《完結》魔王「拾った汚いガキを最高にカッコいい勇者にするはずが、いつの間にか娘になってたんやが?」   作:やーなん

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私は前回、前書きで今回はアンケートを反映すると言いました。
ごめんなさい、それ次回でいいっすか?
前回を書いて新しくネタ思いついちゃって。

作者は嘘吐きではないのです。ただ計画性が無いだけなんです。



悪役令嬢「チートアイテム手に入れたわ」

 

 

 

 私は、■■ ■■。どこにでもいるOLのはずだった。

 

「我が名は、メアリー・スー。この世界の神を名乗っている者よ」

 

 そんな私は、目の前に会社に居そうな神経質な上司みたいな女神に遭遇した。

 

「いやいやメアリー・スーって、冗談ですよね?」

「勿論、その名がどんな意味か理解して、“我々”はそう名乗っているわ。

 それよりあなた、死んだわ。過労死よ。

 可哀想だから別の世界に転生させてあげる」

 

 女神様は資料を片手に淡々とそう述べた。

 え、うそ、マジで死んだの、私? 

 

「……あの、会社の仕事……」

「ああ、あなたの所属していたブラック企業なら、こちらの規定でコンプライアンス違反だから倒産させておくわ。

 最近こういうパターン多いのよね」

「はぁ……」

 

 ああよかった、とにかく仕事の心配はしないですんだ。

 

「労災で死亡したあなたには、来世に相応の優遇が認められるわ。

 ある程度の希望は聞くけど、転生先はどんな世界が良いかしら」

「じゃあ、生前に好きだったゲームみたいな世界とか大丈夫ですか?」

「構わないわよ。……ああ、あなたの所持してたゲームソフトに、私の管理下の世界がモデルになった代物があるわね。とりあえずそれでいいか。

 それじゃあ、ステータス画面を表示するからそこにポイントを割り振りなさい」

 

 私の目の前に、ステータス画面が開かれる。

 私に与えられたのは、約5000ポイント。スキル獲得のレートを見るに、多い方だと思う。

 とりあえず、異世界転生物だと定番のスキルは取っておこう。

 今度はブラック企業に勤めないで済むように、境遇には多めにポイントを割り振って……。

 

(以下略

 

 

 こうして、私は新しい世界に転生することになったのだ!! 

 

 

 

 §§§

 

 

 確かに、私は好きなゲームの世界に転生したいと言った。

 境遇にも多めにポイントを割り振った。

 

「見て、あなた。女の子よ!!」

「ああ、この子は我がアークヤーク侯爵家の宝だ!!」

 

 アークヤークって、そんなアホみたいな安直な家名で公爵といったら、この世界は私が以前ハマった乙女ゲーム『ゆぐどら☆りーす』じゃない!! 

 そして私はその公爵家の一人娘。と言うことは、自動的にそのゲームの主人公をいびり倒す悪役令嬢、レイン・ジョーシン・アークヤークってことじゃない!! 

 

 このキャラクターは『ゆぐどら☆りーす』のどのルートでもろくな末路を辿らない!! 

 婚約者である第一王子とヒロインとの仲に嫉妬し、影からイジメてそれが発覚し婚約破棄、田舎の神殿に送られ挙句、後に盗賊が村に襲われて死んだと数行で説明される。

 ほかのルートでも似たようなものだ。

 そもそもこの『ゆぐどら☆りーす』の世界観がシビアで、恵みを齎す世界樹の恩恵を独占する三国と、その世界樹を奪おうと画策する悪の帝国との戦いを描いている。

 

 第一部は学園編で、第二部が戦争編となるが実質攻略キャラとの個別ルート。

 最終的にヒロインが世界樹の巫女として覚醒し、この世界に世界樹の恵みの力が溢れてゲームエンドとなる。

 この世界は資源が枯渇しかかっており、世界樹の真下の三国以外は悲惨な描写で貧困が語られていて、使い終わったキャラを盗賊に襲われて殺されるなんて雑な処理をされても当然と言えるような世紀末状態なのだ。

 

 私、こんな世界に転生させてなんて頼んでない……。

 

 こうなったら、私が何とかしてこの世界を救うお膳立てをするしかない。

 実のところ、それは可能なのだ。

 

 実は、『ゆぐどら☆りーす』の世界で最重要ポジションとなる世界樹の巫女はヒロインの唯一無二ではない。

 この世界の攻略キャラたちは皆、勇者候補であり王家の血を引く者達。

 この世界の貴族とは、祖先が伝説の勇者であり、その末裔なのだ。

 どういう理屈かは知らないが、勇者の力を発現させた男女が真実の愛によって結ばれた時、そのカップルは真の勇者と世界樹の巫女となるのだ。

 

 公爵家の令嬢である私も、当然濃い勇者の血を引いている。

 その力を発現させることは、当然可能だ。むしろヒロイン並みの資質を持っていると言える。

 

 つまり私でもヒロインの代替は可能なのだ!! 

 私が破滅する要因は全て取り除いて、ハッピーエンドでこの世界の人生で勝ち組になってやる!! 

 

 

 

── からんからん ──

 

 私の目の前で、なんとなく既視感を抱く魔女っ娘みたいなとんがり帽子の女の子が、サイコロを振っている。

 

 

 

「ううッ、そんな、どうしてお前が……」

 

 そして私の今生の父親が、ベッドで重い病気で死にかけている妻に縋りついている。

 その痛々しい姿に、使用人たちも涙している。

 

 これは、ゲームにも語られてたシーン、だと思う。

 レインこと私が父親に甘やかされて育ったのも、母親が幼い頃に病気で亡くなったのが原因らしい。

 

── からんからん ──

 

 そんな重い空気の中で、誰も認識されずにその少女はサイコロを振っている。

 サイコロを、もう片手に持った天秤の上にコロコロと投げている。

 天秤の皿にサイコロが投げ入れられる度に、どんどんと天秤は傾いて戻らなくなる。

 私は、その光景を見てなんとなく理解した。

 

「《アイテムスティール》」

 

 私は彼女に向けて、転生前に獲得したスキルを使用した。

 

 きぃ、と傾いて片方の皿が下まで落ちようとしていた天秤が、止まった。

 なぜなら、少女が投げていたサイコロを私が横取りしたからだ。

 彼女はぽかんとして、私が手にしているサイコロを見ていた。

 

「だ、旦那様ッ、奥様の容態が!!」

 

 屋敷付きの医者が声を上げる。

 今まで死の向かっていたお母様の病状が安定したのだ。

 

 とんがり帽子の少女は、頬を膨らませてムッとした様子で私からサイコロを奪い取ると、そのまま初めから居なかったかのように消え去った。

 

 やっぱり。

 彼女は死神だった。

 

 私は転生前に、“運命可視化”というスキルを獲得していた。

 たったこれだけで2000ポイントも使用するスキルだったが、今のように死の前兆さえも把握できるようになった。

 

 このスキルを使えば、攻略キャラたちと原作ヒロインとの破滅フラグをことごとくへし折ることも可能でしょう!! 

 

 めざせ、ハッピーエンド!! 

 

 

 

 

 ある時、私は父に連れられ、王宮に来ていた。

 

 私と婚約者である王子との初対面だ。

 このシーンは、後に王子ルートで回想が入る。

 

 幼い頃のワガママな私と、王子の折り合いがつかなくなったという話だ。

 だけど私はワガママなんてしないし、お淑やかに王子の前ではいい子で居るつもりだ。

 

 だけど──。

 

── からんからん ──

 

「あ、あちッ」

 偶然、私の手がティーカップに当たってドレスに熱いお茶が掛かった。

 

「なにしてるの、早く拭いてよ!!」

 

 私は涙目になって侍女たちにそう怒鳴った。

 そして、ハッとなった。心配そうにしていた王子が私の態度に驚いた表情を向けたのだ。

 

── からんからん ──

 

 その音を、今度は聞き逃さなかった。

 虚空に寝そべるように横になっている死神の少女が、億劫そうにサイコロを天秤の上に投げていた。

 

 私はムカついて彼女に近づいた。

 天秤の上のサイコロの出目は、2だった。

 私はサイコロを手に取って、出目を6にした。

 

 すると、私の行動に不思議そうにしていた王子が、こちらに歩み寄ってきたのだが。

 

「あッ、痛ッ」

 

 なぜか彼は何もないところで転んでしまった。

 

「大丈夫ですか、王子!!」

 

 私は慌てて彼の手を取った。

 

「だ、大事ない、恥ずかしいところを見せた」

 

 だが王子は気恥ずかしさを隠すようにすぐに立ち上がった。

 私が侍女に怒鳴ったことなど、もう忘れているだろう。

 

 死神はムッとした表情をした後、また消えていった。

 ふん、ざまあないわ!! 私のハッピーエンドは邪魔させないわよ!! 

 

 

 

 §§§

 

 

 私も、魔法学院に入学する歳になった。

 

 王子との関係は、良好となったままになったが、私は油断しなかった。

『ゆぐどら☆りーす』のヒロインはよその国の色ボケ先王のご落胤という素性の持ち主であり、ヒロインの出身の村は彼女を飼い殺す為だけの場所なのだ。

 実は他国の王族という特別な血筋は、学園編が終わると明かされる。

 そうして、それまで身分の釣り合いの取れなかったはずの攻略キャラたちとの仲が認められるのである。

 

 彼女が私と同じ学校に、しかも十五歳よりも早く入学してくるのは詳しい設定は語られない。

 ただ年下で特例で入学を許され、しかも王子たち攻略キャラと仲良くしている姿は原作レインを嫉妬に駆り立てた。

 

 しかし私は何とか仲良くなってみせて、懐柔する予定だ。

 私のような身分の高い人間に親身にされれば、ほかの浅ましい連中も寄り付かないだろう。

 原作ヒロインのイジメは、なにもレインだけの仕業ではないのだから。

 

 そうして、待ちに待った入学式。

 

 

 ────原作ヒロイン、スズ・カレイシアは現れなかった。

 

 

 私の背筋に、冷たいモノが走ったのは気のせいではなかったはずだ。

 なぜなら死神が私を見てくすくすと笑っているのだから。

 彼女はそっと、私に天秤を見せつけるように差し出してきた。

 

 天秤の皿の上には、血のように真っ赤なの出目のサイコロが乗っていた。

 

 経験則で、私は知っている。

 このサイコロの出目が低いほど、悪いことが起こるのだと。

 そして天秤の皿が片方に傾けば傾く程、極端なことが起こる。

 

 

 赤い出目のサイコロが乗る天秤の皿は、一番下まで傾いていた。

 

 

「ッ! 《アイテムスティール》!!」

 

 その事実を認めたくなくて、私は死神から天秤ごとスキルで奪い取った。

 すると彼女は涙目で返してと言わんばかりに寄ってくるので、頭を押さえて押し退けた。

 しばらくそうしていると、彼女は逃げ帰って行った。

 

 ふん、ヒロインが居ないと言うなら、当初の予定通り私がヒロインになれば良いだけの話よ。

 この天秤とサイコロがあれば、この世界を全クリするのも容易いことだわ!! 

 

 

 そうして、攻略キャラたちと親密になり、落として私の虜にしていると、事件が起こった。

 

「《鑑定》ッ!!」

 

 その一言が、私の悪夢の引き金だった。

 見るからに平民出身らしい少年が、私に向かって鑑定スキルを使用したのだ。

 

 つまびらかにされる、私のステータス画面。

 数種類の項目に分けられて展開されるそれには、私の乙女の秘密まで網羅されていた。

 

「だ、誰かッ、この無礼者をなんとかして!!」

 

 それを見ていた周囲の人間が、ハッとなって彼を取り囲み職員室へと連行する。

 私は恥ずかしくて、その場に蹲った。

 

「何の騒ぎだ!!」

 

 やがて、そこに同じ学年であるの王子もやってきた。

 

「お、王子様、私は、私は公衆の面前で辱められました……」

「なッ、なんということだ!!」

 

 性格もイケメンな王子は周囲から事情を聴くと怒り心頭と言った様子だった。

 

「どういうことだ、レイン!! 

 貴様、婚前の身でありながら、他人と姦通していただと!!」

「えッ……なんのことです?」

「とぼけるな、ここにいる皆が見ていたのだぞ!! 

 どうしてもその身が清らかであると言うなら、自らのステータスを提示してみろ!!」

 

 で、できない……。

 攻略キャラの一人は女好きキャラで、親密度が最高になるとシーンの最後で意味深な暗転と共に翌日となっている。

 つまり、そういうことだ。

 

 私はその場をごまかして、逃げ出した。

 

 なんで、どうして、こんなはずじゃなかったのに!! 

 

 

「あの、もし。よろしいでしょうか」

 

 私が学園の中庭で泣いていると、見知らぬローブの女が現れた。

 学園の教師ではない。地味な女だったが、妙な存在感がった。

 

「今は放っておいてよ、見たら分かるでしょ!!」

「いえ、大事な事なので。私の妹の神器、天秤とサイコロを返して貰わねば」

 

 その言葉に、私は思わず顔を上げた。

 

「申し遅れましたが私は……名乗るほどのモノではありません。

 周りからは“観測を司る者”、“使者”、“門の番人”などと呼ばれています。一般的な分類としては、あなたが転生前に会った彼女と同じ存在かと」

「か、神様……?」

「そう呼ばれるようなことはしていませんが」

 

 そう言って、彼女は虚空に視線を向けた。

 

──そしてアナタ(<●> <●>)と目が合った──

 

「どうか、読者の皆様におかれましては、我がことなど記憶するに値しませぬ故にどうか忘れてください」

 

 なに、このひと、何を言ってるの? 

 

「あなたが好き勝手に使用していた神器、天秤と神賽はそれ単体では不完全な道具。何をしたいか、までは運命を操れても、その結果がどうなるかまでは知ることが出来ない。

 そうしてどうなったか、今あなたがよくご存じかと」

「わ、私がこんな目に遭ってるのも、私の所為だっていうの!?」

「天秤が傾けば、水平に戻る。ただそれだけのことですよ」

 

 地味な女神は、ごく単純に自然なことを諭すように語った。

 

「もしその道具を完璧に使用したいのなら、我が権能を利用するほかないのです。

 私は観測を司る者。過去現在未来、その全てを知ることができる。ただそれだけの存在なのです。

 今回の事は気の毒でした。いえ、妹の遊びに乗ったあなたも悪いのですが」

 

 彼女の後ろから、死神がてへぺろと顔を出してかわい子ぶっていた。

 私は今更ながらに気づいた。このクソガキに弄ばれたのだと。

 

「じゃあ悪いと思ってるなら責任取ってよ!! 

 そこの性悪のせいで私の人生滅茶苦茶よ!!」

「他人の人生をかき乱しておいて、よくそんなことが言えますね。

 まあとにかく、神器は返して貰います。それはヒトの手には余る代物だ」

 

 それに、と地味な女神は目を瞑って首を振った。

 

「我が権能は観測するだけ、というだけなのですが、これは副次的に“結果を確定させる”という作用を齎します。

 試しに、神賽を振ってみてください」

 

 私は、アイテムボックスから神器の天秤とサイコロを取り出し、振ってみた。

 私のこの状況をなんとかてくれ、と念じながら。

 

 かん、とサイコロは天秤から弾かれ転がりずっと止まることなく転がり始めた。

 運命を操る天秤とサイコロが、私に対して機能していない。

 

「もう、あなたの最期まで、私は観測しました」

 

 ただ、見るだけ。だが絶対。

 私の人生はもう既に一本道に確定していた。

 

「これはもう、あなたには必要のないモノだ」

 

 彼女は呆然とする私から、神器を抜き取った。

 そして、口元に手を当てて笑っている少女がとことことこちらにやってきた。

 

「ごめんね、同じ元日本人だったから、からかっちゃった」

 

 耳元で、囁くような少女の声。

 私が顔を上げると、初めて正面から彼女を見た。

 

 ……ああ、道理で見覚えのある平たい顔立ちだと思った。

 

「やっぱり可哀想だから、あの女のところでもう一回転生してね? 

 と言うことだから、ダーリンおねがーい!!」

 

 この世のどこかにある、“門”が見える。

 全貌さえ把握できないほど巨大な概念の扉が、ほんの僅かに開いた。

 

 ──その奥から覗く“何か”の視線によって、私の確定した絶対の未来をも切り裂いて、私は死亡した。

 

 

 

 

「あなた、やるわねぇ。“あの御方”の手を煩わせてただ死ぬだけなんて。普通は魂も残らず消滅させられるのに」

「……次は普通の現代日本に転生させてください」

 

 もう、悪役令嬢はこりごりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




ところで、次回では無いですが、前回と今回のテンプレ転生者のお話を書いてみて、ここまで書いたら後はテンプレ追放もの転生者なんてものも思いつきました。
多分本筋に関係ないと思うので、これ読みたいかまたアンケート取りますね。

それでは、次回こそ!!
本当にアンケートの結果を反映させます!!
ではまた次回!!

そろそろこれ、短編で収まらなくなってきてるような……。

追放もの転生者くんが酷い目に遭うお話、いる?

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