ラスト・ナンバー 101人目のアタシ『最高に美味しいイチゴのケーキのプレゼント!』(2022年式波・アスカ・ラングレーの誕生日記念LAS短編)   作:朝陽晴空

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シンジ、ついにキレる!
(あらすじを考えるのを忘れてました)


主婦休みの日記念LAS短編 I need you.

※注釈

 

「ナポリタンスパゲティ」とはケチャップがベースで、焼かれた玉ねぎ、ソーセージとピーマンを具材とした日本人が発明したパスタ料理です。

 

 

 

「ちょっとシンジ、アタシのシャンプーが切れているから買っておいてって言ったでしょう!?」

「無茶言わないでよ。台風で外に出れなかったんだから」

 

 学校は九月の三連休。

 四季がなくなった日本でも、九月・十月に台風の数が特に多くなるのは昔と同じだった。

 

 

 

 質の悪いことに、猛暑の影響もあり台風の威力が増している。

 海水温と水面の上昇で、無敵と言われた静岡電鉄も運休するほどだった。

 

 

 

 シンジ達が入居しているコンフォート17は政府関係者向けに作られた住居だけあって、予算はふんだんに掛けられている。

 第三新東京市でも家屋の損壊などの被害報告が出る中で、13階の葛城家の要塞はビクともしなかった。

 ただシャッターを開けるわけにはいかなかった。

 さすがに窓ガラスは強化ガラスではなく、普通のガラスだからだ。

 

 

 

「甘ったれたこと言って。使徒が攻めて来たらそんな言い訳、通用しないわよ!」

 

 アスカは正論を言っているようで、結局は自分のワガママだ。

 その一言でついにシンジのストレスの堤防が決壊してしまった。

 

 

 

「もう、勝手にしろ!」

 

 シンジはそう言うと、着ていたエプロンを脱ぎ捨ててリビングの床に叩きつける。

 そして自分の部屋へと引きこもってしまった。

 

 

 

「あらら、シンジ君を怒らせちゃったみたいね」

 

 二人のケンカを傍から見ていたミサトが茶化すようにそう言った。

 

「ほらほら、早く謝らないと、アスカが困るわよ」

「困るのはミサトだって同じじゃないの?」

 

 アスカは暗にミサトに一緒について来て欲しいと言ったのだが……。

 

 

 

「あたしは別に平気よ。インスタントラーメンもあるし、少しぐらい散らかった部屋に居ても」

 

 ミサトはそう言って立ち上がると、シンジの脱ぎ捨てたエプロンを着けてキッチンで料理を始めた。

 あの何とも言えないカレーの匂いが漂って来る。

 

「アスカもどう? 久し振りのあたしのスペシャルカレー」

「いらない!」

「それは残念」

 

 

 

 やせ我慢をしたアスカのお腹の虫が盛大な鳴き声を上げる。

 戸棚に入っているはずのお菓子は、アスカが自分で食べ尽くした後だった。

 それならばとミサトのお酒のツマミを狙うが、スルメイカなど、アスカには食べられないものだった。

 

 

 

「デリバリーイーツもこの台風では無理よね♪」

「ぐぬぬ……!」

 

 そうだ、シンジも食べ物がなくて困っているに違いない。

 冷凍食品などが冷蔵庫にあるはずだ。

 

 

 

 そう思ったアスカは冷蔵庫の中を探すが、出てくるのは野菜や生肉、生魚の素材ばかり。

 

「そりゃあ、シンジ君はその気になったら自炊できるもんね。アスカはパスタでもかじってたら?」

「アタシだって、パスタぐらい茹でられるもん!」

「じゃあ、お手並み拝見♪」

 

 

 

 スペシャルカレーラーメンを完成させたミサトは、余裕の笑みを浮かべた。

 焦ったアスカはお湯が沸騰する前にパスタを茹でるという痛恨のミスを犯してしまった。

 

「おえっ、芯が残ってるし、べちゃべちゃする……どうして?」

 

 シンジが作ってくれたナポリタンスパゲッティは美味しかったのに、とアスカは泣きそうな顔になる。

 

 

 

 ミサトはアスカの失敗の原因が分かっていたが、敢えて教えなかった。

 その方がシンジの有難みをアスカが痛感すると思ったからだ。

 しかしまだアスカの心は折れない。

 

 

 

 野菜なら生のままでも食べられると、サラダ作りに挑戦したのだが……。

 

「何でよりによって、ピーマンやニンジン、ゴーヤ、セロリなのよ!」

 

 アスカの好きなジャガイモは、生では食べられない。

 自分の嫌いな野菜ばかり入っている冷蔵庫に、アスカは腹を立てた。

 

 

 

「ん? これは……?」

 

 アスカは冷蔵庫の片隅に、玉ねぎとひき肉と言ったハンバーグの材料が用意されているのに気が付いた。

 

「そっか、シンジはアタシのために……」

 

 台風で家に缶詰めとなっているアスカの気分を晴らすために、シンジはアスカの好きなドイツ料理の用意をしていたのだ。

 それをぶち壊しにしてしまった自分の愚かさを、アスカは今更ながら恥じた。

 

 

 

「さあアスカ、気が済んだのなら意地を張らないでシンジ君に謝って来なさい」

「だけどアタシ、シンジに謝ったことなんてないから……」

「これから頑張るのよ」

 

 

 

 アスカは意を決してシンジの部屋のドアをノックする。

 しかしシンジの返事はない。

 ドンドンドン ドンドンドン ドンドンドンドンドンドン。

 

 

 

 そこまでアスカがノックをしても、反応がまるでなかった。

 

「こうなったら、実力行使よ!」

 

 アスカは引き戸になっているシンジの部屋のドアに手をかけるが何かが引っ掛かって動かない。

 どうやらシンジは引き戸に用心棒(引っ掛け棒)を掛けているようだった。

 

 

 

「こんちくしょーっ!」

 

 ここまで強く拒絶されると、アスカのプライドも大きく傷つけられた。

 ベランダから回り込んでシンジの部屋に侵入しようとしても、外は暴風雨だ。

 シンジの部屋の窓もシャッターが降ろされている。

 

 

 

 アスカはシンジの部屋のドアをぶち壊しそうなほど頭に血が上っていたが、深呼吸して気持ちを整えた。

 自分の部屋に戻ると、紙と鉛筆を取り出し、自分の気持ちを思い切り書きなぐった。

 そしてその紙を、僅かに生じたシンジの部屋のドアの隙間からそっと差し込んだ。

 

 

 

 しばらくした後、シンジは部屋から出てハンバーグを作り始めた。

 シンジの部屋の机の引き出しには、アスカがくれた紙が大事にしまってある。

 そこには「I need you.」と短い言葉が書かれていた。

 

 

 

 それから話し合いの結果、週に二日ずつ、シンジが主夫の仕事を休める日がつくられた。

 つまり、週に一日だけではあるが、アスカとミサトも自分が家事を担当することになったのだ。

 最初はシンジが手鳥足取り教えることになったが、そのうちに二人の家事も上手くなった。

 

 

 

 そしてシンジは自分の趣味である、チェロを練習する時間を持てるようになる。

 そのチェロの演奏に聞き惚れたアスカが拍手をして、シンジはますますチェロの練習に熱中する。

 いい雰囲気となった二人の唇が出会うのも、そう遠い日ではないとミサトは思うのだった。




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