ラスト・ナンバー 101人目のアタシ『最高に美味しいイチゴのケーキのプレゼント!』(2022年式波・アスカ・ラングレーの誕生日記念LAS短編)   作:朝陽晴空

7 / 24
 14年目の孤独なクリスマス・イブを迎えようとする、式波・アスカ・ラングレー。
 彼女に届けられた14年越しのシンジからのクリスマス・プレゼントの話。


2021年クリスマス(式波)LAS短編「14年目のクリスマス・イヴ」

 第三村の外れにある、相田ケンスケの家。

 そこに滞在している式波・アスカ・ラングレーはベッドに腰掛け、赤いS-DATで何かを聴いていた。

 

「アスカ、またそいつを聴いているのか」

 

 ケンスケに話し掛けられても、アスカはケンスケをチラッと見ただけで、イヤホンを外そうとしなかった。

 

 『真っ赤なお鼻のトナカイさんは

  何時も皆の笑い者

 

  でもその年のクリスマスの日

  サンタのおじさんは言いました

 

  暗い夜道はピカピカの

  お前の鼻が役に立つのさ

 

  何時も泣いてたトナカイさんは

  今宵こそはと喜びました』

 

 アスカが聴いていたのは、シンジの歌う『赤鼻のトナカイ』の歌だった。

 今から14年前のクリスマス・イブ、葛城家で行われたクリスマス・パーティ。

 余興に歌でも歌おうかと言う話になり、シンジは歌詞を覚えている歌はこれしかないと、赤鼻のトナカイを歌ったのだった。

 そのシンジの歌う赤鼻のトナカイを、アスカはクリスマス・プレゼントにもらったばかりの赤いS-DATに試しに録音していたのだ。

 

「あれから、14年も経つんだよな」

 

 ケンスケはそう呟くと、アスカの隣に腰を下ろした。

 そのタイミングでカシャンとS-DATから異音が発生すると、アスカはイヤホンを外した。

 

「ケンケン、また壊れた。直して」

 

 アスカにそう言われたケンスケは深いため息を吐き出した。

 S-DATの修理部品はニアサードインパクトの前のように店で買うわけにはいかない。

 ケンスケがゴミの山から部品を自作して修理しているのだ。

 今までケンスケはアスカに頼まれたら断ろうとしなかった。

 しかし、クリスマスイヴを目前に控えたこのタイミングに運命のような物を感じたケンスケは、アスカに話を切り出した。

 

「なあアスカ、もう俺たちはあの頃には戻れない。碇シンジはもう……居ないんだよ」

「違う! まだここに居る。直してよ、ケンケン」

 

 アスカはそう言ってベッドの上にある赤いS-DATを指差した。

 毎年ひとりぼっちのクリスマス・イブを過ごす時、アスカはこのS-DATに録音されていたシンジの歌声を聴いて心を慰めていたのだ。

 懇願しても動こうとしないケンスケに、アスカは肩を落とした。

 

「そうね、ケンケンの言う通り、帰って来ないアイツにさよならを言う時かもね」

 

 納得したような表情でアスカが言うと、ケンスケはホッと安心した様子で息を吐き出した。

 これで止まっていたアスカの心の時計は前に進み出すだろう。

 

 

  

「真っ赤なお鼻のトナカイさんは 何時も皆の笑い者」

 

 その時、風に乗るようにアスカとケンスケの耳にシンジの歌声が届いた。

 赤いS-DATは壊れたまま、沈黙を守っている。

 

「でもその年のクリスマスの日 サンタのおじさんは言いました」

 

 では今聞こえているシンジの歌声はアスカの願望が招いた幻聴なのか。

 しかしその歌声はケンスケにも聞こえている様子だった。

 

「暗い夜道はピカピカの お前の鼻が役に立つのさ」

 

 そのシンジの歌声は家の外から聞こえてくるようだ。

 顔を見合わせたアスカとケンスケは家を飛び出した。

 

「何時も泣いてたトナカイさんは 今宵こそはと喜びました」

 

 暮れなずむ村の大きな木の下に、帰りを待ち続けた少年が笑顔で立っているのがアスカには見えた。

 

「メリークリスマス。ただいま、アスカ」

 

 

 

 

 

 

 おまけ超短編『クリキャン』

 

 人工進化研究所で働くゲンドウに、ユイからの電話があった。

 

 ゲンドウ「クリキャンだと? 分かった」

 

 コウゾウはゲンドウの肩にポンと手を置く。

 

 コウゾウ「私もクリスマスの予定は空いている。よし、一緒に酒でも飲もう」

 

 ゲンドウは困惑した顔でコウゾウを見る。

 

 ゲンドウ「先生、クリスマスは家族で過ごす予定がありまして……」

 

 コウゾウ「何? 今の電話はクリスマスがキャンセルと言う話ではないのか?」

 

 ゲンドウ「先生、クリキャンとはクリスマス・キャンプの略です」

 

 コウゾウ「そうか……私の勘違いだったようだな」

 

 ゲンドウ「先生、シンジにプレゼントを渡すサンタクロースの役をお願いできませんか」

 

 コウゾウ「碇、気を遣ってくれてすまんな」

 

 

 




Web拍手(下記のリンク)を押して応援して頂けると幸いです。

<a title="web拍手 by FC2" href="http://clap.fc2.com/post/clap01/?url=http%3A%2F%2Fncode.syosetu.com%2Fn1133l%2F&amp;title=%E7%9F%AD%E7%B7%A8" target="_blank"><img alt="web拍手 by FC2" src="http://clap.fc2.com/images/button/blue/clap01?url=http%3A%2F%2Fncode.syosetu.com%2Fn1133l%2F&amp;lang=ja" /></span></a>
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。