ラスト・ナンバー 101人目のアタシ『最高に美味しいイチゴのケーキのプレゼント!』(2022年式波・アスカ・ラングレーの誕生日記念LAS短編) 作:朝陽晴空
<第三新東京市 第壱中学校>
七月七日、シンジ達は第壱中学校に集まって、短冊に願い事を書く事になった。
戦略自衛隊から使徒を殲滅させて第三新東京市を守ってくれたお礼が是非したいと申し出があったので、お調子者のミサトが「笹の葉を頂戴♪」とお願いしたところ、立派な笹がネルフにプレゼントされたのだった。
戦略自衛隊の兵士達は命の危険と隣り合わせの職業に就いている。
縁起を担ぐため、七夕に備えて多くの笹を確保していたのだ。
これだけ立派な笹ならば、学校の子供達にも御裾分けしたいと考えたミサトは笹を第壱中学校まで空輸させた。
自分はビールの6本パックを持ってマコトに運転させて上機嫌だった。
「良いみんな、短冊に願いを書く時は気を付けなくちゃいけない事があるの」
ミサトが戦略自衛隊の士官達から聞いた七夕の豆知識を得意気に披露する。
「まず、ありがちなミスだけど、ほにゃらら出来ますようにと言った願い事をしてはいけないの。絶対ほにゃららする! と断定するのがコツよ♪」
ミサトの説明を聞いて、なるほど自分もやってしまいそうだったと納得した生徒達も多かったようだ。
「次に願い事は具体的に書く! いつか世界が平和になりますようにと言った抽象的な願いだと、織姫と彦星も困っちゃうでしょ?」
そう言ってミサトはウインクした。
「さらに、七夕の由来は元々、織姫の様に機織りが上手くなりたいという願い事から生まれたものよ。だから、イスラエル製の狙撃スコープが欲しいなんて物欲丸出しの願いはダメ」
ケンスケに視線が集まり、笑い声が上がった。
「それでミサトは何を書いたの? まさかビールが欲しいとか給料アップじゃないでしょうね?」
「言い出しっぺのあたしがそんな事書く訳ないでしょう」
アスカに尋ねられたミサトの短冊には、『1年以内に体重5キロ減らす』『30歳前に結婚!』と書かれていた。
「ミサトさん、ズボラでガサツを直さないと、加持さんに断られますよ」
「ぐっ、シンちゃんも言うようになったわね」
先月の誕生日にアスカに告白されてから、シンジは自信を持つようになった。
するとミサトと出会った当時の皮肉やツッコミも口を突いて出るようなる。
「そう言うシンちゃんとアスカは、短冊にどんな願いを書くつもりなのよ? 何歳までに結婚するとか、子供は何人とか、マイホームを建てるとか、家族計画を立てないとね!」
ミサトがそう言うと、周囲からヒューヒューと冷やかす口笛が上がった。
恥ずかしくてたまらなくなったシンジとアスカは、いったん離れてトウジやヒカリの所へ走って行った。
トウジはケンスケ達の男子グループと、ヒカリはレイ達の女子グループと一緒に居た。
「ワシの願いは、高校のバスケットのインターハイで優勝する事や」
「委員長の事じゃないんだね」
「はあ? どうして委員長が出て来るんや?」
アスカとシンジに比べて、ヒカリとトウジのカップルの成立は時間が掛かりそうだった。
「ケンスケの願いは?」
「そりゃあ、エヴァンゲリオンに乗る事さ」
「えっ、でももう初号機のエントリープラグに入った事があるんじゃないかな」
「分かってないな、俺は正式なエヴァのパイロットになりたいんだよ」
ケンスケは拳を握り締めながらそう力説した。
シンジが気になってアスカの方を見ると、ヒカリがアスカに向かってコソコソと耳打ちをしていた。
「さあ、みんな願い事は書けたかな? 笹に短冊を吊るすわよ!」
ミサトの号令で、生徒達やこっそり来ていたネルフのスタッフ達も短冊を吊るし始めた。
アスカはトウジの肩を踏み台にして、笹の頂点近くに短冊を結び付けた。
「何晒すんじゃボケ!」
「どうしても叶えたい願いだったから、ゴメン遊ばせ」
怒ったトウジに対してアスカはそう答えた。
「碇、惣流の付けた短冊に何が書かれているか気になるのか?」
「うん、でも覗きは良くないよね」
「別に隠しているわけじゃないんだから、見てもいいんじゃないか?」
ケンスケにそう言われたシンジは望遠鏡を借りてさっきアスカの結んだ短冊を見た。
短冊書かれた文字を読んだシンジは驚愕して持っていた望遠鏡を落としてしまった!
短冊には『鈴原トウジと恋人になる!』と書かれていたのだ!
シンジは先月の誕生日にアスカの方から告白されて、ファーストキスのプレゼントを貰ったはずだ。
付き合って経った1ヶ月でトウジに心変わりしたのか?
いや、きっとアスカは最初からシンジとトウジの両方と付き合うつもりだったんだとシンジは思った。
怒り心頭に発した碇シンジは、怒った顔でズンズンとヒカリと話すアスカの元へと向かった。
「どうしたの碇君、怖い顔をしてるよ?」
ヒカリがそう言うと、アスカは驚いて振り返って至近距離にまで迫ったシンジを見た。
シンジがこんなにも怒った顔を見たのは初めてだった。
「アスカは、僕の気持ちを裏切ったんだ!」
シンジはアスカに向かって拳を振り上げたが、アスカを叩く事など出来るはずも無く、シンジは泣きながらアスカに背中を向けて立ち去ろうとした。
「ちょっとシンジ、何がどうなっているのよ、行かないで! 待ってシンジ!」
アスカに背中から抱き締められたシンジは歩みを止めた。
そして涙声で激怒した理由を話す。
「あの短冊はヒカリの書いたものよ。親友のアタシとしてはどうしても叶えてあげたかったの」
「アスカ、恥ずかしいから言って欲しくなかったのに……」
「そう言わないと、シンジの誤解が解けないでしょう?」
その話を聞いたトウジはポカンとした顔でヒカリを見つめていた。
「委員長、ほんまにワシの事を?」
「トウジ、こうなったら付き合っちゃいなよ」
ケンスケに背中を押されて、トウジとヒカリは即日付き合う事になった。
この短冊の効果は抜群のようである。
「じゃあアスカは、別の願い事を書いたの?」
「当たり前じゃないの」
アスカがトウジの事が好きだという誤解の解けたシンジは、アスカの両手を取って嬉しそうに踊り出した。
「良かった……! 本当に良かった……!」
「ちょっとシンジ、話しなさいってば!」
これにて一件落着ね、とミサトはきっと自分の体重も減ると安心してビールを飲んだ。
<ジオフロント跡 白い砂浜>
ネルフ本部に戦略自衛隊が侵攻し、エヴァ量産機との戦いを経て、アスカとシンジは2人でL.C.L.の海水が打ち付ける砂浜に座って居た。
「まさかこんな事になるなんてね」
「アンタが短冊にあんな願い事を書くからよ!」
「アスカも全く同じ願い事を書いたんじゃないか!」
アスカとシンジはあの七夕の日、戦略自衛隊の隊員が願いを込めて短冊を吊るすという話を聞いて、2人とも願い事を書いた。
『ずっとシンジと(アスカと)2人で一緒に生き残れますように』
確かに短冊の願いは叶ってしまった。
このような形で。
「結婚とか子供が欲しいとか、他の願いならこんな羽目にならなかったのに!」
「14歳でそれは早過ぎるよ!」
喧嘩するほど仲が良い。
アスカとシンジの言い争いは長く続くのだった。
新作ではなく、正確には自分のサイトの作品の配役を変えたリメイク作品です。
第2弾も製作中です。
リメイク元作品
空の軌跡エヴァハルヒ短編集
第十二話 2010年 七夕記念ヨシュエス短編 七月七日の殺意
https://haruhizora.web.fc2.com/mastar/ss/12.html
Web拍手(下記のリンク)を押して応援して頂けると幸いです。
<a title="web拍手 by FC2" href="http://clap.fc2.com/post/clap01/?url=http%3A%2F%2Fncode.syosetu.com%2Fn1133l%2F&title=%E7%9F%AD%E7%B7%A8" target="_blank"><img alt="web拍手 by FC2" src="http://clap.fc2.com/images/button/blue/clap01?url=http%3A%2F%2Fncode.syosetu.com%2Fn1133l%2F&lang=ja" /></span></a>