そこは見知らぬ掘っ立て小屋だった。
気を失う時に入ってたトタンの物置小屋とも違う柱に粗末な木板を貼り付けただけのぼろの掘っ立て小屋。天井の隙間から入り込んだ日差しで明るく照らされた室内。枯れた草の匂いがしたからもしかしたら穀物か何かを保管していたのかもしれない。
ただ、床に寝転がってのんきにイビキかいてるユウヤを確認した時には正直ホッとした。とにかくふたりとも無事だったんだ。
「おい、ユウヤ……いい加減起きろよ」
目を覚ましたらどんな文句を言ってやろうか、そんな事を考えながら揺すっているとユウヤが起き出してきた。
「んんぅ……まだ寝みぃよ………って、うわぁぁぁぁぁ!!!!」
「だ、だ、だれだおまえ!!」
目を覚ましたとたん悲鳴をあげて喚き出すユウヤを見て呆れ返ってしまった。
「なにいってんだおまえ、寝起きにしたって惚けすぎだろ」
「え………いや、まさか………え?……おまえ、もしかしてカズか?」
「それ以外の誰に見えるって言うんだ、この頓痴気め」
「ええっと……猫耳つけた口の悪い美少女……?」
「………は???」
ユウヤの視線に合わせて自分の身体を見下ろしてみると、自分の記憶よりも華奢な腕とまるで女性のような胸の膨らみ
ゆっくりと手を伸ばしてふにゅりと揉んだ感覚は間違いなく自分の身体で
「………は???」
思考が停止した。
無駄に気を利かせたユウヤがスマホを自撮りモードにして手渡してくる。
そこに写っていたのは小麦色のゆるふわミディに青っぽい大きめの瞳が可愛らしい15、16歳ほどの少女。そして頭の上でピクピクと存在を主張する猫耳。
「いやいやいや、嘘だろこれ!意味わかんねぇ!」
あまりにもあまりな展開に俺は腰が抜けたように床に座り込んだ。
骨格の違いなのか、自然と女の子座りの格好になってる事まで気が回らなかったのは不幸中の幸いだと思う。
「しっかしおまえにそんな趣味があったとは驚きだわ。んでその耳ってホンモノなのか?」
「ひゃぅぅぅぅんっ!!」
恐る恐るといった感じてユウヤに猫耳を撫でられた瞬間、冗談抜きで腰から背筋を通ってぞくぞくぞくっっ!と震えが走り、尻尾がぴぃぃぃんと逆だって膨らんだ。そか、あったのか、尻尾……
"ユウヤのレベルがダウンしました"
上の方から抑揚のない女性の声が聞こえて来る。
「わ、悪い。そこまで驚くとは……つかなんか今めちゃくちゃ可愛い声聴こえたんだけど」
「気のせいだ!このバカユウヤ!!!」
慌てて手を引っ込めたユウヤを威嚇するようにファイティングポーズを構えて睨みつける。
睨み合ってたはずのユウヤが思わず顔を反らしてポツリと
「なんか、マジで可愛いなおまえ」
「………は???」
なんの捻りもない本日3回目の思考停止。
脳が言葉の意味を理解し始めるとぶるぶると頬が熱くなってくるのがわかる。
「うっさいバカ!!」
空気を読まないバカユウヤに正当な罵倒を浴びせかけると俺は身を翻して小屋の外に飛び出した。