『以下の漢字の読みを答えなさい』
範疇
姫路瑞希の答え
「はんちゅう」
教師のコメント
「簡単でしたかね」
土屋康太の答え
「らおちゅう」
教師のコメント
「中国のお酒ではありません」
吉井明久の答え
「のりすけ」
教師のコメント
「何をどう間違えてそうなりましたか」
雑賀佳史のコメント
「範疇→範→のり→予想もつかない何か→のりすけ …だろうな」
「…ったく、何してくれてんだよ。あのままやって も一応二対一で押し切れただろ…」
「はは、悪い悪い」
試合が終わって、とりあえず雄二に愚痴っていた
…本当に大人のデートってなんだよ。俺にはそんな 事する金も時間もねぇっての
「だから悪いって」
まぁ、お前がそんな事する前に、先に復讐は済まし ているがな!
「…まぁいい。それより雄二。そろそろか?」
「…あぁ、多分な。仕掛けてくるならここだろう。 次の相手は何の因果か常夏コンビだしな」
そんな会話をしていた時だった
「…雄二!佳史!」
「……お兄ちゃん……」
教室から康太と、その後ろから少し震えている唯が 出て来た
「……お兄ちゃん…!」
「おっと」
俺を見つけた唯は一直線に俺の足にしがみついて来 た
「どうした?怖いお兄ちゃんでもいたのか?」
「ムッツリーニ、何か問題でも起きたのか?」
「……実は」
「…お兄ちゃん」
「ん?」
目いっぱいに涙を溜めた唯は
「どうしよう…優ねえ…連れて行かれちゃった…!」
「…ムッツリーニ」
雄二が康太の方を向くと、康太は頷き
「…ウェイトレスが連れて行かれた。偶々遊びに来 た霧島と木下姉も」
―――――
「ええっ!?姫路さん達が連れて行かれた!?」
緊急召集した明久と将に事情を話すと、予想通り騒 いでくれた
「明久は兎も角。俺や雄二と直接やり合うのは無理 だと思ったみたいだな」
「当然と言えば当然の判断だな」
「って何で佳史と雄二はそんなに冷静なのさ!木下 さんと霧島さんが心配じゃないの!?」
明久がパニクって騒ぎ立てる
…ったく
「起きた事をゴチャゴチャ騒いでも仕方ないだろ。 今はどうやって優子達を救い出すかだ。 …雄二はどうやらこれも予想していたらしいがな」
「流石に翔子達がいるとは思わなかったがな」
「え?そうなの?」
「ああ」
とにかく冷静に努める雄二
「でも何だかんだ言って霧島が心配な坂本なのでし た」
「なっ!?何を適当な事を!」
「手。握りすぎて血が出てんぞ?」
「あ」
それを見て、俺、明久、康太、将がニヤニヤする
「うっ、うるさい!どうせムッツリーニが場所を特 定してるんだろ?早く行くぞ!」
顔を真っ赤にしたまま康太と明久を連れてずかずか 歩いて行く
「ったく、坂本も素直じゃねぇな」
「アイツにも色々あんだよ。にしてもよく分かった な?」
アイツ無駄にツンツンしてるからわかりにくいのに
「いや、愛子にいじられてる時の優子にそっくりだ ったからな」
…優子、お前Aクラスで何やってんだ?
―――――
「で?どこだ康太?」
「…駅前のカラオケ」
唯を知り合いに預けた後、時間が惜しいと言う事で 康太を先頭に移動しながら作戦を立てることになっ た
「駅前のカラオケか…裏口はあるか?」
「…一つだけ」
「待て坂本。正面からじゃ駄目なのか?」
「無理だ。風祭、お前が店員だったら嫌がる女子を 無理やり引っ張っている奴を案内できるか?」
「…店員もグルって事かよ。クソが」
拳を手のひらに打ちつけて憤慨する将。卑怯な事は 大嫌いだからな、コイツ
「とにかく、どうにかなるか?佳史?」
横で「「「結局人任せかよ」」」って言ってるのはスルーしよう
「ああ、大丈夫だ」
「良かったぁ、姫路さん達に何かあったら正直大会 どころじゃないからね」
「…それが向こうの目的だろうがな」
「え?」
雄二の考えは正解だろう。優子達に何かあれば俺は 感情のコントロールは出来るが、明久は元より、雄 二も大会に集中出来ないだろうし。
…準決勝まで俺ら4人が残ったのに今更慌て出した か
「とにかく、今は女子の救出が先だ。康太は先に裏 から回ってタイミングを見て姫路達を助けてやって くれ」
「……分かった」
「佳史、俺達はどうするんだ?」
はぁ…全く
「王子様の役目は昔から一つだろ?」
台詞を盗るな将
「王子様?」 「役目?」
「お姫様を攫った悪者を退治する事だ」
「主役はお前だろう?」
――――――
「さて、どうする?坂本と吉井と―雑賀だっけ?人 質を盾にして呼び出すか?」
「待て。吉井と雑賀ってのは知らないが坂本は下手 に手を出すとマズい。それにあの『暴虐明王』もい るらしいからな。できれば事を構えたくない」
現在、誘拐犯が籠もった部屋の近くから盗聴で中を 探っている
「雄二。コイツ等って…」
「ああ。黒幕に雇われたチンピラだろう」
「それにしてもお前ら大人気だな?」
雄二と将は中学の時から不良の間で有名だった
…というか俺と雄二が将とよくつるむようになった のもそれが理由だ。お互いが名字呼びなのもそれが 名残だし
「「うるせー。半分はお前のせいだろ」」
そんな会話の途中…
『お、お姉ちゃん…」
『アンタ達!いい加減葉月を放しなさいよ!』
『お姉ちゃん~だってさ!かっわいぃ~!』
声からして7、8人か…
「ストップだ明久」
「でも…!」
「殴り込みたいのがお前だけだと思うなよ?」
「…わかったよ」
ガチャ
『…灰皿をお取り替え致します』
康太が侵入に成功したか…
『おう。で、このオネーチャン達どうする?ヤっち ゃっていいの?』
………耐えろ俺。キレたら負けだ…!
『だったら俺はコッチの巨乳ちゃんがいいな~!』
『あっ、ズリーッ!じゃあ俺コッチの双子の気ィ強 そうな方~』
…………………
『いい加減私達を放しなさいよ!葉月ちゃんが怯えてるでしょ!!』
『それはオネーチャン達の頑張り次第だよな?』
『ちょっ!気安く触らないでよ!』
『ちょっと!優子と翔子を放しなさいよ!』
『あーもう、うっせぇ女だな!』
『きゃあっ!!』
ガシャァァンッ!
「おい明久っ!」
その音が聞こえた瞬間、明久が走り出した
「ちっ…俺らも行くぞ佳史!」
「…ああ」
「(あ、ヤバいわコレ)」
「(あ~あ、俺し~らね)」
そして部屋に着いた時、明久はボコボコになりかけ ていた
「お前ら全員…絶対ぶっ飛ばす…!
「やれやれこの阿呆が…」
「本当に吉井はバカだな」
「「少しは頭を使って行動しろって―のっ!」」
「雄二!将!」
雄二と将が同時に一人づつ気絶させる
「雄二っ!将っ!」
「……雄二…!」
「貸しイチだからな?」
「俺コーラで♪」
「で、出たぞ!坂本と風祭だ!」
部屋にいた奴らは雄二と将の出現に怯む
「あ~…俺らに注意を向けるのはいいが…」
「もう詰んでるぞ?お前ら」
「な、何を「…お喋りとは余裕だな」…!?」
部屋に都合良く落ちていた木刀で雄二達の方を向い ていた屑共を潰す
残りは…
「おっと!このお嬢ちゃんがどうなってもいいのか ァ?」
最後の一人の方を見ると、葉月を人質に取っていた
まぁ…
「おとなしくしてろよ?さもないとヒデェ傷を―」
「…負うのはお前」
ムッツリーニが潰すがな
…さて、とりあえず人質は救出成功、
「吉井っ!ヤスオをよくもっ!」
…明久、血の涙を流す程の何かがあったのか?
とにかく
「康太!将!優子達を連れて学校に戻れ!」
「佳史!キサマまで僕の邪魔をするつもりかっ!」
だから何がだ
「くはははっ!生まれて来た事を後悔させてやるぜ ぇぇ!!」
にしてもバカだなコイツ等。霧島の事で行き詰まっ てる雄二に喧嘩売るとは
「…で?何で秀吉と優子だけ縛られてんだ?」
「……とてもよく似合っている」
そういう問題じゃない
「姉上に縛られた時の縄が残っておっての…」
「何か姉妹だからってアタシも縛られたのよ…」
ご愁傷様です
「それとワシだけ随分と尻を撫でられたのじゃが…」
………ドンマイ秀吉
―――――
「佳史、早く行くぞい」
「ああ。…雄二、明久、戸締まり頼んだぞ?」
あの後、女子を一人で返すのは危険と言う事で、霧 島は雄二、島田姉妹は将、瑞希は康太、優子は俺( 秀吉は頼りないため)が送る事となった
「ああ。翔子に少し待っていてくれと言ってくれ」
「了解だ」
そして帰り道…
「にしても秀吉はともかく、優子が捕まるとはな」
「なによ…アタシはそんなに強くないわよ…」
…ったく
「仕方ないのじゃ佳史。姉上は葉月と縛られたワシ が捕まって手が出せなかったのじゃ」
「…秀吉、ここから一人で行けるか?」
「?大丈夫じゃ」
「なら先に行ってくれ。ちょっと駅前でコイツに甘 い物奢ってやるわ」
「わかったのじゃ」
そうして秀吉は先に帰る。後は角を曲がるだけだし 大丈夫だろ
「…どうしたの佳史?アタシ今甘い物なんて食べた くないわよ」
…またコイツは片意地張りやがって…
どうせコイツの事だから
なんて見せられない』とか考えてんだろうな…
「全く…」
「なによ。アタシなら大丈夫よ?結局何もされなか ったし、佳史が助けに来てくれたしね。アタシより 秀吉の方がダメージあったんじゃない?アイツ昔か らメンタルはそんなに強くないからね~。だってア イツは…」
何より無駄にしゃべってんのが何よりの証拠だ
…あんまりこういうのは柄じゃないがな
「……あ…」
「無理すんな」
そう言って優子を抱き寄せて、顔が見えないように 抱く
「お前が昔から秀吉に弱い所を見せないようにして んのは知ってる。外面をよくしようとしてギリギリ まで溜め込むのもな」
「あ……う……」
「何よりお前だって女だろ。あんな事があって怖く ないはずが無いだろうが」
何だかんだ言っても優子も女なんだ。合気が使えて も、関節技が上手くても。
抵抗出来ない状況で知らない男に囲まれて…怖くな いはずが無いんだ
「ここには俺しかいない。無理しないでここで全部 吐き出しちまえ」
「……いいの…?」
「何度も言わすな」
「…うん」
少しずつ、優子の嗚咽が大きくなっていく
「……ホントは…すごく怖かった…ひっく……もう、ひ くっ…助けが来ないって考えて……」
「ああ」
「…でも…秀吉だけは、ひくっ、アタシが…ひっく、 守らないとって…」
「ああ」
「佳史…怖かった……本当に怖かったんだからぁ…!
「泣け泣け…顔は隠しといてやるから…」
「……っく、うわぁぁぁぁぁぁん…」
静かな住宅街の片隅で、ただ優子の泣き声だけが響 いていた
side Hideyoshi
『うわぁぁぁぁぁぁん…』
ワシは結局、姉上が少し心配になって角を曲がった 所で二人を見ておった
するとどうじゃろうか。普段決して弱味を見せない 姉上が、外面をあれだけ気にしておる姉上が、それ を全く気にせず泣きじゃくっておるのじゃ…
『お前が秀吉に弱い所を見せないようにしてんのは 知ってる』 『秀吉を……守らないとって……』
ワシは昔からそうじゃった
幼い頃から姉上に守られ、中学に上がれば佳史や雄 二に守られ…
ワシはいつも、守られておった
…そのせいで、姉上が傷ついていたのにも気付かず に、のうのうとしていたのじゃ
「…ワシは、“ボク”から何一つ変わっておらんのか のう…」
ワシの呟きは、虚しく空に消えていった