ラスト・ナンバー 101人目のアタシ『最高に美味しいイチゴのケーキのプレゼント!』(2022年式波・アスカ・ラングレーの誕生日記念LAS短編)   作:朝陽晴空

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今年はアスカはシンジにチョコを渡さない!?
周囲を欺くためにアスカが考えた、たった一つの冴えたやり方!

※自作品『アスカ・ブライト』の「ワーストキス」が発想元となっています。
https://syosetu.org/novel/263733/


チョコはアスカの味がした

「君はネルフに多大な損害を与えたのだぞ、分かっているのかね!」

「すみません、すみません!」

 

 ネルフの副司令、冬月コウゾウは経理担当者を叱った。

 インターネットバンキングの振込先の企業を間違えてしまったり、職員の給与を0を1桁多く入力してしまったりしたからである。

 総司令のゲンドウは「問題ない」か「Fire!(解雇!)」の二択しかないのでこうしてコウゾウは小言を言っている。

 

「次! 実験に事故は付き物だが、使用する薬品を間違えるとはなんと言う事だ。有毒ガスや爆発の危険性があると常に最新のミスを払うべきだ」

「はい、誠に申し訳ございません」

 

 化学実験室をしばらくの間使用不能にしてしまった研究者は平謝りした。

 

「君の書いた書類には何ヵ所も不備があったそうだな。持続化給付金の期限が迫っているのだぞ、しっかりしたまえ!」

「死んでお詫びします」

「ではクビにするからに勝手にネルフに関係の無いところで死にたまえ」

「え……」

 

 ブチ切れたコウゾウにそう言われたアサヒ課長は言葉を失った。

 親の七光りで入った大した仕事の出来ない社員など要らないと本音が出てしまった。

 

「まったく、最近の若い者はどうしてしまったのだ、たるんでいるぞ」

 

 副司令であるコウゾウは、ネルフのスタッフ達にミスが頻発している事に憤慨していた。

 特に若い男性の職員は上の空で仕事をしているようだ。

 ネルフ施設を見回っていたコウゾウは、物陰でミサトとリョウジが抱き合っているのを目撃した。

 顔を赤らめているマヤが手を繋いでシゲルと親しそうに話している。

 剣崎キョウヤと加賀ヒトミも仕事をしながらもチラチラと視線を交差させているようにコウゾウには思えた。

 エヴァンゲリオンの起動実験の様子を視察すると、レイとカヲル、アスカとシンジも恋仲になっているかのように見える。

 新しいパイロットとなったトウジも、美味しそうにヒカリの手作り弁当を食べている。

 難しい顔をしたコウゾウは、ゲンドウの部屋の居る司令室へと向かった。

 

「最近ネルフの風紀が乱れている。異性交遊を禁止するべきではないのか?」

「パイロットのシンクロ率は安定して上がっている。問題はないだろう」

 

 ゲンドウが表情を変えずにそう答えると、

 

「他の部分で問題が起きているから進言しているんだ、とにかく異性交遊を禁止するぞ、良いな!」

「先生にそこまで強く言われては仕方ありません」

 

 ゲンドウの了解を得たコウゾウは、第三新東京市に緊急事態宣言を発令した。

 その内容は、『2月中のチョコレートの販売禁止』。

 バレンタインデーがあるから、浮ついた気分になるのだ。

 この緊急事態宣言に真っ先に悲鳴を上げたのは、チョコレートを売っている小売業者だった。

 

「冬月さん、自分へのご褒美チョコまで禁止にするなんて、商売あがったりですよ」

「ご褒美チョコ? そんなものがあるのか」

 

 業者から話を聞いたコウゾウは感心した様子だったが、それでもチョコレートの販売を禁止した。

 その代わり、チョコレートの販売業者には持続化給付金を一律200万円出すと約束した。

 さらにコウゾウはシンジとアスカを呼び出すと、バレンタインデーにチョコレートを渡さないように釘を刺した。

 

「アタシがバカシンジにチョコを渡すはずないじゃないですか!」

「去年は渡していたと聞いているぞ」

「あれは『慈悲チョコ』です!」

 

 義理でもないのか、とシンジはアスカの言葉を聞いて落ち込んだ。

 

「とにかく、チョコを渡すなどの異性交遊をしたら君達二人の同居は解消してもらう。私は不純異性交遊交際をさせるために君達の同居を認めたわけではない」

 

 初号機と弐号機のユニゾンで使徒を倒した時は、発令所であんな可愛い顔をして喜んでいたのに大人気ないとミサトは今は厳しい表情のコウゾウを見て思った。

 ミサトもこの場で副司令のコウゾウに反論せずに、粛々と命令に従った。

 

「ミサトさん……」

「ミサト……」

 

 コウゾウが去った後、某消費者金融会社のCMに出て来る犬と猫のようにすがるような目をして自分を見上げて来るシンジとアスカに、ミサトは笑顔で答えた。

 

「大丈夫、あたしに『パルチザン作戦』があるから」

 

 ミサトは二人に向かって自信満々に親指を立てた。

 

 

 

「どうしよう、突然チョコレートが販売禁止になるなんて……」

 

 戸惑ったのは第三新東京市に暮らす乙女(等)たち。

 しかしコウゾウのバレンタインデー対策にも穴があった。

 チョコレート自体の販売は禁止されたが、チョコレートの材料の販売は禁止されていなかった。

 たくましい彼女たちは、カカオ豆+砂糖=チョコレートで真の手作りチョコレートを作ろうと奮起したのだ。

 

「こうなったら、洞木さんの家に集まってチョコレートを作りましょう!」

 

 マナやマユミ、レイやマリが気勢を上げる中、アスカは冷めた表情で、

 

「アタシはパス」

 

と答えるのだった。

 驚いて心配するヒカリにレイが事情を話すと、マナたちはアスカに同情しながらも、これはチャンスだとほくそ笑んだ。

 ヒカリの家のキッチンに生カカオ豆を持ち寄ったマナたちは、ボウルに生カカオ豆を入れてコメを研ぐように洗い始めた。

 この時点で、チョコレートの匂い漂っている。

 

「もう、どれだけ洗えば綺麗になるのよ!」

 

 キレそうになるマナをマリがどうどうとなだめながら、何とか生カカオ豆を洗う水が濁らなくなった。

 水気をとった後は、生カカオ豆をフライパンに乗せてゆっくりと熱を通した。

 焦げないように気を付けながら20分ほど火を通すと、カカオ豆からパリパリと音がし始めた。

 

「良い感じに豆が焙煎して来たみたいね」

 

 ヒカリが太鼓判を押すと、マナたちにも笑顔が広がった。

 しかし今度はカカオ豆の皮を剝くという手間のかかる作業が待っていた。

 

「にゃ~あっ! あたしってば、こういうチマチマした作業は苦手だよ」

「丁寧にやらないと、殻がチョコレートに入ってザラザラしちゃうわよ」

 

 頭をかきむしって叫び声をあげるマリを、ヒカリがなだめた。

 そんな中、黙々と機械のように正確に殻を剥いて行くレイ。

 

「レイちゃんなら、『良い子の無人島無料生活』でも『チネリ米』が作れるかもしれないね!」

 

 マリは感心した様子でそう呟いた。

 

「チネリ米? どこの国のお米なの?」

 

 レイは不思議そうな顔をしてマリに尋ねた。

 

「小麦粉から作るお米だよ」

「小麦とコメは違う植物だわ。何を言っているの、真希波さん?」

 

 手が止まってしまったレイにマリは今度作り方を教えると約束して作業を再開させた。

 カカオ豆を全て剥き終わったヒカリたちはすり鉢に入れた。

 後は滑らかになるまでカカオ豆をすりこぎですりつぶして行くのだが、この作業も大変だった。

 

「おのれカカオット! 貴様のしぶとさには反吐が出るぜ!」

 

 マリがアニメ風の愚痴を零すほどすりつぶし作業は難航した。

 1時間ほどすりこぎですりつぶしても、豆の形は残っていた。

 

「体力勝負ならあたしに任せて! 戦略自衛隊で鍛えているから!」

 

 マナはつい口を滑らせて自分が戦略自衛隊のスパイであると漏らしてしまったが、マリたちは聞かなかった事にしてあげた。

 それからさらに2時間ほどすりつぶすと、やっとカカオ豆が潰れてねっとりとしてきた。

 豆がペースト状になったところで、お湯を張った鍋にすり鉢を入れて湯煎を始める。

 

「決してお湯をすり鉢の中に入れないでね」

「イエッサー、洞木軍曹!」

 

 マリが慎重にすりこぎをすり鉢の中で動かした。

 温まった豆ペーストがトロトロになり、チョコレートのようになって来た。

 部屋はカカオの発するチョコレートの匂いで満たされる。

 

「さあて、ここでいよいよお砂糖の投入だね!」

 

 マナはすり鉢からあふれそうになるくらいこんもりと砂糖をぶち込んだ。

 

「こんなにお砂糖を入れちゃって、大丈夫かな」

「だって、甘くなきゃチョコレートじゃないもん!」

 

 心配そうな顔をするヒカリに、マナはそう答えた。

 

「大丈夫、霧島さんが入れた砂糖の量は許容範囲内よ」

 

 レイが落ち着いた声でそう言うと、ヒカリも安堵の表情になった。

 さてさて、ここからが大変だ。

 今度は砂糖とカカオ豆ペーストを滑らかになるまで混ぜ込まないといけない。

 粒々感があってはチョコレートは台無しだ。

 洞木家に集まった五人の美少女戦士たちは力を合わせて8時間もゴリゴリとすりこぎを回し続けた。

 

「もうゴリゴリは懲り懲りだよ。本当にチネリ米を作るのと同じくらい時間が掛かったニャ」

「そう……チネリ米も作るのに時間が掛かるのね」

 

 マリが肩を回してぼやくと、レイは納得した表情でそう呟いた。

 まさか手作りチョコレートがここまで肉体労働だとは誰も予想していなかった。

 トロトロになったチョコレートの素を型に流し込む。

 今度はこれを冷蔵庫で数時間冷やさなければならない。

 洞木家では泊まり込みのチョコレート合宿となってしまった。

 使徒も空気を読んでくれたようで、姿を現す事は無かった。

 こんなクタクタの状態でエヴァに乗ったら、冬月はバレンタインデーの存在を完全に消すだろうとマリは思った。

 冷蔵庫でチョコレートを冷やしている間、マリたちは洞木姉妹の寝具を間借りして睡眠をとる。

 チョコレートが第三新東京市から消えて困っていたのはヒカリの姉妹も同じだった。

 来年も緊急事態宣言が発令されたら暴動が起こるだろう。

 

「おっ、良い感じになってるじゃん♪」

 

 型からチョコレートを取り出したマリたちは、試食用のチョコの欠片を口に含んだ。

 

「苦~いっ! あんなに砂糖を入れたのに、苦さの方が勝ってる!」

「そりゃあ、砂糖以外はカカオ100%だからねぇ……」

 

 マナの悲鳴に、マリも渋そうな顔をして同意した。

 市販のチョコに比べて超ビターなチョコレートだった。

 眠気も一気に吹っ飛んでしまうほどだった。

 

「それに、ジャリジャリとしているわね。まだすりこぎが足らなかったのかも……」

「そんなの、黄色と黒のドリンクを飲まないとやってられないにゃ~あっ!」

 

 ヒカリが眉間にしわを寄せて手作りチョコレートをそう評価すると、マリは両手を上にあげて降参のポーズを取った。

 

「あの……これを使えば良かったんじゃないかしら」

 

 マユミがそう言って指差したのは、コーヒー豆用の電動ミルだった。

 

「早く言ってよぉ~!」

 

 名刺交換CMのモノマネのようにマリはマユミに向かって叫ぶと、膝を折った。

 

「だからアスカは私たちと一緒にチョコを作ろうとしなかったのかしら……」

 

 この調子では、第三新東京市ではみんな苦い手作りチョコを作っているのだろうとヒカリは思った。

 

 

 

 コウゾウはゲンドウの司令室で自分の作戦の成果を誇らしげに話していた。

 

「碇、これでネルフのスタッフたちもバレンタインデーの事など気にせず、作業に集中できる。そうは思わんか?」

 

 ゲンドウは黙ったまま返事をしない。

 

「ユイ君が居ない今となっては、お前にバレンタインデーのチョコを渡す者など居ない。去年もそうだったろう?」

「……先生も同じでは無いですか」

 

 コウゾウの言葉が胸に刺さったのか、ゲンドウはそう言い返した。

 

「失礼します、冬月副司令宛てに荷物が届いています」

 

 諜報部の人間が小包を持って司令室へと入って来た。

 

「冬月先生の命を狙った爆弾では無いですか? 先生はえげつない外交で恨みを買っていそうですからね」

「それもみなネルフのためだろう」

 

 皮肉を言って笑うゲンドウに、コウゾウは嫌悪感をあらわにした。

 この自分に敬意を払わない男は好きになれんな、とコウゾウは思った。

 

「荷物の安全性は既に確認済みです。それで中身は恐らく……」

 

 諜報部の人間はそこまで言うと言葉を濁した。

 危険性が無いか確かめるために成分分析なども行ったのだろう。

 差出人が不明だと言うのが気にかかったが、開けてみない事には始まらない。

 小包の外装をはがすと、中から綺麗にラッピングされたリボン付きの箱が姿を現した。

 

「これは……もしや……」

 

 コウゾウが震える手で箱を開けると、中に入っていたのは、紛う事無き手作りのハート形のチョコレートだった。

 さらに『I LOVE KOUZOU(ハート)』と文字まで刻まれていた。

 

「ふぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

 

 ネルフにN2爆弾を落とされたとしても、コウゾウはこんな悲鳴を上げて跳び上がったりしないだろう。

 その姿を見たゲンドウは声を上げて大爆笑した。 

 

「冬月先生、手紙が入っていますよ」

 

 ゲンドウがクックックと喉を鳴らしながら手紙を渡すと、整った綺麗な文字でコウゾウを慕っている内容の言葉が綴られていた。

 これは義理でもない、真心のこもった本命のチョコレートだとコウゾウは感じた。

 しかしコウゾウはこの手紙に違和感を覚えた。

 ネルフでコウゾウを『先生』と呼ぶのはゲンドウしか居ない。

 

「まさか、これはお前の悪ふざけではあるまいな」

「私はここまでするほど先生を愛しては居ません」

 

 確かにゲンドウはコウゾウを大きな仕掛けをしてからかうほど関心を持っていない。

 ゲンドウも何となくコウゾウが好きではない、その程度だ。

 

「さてと、バレンタインデーを自ら禁止した先生なのですから、このチョコレートは受け取れませんね。さらに送った人間を調べあげて処罰するべきです」

「待て! 待ってくれ、お願いだ碇君!」

 

 勝ち誇った風に話すゲンドウに、コウゾウは恥も外聞もなく懇願した。

 動じないように必死にこらえて立っている諜報部の人間に、このチョコレートの送り主を調べるように命じた。

 

「それで冬月先生、異性交遊禁止の件はどうします?」

「今を持って命令を撤回する!」

「バレンタインデー当日に撤回されても、周囲は大迷惑でしょうね」

 

 コウゾウはこの日一年分の恥をかき、ゲンドウは一年分笑ったのだった。

 

 

 

 緊急事態宣言の解除が第三新東京市に伝えられたのは、夕方になってからの事だった。

 2月中はチョコレート販売禁止のお触れだったため、小売業者の仕入れも間に合わなかった。

 

「結局、シンジ君にはこの苦い手作りチョコレートを渡すしかないのかな」

「一から手作りしたチョコレートの方が、ワンコ君には受けが良いかもしれないよ」

 

 放課後になって、男子は学校に居残り、女子があわててチョコレートを渡す光景がそこらじゅうで見られた。

 ご褒美チョコや友チョコも同じだ。

 マナたちもシンジにチョコを渡すが、その列にアスカの姿は無かった。

 

「惣流さんは家でも碇君にチョコレートを渡せるから羨ましいですね」

 

 マユミはポツリとそう呟いた。

 

 

 

 

「それにしても副司令がバレンタインデー禁止を撤回するなんて、どんな手を使ったのよ?」

 

 帰宅したアスカがミサトに尋ねているのを、シンジは料理をしながら聞き耳を立てていた。

 

「実は加持に、副司令の過去について調べさせたのよ」

「大学教授をしていたって話は聞いた事があるけど」

「それよりもーっと昔の話よ。副司令はこの第三新東京市近くの生まれでね、幼馴染の女の子が第三新東京市に住んでいるらしいの」

「……その女の子って、今じゃあ60歳……」

「こらこらアスカ、失礼な事を言わないの」

 

 コウゾウの幼馴染であるハルと言う御婦人を見つけたミサトは、コウゾウがチョコレート販売を禁止してみんなを困らせているので、お灸をすえて欲しいと話した。

 ハルは確かにコウゾウはやり過ぎだとミサトの話に納得し、愛のこもった手紙と手作りチョコレートを贈る事にした。

 

「でもカカオ豆からチョコレートを作るなんてかなりの重労働よ? そんなお婆さんに作らせたの?」

「チョコレートを気合と根性で作ったのはあたしよ」

 

 ミサトは力こぶを作ってアスカに答えた。

 

「えーっ、ミサトのチョコレートなんて大丈夫なの?」

「材料はカカオ豆と砂糖だけなんだから、危険な事が起こるはずないでしょう」

 

(暴発が起こるのがミサトさんの料理なんだけどね……)

 

 シンジは料理をしながら心の中で呟いた。

 

「ところでアスカはシンちゃんにチョコレートはあげないの? 学校でシンちゃんはチョコを貰って食べていたみたいだけど」

「ふっふっふ、アタシのオリジナルチョコは、マナたちみたいにビターな味じゃないのよ」

 

 ミサトとアスカはシンジが貰ったチョコレートを苦そうな顔をして食べているのを見ていた。

 シンジはアスカが楽しそうにシンジが苦しむ様子を見ていたのを覚えている。

 テーブルに料理が並び、さて夕食となった時にアスカは突然チョコレートをあげると言い出した。

 

「でもアスカ、チョコレートなんてどこにもないけど?」

 

 シンジがテーブルを見回しても、夕食以外の食べ物は見えない。

 まさかバカシンジには見えないチョコレートだとからかっているのかとシンジは思った。

 するとアスカは身を乗り出して、シンジに唇が触れ合うだけのライトキスではなく、自分の唾液を相手に飲ませると言うディープキスをした。

 アスカの髪が、シンジの鼻を撫でる。

 

「どう、アタシのオリジナルチョコレートキスの味は? 甘くていい香りがしたでしょ」

「うん……甘くてアスカのいい匂いがした」

 

 シンジは顔を赤くしてアスカにそう答えた。

 

「やっぱりアタシとシンジは、遺伝子レベルで相性が良かったみたいね!」

 

 アスカは自信満々にそう言い放ったが、シンジとキスするまでは大きな賭けでドッキドキだった。

 もしお互いの相性が悪くても、唾液が甘くなる成分パチロンの分泌量を増やすために耳下腺を刺激するなど努力を重ねていたのだった。

 

「あらまあ、アスカってば大胆」

 

 これはアスカに一本取られた……ってチョコレートじゃないよ! とシンジは思った。

 

「ねえねえシンジ君、誰のチョコレートが一番美味しかった?」

 

 次の日に学校でマナに尋ねられたシンジはアスカから貰ったものが甘くていい香りがしたと答えた。

 

「アスカ、一体どんなチョコレートを碇君に渡したの?」

 

 昨日トウジにチョコレートを渡したが、苦そうな顔をされたヒカリはたまらずアスカに尋ねた。

 

「生チョコよ」

 

 アスカが軽い口調で答えると、ヒカリは生クリームを入れてもカカオ豆から作った手作りチョコが甘くなるのかと首を傾げた。

 

「甘さはグラニュー糖より白砂糖の方が強いはず……ですよね」

 

 読書が趣味で詳しい知識を持つマユミがそう呟いた。

 

「それでどーしてあっしらよりも甘いチョコレートになるのかにゃ!?」

 

 マリは目を回しながら腕組みをしている。

 

「その生チョコ、チネリ米より気になるわ……」

 

 レイがポツリと呟いた。

 こうして今年のバレンタイン戦争はアスカの勝利(?)に終わったのだった。




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