傲慢少女は黒幕でありたい   作:スーラリリィ

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プロローグ/独白

「――この学院で落ちる、木の葉が地面を揺する様を、私はいつ見ても美しいと思うのです……そうではありませんか、会長殿?」

 

『ラクト=セリアの弁明』と言う本があります。王家の没落期に描かれた小説で、優雅な暮らしをしていた王女が落ちぶれていく生活に悲嘆に暮れ、心を折り――決意を固め。やがて断頭台へ向かって、長い長い旅をする物語です。

その王女の最後の台詞が、『この国で落ちる、木の葉が地面を揺する様を、貴方方はいつ見ても美しいと思うでしょう』。

 

相当マイナーな本で、更に今は王政へと完全に回帰していることもあって普通の人間は滅多に目にすることは無いでしょう。よしんば手に取ったとしても、読もうとは思わない。そんな本ですが――

 

「……ふむ。君はなかなか面白いことを言うね。ボクに気取られる事なくここへ来たその手腕に、その言葉……一体どこの誰なのかな?」

 

――この女なら違います。

 

王国魔術学院。正式名称をミネアガート国立魔術学院で生徒会長を務める彼女、ルアート=ノグレア・ビクトリアは、公爵家の時期当主を目されるほどの魔術の才能を秘め、さらに異様に本を好いていることで有名です。

 

その彼女なら、この私の台詞をこう読み取るのです。

 

『この国』を『この学院』へ変え、さらに本来『貴方方』だった部分を『私』へ変えることで。

そして、この台詞が書き出された場面と総合することで――『この学院で大量の人間が死ぬことを、私は知ってる』と彼女は私の台詞を受け取るのです。

そしてそれは、この学院である事件を起こそうとしている彼女にとって途轍もない致命傷と成りうる()()()()()()情報を、得体の知れない存在が握っていることに他なりません。

 

靡く金色の髪に、爛々と煌めく茜色の瞳。夕焼けよりもなお大地を焼き付くすその色を持って、彼女は私を射ぬいています。

 

――さて、ここからが重要です。決して間違えてはならないと、私は己に言い聞かせます。そう、一言も、一手も。

 

私程度、足元にも及ばない魔術師で、本来なら私なんかが出し抜くことなんて到底不可能な彼女。ですが、今はやるしかないのです。

 

己を大きく見せましょう。己を意思で固めましょう。さながら、ラクト=セリアのように。これから起きる何もかもを知っている(・・・・・)私に、怖いことなんてあるわけがないのですから。

そして私は、唇がこれまでに無いほど乾いていることを実感しながら、ゆっくりと口を開きました。

 

「――」

 

そして、私は――。

 

 

◆◇

 

 

なんて事ない人生でした。幾度も前の(・・・・・)私の人生は、平々凡々も良いところのしょうもない物。

 

――なんて(・・・)

 

認められるはずが、ないでしょう?

 

魔術の才能がない?――それは認めます。どこまでいっても三流、いや、それ以下でしか私はあり得ません。

 

先を見据える智謀がない?――それも認めます。私の頭の作りはそんなことほざけるほど大層な出来じゃないのですから。

 

他人を圧倒する力がない?――それもそうでしょう。私は絶対的な魔術や、肉体なんかこれっぽっちもありはしないのです。

 

 

――だから、私に()でいろというのですか?

 

 

ふざけるな。ふざけるなふざけるなふざけるな!!

 

――私はお前らより上だ!私はお前らより上にいるはずだ!知恵が無くても!!力が無くても!!魔術が無くても!!

 

……おかしい?気が狂ってる?その程度の才能なら諦めて普通の幸せを掴めばいい?

 

……ええ、そうかも知れません。私は狂ってるのかもしれません。だけど、私には決して許せなかったのです。

 

学院にいる全員が、この世界の誰かしらが、私の()であることに。肥大化し過ぎた傲慢でしょう。膨れ上がりすぎた欲望でしょう。

だけど、私はこの世界に一人でも上がいることが許容出来ませんでした。

 

 

 

だから。

 

だから、私は『開けてはならない扉』を開けてまで、時を繰り返す力を得て。

 

この世界の全員を、私の(てのひら)の上で踊らせてやりましょう。そう、さながら、物語で言うところの――『黒幕』のように。

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