アホばっかのバカ達へ~アホメンパラダイス~   作:黒やん

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第54問

「さぁ雄二! 今日も楽しい勉強会を開こうじゃないか!」

 

「なんだ明久、お前普段にも増して気持ち悪いぞ」

 

玲さんの処分を終え、身動きをとれなくした優子を木下家に郵送した次の日。やはりと言うべきか、明久は懲りずに今日も勉強会を開こうとしていた。

 

「俺が疲れるから勘弁してほしいんだが……」

 

「だったら僕の家以外でやればいいじゃないか。僕だって家にいたら姉さんに減点されるし……」

 

この減点というのが今回の玲さんの目的らしい。明久に一人暮らしさせて大丈夫なのかどうかを明久の母さんから頼まれたんだとか。

……なんとなく何だかんだ理由付けて残ろうとする気がするが。

 

「ほら、雄二の家とか「断る」なんで!?」

 

「うちに来たところで勉強にならねぇよ。俺のおふくろをナメるな。気付いたら来た奴全員病院送りでもおかしくねぇ」

 

「雄二、キミは普段一体どんな生活を送ってるのさ……?」

 

「まぁ、雪乃さんだしな……」

 

「誰? その人?」

 

「雄二の母さん」

 

「お主ら、おはようじゃ」

「……何の話だ?」

 

そんな話をしていると、秀吉と康太が合流してくる。少し遅れて美波と瑞希も合流した。

 

「あ、そうだムッツリーニ。今日ムッツリーニの家って行っても大丈夫?」

 

「……今日は上の兄が飲み会をするらしい」

 

「じゃあ厳しいか……」

 

「美波とか瑞希はどうだ?」

 

「ウチもちょっと……」

「いきなり言われると困っちゃいます……。お掃除もできてませんし……」

 

まぁ、女子組みには駄目元で聞いただけだからいいとして。これは本格的に場所がないかもな。ついでに言えば俺の部屋も無理だ。学生寮だし、流石にこの人数は入らない。

 

「じゃあ秀吉の家は?」

 

「ワシか?」

 

もはや嫌な予感しかしないのは何でだろう。

 

「ふむ……姉上に聞いてみんとわからんが……」

 

「待て。何故そこで優子の名前が出てくる」

 

「まぁその辺りは佳史を木下姉に献上すれば解決するだろ」

 

「……ああ、霧島か? 実は今雄二が「そぉぉぉぉい!?」」

 

雄二の手が俺の携帯を弾く。更に腹立たしいことに弾かれた携帯はきれいに雄二の手元に収まった。

 

「何しやがる」

 

「こっちのセリフだ!? お前俺の人生を何だと思ってやがる!?」

 

「……………………喜劇?」

 

「散々悩んで出た結論がそれか……!」

 

むしろ考えたことに感謝してほしいくらいだ。

その間に今日の勉強会が木下家で開催させることが決まってしまっていたしな。雄二ごときをからかってる場合じゃなかったか……。

 

「……あ、そうだ。何かFクラスの副担任に先生がくるみたいよ?」

 

「副担?」

「そんなのいたっけ?」

 

……何故か穏やかな笑顔の眼鏡で初老な社会科教員の顔が浮かんでくるのは気のせいだろうか。

 

「……数学の船越が婚活休暇をもぎ取ったらしい」

 

「とうとう休み取ってまでやらかしたか……」

 

ちなみに明久の近所のお兄さん(無職)には初対面で振られたらしい。哀れである。

 

「ということは数学教員じゃな」

 

「ババァ長もいきなりFクラス担当なんざ酷なことをしやがるぜ」

 

「全くだ」

 

「あはは……流石に、この学校に慣れてないと厳しいかもしれませんね」

 

「違うわ瑞希。間違いなく胃に穴が開くわよ」

 

そんな自虐とも取れる話題で笑っていると、いつも通り予鈴ぴったりのタイミングで鉄人が入ってくる。

 

「おはようお前ら。今日は少し早いがSHRを始める。……この場合何と言えばいいのかわからんが、船越先生が有給を取られた。なので、今回新しく迎えた先生がこのクラスの副担任になる。くれぐれも困らせるようなことをしないように!」

 

「はい!」

 

「なんだ須川」

 

「女性教師ですか!? 年は!?」

 

「28才男性だが?」

 

『『んだよやってらんねー』』

 

新任教師が男だとわかった瞬間に一気にくでーっと体勢を崩すバカ共。あっちこっちで新任教師に対する興味をなくしたのがまるわかりなだらけ具合が見える。……あ、鉄人のこめかみに青筋が。

 

「静かにせんか!!」

 

鉄人の怒号に一気に教室が静まり返る。ここまではいつも通りだが……。

 

「全く貴様らは……それでは、北浜先生」

 

立て付けの悪い戸が開かれようとして……一回引っ掛かる。ガタガタ動かしてようやく開いた戸を通って来た新任教師の顔は少し恥ずかしさで紅潮していた。

その教師は最前列の涼しい場所にいた瑞希の鞄からはみ出ていたお菓子(危)を即座に取り出し、教壇の上に叩き付けた。

 

「北浜昇だ。私は、勉学の出来ない奴にこのような遊びを許すほど寛容ではない」

 

『『姫路さんのお菓子……だと……!?』』

 

せめてちょっとくらい聞いてやれよ。あんだけ格好つけてるんだから。ほら、何かプルプル震えて怒りを抑えてるし。

しかし、どうにも奴は鉄人とは合わないみたいだな。あの鉄人が北浜を見て若干眉をしかめてやがる。

 

そして北浜は再び教壇に出席簿を叩き付けると、つかつかと明久と雄二の前に出る。

 

「お前達が吉井明久と坂本雄二か?」

 

「え? そうですけど」

「アンタ来たばかりなのによく知ってるんスね」

 

「……この学園での問題児と呼ばれる輩には一通りチェックを入れているものでね。もちろんお前達のこともブラックリストに入れさせてもらっている」

 

「そりゃ光栄なこった」

 

雄二のあからさまな反抗心と皮肉に、北浜は眉をしかめる。雄二は雄二でこういう外聞やら見た目やらで決めつける奴が嫌いだから仕方ないが、北浜は北浜で無駄に敵視してやがるな。……また面倒な奴が。

ちなみに明久は皮肉の応酬に着いていけなくて処理落ちしてる。

 

「教室の壁の破壊、教師への暴言、新学期早々無駄な騒ぎを起こす無計画さ。挙げ句の果てに学年男子を煽動しての覗き。……正直、お前達が退学処分に合っていないのが不思議なくらいだ。はっきり言ってやろう、私はお前達に一切の期待を「北浜先生。授業がありますのでこの辺りで」……わかりました」

 

つらつらと明久達が仕出かしたことを挙げていく北浜。半ば本当のことであるために言い訳しにくいが、コイツはその裏の事情をしっているのか。

試召戦争と壁の破壊はクラスメイトのため。教師への暴言と言っても鉄人を鉄人と呼ぶくらいだ。覗き騒ぎは大体清水のせいだし、とやかく言われそうなことは多々あるものの、全てが全てコイツら自身のためではない。

 

まぁ、長々と考えたものだが、簡単にまとめてしまおう。

 

「……いいか、私の目の黒い内は問題には厳しく当たる。今までのような勝手な振る舞いが許されるとは思わないことだ」

 

俺は北浜のような大人が一番嫌いだ。それはそれとして……

 

『姫路さんのお菓子!』

『二千!!』

『三千!!』

『三千五百!!』

 

『甘いぞお前ら……五千だ!!』

『『なにぃ!?』』

 

とりあえず、バカの統制はしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、終わったー……」

「疲れたのじゃ……」

 

そのまま一日の授業が終わる。明久や康太、秀吉といった勉強嫌い達は卓袱台の上でぐでっとたれている。ちなみに今朝の哀れな犠牲者は福村だと言っておく。家に帰ってからゆっくりと噛み締めて味わうんだそうだ。福村の冥福を祈る。

 

「おいおい、今から勉強会するんだろう? そんなんで大丈夫かよ」

 

「問題ないよ雄二。僕は姉さんにマイナス点をされないためならどんな苦労でもしてみせるさ……ゲームのために!」

 

「欲望に素直じゃのぅ」

「明久だからな」

 

「んじゃ、早く木下姉に許可を目が焼けるように痛えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「……雄二。浮気は許さない」

「何で木下姉の名前を出しただけでそうなるんだ!?」

「……しかもよりにもよって優子だなんて……!!」

「話を聞けよ!?」

 

そんな風に談笑していると、いつものように霧島が流れるような動作で雄二とじゃれあい始める。それに連鎖するように俺の首に手が回され、軽い衝撃が背中に当たる。

 

「佳史、帰るわよ!」

「離れろ暑苦しい」

「そんなに照れなくてもいいのにぃ」

「リアルに暑いんだよアホ」

 

Fクラスなめんな。座ってるだけで蒸し風呂状態だぞ。

 

「姉上、ちょうどよいところに来たのう」

 

「ん? どうしたの秀吉? アタシの服なら貸さないわよ?」

 

「さもワシが日常的に姉上の服を着ているかのような言い方は止めてくれんか!?」

 

冗談よ、と言いながら、優子が俺の肩にぶら下がり、俺の顔の横から顔を出す。

 

「それで、みんな揃ってどうしたの?」

 

「実は、秀吉と木下さんの家で勉強会をしたいんだけど……」

 

「いいわよ」

『『即答!?』』

 

物凄くあっさり許可が降りる。それと同時に物凄く嫌な予感もするのは気のせいだろうか。

 

「お前な……優香さんに許可は取らなくていいのか?」

 

ちなみに優香さんとは秀吉と優子の母親だ。二児の母のはずだが、見た目が大学生から変化しない、店長と雄二の母親の雪乃さんに並ぶ不思議な生物である。

その見た目のせいかおばさんと呼ぶとボコボコにされるため、俺は優香さんと呼んでいる。

 

「あの母さんがそんなの気にすると思う? 夕飯の用意が大変ね、くらいで流すわよ」

 

「……確かに」

 

「よし、じゃあ行くぞー」

 

いつの間にか復活した雄二の号令一下、全員が秀吉の背中に続く。……なるほど。嫌な予感はこれか。

 

「じゃあお前ら頑張れよー」

 

「そう言えば唯ちゃんが佳史に会いたがってたなー」

 

「仕方ねぇなお前ら、今日は厳しく行くから覚悟しとけよ」

 

「……自分で言っておいてなんだけど、ちょっとへこむわね……」

 

「……優子、ファイト」

「木下さんも大変ですね……」

 

そんなこんなで、俺達は木下家に向かうのであった。

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