ラスト・ナンバー 101人目のアタシ『最高に美味しいイチゴのケーキのプレゼント!』(2022年式波・アスカ・ラングレーの誕生日記念LAS短編) 作:朝陽晴空
アスカとシンジがコンフォート17にある葛城家で会話の無い夕食を終えた後。
シンジは部屋に閉じこもろうとしたアスカの腕を引いて、月を見に行こうと強引に誘った。
アスカは終始面白くなさそうな顔でシンジの後ろを付いて行き、2人は公園に着いた。
「今日は月が綺麗だね」
「あーそりゃ良かったね、じゃあ帰りましょ!」
さっさと引き返そうとするアスカの手をシンジは掴んだ。
「待ってよアスカ。話したい事があるんだ」
この公園はシンジとアスカにとって特別な場所だった。
使徒を倒すためにユニゾンしなければならなくなった時に、シンジとレイの息の合ったユニゾンを見たアスカが外に飛び出し、シンジが追いかけて話しをしたのがこの公園。
それから度々シンジがアスカに大事な話をする時にはこの公園が定番となっていた。
アスカもこの公園に来た時からシンジが何か話したがっている事は察していた。
でもシンジの話を聞きたくなかった、逃げようとした。
「アスカって、一番星が好きなんだよね? 前にそう話してたよね」
「そうね、夜空で一番最初に光る星――金星の事だけど」
アスカが返事をしてくれた事に安心したシンジはゆっくりと本題を切り出した。
「アスカが口を利いてくれないのって、僕がテストで一番を取って調子に乗ったからだよね?」
「言うに及ばずよ」
シンジの言葉を聞いたアスカの顔が苛立ちからさらに怒りを秘めたものになって行く。
「今度のシンクロテストは、アスカが一番になるように抑えるから」
「アタシをバカにしてるの!? アタシはアンタのおこぼれで一番になったって、全然嬉しくないから!」
アスカは怒って思いっきりシンジのほおを叩いた。
シンジのほおに赤い手形が刻まれる。
ほおの痛さに崩れ落ちそうになるシンジに背を向けてアスカは今度こそ公園を出て行こうとする。
そのアスカのふくらはぎをシンジはつかんで必死に引き止めた。
「離しなさいよ!」
「離さない、だってこのままアスカと黙ったままで居るなんて嫌だから!」
アスカは足を振り回してシンジを振りほどこうとするが、シンジの意志は固く身体がベンチや鉄棒に当たっても手の力は緩まなかった。
「痛い! アタシの足に跡が付くでしょ!」
「お願い、もう少しで良いから話を聞いてよ!」
強情なシンジの行動に、アスカの方が折れた。
「わかったわ、話を聞くから手を離しなさいよ……本当に痛いんだから」
「あ……ごめん」
アスカから手を離したシンジは意を決して大声で叫ぶ。
「最近特に僕がシンクロテストを頑張るようになったのは……アスカを守りたいと思ったからなんだ! そうしたら初号機が僕の気持ちに応えてくれたんだと思う」
「バカシンジが、エースパイロットのアタシを守る? 1回シンクロテストで勝ったぐらいでいい気にならないで!」
怒鳴ったアスカだが、優しくシンジに手を握られて驚いた顔になった。
「僕は気が付いたんだ。アスカが無理をして強がっている事に」
「アタシは別に強がっていないわ! エリートなのよ!」
「ウジウジしていた僕を励ましてくれたお礼に……僕には弱い所も見せて、もっと頼って欲しいんだ」
アスカはシンジの言葉を聞いて下を向いて黙り込んでしまった。
「アスカは性格もかわいい子じゃないのかなと思ったら、なんかこう……アスカを守りたい、好きだって気持ちが僕の中で強くなって行って、アスカが話してくれないと、僕の心臓が張り裂けそうなほど痛くなるんだ」
「それじゃあ、最初は鈴原達と同じように、見かけだけの女だと思ってたワケね!」
アスカはそう言ってシンジの手の甲を思いっきりつねった。
しかしアスカの目尻には涙が光っていた。
「アタシの事、かわいいなんて言ってくれたのはシンジが初めてだから、アタシも正直戸惑っているわ」
「突然、告白しちゃってゴメン」
「アタシも、月が綺麗だと思うわ」
そう言ってアスカは月を見上げた。
根府川先生の国語の授業でアスカも夏目漱石の事は習っていた。
シンジもアスカと同じように星空を眺めた。
一番星以外の星もたくさん空に輝いている。
「やっぱり、たくさんの星が輝いているから星空って言うのよね」
「そうだね、一番星一個だけじゃ寂しいよね」
「アタシさ、ドイツではいつも他人に負けないようにしてた。だって、日本人のクォータのアタシはドイツでは背が低くて、アタシを見下しているように見えたから」
日本ではスタイルが良いと言われるアスカだが、ドイツでは人並みか、少し背の低い方だった。
「アスカは負けず嫌いだからね」
「アタシは好きで負けず嫌いになったんじゃないわ! アタシは学校の成績が一番になる事で見返そうとしていたのよ。でもアタシが勉強ばかりして、ボードゲームの誘いを断るようになると、みんな離れて行ったわ」
ドイツでは日本と違って大人も子供もボードゲームをやるのよ、とアスカは説明した。
「日本に来てからも性格が悪いと思われるのは当然よね。今度はアタシが周りを見下す態度をとっていたんだもの。エヴァのパイロットとしても、シンジやファーストよりも自分が上だって思っていた」
「アスカ、どっちがエースパイロットだなんて関係無いと思うよ。あの分裂する使徒だって、2人で力を合わせて倒したんだからさ」
シンジの言葉を聞いて、アスカはゆっくりと頷いた。
「うん、アタシは別にもうエースパイロットじゃ無くてもいいのね。シンジとファーストと力を合わせて使徒を倒せれば」
アスカがシンジに向かって微笑むと、シンジも感激して文字通り跳び上がって喜んだ。
「弐号機がマグマの底に沈みそうになった時、シンジが初号機で飛び込んで助けてくれたわね。あの時、アタシはプライドが邪魔をしてお礼を言えなかったけど、今言わせてもらうわ。今アタシが生きているのはシンジのお陰よ、ありがとう」
「ど、どういたしまして……」
アスカに見つめられてお礼を言われたシンジは顔が真っ赤になった。
そんなシンジの顔を見て、アスカはからかうような表情になる。
「このアタシを惚れさせたんだから、シンクロ率だけじゃなくて、アタシにとって1番の男になりなさいよ!」
「えっ!?」
「恋人になってはあげるけど、男としてはまだまだ加持さんには及ばないって事!」
アスカがそう言うと、シンジは少し元気の無い顔になった。
「別にシンジは同じ事で加持さんに対抗する必要は無いの、今日のご飯も美味しかったわよ」
「明日のご飯はもっと美味しくなるよね!」
アスカとシンジは楽しそうに公園を出て家路を行く。
物陰から見守っていたミサトはホッとため息を吐き出した。
「クエッ」
「分かってます、あたしの余計な一言が悪かったです」
ペンペンに手で足を突かれるとミサトはそうつぶやくのだった。
リメイク前の作品はサイトにそのまま載せてあります。
https://haruhizora.web.fc2.com/mastar/ss/13.html
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