林と牧草地に囲われた丘の上でその町は身を寄せ合うようにひっそりと佇んでいた。
石壁に赤瓦の屋根の伝統的な建築で家々は建てられ細い路地には石畳が敷かれている。上から差す日差しが石畳に反射して暖かく、カラッとした空気も相まって過ごしやすい天気だった。
街の外では古びた作業服で石を削るおじいさんや家畜で畑を耕す様子が見て取れ一見貧しいのかと思いきや、街のなかでは色鮮やかに染めた衣装を身にまとった女性がおしゃべりしていたりと華やか様子が広がっていた。
「こりゃすげーなカズ。洋画で見るようなヨーロッパまんまじゃん」
「わかった、わかったからちょっと落ち着けって」
「何いってんだよ。こんなワクワクする展開に興奮しないとか勿体ないだ…」
どんっ!と身振り手振りで喜びを表すユウヤとすれ違う女性がぶつかってしまう。
「きゃっ」
「おっと、あーゴメンよ。わざとじゃないんだ」
「んもう……次からは気をつけなさいよね」
そう言い残して女性はさっさと歩いて行った。
「今の娘結構胸大きかったな。LINE聞いときゃ良かった」
「いやいや、スマホ持ってる訳ねーじゃん。つか、そもそも電波来てなかったし」
「あースマホ使えないのはまじダルいよな」
「ホントまじで原始時代かって話よ」
「あれ?そう言えばさっきのお姉さん普通に日本語喋ってなかった?」
「え?うお、マジだ全然気にしてなかったわ」
「なに?ここって海外みたいなもんかと思ってたけど普通に日本語とか通じちゃうわけ?」
「おっし、ちょっと試してくるわ」
ユウヤは広場で果物を売ってる恰幅の良いおばさんに近寄っていった。
「おばちゃん、めっちゃ美人だね〜どれが美味しいの?」
「アンタなかなか正直もんだね!ウチで採れたブドウはどれも一級品だよ!」
そう言ってツヤツヤと光るブドウを一房持ち上げてみせる。
「おーめっちゃ美味そうじゃん。……っと、わりぃおばちゃん、俺金持ってねーんだったわ」
「なんだい文無しかい。ほら、あそこに角笛の看板でてる建物があるだろ、そこの冒険者ギルドにいきゃ仕事ぐらい紹介してくれるから稼いどいで」
「お、冒険者ギルド!めっちゃテンション上がるわ!ありがとおばちゃん」
「つぎはたっぷりブドウ買っておくれよ」
ユウヤが離れて様子を伺っていた俺のもとへ戻ってくる。
「どうしたんだカズ。おまえも来れば良かったのに」
「ああ、俺身体変わっちまっただろ。だから変な目で見られんじゃねーかとかちょっと不安でさ」
ユウヤが上から下までしげしげと見てくる。
「んー、いやおまえは大丈夫だろ。めっちゃ可愛いし」
「はぁん?そうかぁ?」
なんでもない風を装いながら内心俺の心臓はバクバクだった。
「なぁ、ユウヤ。……わたしが女らしい言葉遣いになっても変に思わないでいてくれますか?」
仕返しに意識的にかわいい声を使って上目遣いでユウヤを見つめてみる。
「ぐはぁっ!!」
変なうめき声を上げてユウヤがうずくまる。
「おいカズ……おま、いきなりそれは反則だろ。なにおまえ、オレのハート泥棒にでもなりたいわけ?」
ユウヤが喜んでる様子が凄く嬉しい。
ユウヤの広い背中に覆いかぶさって耳元で囁いてみる。
「なに?ユウヤったらこういうのが好きなの?早く言ってくれたらサービスしてあげたのに」
後ろから首に抱きついたとこでユウヤがギブアップした。
「降参!降参だから離れてくれ!それ以上されたらマジで悶え死ぬわ」
"ユウヤのレベルがダウンしました"
あ、ごめんユウヤ。忘れてたわ。
「んで、結局日本語通じたんか?」
「あ、そうそう!向こうに冒険者ギルドあるらしいぞ!早速行ってみようぜ」
「冒険者ギルドってまんま異世界ファンタジーだな」