アオハル単位が足りません!〜卒業したくば青春しなさい!〜   作:夜野千夜

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番長参戦!

翌日。アオハル委員会メンバーに昨日和茶から聞いた伝言を伝えると、たちまち皆暗い雰囲気に包まれた。

 

「今月末までに一人、か……」

「け、結構切羽詰まってるよね……」

「なんとかして見つけないといけませんね……」

「でもどうやって見つけたら……」

 

皆うーん、と一様に頭を悩ませた。

 

「正直お手上げだよなぁ……」

「やることはやってるしねー……」

「手詰まり、といったところか」

 

皆頭を悩ませるばかりで、一向に新しいアイディアが出てくる気がしない。仕方なくこの日は早々にお開きとなった。

 

 

 

「卒業できなかったらどうなるのかなー……」

「やっぱ留年じゃねぇかなぁ……」

「留年かぁー……」

 

その日の帰り道。美乃と湊は半ば遠い目をしながら公園のベンチに腰掛けていた。暗い気持ちの二人とは対照的に、空には雲一つ浮かんでいない。

 

「良い天気だねー……」

「なー……」

 

気分が落ち込みすぎてろくに会話する気力もわかないらしい。二人は重いため息を吐いた。

 

「あらあら、どうしたの?そこのお二人さん。ため息なんか吐いてたら、幸せ逃げちゃうわよ?」

 

そんな二人の傍に、一人の老婆が近づいてきた。いかにも優しそうな雰囲気を漂わせたその老婆は、にこにこと笑っている。

 

「隣、良いかしら?」

「あ、はい」

「どうぞー」

 

二人は老婆が座れるようスペースを空けた。老婆は優しい声でありがとう、と返しベンチに座った。

 

「それでどうしたの?何かあったのかしら」

「いやー、そのー……」

「実は今、卒業の危機と言いますか……」

「あらまあ、大変ねぇ。その制服だと……青桜高校の子かしら?実は私の孫もそこに通ってるのよ」

「そうなんですか?」

「えぇ、そうなの。とても優しい子でね、今も私の代わりに買い出しに行ってくれてるのよ。あ、来たわ」

 

老婆が目をやった方角を、二人もつられて見てみると。

 

「あれ、センパイ?」

「あ、鹿目くんー!」

 

そこにはマイバックを持った飛翠が立っていた。

 

 

 

「すんません、センパイ。荷物持ってもらっちゃって」

「気にすんなよ。病み上がりに無理させるほど鬼じゃねぇからな」

 

全快でない飛翠を気遣い、湊と美乃は飛翠の持っていた荷物をいくつか持ち、飛翠と彼の祖母ーーひなたを家まで送ることにした。

 

「悪いわねぇ。それにしても、二人と飛翠が知り合いだなんてねぇ」

「昨日知り合ったばかりですけどね」

「そうだ、大したおもてなしはできないけど上がっていってちょうだい。お茶と何かお菓子を出すくらいはできるから」

「いえいえ、お構いなくー」

「そう言わずに、寄ってってくださいよ。オレを助けてくれたお礼できてないんで」

 

強引に押し切られ、美乃と湊は鹿目家に上がることになった。二人はあまり物の置かれていない居間に通され、お茶淹れてきます!と張り切る飛翠の背中を見送りひなたとともに彼が戻ってくるのを待つことにした。

 

「さっき卒業の危機って言ってたわよね?」

「あぁ、はい」

「言いましたねー」

「実はね、私あの子……飛翠ももしかしたら貴方達みたいになるんじゃないかって思ってるの」

「どうしてですか?」

「あの子昔から目つきが悪いって理由で喧嘩を売られてばかりでね。誰も友達と呼べるような子がいなかったのよ。少しでもそんな自分を変えたいって両親のもとを離れて私の住んでるところに来ても、それは変わらなくて。今も一人ぼっちなの」

「「……」」

「だから貴方達に助けてもらえて、本当に嬉しそうにしていたわ。なにせ今まで誰も優しくしてくれなかったから。……だから、お願いがあるの」

「お願い?」

 

ひなたはどこまでも優しい表情のまま、スッと一枚のポスターを差し出した。それは美乃達が貼ったアオハル委員会のメンバーを募るポスターだった。

 

「この委員会に、飛翠を誘ってあげてもらえないかしら?」

「え?」

「良いんですか?というか、それはむしろ俺達が助かるというか……」

「もちろんよ。あの子に青春してほしいもの。だから私は青桜を勧めたくらいだから」

 

ひなたがポスターをしまったタイミングで、飛翠がお茶と菓子を持って戻ってきた。ひなたは念押すように微笑むと、少し疲れたと言って飛翠と入れ替わるように奥に引っ込んだ。

 

「何話してたんスか?」

「色々、かなー」

 

美乃と湊は頷き合った。

 

「なぁ鹿目。アオハル委員会って興味ないか?」

「え?」

「実はわたしたち、アオハル委員会に入ってるんだけどねー。今月末までにあと一人集めないと卒業できないのー」

「そ、そうなんスね。……でも、その。オレで良いんスか?」

「鹿目、これなーんだ?」

「え?……あ、それ!」

 

湊は先程ひなたがテーブルの下に置いたポスターを取り出した。

 

「これ持って帰ってる時点で、お前も興味あるんだろ?なら、後は行動あるのみだぜ。ーー俺達は、お前が何だろうと受け入れてやる」

「!」

「それにさっき何もお返しできてないって言ってたよねー?なら委員会入ることがお返しってことで良いんだよー!それならわたしたちすごく助かるしー」

「……わかりました。なら、よろしくお願いするッス、センパイ!」

 

その時飛翠は初めて笑顔を浮かべた。その笑顔はどこまでも晴れやかだった。

 

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