《完結》魔王「拾った汚いガキを最高にカッコいい勇者にするはずが、いつの間にか娘になってたんやが?」   作:やーなん

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前回のアンケートですが、やっぱり物語の進行に必要ない話は保留にすべきと、結論しました。
そこで、逆に考えればいいんだ、物語に組み込めばいいんだ、と。
問題は作者にその腕があるかという話ですがね!!

とにかく、今はそう言う事にしました。アンケートに回答して下さった皆さんに改めて感謝を!!


魔王「あり余ると逆に無価値になるもんや」

 

 

 わての仕事って、待ち時間多いねん。

 この間、聖樹教国に発破掛けたんやが、一日二日で結果が出るわけでもない。

 

 農業と同じや。種を植えてすぐに目が出るわけでもあらへん。

 だから暇潰しに娯楽小説とか二次創作とか、アーカイブ読み漁ってるんや。

 

 滅ぼした世界の文化が希少なら、それの保存をするのもメアリース様の仕事やし。

 

 

 オリジナルや二次創作問わずに、作品のタグに主人公最強とかあるよな? 

 あれの基準って何なんやろな? 

 

 主人公が絶対に負けなければ最強なんか? 

 そう言った作品の登場人物は、メアリース様みたいな造物主にも勝てるとか言うんやろうか。

 

 まあ、わてに言わせれば、ズレとるわ。

 例えば、青春スポーツものにわてが登場して、主要キャラ全員皆殺しにしたら、わては最強なんか? 

 そんなん顰蹙もんやろ。

 逆にサッカーや野球のボールで主人公が対戦相手を皆殺しにしたら、それはタグ通りの最強やがな。それを読者が求めとるかどうかは別にして。

 

 何が良い言いたいかと言うとな、強さには上限があるって話や。

 スポーツものならスポーツのルールの範囲で、わてら魔王なら滅ぼす世界の強度まで。

 前にハーレ兄ぃに聞いたんやけど、今やっとる仕事でわてら魔王一族にガチンコでタイマン挑めるめっちゃ強い魔法少女に挑まれたらしいんよ。*1

 

 それでどうなったと思う? 決着は付かなかったんやと。

 腕相撲したら、土台が壊れて無効試合になった、そんな感じや。

 

 わてらの全力が、その世界に耐えられんかった。

 せやから、わてらと、その魔法少女も、世界最強。同列一位。どちらかが死ぬまで争う意味が無い。

 

 せやから、わてら魔王一族と、それを産み出したお母んやメアリース様を同列に語って強さ比べするのはナンセンスなんやな。

 どっちが強いか論争したいなら、最強スレでも行ってき。邪神アザトースも上位常連やって聞いたで。

 

 ほな、なんでこないな前置きをしたかと言うとな。

 

「兄貴ぃ、ゲームしよ♪」

 

 わてより序列が上の姉にして、わてより後に産まれた妹が来てるんよ。

 何が言いたいんか分からんだろうけど、わてもよくわからん。

 

 元々、わてらは序列が上の一族の者を兄と敬っとった。

 それがこの妹、若い癖にわてより序列が上になったんや。わてらの序列って、お母ん達への貢献度なんやね。

 と言っても、わてら一族はお母んの元でアットホームな仲良し家族やねん。序列を気にする奴なんて、そもそも魔王に選ばれんし。

 

「これ読み終わったらな」

 

 わては暇潰しにニュースサイトでスキルの不具合や調整の項目を見ていたんやけど、なんやこれ。

 “運命可視化”とスティール系のスキルを併用して意図せぬアイテムが取得できる不具合を修正? 誰がこんなバグ見つけたんや。

 まあ、最近はスキルの拡大解釈で、何でもアリみたいな活用方法発見されては修正が頻発されとるし。あれはもう頓智やもんな。

 

「兄貴ぃ~、早く遊んでよ~」

 

 あーもう、わーったわーった!! 

 今日は何して遊ぶんや? 

 

「ハンモン*2の最新作持ってきた!!」

 

 ほう、それならわてもやりこんでおいたわ。

 わての最強厨パーティでぼこぼこにしたる。

 

 

 …………

 …………

 ………………

 

 

「ええ~ざっこ♪ つよつよ種族のパーティなのに使ってる兄貴がよわよわなんですけどー♪ 

 兄貴の技構成よわよわ♪ 状況判断ざこざこ♪ フルアタックのごり押しばかりでよくやりこんでるなんて言えるね!!」

 

 くそッ、このクソガキ!! 

 なら他のゲームで分からせてやる!! 

 

「きゃはははは!! やめたら、このゲーム♪」

 

 ……なあ、姉にして妹よ、思うにお前さんの悪の方向性ってちょっとズレとらんか? 

 まあとにかく、こいつがわての姉にして妹、序列六位のローティーや。

 

 わてらのようなステレオタイプな魔王と違って、見た目は人間の子供にしか見えん。

 龍より人の割合が大きく、拡張性に優れ残虐性が強くて、何よりも女性なんやね。

 そう、性別があるんよ。わてらと違ってな。

 

 なんでも、最近の魔王ってのは倒すべき巨悪と言うより、ヒロインとしての側面も持つようになったとかで、こんなクソガキみたいな容姿なんだとか。

 性格までもクソガキそのものじゃなくてもええやん。

 

「年上なだけの役立たず兄貴だけじゃ面白くないから、他に誰かいないの~♪」

「お前に他の誰かを相手させたら、壊れるやん」

 

 まかり間違ってもこいつの遊びに勝ってしもうたら、癇癪でそいつ殺しかねん。

 どないしたもんか……。

 

 そこでふと、わての視線にさっき読んであったニュースペーパーの一文が目に入った。

 ちょいとイタズラ心が芽生えたわ。

 

 魔王の権限で、スキル“運命可視化”を取得。

 ……ほな、居たわ。玉座の間やって言うんにぐーすか床で寝とるわ。

 

 わてがこいつに視線を向けると、鼻提灯がぱちんと弾けた。

 

「うーん、私に熱い視線を向けるのはだーれだ!!」

 

 何もいないはずのそこに、運命の擬人化が浮かび上がる。スキルが必要無いほどに。

 女子中学生が魔女っ娘のコスプレしたみたいな小娘が。

 見た目だけなら、年齢はローティーと同じくらいの小娘やからな。

 

「げッ、兄貴、こいつってうちらの敵じゃん」

「あれあれ、リューちゃんの子供にこんなカワイイ子居たんだ!!」

 

 小娘が小娘にぴょんと抱き着いた。

 はは、ローティーの奴、めっちゃ嫌そうにしとるわ。

 

「リューちゃん!? お前、ママのことそんな呼び方してんの!?」

「うん、人間だった頃からの知り合い。知り合いの子供に会うとどうしてこんなに可愛がりたくなるんでしょうね!! 

 まあ、あなた達一族って百人以上の大所帯だけど」

 

 ほーん、それは初耳やわ。

 

「なんや気に入られたみたいやな、姉貴。

 そいつに遊んでもらったらええやん」

「でもこいつ、メアリース様とバチバチじゃん」

 

 まあ、そう見えるんはこいつが若いからやろなぁ。

 わてはじゃれ合ってるようにしか見えんけど。

 

「あれはあのクソ女が悪いんですー。

 昔ヒトのこと、研究材料としてバラバラにして殺そうとして、最終的に魂は別のクローン体に移植するからノーカン、みたいなサイコマッドな錬金術師だったんですよ。

 それが自分の造った人類に対して良いヒト面してたらムカつきません?」

 

 ……ノーコメントで。

 なんや、こいつ頻繁にメアリース様にちょっかい掛けるから因縁があると思ったら、めっちゃ恨まれるようなことしとるやん。

 

「私のことはアンズちゃんって呼んで良いからね!! 

 お名前教えて、リューちゃんの娘さん♪」

「……私はローティーちゃん」

 

 アンズちゃんに抱き枕みたいに抱き着かれているローティーは渋々名乗った。

 ほな、ガキは帰んな。

 

 

 

 …………

 …………

 ………………

 

 

「はぁ~!? なんでお前首位なのに連続で無敵アイテム引けるわけ!!」

「あれあれー、どんけつなのにダッシュアイテムしか引けないなんて運が悪いですねー」

 

 いや、お前ら帰れや。

 わての玉座の間でレースゲームすんなや。

 

「私これでも運命の女神やってるんで。乱数偏らせるのとかよゆー」

「なにそれ、ズルじゃんチートじゃん」

「ゲームに何にも手は加えてないからチートでもズルでもありませーん!! 

 そっちだって私が妨害しなかったら魔王の能力値でまともに勝負に成らないじゃないですか」

「じゃあ今度はこのゲームが想定してる対象レベルまで能力を落とすよ。あんたもそれでいいね!!」

「いーですよー、ふふふー」

 

 こいつら、精神年齢が同じレベルやわ……。

 

「ローティーちゃん、次は六位になるよ」

「はー? ゲームの途中に負け惜しみ~? ちょっと早いんじゃない♪」

「でもほら、そろそろトゲ付き甲羅が飛んでくる」

「は? このタイミングでッ!?」

 

 女神の予言は的中した。

 普通の人間レベルで対戦してた二人だったが、ローティ―が首位を独走してたところ他のプレイヤーの放った回避不可能の妨害が彼女を直撃したんや。

 

「はーぁ!! お前ズル無しって言ったじゃん!!」

「ズルして九位って情けなくないですか?」

「ムカつくー!!」

 

 ……スズもこれくらい年相応ならええんやけどなぁ。

 まあ、この二人は見た目通りの年齢や無いんやけどな!! 

 

「つまんなーい、帰る!! 

 ムカつくから今の担当の世界の人間イジメてこよ!!」

 

 そんでローティーは帰って行ったわ。

 早う帰れや。うるさいんや、お前らは。

 

「あれあれ、妹さんの遊び相手してあげたのに、お礼もなしですかー?」

 

 せやった、まだうるさいのが残ってたわ。

 まあ話が通じるだけ、こっちのがマシか。

 

「わてがやれるもんに、欲しいのがあるんか?」

「いえ、全然。やろうと思えば何でもできるので。私これでも全知全能ですから」

 

 ホンマかいな。

 じゃあ暇潰しになんか予言でもしてくれや。

 

「じゃあここでおひとつ。あなたのお気に入りの勇者さん、自分の力で貴方のところにたどり着けません(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 …………。

 

「あれ、ネタバレはお嫌でしたか?」

 

 この女、マジで性格悪いわ。

 

「私の予言は絶対じゃないので、あなたが今から恣意的に手助けすれば、あなたのところに来れるかもしれませんね。

 そんな相手を、あなたが望んでると言うなら、ですけど」

 

 わてと直接の面識どころか、こいつはこの世界に来たのも初めての筈や。

 お母んやメアリース様と接しているわてには分かる。この女神、ホンモノだ。

 

 知ろうと思えば何でも知れて、やろうと思えば何でもできる。

 メアリース様のように扱える技術が優れてるからとかじゃなく、お母んのように人の悪意を介在して全てを知れるわけでもない。

 本当の意味での、全知全能。それ以上でもそれ以下でもない。

 

 わては恐怖を知らない。痛みや恐怖は、生物の生存本能やから。

 せやから、わてにそんなものが備わってることに、今初めて気づいたわ。

 

「そんなに緊張しなくてもいいのに。こんなのただの特技ですよ? 

 ただのフレーバーテキストみたいなものです。

 貴方は自分の母親に指定された以外の世界を滅ぼすことは出来ない、それと同じです。

 私は貴方の母親とあのクソ女神より格上だけど、気に入らないからって消し去ることも出来ない。

 私の全知全能なんて、その程度なんですよ。出来る、というだけ。ゲームにしか使わないオーバースペックのパソコンと同じ。使われない核爆弾と同じ」

 

 その絶大なる力を、なんてことのないちっぽけなものだと、当人は認識しとるようやった。

 ちなみにわて、さっきから一言も喋っとらんからな。

 

「私、悟り妖怪みたいに心を読めるキャラクターが一人で相手に一方的にまくし立てるみたいなシーン、好きなんですよね。

 まあ不愉快と思われる場合が多いですけど」

 

 分かっとるならやめろや。

 

「えー、せっかくの特技の使いどころなんですから、良いじゃないですか。

 ……ああ、せっかくの楽しみを私に邪魔されて不機嫌なんですね?」

 

 わかっとるなら話しかけるなや。

 なに笑ろてんねん。腹立つわ。

 

「ついさっき、お前を見れるスキル関連で不具合があったらしいが、なんか知っとるか?」

「ああ、あれですか!! 

 そのスキルってどうやら運命の道筋が私に見えるらしいですね。

 私は運命を司る女神、運命そのもの。そんな私がどこに居るとか、可笑しくありません? 

 貴女の母親は、悪そのものはどこに居るんですか? それと同じですね」

 

 ぱん、と話を変えるように彼女は手を叩いた。

 

「それより!! 最近、あなた達が得られるスキルの拡大解釈で、私の神器を獲得して運命を捻じ曲げるってことをやった人が居たんですよ!! 

 それって回復魔法の一言で何でもできるぐらい横紙破りだと思いません? 

 いや、運命を盗むって、言葉だけならかっこいいとは思いますけど。これは私からすれば苦情モノですよ!! 

 その人間は私の領分を侵したので、最終的に死んでもらいました」

 

 まあ、それはわかる。

 神の領分を侵犯するのは、あってはならないことや。

 むしろさっぱりと殺すだけ慈悲深いくらいやろうなぁ。普通の神なら呪うし苦しませる。

 

「今頃、当人の望み通り、現代日本に転生して馬になってレースしてるみたいです。次の来世は馬系の獣人だとか。最近のトレンドがよくわかってますね!!」

 

 メアリース様なにしとんの!? 多分やけど絶対そんな風に願ってないやろ。

 てか、もうこの世界ぶっ壊した後のこと考えとるんか。相変わらず気が早いわ。

 

「私はこれから、彼女の出るレースでサイコロを振ってこようと思います。

 私って安直な最強ものとか嫌いなので。毎回レースで波乱の展開にさせちゃうぞー!!」

 

 止めてやれや!! 

 

「あ、そうそう、あなたのお兄さんに言っておいてください。

 誰がニャルラトホテプですか!! ってね、私にはぷりちーなお顔があるんです!!」

「それ、いつの話なん?」

「貴方にとっては百年以上昔かもしれませんが、私にとっては三話前です」

 

 思わずツッコミいれてしもうたわ。

 あと訳わからんこと言うなや。

 

「そもそも、あの二()もビビり過ぎですよ。

 あなた達が知っても、“あのヒト”は別に何とも思わないのに。

 むしろ知っていた方が、あなた達の管理には役立つのに。きっと何でビビってるか話したくないんでしょうね*3

 

 そこまで言って、なんやろか、この女神はイタズラを思いついたような笑みを浮かべた。

 

「あなた達が“聖地”と呼んでる“門”の先。

 あそこには私とダーリンの愛の巣と、義姉さんのお気に入りの瓦礫だけしかありません。

 私と、義姉さんと、幼稚で引きこもりな人間嫌いの全知全能というだけの私のダーリンの領域。

 ダーリンは人間嫌いを拗らせてるだけで、自分を認識した人間を消し去る以外は全く無害ですよ。

 

 あ、でも!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<●>   <●>

 

 

 

 

 

 

 これを読んでる“アナタ”は、人間でしたね!!」

 

 “アナタ”に向けられた視線を遮るように女神は前に出て、“アナタ”の反応を覗き込むようにして楽しんでいた。

 

 

 

*1
拙作“バッドガールズ・ダークサイド”を参照

*2
ハンドモンスター、縮めてハンモン。彼女が持ってきたタイトルの正式名称は『ハンドモンスター アルティメットオリハルコンG』。モンスターをハントして育てて六匹編成で対戦する全く新しいデザインのゲーム。シリーズ145作目の超ロングタイトル。

*3
なんであの二人がビビってるのか、別作品の『ラウンドテーブル』とかここと同じ世界観の作品で分かるよ!! byアンズちゃん




アンズちゃん「ちなみに、私のダーリンが引き籠ってるのは作者の頭のデキが絶望的だからです。自分より頭の悪い奴に産み出されるって耐えられないですよねー」

聖地に居るのは、某デップーや某文芸部みたいに、自分が創作物のキャラクターだと理解してる系の設定です。
ローティ―ちゃんのキャラに悩んで、結局出番が大幅に減りました。また登場させるから、今回は顔見せということで許してください。
次回はようやく、魔王とスズのお話。
積極的に読者を篩にかけるスタイルですが、今回のお話は世界観の根幹に当たるので、必要なお話でした。
お陰で魔王様はお疲れです。次でスズちゃんに癒してもらいます。

では、また次回!!

追放もの転生者くんが酷い目に遭うお話、いる?

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