アオハル単位が足りません!〜卒業したくば青春しなさい!〜 作:夜野千夜
教室に戻ったアオハル委員会の一同は、各々定位置となりつつある席に腰掛けた。
「鹿目も好きなところ座れよ」
「そうするッス」
入ったばかりで定位置の定まっていない飛翠はどこに座るかで迷っていたが、結局美乃と湊の近くに座ることにしたようだ。
「それじゃ、自己紹介タイムだー!」
「せっかくですし園村先生も呼びましょうよ。顧問ですし」
「立山先輩ナイスアイディアです!」
美乃・証・萌花の陽キャ三人衆により着々と話が進んでいくのを見て、葵は陽キャ怖い……と半ば怯えながら呟いた。
「お呼び出しして大丈夫なんですか?仕事中でしたらお邪魔になるのでは……」
「そのその先生基本保健室留守にしてるから大丈夫だよー。保健委員会の子の方が長くいるくらいだしー」
「職務怠慢じゃないか……」
和茶が呆れながらもツッコんだ。しばらくすると園村も来たので、アオハル委員会最初の活動ーー自己紹介が始まった。
「あの……だ、誰から自己紹介するの?」
「ここはやっぱり三年からじゃね?」
「じゃあわたしから自己紹介するねー。三年三組所属の白江美乃でーす。演劇部に入ってるけどそんなに活動に顔出せたことないかなー。後は……あ、趣味はゲームかなー。そんなに激しく動かないゲームなら何でもやるよー」
「あんまり激しいと血吐くもんなー」
「ねー」
「なぜそんな和やかに話せるんだ?」
美乃と湊以外は若干引いてることにも気づかず、美乃は次みなちゃーん!と指名した。
「じゃ、次は俺な。俺は白江湊。クラスは美乃と同じ。部活も美乃と同じ演劇部だな。俺もあんまり顔出せてねぇけど。趣味は読書くらいか?あぁあと演劇部の奴らに頼まれて演劇の脚本執筆したりもする。ま、よろしく頼むわ」
「どんな本読むんスか?」
「何でも読むぞ。強いて言うなら昔の小説の方が多いな。いわゆる文豪が書いた小説とかな」
「みなちゃんいっつも難しそうな本読んでるもんねー」
「昔の本から学べることも多いからな。今と価値観が違うのも面白ぇし。……こんなとこか?じゃ、次は橘な」
「わ、私!?わかった……」
葵は一度深呼吸してから口を開いた。
「さ、三年二組所属の橘葵……です。部活は何も入ってない、です……。趣味は……えっと、読書とゲームと通販……とか?」
「橘先輩はどういうのが好きなんですか?」
「ど、どういうの?えっと……わりかし何でも好き、かも……」
「へぇ、地雷ないんだな。良いことじゃん」
「そうかな……?せ、節操なしとか思わない?」
「思わないに決まってるじゃんたっちー!今度おすすめのゲーム教えてねー」
「あ、ありがとう……」
葵は安心したようにほっと息を吐いた。
「えっと、次はーー」
「僕だな。僕は岬和茶。不本意だが、白江と同じクラスだ」
「俺達三人一年からずっと同じクラスなんだよなー」
「だから岬先輩と美乃先輩達は仲良いんですね!?くっ、羨ましい……!」
「たしかにクラスは一緒だが、仲が良いわけじゃない。勝手に絡まれてるだけだ。……はぁ、続けるぞ。部活には所属してない。趣味は……特にない」
「え、趣味ないんスか?」
「あぁ、ないな」
「まぁ!つまらない男ね!」
湊が裏声で和茶を茶化した。その声に耳ざとく反応した和茶は湊を睨みつけたが、湊はどこ吹く風だ。
「はーいじゃあ次は二年生いくぞー」
「じゃあ俺から自己紹介させてもらいます。俺は立山証です。クラスは二年一組ですね。部活は……色々顔出してるんで、どれかに所属してるってことはないですね」
「漫画みたい……」
「それな。部活の助っ人とか漫画とかでしか見たことねぇよ」
「かっしーはどうして一つの部活に入らないのー?」
「俺体動かすこと全般が好きなんで、このスポーツが特に好きっていうのはないんですよ。それに色々誘われるうちに一つに決めづらくなったというか」
「色々こなせてしまうのがすごいですね……」
「そう?桃香ちゃん。それじゃ、次桃香ちゃんよろしく」
「はい。私は四ツ葉桃香です。二年二組に所属してます。部活は帰宅部ですね。趣味は音楽鑑賞でしょうか」
「おお、なんか四ツ葉先輩っぽい!」
「音楽といってもクラシックとかではないですよ。よくテレビで流れてるような曲しか聞きませんから」
桃香は苦笑しながらそう答えた。
「四ツ葉は自己紹介それくらいで大丈夫か?」
「はい。一年生に移ってくださって構いませんよ」
「それじゃあ私から!私は浅黄萌花です!クラスは一年三組です!部活は演劇部で趣味は妄想です!よろしくお願いします!!」
「もえちゃん元気だねー」
「それが私の取り柄ですから!!次、総長どうぞ!!」
萌花はははー、とわざとらしくへりくだりながら飛翠を指した。
「いつオレ総長になったんだよ!?……こほん。オレは鹿目飛翠ッス。クラスは一年二組ッスね。部活は入ってないッス。趣味は……何だろうな。強いて言うなら家事の手伝いッスかね?」
「へぇ、意外だな。飛翠くん家事とかやるんだ?」
「オレばあちゃ……祖母と二人暮らしなんで。あんまし祖母に負担かけるわけにはいかないじゃないッスか」
「かなめる良い子だねー」
「これがギャップ萌え……!くぅー、妄想がはかどるぅー!」
「ちょっ、湊センパイ無言で頭撫でないでくださいよ!オレそんなガキじゃないッス!」
「いやぁこれは撫でざるを得ないって。ねぇ園村先生?」
「そうだね」
「センセイまで加わんないでくださいよー!」
湊や園村以外のメンバーにまで頭を撫でられた飛翠は、むくれながらもどこか嬉しそうにしていた。彼に尻尾が生えていたら嬉しそうにぶんぶん振っていたことだろう。
「んじゃ、最後は園村先生よろしく」
「はいはい。俺は園村紫苑。この学校の保健医ね。趣味は……読書と研究かな?よろしくね」
「研究……って何のですか?」
「ん?聞きたい?」
「聞かない方が身のためだと思うよかっしー。そのその先生危ない人だからー」
「なんせ『自分に他人の健康が委ねられている状況に何よりの悦びを感じる』って前に言ってたくらいだからな……」
「俺危ないかなぁ?普通じゃない?」
「普通の保健医はそんなこと言いませんよー?」
「そうかなぁ」
園村は美乃にそう言われてもなお納得していない様子だった。
「な、何はともあれ自己紹介終わりましたね!」
「そうだな。次はどうする?」
「意外と乗り気なんだな岬」
「……僕だって留年は嫌だからな」
「うーん、どうしよっかー。集まるにしてもみんなの都合がいつでも合うわけじゃないでしょー?」
「月末まで最低でも週に一回は集まるのはいかがでしょう?そこで親睦を深めるのはどうでしょうか?」
「さっすが四ツ葉先輩ナイスアイディア!」
「じゃあそうするか。来週までに何するか決めて連絡するから、各自ちゃんとグループのメッセージは確認しとけよー」
こうしてアオハル委員会最初の活動は終わったのだった。