「雄二」
「なんだ佳史?」
「明久に聞いたぞ?先週末は楽しんで来たみたいだ な?」
「くっ…明久の野郎…一番隠さなきゃならない奴に 教えやがって…!」
「まぁ、見た感じ霧島がすんげぇ生き生きしてるし …お前もまんざらじゃねぇ顔してるし良かったんじ ゃねぇか?」
「…まぁな」
「相変わらず素直じゃねぇなぁ…自分の気持ちはわ かってんだろうに…」
「ぐぅ…そ、そういうお前はどうなんだよ!」
「ん?」
「お前は木下姉のこと好きなんだろ?」
「さあ?」
「さあ、って…」
「今は自分の事に興味なんてねぇよ…唯が不自由し ないようにするのが第一だ」
「このシスコンが…」
「そういやお前、優勝の時のチケットどうしたんだ ?なんならもう一回行ってきたらいんじゃね?」
「いや、もう友達にやった」
「オイオイ…あんなもん簡単に他人にやるなよ…」
「大丈夫だ。そいつは結婚を最終目的に置いている からな」
「都合がいい奴らもいたもんだな」
「そうだな。上手くいけばみんな幸せだからな」
―――――――
久しぶりの全日休みの朝、ついいつもの習慣で早め に目を覚ますと…
「あれ?もう起きたんだ。早いわね」
俺に馬乗りになった優子がいた
「今日は1日晴れるんだって」
「…らしいな」
いつの間にかついていたテレビで、ちょうど今日の 天気予報をやっていたので、優子の言うことは正し い
…なんか今日の優子の格好…気合い入ってんな。
派手すぎないワンピースに上から軽く羽織るタイプ の薄手の上着。靴もブーツだし、何故かいつもはつ けない香水まで軽くふっている
…コイツはいつもはこんな格好はしない。というか 外に出ない。俺を拉致してそのままゴロゴロするだ けだから基本ジャージとかYシャツ一枚とかそんな んだ
「…とりあえず退け。起きられん」
「仕方ないわね」
つーか何でコイツはここにいる?約束なんざして… ……無い。うん無い(←ちょっと考えた)
そうなると理由は…
「優子、ちょっと窓開けてくれ」
「わかった」
「それから悪いんだが、そっちの俺のケータイとっ てくれねぇか?」
「もう…佳史はしょうがないんだから…」
何も油断せずに窓の真反対にあるケータイを取って 俺の所に渡しにくる優子
そして俺はケータイを取ってから優子の手をとって …
「え?佳史…」
ニコッ
「さっさと出てけ」
巴投げで窓から外に投げた
…二階だし、大丈夫だろ
――――――
ガチャ
「はよー…何が起きた?」
寮の俺の部屋(イケパラのあの部屋が一人分で2つ つながって、間にリビング的な部屋があるのが一室 だと思って下さい)から出ると、将が正座していた
「ああ、おはようございます雑賀くん」
そして何故か佐藤がいた
「ああ、おはよう…じゃねぇよ!何でさも当たり前 のように男子寮にいんの!?」
「将の生活チェックです。おばさんに頼まれました から」
「あ、そーなん?じゃいいや」
「いや、止めてくれよ!?」
いや、俺他人の家庭に踏み込まないタイプなんで
「あれ?優子はどうしたんですか?」
ガシッ
「あれを連れて来たのは貴様か…!」
「えっ?なんで私頭を掴ま痛い痛い痛いたいたいた い!!割れる!真っ二つに割れますから!!」
「………」ガタガタブルブル
約一名隅で震えているが、どうでもいい
「朝から厄介なモン持ち込みやがって…!」
「なんで私怒られてるんですか!?私優子に頼まれ ただけですよ!?」
パキュ!
「………」プラーン
「で?将お前何したの?」
「いや…聖典(エロ本)が見つかって…」
「………」
――――――
「…で?結局何の用だ?」
理由を聞くのを忘れていたので、不本意ながら部屋 に優子を入れる
「何言ってんの?約束したじゃない」
「約束?」
頷いてバッグから一枚の紙を取り出す。なになに…
「『如月グランドパークプレオープンプレミアムチ ケット(後期)』…?」
何だこの嫌な予感しかしない物体は
「…オイ」
「何?」
「こんなモンどうやって手に入れた?」
「親切な人がくれたわ」
「…そうか」
とりあえず、ザリガニの死体の詰め合わせをヤツの 家に送っておこう
「佳史。時間が勿体無いし、早く行くわよ」
「だが断る」
何が悲しくてせっかくの休みに疲れる事をしなきゃ ならないんだ。しかも行けば半強制的に結婚させら れんのがわかってんのに
「…佳史」
「嫌だ」
「大人のデートをするって約束したわよね?」
「してない」
「…わかったわ」
お?珍しく優子が折れた。まぁ、これで今日はゆっ くり…
「じゃあこの婚姻届、出してくるから」
もはや選択肢は無かった
――――――
「………はぁ」
電車とバスに二時間揺られて、来ちまいましたよ。 如月ハイランド
…いくら俺がまだ17で、結婚できない年齢だとして も油断は出来ない。そんな事くらいはあの妖怪婆の 権力でどうにでもなってしまう
「案外遠かったわね~」
心なしか嬉しそうな優子
よし、
「優子」
「何?」
「満足だろ?帰るぞ」
「待たんかい」
全力で腕に抱きついて俺を止める優子サン
あ~…何で今日そんな落ち着いてんだよ~。テンパ ったら適当にはぐらかして帰れんのに
「ほら、ここまで来たんだから文句言わない!唯ち ゃんは今日幼稚園のお泊まり会だから大丈夫よ」
「そういう事じゃねーよ」
むしろ俺が唯の予定を把握してないとでも思ってん のか
「ほら!早く行こ!」
「…はぁ」
俺は一生優子には強く出られない気がする
――――――
「「いらっしゃいませ!如月ハイランドへようこそ !」」
「…何やってんだ?明久に秀吉」
バカ二人が俺達に愛嬌を振りまいて待ち構えていた
「何を言っているのですか?」
「私達は明久とか秀吉とかいう名前ではありません よ?」
あくまでシラをきるつもりか
「あ、玲さんだ」
「南無阿弥陀仏悪霊退散祓いたまえ清めたまえ去れ よ邪神消えよ悪魔…!」
「よく一息でそこまで言えたな」
これで間違いない。コイツは明久だ
「バカだなお前。日本にあの人がいるわけねぇだろ うが」
「ハッ!?なんて巧妙なトリック!」
いや、ちょっと考えればわかるだろ
「佳史。後でその玲さんって誰か…しっぽり聞いて あげるわ」
「お前何する気だ!?」
秀吉にチケットを渡しながらこっちに笑顔を向ける 優子
…ヤベぇ。目が笑ってない
「おお!これは確かにプレミアムチケット!少しお 待ち下さい………一人劇場から元神童と学年首席へ。 例の作戦を進めてくれ。確実に仕留めるのじゃ」
『任務了解』
「オイこらちょっと待て。その会話の真意を教えて もらおうか」
仕留めるってなんだ仕留めるって
「お気になさらず。こっちの話です」
「気にするわ!」
「とにかく、ご案内します」
案内!?ふざけんな!そんな罠とわかっている所に 自分から突っ込んでたまるか!
「いらねぇ」
「そこをなんとか」
「邪魔だ」
「佳史…そんなに二人きりが…」
「ちっがーう!!」
しまった。墓穴った
「そんな事言わずに」
「いらん」
「断ればFクラスにあなたの妹の写真をバラまきま す」
「それだけは勘弁して下さい」
あのハイエナどもなら間違いなく食いついてきやが る!なんて非情な条件を…!
「それではこちらへどうぞ!」
秀吉を先頭に、明久を最後尾に
更に優子が腕に抱きついている状態の俺に逃げ場は 無い
仕方なく、俺はこの悪魔の根城に足を踏み入れて行 った…