吐いた。
「相変わらずモテモテだなぁお茶野郎」
「……」
「はいはい、お茶ちゃん不機嫌なってってるからみなちゃんイジるのやめたげてねー。それで、後輩ちゃんー。立山証くんどこにいるか知ってるー?」
「立山くん?今日はテニス部に行くって言ってましたけど」
「テニス部だねありがとうー。それじゃわたしたち行くねバイバーイ」
和茶がこれ以上不機嫌になる前に、四人は退散することにした。
「本当に岬くんモテるんだね……」
「……僕は望んでないんだがな」
「とりまテニスコートに行ってみようー」
テニスコートにて。一際動きの良い赤みがかった短髪の少年がいた。
「あれが立山証だな」
「あの子かぁー。おーい立山くーん?」
美乃が声を張ると、少年は振り向いた。
「呼びました?えーと……先輩方?」
少年は四人のネクタイを見た上で質問した。
「実はーー」
先程声を張ったために咳き込んでいる美乃を葵と湊が面倒を見ているため、和茶が説明をすることにした。
「アオハル委員会、ですか」
「そうだ。人数が足りないから、メンバーを探しているんだ」
「それで俺に声をかけたんですね」
「そうなんだー。ぜひとも参加してほしいんだけどー」
「それくらいお安い御用です!ぜひ参加させてください!」
「え、本当に良いのか?つーかそんな即決で決めて大丈夫?」
「先輩方が困ってるのに手を貸さない後輩はいませんよ!俺に任せてください!」
「わー、助かるー!ありがとねー!」
こうしてアオハル委員会のメンバーを一人見つけることができたのである。