アオハル単位が足りません!〜卒業したくば青春しなさい!〜 作:夜野千夜
「いやー、早速アオハル委員会に一人加わってくれるなんてねー」
美乃はほくほくとした顔でメロンパンを頬張った。
「幸先良いよな」
「さすが学校一の陽キャだわ」
美乃とともに昼食をとっていた湊と夕湖も頷く。
「この調子でいけば、あと三人集めるのも早く終わりそうだねー」
「そう簡単にはいかないんじゃない?」
「そうだな。どうやってあと三人集めるか、方針すら決まってねぇわけだし。楽観視するのはまだ早いぞ美乃」
「そっかー……」
美乃はしょぼくれながらまたメロンパンをかじった。そんな美乃を慰めるように湊が頭を撫でる。
「また放課後会議するしかないな。今日は園村先生来ないけど、立山参加してくれるらしいし」
「立山くんがなんかアイディア出してくれることに期待だね。ほら、美乃。いつまでもそんなしょぼくれない」
「えうっ。そ、そうだよねー。今は委員会のメンバー増やすこと考えないとー」
夕湖にデコピンされたことで、気持ちを改められたらしい美乃は気合が入ったようだ。二人とともにえいえいおー、と腕を突き上げた。
放課後。今日も今日とてアオハル委員会の面々は空き教室を借りて会議を始めた。
「さて、どうすっかねぇ」
「ねぇねぇかっしー」
「ん?……あ、俺のことですか?美乃先輩」
「うん、証の”かし”でかっしー。良いあだ名でしょー?」
「そう呼ばれるの初めてなんでびっくりしましたよ。で、どうしました?」
「かっしーの知り合いで、アオハル委員会に入ってくれそうな人っていないかなー?」
「俺の知り合いで、ですか?」
「うんー。やっぱり困ってる時、頼れるのって人脈だもんねー」
「立山は知り合いが多そうだしな」
証はしばらく悩んだ後で、あ、と呟いた。
「一人いますね」
「ど、どんな子なの?立山くんみたいな……?」
「うーん、一言で表せばザ・優等生ですかね。先生からの信頼が厚くて、いつも何かしら頼まれてるんです。頼まれすぎて、帰宅部なのにいつも遅くまで残ってるくらいなんですよ」
「ちょっと気が弱い子なのかなー?」
「気が弱いって言うより、気が良いって感じですかね。お人好しすぎて頼まれると断れないと言いますか」
「あーなるほどな。たしかにそいつなら委員会に入ってくれそうだ。早速探してみよう」
「立山、そいつのいるところに心当たりは?」
「うーん、さすがにわかんないです。クラスも違いますしね。あ、二組の
「じゃあ色々探してみよっかー。二手に分かれて探すのが良いかなー」
「男子チームと女子チームに分かれるか。じゃ、探しに行こうぜ岬、立山」
こうして美乃・葵チームと湊・和茶・証チームに分かれ四ツ葉桃香という少女を探しに行くことになった。
男子チームがまず向かったのは、桃香の在籍している二組の教室だ。放課後ということもあり、教室はがらんとしている。
「立山の言っていることが本当なら、今日も学校のどこかにいるんだな?」
「え、岬先輩俺のこと疑ってるんですか?」
「岬はいつもこんな感じだから気にすんな。なー、誰か四ツ葉桃香って子どこか行ったか知らね?」
湊が大きな声で呼びかけると、残っていた生徒がみな振り返った。そして女子生徒は和茶の姿を見つけると色めきだち始めた。
「え、あれって岬先輩……!?」
「嘘、なんでこんなところに!?」
「……やっぱり僕は教室に残っていた方が良かったな」
「まぁ落ち着け岬。たまにはその見た目活かそうって気持ち持っとこうぜ。たぶんお前いた方が話を聞きやすい」
「?どういうことだ?」
「まー見てなって。で、誰か四ツ葉さんどこいるか知らんかね」
湊の質問に、女子たちはちょっと待ってください!と必死になって桃香の居場所について探り始めた。少しでも和茶に良く見られようと必死なのだろう。
「わかりました!今は音楽室にいるみたいです!」
「お、あんがとな。じゃ、行こうぜ二人とも」
「あ、あぁ」
「はい」
女子生徒達を振り切り、三人は教室を後にした。
「白江、あれは計算だったのか?」
「何が?」
「僕がいれば、女子がああやって力になってくれると?」
「もちのろーん。だってお前めちゃくちゃモテるじゃん?女子なら少しでもお近づきになろうと力になろうとすんじゃねぇかな、と思ったわけよ。俺も立山もいればなおさら、な」
「?湊先輩も有名人なんですか?」
「俺は知ってるやつは知ってるって感じだけどな。俺あんま学校にいねぇから、レアキャラ扱いされてるらしいぜ。っと、着いたな」
話をしているうちに音楽室に着いたようだ。三人揃って失礼します、と声をかけてから音楽室の中に入った。
「ん?何の用だ?」
「どーも、鬼垣先生。四ツ葉さんいます?」
「あぁ、いるぞ。四ツ葉」
「どうしました?」
音楽担当の鬼垣に呼ばれ、奥の準備室から桃香と思しき少女が現れた。染色した形跡の感じられない黒い髪を、様々な髪型をした他の派手な女子生徒達と違って、ただ一つに束ねただけの髪型からも優等生であることが伺える。
「実はだなぁ」
三人を代表して湊が事情を説明した。
「アオハル委員会、ですか」
「まだまだ人数が足りない。四ツ葉も参加してもらえるとありがたいが」
「参加したい気持ちはやまやまなんですが……」
桃香はちら、と鬼垣を見やった。恐らく彼女も自分が頼まれやすいことを自覚していて、委員会に入ったら先生の手伝いができなくなることを危惧しているのだろう。なるほど、お人好しだなと湊は頷いた。
「でも、アオハル委員会は校長先生からの頼み事なわけなんだからさ。他の先生からの頼みごととは規模が違うと思うよ」
「え、そうなんですか?」
「違います?先輩方」
「違うとは言い切れないな。アオハル委員会のメンバーを集めるよう僕達に言ったのは校長だ。つまり委員会に入ることは校長の手助けになるということだ。そうだな、白江?」
「お、おう」
「それなら俺達も邪魔はできないな。前から四ツ葉に頼りすぎている気はしていたんだ。他の先生には俺から言っておくから、四ツ葉も心置きなく青春を楽しみなさい」
「……わかりました。私も委員会に参加させていただきます」
こうしてアオハル委員会に二人目の二年生が加わることとなった。