なぁカズ、おまえ明日ってなんか用事ある?
なんだよ藪から棒に……ってまあ別にないけど
じゃあさ、これからツーリング行こうぜ
はぁ?急すぎんだろおまえ
いやいや実はSNSで知り合ったカヤノちゃんが今日は両親いないから一人で寂しいってメッセくれたんだわ
こりゃ駆けつけてあげなきゃ男じゃないだろ
どんだけ下半身で生きてんだおまえ
そんなんどうせ釣りかなんかだろ
まあ、そんときゃ向こうで適当にぶらつきゃいいじゃん!な、どうせ暇なんだろ?
はぁ〜〜〜(くそでかため息)ったく、おまえはホントしょーがねぇな。わかった行ってやるよ
流石!カズ様、仏様、弁天様!恩に着るよ
そんなこんなで俺たちはバイクで県境まで走らせたわけ。
辺りは暗くなってるし周りは山だらけだし街の灯りどころか民家すりゃ見当たんないしでこりゃ本当に騙されたんじゃねぇの、なんて考えてるんだがユウヤの奴はすいすい山道進んでくもんだから仕方なく後ろからついてったんだ。そうするととうとう道がなくなってユウヤがバイク停めたんで文句言ってやろうと近づいていった。
「おいユウヤ、巫山戯てるのかよ」
「ん?どうしたんだ?」
「いやおまえ、こんなとこに人が住んでる訳ないだろ」
アスファルトも敷いていない山奥で通行止めを示すように木と木の間に錆びた鉄製のチェーンがひかれている。辺りを見渡せば木に立て掛けた看板に立ち入り禁止の赤い文字とその脇から顔を覗かせる真っ白い少女のようななにか。
肝試しには最適な場所かもしれないがひと夏のアヴァンチュールには間違いなく不釣り合いなロケーションだった。
ピピロリン
「お、メッセきた。ほら、あそこの家だってよ」
そういってすたすたと歩いて行った先はどうみてもボロボロのトタン板で囲われた物置小屋。
キィィと耳触りな音を立てて扉を開くとユウヤは物怖じする様子もなく真っ暗な物置小屋へと姿を消していく。
「おい!ユウヤやめろって!マジなんか変だってここ!」
慌ててユウヤの後を追って物置小屋に駆け込むと中ではユウヤがこちらを向いてぼんやりと立っていた。だらんと垂れた腕に握られたスマホがぼんやりとこちらに気づいた様子もないユウヤを照らしている。
「ユウヤ!おい、ユウヤっ!しっかりしろよ!」
ユウヤの肩を揺すって呼びかけてるとスッと後ろに人の気配を感じて思わず振り返ったんだ。
「えっ」
正直、その時の事はよく覚えていない
なんだか毛むくじゃらな化け物を見た気もするし恐ろしい形相の女と出会ったような気もする
ただ、めちゃくちゃ恐ろしいナニカにあって気を失ってしまった事だけは確かで
気がついたら俺たちふたりは異世界転生してた。