俺とユウヤの不器用なカンケイ   作:黒猫なな

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冒険者ギルドからの逃亡

「ようこそ冒険者ギルドへ」

 栗毛色の大きな三編みをした美人の受付嬢が微笑んでる。

「いやー、オレら冒険者登録って言うんですか?そういうのしたいなって思ってて」

 デレッと相好を崩したユウヤがナンパな感じで受付嬢さんに話しかける。鼻の下を伸ばして受付嬢さんの胸を見ているのが丸わかりだ。

ふんっと顔を反らして不機嫌だと教えてやってるのにこのバカはまったくこっちに気が付かない。ほんとムカつく。

 

「ありがとうございます。新しい冒険者の方はとっても嬉しいです」

「さっそくステータス鑑定して貰いたいんですけどいいですか?」

 受付嬢さんはさり気なくユウヤの左手を握ると胸元に抱き寄せて上目遣いに尋ねてくる。傍目から見れば露骨すぎる仕草にしか見えないなのにユウヤはお構いなしだ。

 

「もちろんです………えっと、この水晶玉の上に手をかざしたらいい、とかなのかな?」

「はい!その通りです」

 受付台の上に設置された水晶玉へと目をやったユウヤに受付嬢さんがニッコニコで答える。受付嬢さんに促されてユウヤが水晶玉に右手をかざすと、ぶわぁぁっと蛍光灯のような白い光が部屋中に広がる。

「お、おいユウヤ!」

 突然の現象に慌てて俺が声をかけると水晶玉から手を離したのか部屋の中の光が収まっていく。

 

「すごい!すごいです!!!私こんなに強く光ってる人初めてみました!!」

「あ、そうだギルドカードに記名するので名前を教えて貰ってもいいですか?」

 興奮してるのかニコニコ顔の受付嬢さんがユウヤの左手をぶんぶん振り回してる。ニコニコぶんぶん、まさかこの女これで天然なのか?そんな馬鹿な………

 

「ええっと、オレの名前はユウヤです。んで、こっちの猫耳がカズ」

「……よろしく」

 不承不承ながら挨拶する俺を尻目にユウヤの表情はデレッデレだ。ムカつく。

「わたしは受付嬢のフィレーネです。ユウヤさん、なにか気になる事があったらなんでもご相談くださいね!」

 そんな事を言いながら受付嬢さん、もといフィレーネさんはギルドカードを準備していく。なんか金属っぽいプレートにキラッキラのラミ加工がされてる。俺も欲しい。

 

「じゃあ次は俺の番な」

 ユウヤを押しのけて受付の前に立つと同じように水晶玉の上に手を翳してみる。

そしたら水晶玉から迸るような光がぶわぁぁぁぁっと………………………こない。

「なにこれ」

 

 水晶玉を横から覗き込んでみると切れかけの豆電球のような光がふわふわっと揺れてる。

「ねぇこれ、さっき光らせ過ぎたから電池がなくなっちゃったとかないの?」

「ええっと、電池とかはよくわかんないですけど………えっと、その……普通ですね」

「普通?」

「はい、ありきたりです」

「ありきたり?」

「二束三文の十把一絡げです」

 

 フィレーネさんは山積みになってる木の板からひとつ取ってサラサラっと名前を記入すると

「はい、こちらカズさんのギルドカードです。頑張ってくださいね」

にっこりと差し出してきた。

「ちくしょおおおおおおおおお」

 俺は逃げ出した。

 

 

 

 

 

「はぁ………おいし……」

 思わず冒険者ギルドから逃亡してしまった俺は広場のベンチでひとり、ジェラートを堪能していた。この世界のお金は持ってなかったが、別に泥棒した訳じゃない。百円玉硬貨1枚と物々交換したのだ。ベリーがふんだんに使われた美味しいジェラートが100円。なんだか凄い得をしてしまった。

 

「なんだ……こんなとこに居たのか、ったく手間かけさせやがって」

 ぺろぺろとお得なジェラートを堪能してると怪しげな男が声をかけてきた。不審者ユウヤである。

「なんだとは失礼だな、そんな事を言う輩にはこのジェラートはわけてやらんぞ」

「誰も食べかけのジェラートなんか横取りせんわい。というかそれ美味そうだな一口くれ」

「おま、今横取りしないと言ったばっかじゃねぇか」

「おまえを探し回ってたら甘いもん食いたくなったんだよ。いいだろ一口くらい」

「ったく、しゃーねーな」

「お、サンキュー」

 

 仕方なく差し出したジェラートをユウヤがシャクッとかじる。

「結構うまいなこれ。今度見かけたら買ってみるか」

 俺のそばで口を開けたユウヤの仕草に不覚にもドキッとしてしまった。手元にはユウヤが齧った食べかけのジェラート。

「ん、どうかしたのか?」

「なんでもねぇって!」

 

 動揺を押し殺していつも通り振る舞う俺にユウヤが気づいた様子はない。

「んじゃそれ食いながらでも移動するか」

「移動って……これからどうするんだ?」

「とりあえず宿屋だろ、あとはおまえの服売ってる店と武器屋だな」

「やど!?……ま、まぁ確かに大切だよな。ここらへんネカフェとか無さそうだもんな」

 

「というかそもそもこっちの金なんて持ってねぇぞ。どうすんだよ」

「いや実はフィレーネさんに向こうの硬貨とか紙幣とかアンティークとして買い取って貰ったんだよ」

 聞く話によると、なんでもあのキラキラカード特典でモンスターの素材とか遺跡の遺物とかの買取価格が倍に、この町の商品とか宿賃とかが半額になるらしい。なんというチート。ちなみに100円玉は1枚で10,000Gになったんだとか。

 俺の知らないトコでユウヤに色々と吹込みやがってあの抜け駆け嬢め。今度あったら枝毛見つけて引っこ抜いてやる。

 

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