アオハル単位が足りません!〜卒業したくば青春しなさい!〜 作:夜野千夜
湊たち男子チームが桃香の勧誘に成功していた頃。美乃と葵はまだ桃香を探していた。
「桃香ちゃんどこなんだろうねー?」
「……あの、し、白江さん」
「?どうしたのたっちー」
「そもそも私達、四ツ葉さんの見た目を知らないから見つけれても気づかないんじゃ……」
二人の間を静寂が包んだ。
「……本当だー」
しばらく経った後、美乃が呟いた。
「たっちーなんで早く言ってくれなかったのー?」
「ご、ごめんね……」
「責めるつもりないから気にしないでー。んー、仕方ないし三人と合流しようかー」
「そうだね」
「あ、でもその前にー。ちょっと演劇部の部室寄っても良いかなー?」
「演劇部?どうして?」
「みなちゃんがノート置いてきちゃったんだってー。代わりに取りに行こうかなとー」
「そういえば、白江さんも白江くんも演劇部だったっけ……」
葵は二人に関する噂を思い出していた。
演劇部に所属する白江という名字の双子がいる。妹は即座に別人になりきる才能を持ち、兄はシナリオを書くことに長けている、と。そんな演劇向けの才能を持つ二人だが、妹の体が弱いためになかなか練習に参加できないため、存在が幻のようになりつつある、という噂だ。
(二人とも実は結構な有名人なんだよね……。普段はそんな感じしないけど。陰キャに有名人の相手は荷が重い……)
「たっちーはどうするー?ついてくるー?」
「ど、どうしようかな……」
葵の頭の中の天秤が揺れ動く。片方は演劇部という陽キャの巣窟に突っ込むか。もう片方は湊・和茶・証の三人と合流するかだ。ただしこの三人のルビは順番に『学校の有名人の一人』・『学校一のイケメン』・『学校一の陽キャ』とする。
美乃についていくことを選べば、部外者ということもあり演劇部員からジロジロと見られることは確実だが、美乃という盾があるために話しかけられることはないだろう。なんなら部室の外で待つのもアリだ。
一方三人と合流することを選べば、美乃が戻ってくるまで三人ーーいや和茶は他人に興味を示さないので実質二人かーーから話しかけられ、相手をすることは確実だ。それは陰キャにはキツい。
よって、葵が導き出した答えは。
「じゃ、じゃあ……白江さんについてく……」
「わかった、じゃあ行こっかー」
葵の葛藤などつゆ知らず、美乃達は演劇部の部室に向かった。
演劇部の部室に着いたところで、葵は部室の外で待っていると言おうとしたのだが。
「あれ?知らない人だ!もしかして見学ですか?」
髪を脱色しピンクのメッシュを入れた、いかにも派手な少女が声をかけてきた。
「ヒエッ」
声をかけるタイミングを失ったのと、ギャルのような見た目の少女に出迎えられ、葵は短く悲鳴をあげ美乃の後ろに隠れた。
「ううん、わたしも演劇部だよー。ほとんど幽霊部員みたいなものだけどー」
「はっ!も、もしかして白江美乃先輩ですか!?」
「?うん、そうだよー」
「学校の有名人との突然の出会い……!これは何かが始まる予感……!やばい、滾ってきた!メモしないと……!」
少女は突然手帳を取り出すと、鼻息を荒くしながら手帳に何かを書き付け始めた。
「……えっと、あのー?」
「あー、気にしないでください白江先輩。あの子いつもこうなんで」
「こうってー?」
「こいつは浅黄萌花っていうんですけど……まぁ昔から妄想癖がありまして。スイッチが入るとどんな時でも妄想を書き溜める手帳に妄想を書くんですよ。しかもその対象は男女問わないっていう……節操ないやつなんです。普段は気さくで明るいやつなんですけどね」
「そうなんだー……」
話を聞いた美乃は、何か思いついたらしく。
「ねぇ、相模くんー。どうやったら萌花ちゃん妄想の世界から引き戻せるのー?」
「しばらくしたら戻ってくると思いますけど……どうかしました?」
「ちょっと用事できたんだー。じゃあ待ってようかなー」
湊のノートを取りに行ったり、現部長の相模直也と話をしていると、萌花が戻ってきた。
「はぁ〜……久しぶりに良い妄想ができました!美乃先輩ありがとうございます!」
「どういたしましてー。ところで萌花ちゃん、アオハル委員会に興味はないー?」
「アオハル委員会……?何ですかそれ!心躍る響きですね!」
アオハル委員会について説明したところで、萌花はだいぶ乗り気だった。
「ちなみにわたし達以外だと、みなちゃんもいるしかっしーもいるんだよー」
「みなちゃ……?」
「白江湊くんと立山証くんなんだけど……」
「え!?この学校の有名人がそんなにいるんですか!?ということはその委員会に入ればお近づきになれるってことですよね!?入ります入ります!!入らせてください!!」
「ありがとう萌花ちゃんー!」
こうして三人目を確保することができたのである。