アオハル単位が足りません!〜卒業したくば青春しなさい!〜 作:夜野千夜
「これで三人揃ったかぁ」
桃香と萌花がアオハル委員会に加わった翌日の放課後。顔合わせを兼ねて七人が集まっていた。
「ちょっと美乃先輩!!岬先輩いるじゃないですか、なんで教えてくれなかったんです!?」
「ごめんねもえちゃーん。お茶ちゃんを客寄せパンダみたいに使うのどうかなって思ってー」
「てへぺろしてる先輩が可愛いので許します!!」
怒っていたのはどうしたのやら、萌花はすぐに手のひらを返した。
「とりま二人とも自己紹介してもらって良いか?」
「では、私から。私は二年の四ツ葉桃香といいます。先輩方がアオハル単位をとれるよう、精一杯サポートさせていただきますね。よろしくお願いします」
「本当に優等生だ……」
絵に描いたような優等生の挨拶に、葵は思わずそう呟いていた。
「じゃ、次は私が!私は一年の浅黄萌花です!趣味と特技は妄想です!……えーと、えーと、頑張ります!お願いします!」
「もえちゃん元気いっぱいで可愛いねー」
「美乃先輩も可愛いですよぉー」
褒められたのがよっぽど嬉しかったのか、萌花はデレデレと締まりない笑顔を浮かべた。
「あー、こほん。自己紹介も終わったし、これからどうするかを改めて確認して良いか?」
「あぁ、もちろんだ。校長は最低で四人欲しいと言っていたな。四人のうち三人は集まった。と来たら、あと一人以上集める必要があるわけだが」
「あと一人か……。い、今までみたいに集めるのが確実なのかな……」
「人脈を頼るわけだねー。じゃあ……うーんと、はーとちゃん!」
「はーとちゃん?」
「四ツ葉の”は”と、桃香の”と”ではーとちゃん!可愛いでしょー?」
「そんな風に呼ばれたのは初めてですね……。可愛らしい呼び名をありがとうございます、美乃先輩。それで、私がどうかしましたか?」
「はーとちゃんの周りで委員会に入ってくれそうな人、探してみてくれないかなー?」
「浅黄にも頼みたいところだな。二人とも、頼めるか?」
「はい、もちろんです」
「お任せください!」
桃香は頷き、萌花は自身の胸をバシンと叩いた。
「今日はこんなところですか?」
「そうだな。二人に頼りきりなのは悪ぃけど、俺ら後輩にツテがないからな。他の三年生は卒業より進路のこと考えるのに忙しいだろうし」
湊は自身の言葉に肩をすくめた。どうやらすでに何人かの三年生に声をかけたようだが、結果が芳しくなかったようだ。
「じゃ、解散。二人ともよろしくな」
こうして今日のところは解散する運びとなった。
しばらくして。また七人が集まったのだが。
「駄目でした……」
「私の方も駄目でしたー……」
桃香と萌花は二人揃ってしょぼくれていた。何人かに声をかけたようだが、誰一人として首を縦に振らなかったのだ。
「みんな自分の単位を取るのに忙しいとのことで……」
「要は『俺達にかまけてられない』ってことだろ」
「こうなるのも仕方ないところではあるな。今までがうまくいきすぎたんだ」
「立山くん達、みんなすぐうなずいてくれたもんね……」
「みんな薄情だなぁ。先輩が困ってるなら助けるのが後輩の役目だろうに」
「みんながみんなかっしーみたいな良い子だったら良かったのにねー」
全員予想以上にうまくいっていないことに落ち込んでいるようで、一気に空気が重くなった。
「で、でもほら!まだ課題が出るまでには期間あるんですよね?」
「あ、そこら辺聞いてなかったな」
「昨日倒れた時、そのその先生が『最初の課題は五月の末に出すらしいよ』って言ってたよー?」
「あぁ、そういえばお前昨日保健室に運ばれてたな……」
「え、だ、大丈夫なの……?」
「だいじょーぶだいじょーぶ、いつものことだからー。来月の末ってことは今月はまだ余裕あるけど……正直打つ手がないよねー」
「桃香ちゃんと萌花ちゃんの人脈も頼れないとなると、次どうしますか?」
「うーん……」
湊は彼にしては珍しくすぐ案を出すことなく唸ってしまった。彼もまた打つ手が考えられなかったようだ。
「ポスターでも作りますか?」
「それくらいしか今はできねぇかな。立山みたいなお人好しの目にとまることを祈るしかないな」
というわけで、委員会メンバー全員でポスターを作ることとなったのだが。
「はい、じゃあ一人一枚書いて一番良かったのをコピーして貼ることにします」
「え、俺も書くんですか?俺画力ないですよ?」
「こういうのはハートで伝えるんですよ、立山先輩!私も画力ないので気にしないでください!」
「もえちゃん良いこと言うねー。みんな頑張って書こー」
一時間後。
「みんなできたか?できたやつからポスター見せてくれ」
「はい!できました!」
「お、浅黄できたのか。どれど……浅黄。ピンク使いすぎじゃね?」
「そうですか?」
「俺みんなに白紙渡したよな?なのになんで背景はピンク、全部の文字もピンクにした?」
「これくらい派手じゃないと目に留まらないかと思いまして!」
「せめて文字の色変えてくれ、見づらくて仕方ねぇ。とりまお前のはボツな」
そんなー!と嘆く萌花の次にポスターを見せたのは証だった。
「これでどうですか!?」
「うん、文字がでかすぎるな。おかげで大事なこと全然伝わってこないぞ。ボツ」
「みなちゃーん、できたよー」
「おー、美乃もできたかー。……うん、まあ、お前のことだから予想はしてたが……ちょっとファンシーすぎないか?」
「でも可愛いよー?」
「美乃が可愛いのは俺が一番わかってるから安心しろ。これもボツな」
ボツをくらった三人はしょぼくれながらお互いを慰め始めた。
「後は……四ツ葉はできたか?」
「はい、なんとか。これでどうでしょうか?」
「お、良いんじゃね?要点がうまくまとまってる。レイアウトも見やすいな。岬はどうだ?」
「僕のはこうなった」
「岬のはちょっとシンプルだな……。俺のより文字が少ないくらいか。後は……橘できたか?」
「あ、う、うん……」
「お、橘のも良いじゃん。じゃあ四ツ葉と橘のポスター両方貼るか。異論は?」
「ピンクが足りなくないですか!?」
「浅黄は黙ってろ。無さそうだしこれコピーして貼るぞー」
その後掲示物の許可を取りに行くチームとポスターをコピーするチームに分かれ、ポスターを校内に貼り終わったところで今日の活動を終えることにした。