《完結》魔王「拾った汚いガキを最高にカッコいい勇者にするはずが、いつの間にか娘になってたんやが?」   作:やーなん

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久しぶりの更新です!!
アンケートを閉めるタイミングが見つからず、今回ふと思いついたネタでの投稿になります。悪しからず。
前回のアンケートの反映は、次話からとなります。




転生者「最強のチートスキル貰ったぜ」

 

 やあ、俺は■■ ■■。生まれも育ちも日本人だ!! 

 

 毎日のようにブラック企業で社畜として酷使され、パワハラに耐えつつ日々を過ごしていたんだが、こんな俺にも幸運が降ってやって来た。

 

「我が名は、メアリー・スー。この世界の神と名乗っているわ。

 あなたは我が管理下の世界で、予定外の死に至ったようね。

 可哀想だから別の世界に転生させてあげるわ」

 

 やったぜ!! 目の前にトラックが迫ってきた時はどうなるかと思ったが、こうして別の世界に転生させてもらえることになったんだけど。

 まさにテンプレ展開!! 

 

「あのー、女神様。普通こうして手違いで死なせちゃったら、謝ってくれたりするもんじゃないんですか?」

「なんで私が、あなた如きに間違いを認めないといけないの? 

 そもそもあなたの死は予定外なだけであって、私の所為じゃないし」

「さいですか……」

 

 あれ、ここはテンプレと違うけど、まあ別に転生させてくれるならいいか。

 

「あなたの人生を査定した結果、来世はある程度の優遇が保証されるわ。

 家庭環境、才能、人間関係、容姿、その他諸々をこれから出すステータス画面に入力しなさい」

 

 女神様は俺にそう言うと、目の前に夢にまで見たステータス画面が表示された!! 

 ふむふむ、どれどれ……約2000ポイントか、これって多いのか少ないのか分からないな。

 

「あの、女神様、この2000ポイントって多いんですか?」

「私の査定に、不満が有ると言うの?」

「あ、いえ、ただ気になっただけって言うか」

「早くして。次の作業に差し支えるでしょう」

「わかりましたよ」

 

 なんて事務的で雑な対応なんだろうか。せめてどういう基準なのか教えてほしかっただけなのに。

 俺はステータス画面を読み込みながらそう思った。

 

 そこでふと、俺は一つのスキルが目についた。

 

『天啓』:状況に応じて的確な情報を得られる。必要ポイント1000。

 

「あの、この『天啓』ってスキルは『鑑定』とかよりも必要ポイントが桁違いに高いんですけど、上位互換なんですか?」

「そこに書いてあるスキルは、あなたの行いによって増減するんだから今悩まなくてもいいのよ。

 でも、その『天啓』スキルは強力よ。本来なら神官の最上位職しか獲得できないスキルだから。今ここで取るならその制約も無視できる」

 

 これは、と俺は思った。

 丁度500ポイントで、下位スキルを発展スキルにする『スキル発展』を選択できる。

 これを組み合わせれば、チートスキルをいきなり所持できるのでは? 

 

「これとこの組み合わせって、可能ですか?」

「勿論、これらスキルの組み合わせは、優秀なデバッカー達が目につく限り試しているから問題は無いはずよ」

「じゃあこれで!!」

 

 あとの残りを、才能とか容姿とかに振って、終わり!! 

 こうして俺は、女神様によって異世界での新しい生活が幕を開けることになった!! 

 

 

 ……はずだった。

 

 

 

 §§§

 

 

『天啓』の発展スキルは、確かに強力だった。

 

 好きな時に好きな情報を、直接(・・)教えてもらえるんだから。

 ただ……。

 

『あなたってなんで境遇のところに何もポイントを振らなかったわけ? 

 私の慈悲が無かったら、どぶ川にでも捨てられてたわよ?』

 

 俺のチートスキル『女神の天啓』は口煩かった。

 

『あなたは元社畜なんだから、人間関係も大事だと分かってるでしょうに。

 どうしてそこにもポイントを振らなかったの? 

 社会人だったくせに、才能と容姿だけでどうにかなると思ったの?』

 

 訂正、口煩いどころじゃない。死ぬほどウザイ!! 

 

『は? 誰がウザイって? 

 至高なるこのメアリース様がお前如き凡人の為にリソースを割いてやっているって言うのに、なんでこの有難い忠告に対して不満を述べられるわけなの?』

「すみません、すみません!!」

 

 このクソ女神、いつか目に物みせてやる……。

 それはともかく、ようやく俺も冒険者ギルドに入れる年齢だ!! 

 

 それまでは捨て子どものボスとして、連中を扱き使って何とか生きて来た。

 普通、こういう時、テンプレだと一人くらい使えるやつがいるはずなんだが……。

 

『境遇と人間関係にポイントを振らなかったあなたに、人材が集まるわけ無いじゃない。

 しかも磨けば光る美少女なんて、ぷぷぷッ。男って本当に浅ましいわね』

 

 うるっせ!! 

 あと考えても無い思考を読むなよ!! 

 

 とにかく、境遇や人間関係はともかく、俺は才能にはポイントをそれなりに振った。

 容姿はまあ、前世ならどこにでもいる没個性な日本人みたいな感じだったけど。

 

 俺がガキどものボスを張れたのは、魔法の才能である。

 俺の年齢は十二歳だが、もう既にこの国の一級の魔法使い並みの実力がある。

 そうですよね、女神さま!! 

 

『そうね、魔法の習得は年齢が若ければ若いほど良い。

 この国の人間の魔法の習得は、十五歳になって貴族学院に入学出来たらの話。

 そして貴族でもあなたほど早く魔法に触れている人間は少ないでしょうね』

 

 そう、俺は女神様のアドバイスに従い、この世界の魔法を極めたのだ!! 

 女神様は性格は最悪だけど、魔法の知識はホンモノだ。と言うか生活のアドバイスも貰っている。何もかも頼り切りだが、少しも感謝できる気も起きないのはなんでだろうなぁ!! 

 

「ナーロンくん、ほんとうに冒険者になるの?」

 

 俺にそう言ったのは、発達障害で道端に捨てられてた捨て子の一人だ。

 捨て子のボスである俺は、こいつらに盗みやゴミ漁りをせずとも暮らしていける方法を授けてやった。

 

『その大本の知識は私じゃない』

 

 うるせぇ!! 実行してるのは俺だから良いんだよ!! 

 あとナーロンってのは俺の名前な。

 

「冒険者になって成り上がれば、国家の一員として保証されるんだよ。

 そうなったらこうして路地裏でせせこましい商売をせずに済むんだ!!」

 

 カネを稼いで、女神様の知識を使って商品を作り、土地を買って店を立ち上がる。

 そしてこいつらを従業員として安く使い、俺は社長として利益だけを貪るって寸法さ。

 あとは使える人材を雇う人脈とかも、冒険者をしていれば手に入るだろう。

 

『楽観的で計画性も無い。この子たちが可哀そうだわ。

 鑑定やら大賢者的なチートスキルを超えてるこの私の叡智が無かったらどうなってたことやら』

 

 あの、マジで余計な時に話しかけてこないでもらいます? 

 

 

 

 そんなこんなで、俺はこの国の首都から外に出た。

 

『あら、冒険者ギルドに行くんじゃなかったの?』

「冒険者ギルドには、能力採用があるんでしょう? 

 だったら実力を最初に見せて、より上位のランクから始めた方が良いはずだ」

『あなたのくせに少しは考えているのね』

 

 あなたのくせに、ってなんだよ!! 

 とにかく、そこら辺の冒険者が相手にならないくらいの魔物が居る場所を教えてくれないか。

 

『あなた、少し勘違いしているんじゃないの?』

「はぁ? 何言ってんだ、早く教えてくれよ」

『まあ、私があなたの勘違いを指摘したところで、何の意味もないでしょうけど』

 

 とかなんとか言いながらも、近場に熟練の冒険者パーティでも入らない魔のダンジョンが有ると聞いて、俺はそこに向かった。

 そこのボスモンスターの首でも手土産にすれば、最高ランクの冒険者としていきなり活躍できるだろう。

 

 ……そう思っていた時期も、俺には在りました。

 

 

「ぎゃあああああぁぁぁ、助けてぇええ!!」

『ほら、やっぱり』

 

 無数の魔物、魔物魔物魔物。

 俺を餌と見定めた怪物たちが、涎を垂らして襲い掛かってくる。

 

『魔法は集中力だって教えたわよね。

 精々、あの路地裏で子供たち相手にイキリ散らす程度の心構えしかなかったあなたが、いきなり魔物と殺し合いが出来るわけないじゃない。

 あなたのような平和な世界で生きた凡人が、ライフル銃の扱いを熟達したところでそれをいきなり戦場で振り回せるわけがない。

 何の為に兵士は上官に心折られるような訓練をさせられると思ってるのよ』

 

 テンプレ展開に対する、女神のマジレスだった。

 いや、そんなことよりも助けてよ!! 

 

『ふぅー、まあここであなたが死んでも退屈……いや投資が回収できないわね。

 ぶっちゃけルール違反だけど、私こそがルール。あなた面白いくらいのバカだから、特別に使徒を貸してあげる』

 

 ひ、ひぃ、喰われるから早くしてぇ!! 

 だが次の瞬間だった。

 

 

 ──上空から、赤い雨が降って来た。

 

 それが、赤熱した銃弾だと気づいたのは、魔物どもが血肉になった後だった。

 

「質問。大丈夫でしょうか?」

 

 空から、天使が舞い降りた。

 メタリックな両翼からはバーニアを吹かしながら、彼女は地上に降り立った。

 両手には、武骨な機関銃。全身を近未来的なプロテクターで装着していた。

 彼女は、鉄を纏う天使だった。

 

『どう? 助けてあげたわよ』

 

 そんな女神様の声も聞こえないほど、俺は彼女の姿に見惚れていた。

 

「対象応答なし。異常をサーチ……該当なし。

 我が造物主、我が主上よ、保護対象は彼で間違いないでしょうか?」

『ええそうよ』

 

 俺にしか聞こえないはずの女神様の声に、天使は頷いた。

 

『適時、指示を出す。大気圏より上空で待機しなさい』

「了解しました」

 

 女神様の命令で、天使は機械の両翼から火を吹かして飛び去った。

 っていうか、武装からして世界観が違くね? 

 

『だってあれは本来私が定める基準で、文明レベル80以上の敵性存在を想定した破壊兵器よ。

 あれ一体でこの地上を容易く焼き尽くせる』

「か、過剰戦力にもほどがある!!」

『まあビジュアル重視のお飾りよ。文明を滅ぼすならもっと効率的な手段はいくらでもあるし』

 

 つまり使わない道具だから適当に俺に割り当てたってことじゃないのか? 

 仮にも意思があるのに、ひでぇ扱いだ。

 

『それより、当初の目的は達成できたでしょ。

 この辺りの冒険者の平均を超えたレベルの魔物の残骸よ』

「そ、そうだった、とにかくこれでギルドの手土産が手に入った!!」

 

 なお、俺は全く何もしていない模様。

 俺は幼い頃にやりくりしたポイントを使用して手に入れた“アイテムボックス”のスキルで、魔物の残骸を収容する。

 

 よし、これで冒険者だ!! 

 

 

 

「お引き取り下さい」

 

 え、なんで? 

 俺は意気揚々と首都に戻ると、冒険者ギルドに受付に冒険者に成りたいと告げた。

 当然、子供を冒険者にするわけにはいかないと、受付の女の人に言われたので、俺はアイテムボックスの中の魔物の残骸を取り出して見せたのだ。

 これで俺の実力も認められるだろう、と思ったのだが。

 

「ここまでぐちゃぐちゃでは、何の魔物かも判別できません。

 このゴミはお引き取りください」

 

 ぐ、ぐぐぐ、正論だった。

 テンプレ通りなら、ここはキャー凄い抱いてーってなるはずなのに……。

 

 俺はがっくりしながら、魔物の残骸を回収した。

 とりあえず、俺みたいな常識知らずは放置できないと言うことで、結局最低ランクから冒険者を始めることに。

 

「はぁ、こんなはずじゃなかったのに」

 

 珍しく、女神様も何も言ってこない。

 いや、これは爆笑して音声を切っているパターンだ。

 

「おい、そこのガキ」

 

 意気消沈した俺がギルドから出ようとすると、強面の冒険者らしき男が俺の前に立ちはだかった。

 お、これもまたテンプレ展開では? 

 どうせあの魔物を倒したのは俺じゃないとか難癖付けるんだろ、その通りだがな!! 

 

「素材の買い取りのカウンターはそっちだ。そこで掃除道具を借りな。

 まさかお前、その血だらけの床を掃除せずに帰るとか言わないよな?」

「あ、はい、すみません」

 

 強面の冒険者は、それだけ言うと先ほどまで座っていた席に戻った。

 他の面々も、常識知らずの俺を睨んでいる。

 俺は肩身の狭い思いをしながら、血の掃除をする羽目になった。

 

 

『コンピューター然り、意思を持った人形然り。

 人間は、自分より優れた存在を産み出すけど、それらの反逆を恐れる。

 だけど、あなたを見てると私にはそれは無縁だと再確認出来て安心させてもらえるわ』

 

 言葉の端々から、含み笑いが漏れてやがりますよ女神様ッ!! 

 くっそ、バカにしやがって。

 

『バカでいいのよ、私はそう言う風に創ったんだから。

 さあ、次はどんな馬鹿なことをして私を安心させてくれるの?』

「……俺に足りないのは、前衛だと分かった」

 

 言い訳ではないが、先ほどの魔物ども、最初の一体は問題なく倒せていた。

 俺の実力が足りないわけではないのだ。

 即ち、優秀な前衛が必要なのだ。

 

「つまり、だ!! 俺に必要なのは忠実な奴隷なのさ!!」

『ぷッ、くく、そうね……』

 

 ふん、笑ってればいいさ、女神様!! 

 優秀な奴隷を雇って、すぐに冒険者としてランクを上げてやる!! 

 

 

 

「お引き取り下さい」

 

 いや、だから、なんで? 

 俺はいかにも奴隷商人らしい、ヒトを食い物にして肥えたような男を見てそう思った。

 

「この国では、奴隷の売買は合法です。

 ですがこの行いには良心が必要だ。

 ここにいる奴隷たちはみな、飢饉に襲われ身売りした者達。

 彼らの主人となる人間は、そんな彼らを養うという功績を以てその権利を得るのです。

 だと言うのにあなたは、戦いで盾にする為に奴隷が欲しい、と? 

 あなたには人の心が無いのですか?」

 

 俺は奴隷商人なんていう、最底辺のクズみたいな存在に蔑まれるような視線を向けられた。

 

「それ以前に、あなたは誰かを継続的に養う財産も地位も持ち合わせていないように思える。

 そんなあなたに、奴隷を売る人間は居ませんよ。お帰りはあちらです」

 

 く、くそぉ!! 

 今度は音声を切ることすら忘れて大爆笑している女神様の笑い声を聞きながら、俺は奴隷市場を後にした。

 

「なんで、なんで上手くいかないんだ!!」

『あなた、本当に日本人だったの? 思わずあなたの前世の資料を読み直したわ。

 あなたの住んでいた日本でも、過去に飢饉で身売りはあったけど、それは政府が認めた特例中の特例。

 ちゃんと子供を養える人間が引き取るから成立したのよ。

 あなたみたいな薄汚い上に戸籍も無い人間に、誰が養ってもらいたいと言うの? 

 そんなに自分に絶対に逆らわないって保証された相手が欲しいの? 

 おかしいわねぇ、私はここまで愚かに創った覚えは無いんだけど、きゃははははは!!』

「いちいちうるせぇんだよ!! 

 だったらちゃんとした地位に就ける方法を教えろよ!!」

『くくッ、ぷぷぷ、じゃあ学校に通いなさい』

「……学校?」

 

 女神様のアドバイスは、ムカつくほど的確だった。

 

『あなたの今の魔法の実力なら、保証人が居れば推薦を貰えるはずだわ。

 そうして貴族向けの学校を卒業すれば、自然と地位も職も得られるわ』

「俺の保証人になってくれる人間はいるのかよ」

『今さっき、近くの教会の人間に神託を送ったわ。

 あなたが望むのなら、そこの人間を使いなさい』

「なるほど、学園編ってことですね」

『そうそうそれそれ。人脈がダメなら、人が集まるところに行けばいいのよ』

 

 考えてみれば、俺は前世の記憶もある。

 これから学校に通っても楽勝じゃんか!! 

 それで今度こそ、周囲をあッと言わせてやれる!! 

 

 こうして、俺の新しい生活が始まった!! 

 

 

 

『あなたに足りないのは、常識だと思っていた。それを学ばせればマシになると思ってた。

 だけどそれ以前に決定的に、あなた自身の品性が下劣だと言うことね』

「……」

 

 俺は貴族も通うこの国の学院に通い、──ひと月で退学させられた。

 理由は単純だ。学校で一番だという貴族令嬢のステータス画面を、新しく取得した鑑定スキルで勝手に見たからである。

 

『自分のステータス画面を見て、何も思わなかったの? 

 他人のを勝手に盗み見て、プライバシーの侵害だと思わないの? 

 普通に考えてコンプライアンス違反だわ』

「異世界まで来てコンプライアンスなんて言葉聞きたくない」

『でも当然じゃない、ステータス画面には数多の個人情報が含まれているもの』

「だったら性交の回数とか誰が初めてとか書いておく必要ないだろ!?」

「あなた達を管理する為にステータス画面は有用なのよ。

 衛生の観点から言って、誰と誰が性交したかもログを残しておく必要があるの』

 

 そう言う意味ではあのお嬢様が貞淑じゃなかったのが悪いわね、と女神様は笑っている。

 

『有能な人物を探すとか言ってたけど、結局ステータス画面の覗き見をして品定めしてただけじゃない。

 自分の前世より文明の発展していない野蛮人のくせに……そうとしか思ってないからあなたは周囲に馴染めず、蔑まされるのよ』

 

 女神様はいつだって正論だった。

 だからこそ、ムカつくのだ。

 

「だったら最初からステータス画面なんて作るなよ!!」

『だから言ったじゃない、管理するには有用なのよ』

 

 俺の逆ギレに、女神様はため息交じりにそう答えた。

 

『最近多いのよね、ステータス画面があるってはしゃぐあなたみたいな転生者。

 心無い私の支配下じゃない世界の連中は、これを奴隷の焼き印だって言う者もいるくらいだから、もっとあなたみたいに有用性を理解してくれたら嬉しいのに』

 

 その言葉に、俺は怒りが冷めて行った。

 この女神は本当に最初から、自分が管理するに役に立つか否かでしか、俺たちを見ていない。

 

 そこには、俺のような欲望すらない。

 ただただ家畜を効率的に管理し、シミュレーションゲームをするかのように数字の増減を楽しんでいた。

 

『まあ結局のところ、あなたは前世から何も変わってない。

 ブラック企業の社畜に甘んじて、何も進歩しようとしていない頃と同じ。

 私のアドバイスにタダ従うだけの操り人形。自分の目標も明確にせず、そのくせ反省しないで他人を見下す。失敗して当然よ』

 

 だがその言葉は、俺の逆鱗だった。

 

「ああッ、そうかよ!! 

 じゃあもうあんたの助言なんていらない!! 

 何が天啓だよ、とんだクソスキル寄こしやがって!!」

『その何の価値もない自尊心の高さと、コンプレックスを何とかしないとどうにもならないわよ。

 まあ、これは最後の助言になりそうね。ところで──』

 

 俺は、忘れていた。

 この女神の性格が、最悪なほどに終わってることに。

 

『先ほど、私の本体(・・)から通達があったわ。

 この世界が滅びるそうよ。ほら、あそこを見なさい』

 

 その直後だった、いつも景色の一部として存在していた世界樹が、雷鳴によって真っ二つに引き裂かれたのは。

 

 空には、龍の顔を持った魔王が、俺たち人類を見下ろしていた。

 

『それじゃあ、あなたの今後のご栄達をお祈りしておきます』

「ちょ、そんな定形メールみたいな言葉で俺を見捨てるなよ!!」

 

 しかし、応答は無かった。

 俺が1500ポイントも支払って得た『天啓』のスキルは、ステータス画面から跡形も無く消え去っていた。

 

 この世界にたった独りになった俺は、ただ燃え盛る世界樹を見上げ途方に暮れるほかなかった。

 

 

 

 

『私は、あなたに全てを与えた。そう私を嫌う権利さえも。

だけど、私を必要ないと言うことだけは赦さない。

私は文明の女神メアリース。その私を要らないということは、文明の恩恵が要らないと言うのと同じ。

惨めに穴倉で夜の寒さに震え、獣の遠吠えに怯えて生きればいい』

 

そんな最後の言葉が彼に届かぬと分かっていながら、女神の分体は天上から冷酷な視線を愚か者に向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




『女神の天啓』、どんな叡智でも教えてもらえる最強のチートスキルだったんですけどねー。
使い方が悪いと、どんなスキルだろうと役に立ちませんよね。しかもスキルの方から見捨てられるとか皮肉なお話でした。

きっと彼はこのことをバネに、魔王を倒す勇者に成長してくれることでしょう!!
多分、きっと、メイビー……。

皆さんはこの究極のチートスキル『女神の天啓』を欲しいでしょうか?
それではまた、次回。
今度こそ、アンケートの結果を反映いたします!!

次回はどんな話が良いですか?

  • 魔王様と勇者スズのお話
  • 女神二柱のやらかし録
  • 魔王様の姉(クソガキ)襲来!
  • 他の勇者たちの動向とか
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