ラスト・ナンバー 101人目のアタシ『最高に美味しいイチゴのケーキのプレゼント!』(2022年式波・アスカ・ラングレーの誕生日記念LAS短編)   作:朝陽晴空

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 新劇世界のアスカと学園世界のアスカが同居する事になる話。
 タイトルのネタ元は『同棲同盟』から拝借しました。
 
 ※リメイク版となるように、同居しているアスカを式波・アスカ・ラングレーに変えてみる試みをしました。
 LAAS版は2月23日になると思います。


LASの日短編 同棲同名 She saw編(式波リメイク版)

 早朝の葛城家のキッチンで、早起きしたシンジは自分とアスカとミサトの分のお弁当、そして朝食を作っている。

 そこまでは葛城家のいつもと変わらない日常の光景だった。

 

「うぁぁぁぁっ!」

 

 シンジの料理の音以外は物音のしなかった、静かな葛城家にアスカの悲鳴が響き渡った。

 

「どうしたの、アスカ!?」

 

 シンジがアスカの部屋に駆けつけると、そこには何とアスカが2人居た。

 片方の(式波)アスカはシンジがいつも見慣れたキャミソールに赤と白のストライプのショーツを着ている。

 もう片方のアスカは、サルのキャラクターが模様となっている子供っぽいパジャマを着たアスカだった。

 

「アンタの製造番号は? アタシ以外のクローン素体は廃棄されたはずよ?」

「はぁ!? 何言ってるの? 世界には似た顔の人間が三人居るって話だけど、あんたSFアニメの見過ぎで頭がおかしくなっているんじゃないの?」

 

 式波アスカの方は脂汗を流して、突然現れたアスカを睨みつけている。

 もう片方のヘッドセットを頭に着けていないパジャマアスカは式波アスカを変なヤツだと呆れて見下しているようだった。

 

「もしかして、アタシのオリジナル!? アタシを消しに来たのね!」

 

 恐怖に駆られて冷静さを失った式波アスカは、もう一人のアスカにタックルして押し倒すと、馬乗りになって両手で首を絞め始めた。

 

「せっかくアタシが一番になったのに! 返り討ちにしてやる!」

「く、苦しい……助けて……シンジ」

 

 首を絞められているアスカが苦し気にシンジに向かって手を伸ばすと、シンジは全力で式波アスカに体当たりした。

 シンジの渾身のタックルで式波アスカの両手はアスカの首から離れた。

 思い切り咳き込むアスカ。

 

「シンジ、アタシの邪魔をする気?」

「何が原因か分からないけど、アスカが誰かを傷つける事なんてさせられないよ!」

 

 シンジはパジャマ姿のアスカを庇うように立ち塞がると、アスカに声を掛けた。

 

「君の名前は?」

「惣流・アスカ・ラングレー。アタシの事、分からないのバカシンジ?」

 

 シンジに名前を尋ねられたパジャマ姿の惣流アスカは、青い目を泳がせるほど動揺した。

 

「君がアスカだって事は分かるんだけど……」

「惣流!? やっぱりアンタはアタシのオリジナルじゃないの!」

 

 式波アスカが惣流アスカに危害を加えようとするのを、シンジは身体を張って守った。

 アスカの部屋のドアが開いたまま、こんなにドタバタと騒いでいれば、ちゃんとドアを閉めないで寝てしまっていたミサトも物音に気が付いて目が覚める。

 お腹をボリボリとかきながらミサトはアスカの部屋へと向かう。

 

「朝から寝床で運動会なんて、ハッスルし過ぎよ二人と……も……」

 

 冗談を言いながらアスカの部屋の中を覗き込んだミサトは言葉を失った。

 部屋の中にはアスカが2人も居たからだ。

 

「あたし、まだ酔っているのかしら。アスカが二人に見えるんだけど」

「事実なんですよミサトさん! 式波を止めて下さい!」

 

 シンジの叫びに状況を把握したミサトは、式波アスカを取り押さえた。

 これでやっと落ち着いて話が出来る。

 

「何でミサトが朝からあたしの家に居るの? それにママとパパは?」

 

 惣流アスカが発した第一声を聞いて、ミサトは「オリジナルのアスカ」とは違うと直感した。

 式波アスカのようなクローン素体が他に存在するとも、いきなりアスカの寝室に侵入できるとも思えない。

 

「アスカ、あなたの話を聞かせて? ご両親の事とか、シンジ君の事とか」

 

 ミサトに促されて、惣流アスカは心細い表情をしながらも、自分の置かれていた環境について話し始めた。

 惣流アスカとシンジの両親は健在で、家はコンフォート17の隣同士で家族ぐるみの付き合いをしている事。

 ミサトやリツコたちはアスカたちの通う中学校の教師。

 惣流アスカはシンジが寝坊して学校に遅刻しないように起こしに行ってあげている。

 自分が服装の乱れを直したり、世話を焼いてやっている幼馴染の腐れ縁のバカシンジだと惣流アスカは話した。

 そしていつものように寝て起きたら、自分とそっくりな姿の悪魔に襲われたのだと身体を震わせながら話したのだった。

 

「母さんが生きていて、僕がアスカに世話を焼いてもらっている、そんな幸せな世界があるんだ……」

 

 シンジは惣流アスカの話を聞いて、目を潤ませていた。

 

「フン、何を泣いているのよ、ガキシンジ」

 

 式波アスカは惣流アスカの話を聞いても、感傷は湧かなかった。

 両親の事など、考えた事も無かった。

 

「とりあえず、同じアスカだと区別が付かないから、バカアスカとガキアスカで……」

「「却下」」

 

 式波と惣流の意見は一致して、ミサトの案は却下され、式波と惣流で区別する事になった。

 

「私の考えだと、並行世界の惣流がこの世界の片隅に迷い込んでしまったって所ね」

「並行世界なんて、科学的に証明されていない話じゃない」

 

 式波アスカは呆れた顔でそう呟いた。

 まだ式波アスカは惣流アスカが自分への脅威になるのではないかと疑っている。

 脅威と言えば……式波アスカは惣流アスカのふっくらとした胸囲や二の腕の筋肉の付き方を見て、一般人とほとんど変わらないと観察していた。

 これならば幼い頃から格闘訓練を受けた自分なら襲われても返り討ちに出来ると式波アスカは惣流アスカを直ぐに排除する考えを止めた。

 動揺が収まっても大きな不安を抱えているのは惣流アスカの方だった。

 同じ部屋に居る三人は姿形は知っていても、惣流アスカにとっては別人だ。

 特に式波アスカは血走った眼をして本気で自分の首を絞めて殺そうとした。

 今は落ち着いているようだが、見つめられただけで恐怖が蘇って来る。

 

「式波、惣流さんを安心させるためにも、もう乱暴な事をしないと約束しなよ」

「分かったわよ、シンジ」

 

 その様子を見て、惣流アスカは式波アスカがこの世界のシンジの事を好いているのだなと思った。

 式波アスカに向かってキリッとした表情で意見を言えるシンジも自分の知っている頼りないシンジとは違う。

 きっとここに居るミサトも自分の知っている陽気な体育教師のミサト先生とは違うんだろうなと思うと、惣流アスカは自分が世界で独りになってしまったのだと急に胸が締め付けられる思いがした。

 さらに毎日当たり前のように顔を合わせていた愛しい母親が居ないと悟ると、惣流アスカの涙腺のダムは崩壊を迎えた。

 

「ママ……」

 

 そう呟いて涙を流す惣流アスカを、シンジとミサトは同情に満ちた視線で見つめた。

 

「この泣き虫、アタシと同じ顔をしているのに泣かれると、気分が悪いんだけど!」

「式波、惣流は突然独りになって心細いんだ。君にだってわかるだろう?」

「アタシは元から独りだったわよ……」

 

 シンジに窘められた式波アスカは顔を背けて部屋から出て行った。

 ミサトとシンジは式波アスカの事も気になったが、惣流アスカをフォローする方が先だと思った。

 

「惣流ちゃん、安心して。私はどんな事があってもあなたの味方だから」

 

 ミサトがそう言って惣流アスカを抱き締めると、アスカの嗚咽は収まった。

 

「僕も惣流さんの助けになりたいと思っているからさ」

 

 シンジが惣流アスカに笑顔でそう言うと、惣流アスカは顔を赤らめてはにかんだ笑顔を見せた。

 幼馴染のバカシンジがこんなに頼もしい表情を見せた事は無いと思ったからだ。

 でもこのシンジは『あたし』の『バカシンジ』じゃない。

 『アイツ』の『ガキシンジ』なんだと惣流アスカは自分に言い聞かせて、シンジに寄りかかるのは止めた。

 

「二人にお姫様みたいに扱われて、惣流さんは良い御身分ね」

 

 式波アスカは部屋の外から惣流アスカに向かって皮肉を言い放った。

 

「式波ちゃんがヤキモチ焼いちゃってるわね」

「安心しなさい、あんたのシンジは寝取ったりしないから」

「何を言ってくれちゃってんのよ!」

 

 ミサトと惣流アスカがニヤケ顔でそう言うと、式波アスカはツンとして顔を反らした。

 このままアスカの部屋に居ても仕方が無いと、ミサトたちもリビングに出る事にした。

 式波アスカ、シンジ、ミサト、惣流アスカの順番でリビングのソファに座る。

 ミサトが両足を伸ばして寝れるだけの大きさのソファを選んだ事もあって、四人で座る事が出来た。

 

「それでミサト、これから惣流をどうするつもりなの? ネルフにバレたら大事になるわよ」

 

 式波アスカが単刀直入に問題提起をした。

 気に入らないとは口では言いながらも惣流アスカの事を心配はしているらしい。

 

「多分、式波ちゃんが思ったように、オリジナルのアスカだと思って混乱を起こすでしょうね。別世界から来た惣流ちゃんだと納得させられたとしても、ただで済むとは思えない」

 

 ミサトはゲンドウならば予備のパイロットとして隣に居る惣流アスカを利用するかもしれないと思った。

 

「あたし、モルモットにされるなんて嫌よ!」

 

 惣流アスカはグッと腕に力を込めてミサトにすがり付いた。

 

「それじゃあ惣流さんをずっとこのままこの家に匿うしかないんですか?」

 

 3LDKの間取りの葛城家の空間だけが世界の全て。

 朝陽を浴びなければ人間はおかしくなってしまう。

 シンジにはそんな惣流アスカが哀れすぎると思った。

 

「うーん、加持に頼んでネルフの目の届かない場所に逃してもらうか……」

 

 リョウジは戦略自衛隊の少年兵、霧島マナを死亡した事にして逃亡させた実績がある。

 もっとも、ネルフも戦略自衛隊も利用価値の無くなったマナを必死に探さなくなっただけで現在も発見されていないだけなのだが。

 

「姑息な一時しのぎの手だけど、いい方法があるわ。アタシと惣流が入れ替われば、惣流は外に出れるじゃない」

「式波、あんたそれで良いの?」

 

 式波アスカの提案に、惣流アスカは驚いて尋ねた。

 そんな事をするメリットが式波アスカには一つも無い。

 

「別にアタシは部屋でGUNPEIをして暇潰しをするだけだし。アンタが陽の光を浴びないもやしっ子になっても気持ち悪いだけよ」

「ありがと、式波!」

 

 惣流アスカはそう言うと、笑顔で式波アスカに飛び付いた。

 

「ちょっと、急に抱き付くな! ついでに胸を揉むんじゃないっ!」

 

 式波アスカが好意を示した事によって、惣流アスカは恐怖心を完全に吹き飛ばしたようだ。

 そして式波アスカも妹の様に慕ってくる惣流アスカへの警戒心を完全に解いたようだった。

 

「シンジ君、これから美少女三人と同居できるなんて、バラ色の人生じゃない?」

「二人の間違いじゃないですか?」

 

 シンジがミサトにツッコミを入れると、四人は声を上げて笑っていた。

 その後式波と惣流の二人のアスカは一緒にお風呂に入り、寝る時も手を繋いで身体を密着させて寝ていた。

 

「おはよう、シー!」

「おはよ、ソー!」

 

 朝起きると、式波アスカと惣流アスカはお互いにそう呼び合っていた。

 今日から新しい生活の始まりだ。

 シンジは惣流アスカを案内するために外に出る。

 まずはこの世界に慣れる事から始めなければならない。

 

「外では惣流さんじゃなくて、アスカと呼ばないといけないね」

「シー(式波)とシンジは学校では仲が良かったの?」

「まぁ……最初は式波も孤立していたけど、今はクラスに馴染んでいるよ」

「じゃあ、ヒカリと呼んでも問題は無さそうね」

 

 シンジと惣流アスカは並んで歩いていたが、ふと気が付いた惣流アスカはシンジに尋ねた。

 

「シーとシンジは、普段手を繋いで歩いて居たり、キスとか経験済みだったりするのかしら」

「そこまでの関係じゃないよ。手を繋いで歩いたりしたら変に思われるし、キスはした事ない」

「そっか、あたしたちの関係と同じね」

「アスカも元の世界ではそうだったんだね」

「うん、あたしとシンジは幼馴染。ずっと今まで一緒だったから……」

 

 シンジから離れてみて、惣流アスカは幼馴染のシンジが好きだったと実感した。

 式波アスカにはこの世界のシンジには手を出さないと誓ったが、このままだとシンジを好きになってしまうかもしれない。

 しかし双子の様に仲良くなった式波アスカからシンジを奪う事は絶対にしたくない。

 惣流アスカがエヴァに乗せられそうになった場合は式波アスカと入れ替わる作戦になっているが、そんな綱渡りのような事が上手く行くだろうか。

 惣流アスカが元居た世界に戻れる可能性はオーナインの確率の奇跡だ。

 それでも彼女は未来を見た。




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