《完結》魔王「拾った汚いガキを最高にカッコいい勇者にするはずが、いつの間にか娘になってたんやが?」   作:やーなん

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今回は勇者ちゃん視点です!!



勇者「真実はいつだって残酷だ」

 

 

 

 この一年、私の周りは慌ただしかった。

 

 ジークと一緒に帝国の裏切者どもを一人残らずあぶり出した。

 彼女の非道に耐えられなかった諸侯も一人や二人ではない。

 

 だが魔王軍は無尽の軍勢。消耗など知らぬ邪悪の群。

 その進行速度は人間とは比べ物にならない。

 

 大砲で、城壁を砕く。

 魔の軍勢が、敵勢を蹂躙する。

 

 私はその先頭で、師匠と共に敵を斬り殺した。

 ジークが指揮して、遊撃隊にハイボールさんが動くこともある。

 

 お父様に貰ったゲームだと、四天王は一人ずつ勇者の前に現れる。

 そうして一人一人倒されていき、勇者は魔王の元へと辿り着く。

 

 不思議だった。

 魔王様はなぜ、自分たちが悪役の物語を好むのだろうか。

 

 私達の仕事は、神にも認められた正当なる行いだ。

 戦場で巻き起こる邪悪と残虐も、母たるリェーサセッタ様に赦された必要悪。

 戦争無くして文明は無い故に、至高なるメアリース様もそれを否定することはできない。

 

 全ての人間は死後に御二柱の下へと導かれ、幸福な来世を約束される。

 

 だから殺す。もっと殺す。

 壊れ、救いのないこの世界の人々をこの地から掬う(・・)為に。

 

 そして、……お父様に喜んでもらう為に!! 

 

 

「お父様!! レジスタンスを指揮していた勇者を倒し、御二柱の下へ送りました!!」

「流石は我が娘ぞ」

 

 私の報告に、魔王様……いえお父様がゆっくりと頷いた。

 

「ジーク曰く、レジスタンスを支援してた他国から派遣されてた人らしいです。

 私、その人の首と一緒に聖剣を送り返して来ました!! ついでに見せしめに王宮も廃墟にしておきました!! 

 これで、私を恨んでくれるでしょうか、憎んでくれるでしょうか? 

 お父様の望んだとおり、私にふさわしい敵が出てきてくれるでしょうか……」

 

 私が怖いのは、お父様の期待に応えられないことだけ。

 でも私は信じるしかない。人間の強さを、可能性を。

 だからもっと苦しめないと、追い詰めないと。

 

 私の仕事は、魔王たるお父様の代行。

 お父様が出張ればすぐ終わってしまうこの世界を、できる限りゆっくりと追い詰めてその命を絞り出す。

 そうして出てくる強者を、全て殺す。

 

 そして、最後の勇者を殺した時、私の価値は証明される。

 この世界のありとあらゆる可能性を超越し、世界一つより価値ある“魔王の娘”として。

 

「我が娘よ。愉しめ」

 

 お父様はただただ慈しむように、私を見ながらそう言った。

 

「ゲームと同じだ。エンカウントした敵キャラを淡々と倒し、ボスキャラをどう倒すのか頭を捻るのと同じだ。

 そして誰しも、人生がある。それを弄び、自らの下へ導くドラマを作るのだ。

 そうして、自らに挑む者が現れるのを愉しむのだ」

「そのように考えた方が、よろしいのでしょうか」

「我は邪悪の女神の子、その娘たるお前もまた邪悪であるのだ」

 

 ……確かに、そうなのかもしれない。

 私の所業は神に認められた行いであろうと、この世界の住人には邪悪そのものでしかない。

 

「でもお父様、私はまだ、人間であることを捨てるのが怖い」

「お前はそれでいいのだ。

 お前は私には無いものを持っている。それを大事にするのだ」

 

 それは、いったい何なのだろうか。

 私はまだそれが何かわからずに、頭を撫でてくれるお父様に身を委ねた。

 

 

 

 §§§

 

 

「我が弟子よ、お前に教えることは全て教えた。

 お前ほど教え甲斐のない弟子は初めてだ」

 

 私の師匠の一人、“赤鬼”エンズ。

 師事してもう一年になる。

 

「いえ、師匠にはまだまだ教わることが沢山あります」

 

 師匠の私室、タタミという草の床が敷かれたドージョーという場所らしい。

 ここは師匠の故郷の建物を再現したのだとか。

 私達はそこで迎え合って、正座という足が痺れる座り方で相対していた。

 

「いや、無ぇさ。俺ぁ所詮腕が立つだけ。

 我が流派は、心も修める。俺にはそれができなんだ。

 だから魔王軍に志願した。敵を斬ってこそ武道の本懐。精神の鍛練のみで終わるのは惜しいと、こうしてここにいる」

「そう考えるのは当然の事では?」

 

 私にとって、武道とは敵を倒すモノだ。

 武器と同じで、実用性が重要。心を鍛えるなんて、余裕があるから出来ることだ。

 

「ああ、俺ぁ鬼人族。数代前から、メアリース様の恩寵の元、“人類”として生きて来た。

 だが、元はと言えば人喰いの化生の末裔よ。

 敵を前にして恐怖させ、力でねじ伏せた時こそ鬼の血が滾るのよ!!」

 

 師匠は、魔王軍に参加した時点で人権が無い。

 神官として高い地位にいるバンブスさんとは根本的に異なる。

 

 師匠は正真正銘、血に飢えたケダモノなのだ。

 

「だが……俺も老いた。

 そろそろ弟子に技を託す頃だとも思っていた。

 次辺り死ねば、リェーサセッタ様も寿命と判断されるだろう」

「…………」

 

 魔王軍の尖兵は、死なずの軍勢。

 死ねば、“次”の仕事先で何事も無く復活する。それが大いなる母たる神の祝福にして、呪い。

 寿命が尽きるまで、延々と悪鬼として地獄を彩り続ける。

 

「この仕事が無事完了したのならば、その時はスズ。

 お前と死合おう。お前が、師を超えるのだ」

「……はい、師匠。よろしくお願いします」

 

 私は手をついて頭を下げた。

 それが師匠に出来る、恩返しだと思った。

 

 なのに……。

 

 

「四天王“赤鬼”エンズ、討ち死になされました」

 

 ……師匠の、嘘吐き。

 

 

 

 私はその報告を、戦場で聞いた。

 

「そうか、エンズ殿が……」

 

 本陣で討ち死にの報告を聞いたジークは、黙祷を捧げるかのようにしばし目を瞑った。

 

「エンズ殿に、よき来世があらんことを」

 

 従軍神官たるバンブスさんがその場で祈りを捧げた。

 それで、ああ、と私は悟った。

 師匠と永遠の別れをしてしまったのだと。

 

 悲しくは、なかった。

 師匠の技はここにあるのだから。

 

「酒飲み友達が減るのはいつでも寂しいことです」

「スズ、辛くはないか?」

 

 哀愁を帯びた表情のバンブスさんと、ジークは心配そうに私を見て来た。

 

「いえ、大丈夫です」

「恐れながら総司令殿、もう一つご報告が」

 

 私達に伝令に来たハーピーが私の言葉のすぐ後に声を挙げた。

 その内容に、ジークは。

 

「魔王様の判断を仰ぐべきだろう」

 

 その言葉に、バンブスさんも賛成したのでした。

 

 

 

 §§§

 

 

 

 正直に言って、こうした再会は不本意だった。

 

「なるほど、自らの力で我が元にたどり着けぬ、か……」

 

 謁見の間にて、魔王様は彼を見下ろした。

 

「くッ、魔王ぅう!!」

 

 魔法の拘束具によって捕らえられ、屈強なオーガ二人に連行されてきたのは、聖騎士メドラウド卿だった。

 最初に会った時より、大分老けて見えた。

 

「聞いたぞ、お前は各国の精鋭を集め、遊撃に特化した部隊を作り指揮していた、と。

 楽しみにしていた。ああ、楽しみにしていたとも。

 お前たちが、我が娘の糧となり、朽ちていくのを」

「娘をッ、娘を返せ!!」

「今のお前に、その資格が有ると思うのか?」

 

 私としても、メドラウド卿にはあの時の雪辱を晴らしたいと思っていた。

 リースちゃんには悪いけど、頑張って腕と足の二本ぐらいで済ませられるくらい強くなるつもりだった。

 あんなに強かった彼が、こうして膝を突いている姿を見るのは忍びなかった。

 

「娘に会うのに、資格があるものかッ!!」

「なるほど、そこまでして会いたいか。そうかそうか」

 

 お父様は再会を楽しみにしていた相手の無様な姿に不機嫌になるかと思われたけど、思いのほか面白そうにしていた。

 

「我は、感心している。

 お前が我が悪路を踏破してくるものだと思ったが、その役目を後進に受け渡した。

 貴様は途中離脱するタイプの先達だったわけだ」

「なにを、訳の分からぬことを!!」

「この演目に、一工夫をしようと言うのだ。

 メドラウド卿よ、娘に会わせてやる。だが我が元に下れ」

 

 お父様のその言葉は、私だけでなく四天王の三人も意外そうにしていた。

 

「ふざけるなッ、私はそこまで恥知らずではない!!」

「では仕方がない。利用価値のないあの娘は殺す。

 すぐにお前の国に攻め入り、お前の妻も辱めて殺す。その様をお前に見せつけてから、殺す」

 

 お父様は試すように、メドラウド卿に言葉を投げかける。

 

「くッ、この外道めがッ!!」

「さて、どうする?」

 

 どうしよう……。お父様が楽しそうにしている。

 これは、助け船を出した方が良いのだろうか。

 

「魔王様」

 

 そうこう私が考えていると、玉座の後ろからホームホームさんが現れた。

 

「リースさんは我が主上の保護対象です。

 勝手に殺すことは赦されません」

「分かっている、まったく硬い奴だ」

 

 彼女の諫言に、お父様は背もたれに体を預けた。

 

「あ……、そんな……なぜ、貴女が……」

 

 しかし、彼女の登場に驚愕する者が居た。

 メドラウド卿だった。

 

精霊様(・・・)ッ、なぜ貴女が魔王の側に!?」

「それは恐らく、別個体だと思われます」

 

 ホームホームさんは、淡々と彼の疑問に答えた。

 

「より正確に言うならば、この世界の管理担当の端末でしょう」

「どういう、意味だ……」

「せっかくだから、答えてあげましょうか」

 

 ホームホームさんが、一瞬で変わった。

 化身に、神が降りたのだ。

 

 スッとお父様が玉座から立ち、彼女に席を譲った。

 

「我が名はメアリース。この世界の造物主。

 こちらでは、ユグドラリースと名乗った方が通りが良いかしら?」

 

 足を組んで自信に満ちた表情で、メアリース様はそう言った。

 

「そんな、そんな馬鹿な、貴女が、この世界の神などと!?」

「信用できないかしら。

 私は全てを把握している。どんな質問も答えてあげるわよ」

 

 メドラウド卿は、お父様を見た。

 ただ静かに、メアリース様に膝を突いて頭を下げるお父様を。

 

「貴女がもしこの世界の神なら、なぜ魔王をこの世界に遣わしたのですか!!」

「厳密に言うなら、私はこの世界の撤去を決定しただけ。

 彼とその軍勢を遣わしたのは、我が盟友よ。まああなた達にとっては、違いなど無いでしょうけど」

「こ、答えになっていません!! 

 この世界の神である貴女が、どうして我々を!!」

「そうね。では答えてあげる。

 我が盟友はその息子たる魔王に、この世界を滅ぼせと命じたわ。

 あなたは、自分の庭を掃除しろと命じられて、他人の庭へ行くのかしら? 

 この世界は私の管理下にある。私の基準に従って、滅ぼす。ただそれだけのことよ」

 

 メドラウド卿は唖然としていた。

 これまで自分が信じていた神が、自分たちの滅びを決定したと宣言したのだから。

 

「そしてなぜ魔王を遣わし、この世界を滅ぼすのか、だったかしら?」

 

 メアリース様の御言葉は、単純にして残酷だった。

 

 

「────それは、世界樹の老朽化よ」

 

 

「本来、あなたの国元にあった世界樹は、この世界の寿命までその恩恵を世界中に行き渡らせるはずだった。

 だけど、予想以上に早く老朽化し、私への貢献度が落ち、評価が下がった。

 これ以上この世界を存続させてもロスが大きく、不良債権になりうる。

 だから滅ぼすの。それだけ」

 

 それだけ、と言うにはあんまりにも残酷な言葉だった。

 

「でッ、では、魔王を倒したら、この世界の豊穣が約束されるというのはッ!!」

「ああ、この世界の私の管理担当がそう言ったのね。

 勿論、あなた達がそれだけの価値を示したとならば、世界樹の再生処置を行うことにしてるわ」

 

 だけど、とメアリース様は言った。

 

「その際、世界樹は根元から回収することになるわ。

 恐らく、再生が完了するのは数千年後になるでしょうね。

 それまでの間、あなた達人類は一旦消去して、再生が終了次第再配置するわ」

 

 聞いてない、とジークが私の隣でぼそりと言った。

 

「それは、それはッ、滅ぼすのと何ら変わりないではないですか!!」

「じゃあ、世界樹の無いこの世界で、多分瓦礫しか残らないこの世界であなた達は過ごすって言うの? 

 私はそんな残酷な事はさせられないわ。私は文明を司る者、あなた達を瓦礫の上で原始人みたいな生活をさせられるわけないじゃない」

 

 ……ああ、そうか。メアリース様は、“文明(・・)”の女神。

 文化単位の共同体を救っても、人間個人を救う神では無いのだ。

 

「ああそれと」

 

 そして更に、メアリース様は追い打ちのようにこう言った。

 

「あなたの娘の事だけど。先天的な遺伝子疾患を患っていたわ。

 あなたの妻の家系は、代々同じ病で早くに亡くなっている。

 資料によると、あなたみたいな成り上がりの家を長続きさせない為の処置として、あなたの妻が宛がわれたようね」

「…………」

 

 メドラウド卿が、絶句している。

 しかし、その思考は手に取るように分かった。

 勇者を輩出した家は、ただそれだけで権威を増す。

 既得権益を持つ者が、それを許さないシステムを構築していてもおかしくはない。

 

「王は、私を裏切っていたのか……」

「さてそこまでは知らないわ。自分で調べることね。

 それより重要なのは、その遺伝病の治療費のことよ」

「治療費? どういうことです?」

「彼女はこちらで保護したのでしょう? 

 なら、適切な治療を施されるべきよ。彼女なら、もう既に完治しているわ。

 だけど彼女は元々我が庇護下にあったわけではない。

 社会保険適用外、十割負担と言うわけね。だから、親である貴方がその治療費を払えと言っているの」

 

 メアリース様は虚空から請求書を取り出し、スッと投げ渡した。

 彼の目の前に、請求金額が書かれた請求書が落ちる。

 その金額は、この世界の貴族の生涯年収に匹敵した。

 

「こ、こんな大金、払えるわけがない!!」

「しょうがないけど、この世界の物価と私の管理する世界の平均的なレートに換算するとそれぐらい掛かるわ。

 別にあなたが払わなくても良いけど、その場合あなたの娘の来世に借金が課せられる。

 延々と鉱山労働を強いられる世界に、元気な体で生まれ変わって貰う」

 

 メアリース様の管理下に、飢えや病は無く、そして住む場所も職の無い者も居ない。

 だが同時に、残酷なまでに平等だ。メアリース様は、我々に数字以上の期待などしていない。

 それでもメアリース様は、慈悲を与えている。チャンスを与えている。

 

「……娘は、本当に治ったのですね」

「文明を司る我が名に懸けて」

 

 メドラウド卿が、拳を握ったのが見えた。

 

「勇者メドラウドよ」

 

 お父様が、遣る瀬無さそうに首を振ってため息交じりに言った。

 お父様ももうちょっと直球じゃない言い方をしてほしかったのかもしれない。

 こう見えて、お父様はプライベートではお優しいし。気の毒に思ったのかも。

 

「ちょうど魔王軍四天王に空席がある。

 給料は良いぞ。レートはこちら基準だからな」

「……有難く存じます、魔王様。

 妻の分も、稼がねばなりませんので」

 

 メドラウド卿には、諦念と悲しみから頭を下げた。

 ついでにジークも袖で涙を拭いていた。私は彼女を慰めていた。

 バンブスさんもハイボールさんも気まずそうにしていた。

 

「別にわざわざ四天王にならなくてもいいのに。

 正直なところ、滅ぼす為に魔王軍を派遣する事業は非効率的で無駄が多いから個人的には反対なんだけど、我が盟友の権能に口出すつもりは無いし。そこは持ちつ持たれつだわ」

「神よ、もう一つお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「構わないわよ。私は他の威張ってるだけの連中と違って、もったいぶった言い方をしない主義だから」

 

 そこはもうちょっともったいぶって欲しかった、とはこの場にいるメアリース様以外全員の心境だったと思う。

 

「貴女の為さりたいことが分かりません。

 なぜ、世界を滅ぼすと決めたのに、帝国には施しを与えるのですか?」

「施し、と言うのは投資と同じよ。

 教会が炊き出しをするのは、社会福祉と治安維持の側面がある。

 結果的に利益を齎すから、与えるのよ」

 

 この世界の造物主は、にこりとメドラウド卿に微笑んだ。

 

「だから私は、結果的にあなたに全てを与えた。

 両親も、環境も、水も、食料も、教育も、倫理も、常識も、友人も、戦場も、地位も、名誉も、妻も、娘も、そして希望も絶望も与えた。

 この世界の人類に、この大地も、空気も、海も、森林も、山も、世界樹も、恵みも、法則も、文化も、国家も、戦争も、宗教も、災厄も、全て与えた」

 

 この世の全ては、メアリース様に貸し与えれたものに過ぎない。

 

「あなたは、太陽が敵国に恵みを与えた時、それを裏切りと批難するのかしら? 

 私の恩寵は“人類”すべてが平等に与えられる。

 あなた達も一定以上の文明レベルに到達していれば、等しく我が恩寵に預かっていた。

 それまでは、赤子が立つのを見守る親のように、あなた達を見守っていたわ」

 

 だけど、とメアリース様は言う。

 

「あなた達は、私の期待に応えられなかった。

 想定したスペック以下の結果しか、出さなかった。

 年々この世界の生産力は落ちている。それは世界樹の老朽化という問題だけじゃない。

 あなた達人類が手を取り合わず、いがみ合い、お互いに理解をせず、殺し合い続けたから。

 だから滅ぼす。私は戦争を否定しないけど、限度がある」

 

 造物主が、この世界を醜いと言った。

 優しく成長を見守っていたのに、出来損ないの失敗作だと、烙印を押した。

 

「文化的な発展が見込めない以上、あなた達を存続させる意味は無い。

 世界樹の老朽化の件も含めて、総合的に判断した結果、そうなった。ただそれだけのことよ」

「……よく、理解できました」

「そう。なら良かったわ。あなたの知能の発達は私の設計通りの水準なようね。

 大抵の人間は私が懇切丁寧に説明してあげてるのに話が違うとか喚き散らすのよ、訳が分からないわよね」

「あの、メアリース様、それくらいで……我々にも仕事が有るので」

 

 すごい、いやひどい。お父様が気まずそうにしてる……。

 ジークも私の腕に顔を押し付けて必死に泣き声を噛み殺しているし。

 

「そうね。私としてはこの世界の人類の存続よりテーマパークの建設を急ぎたいから、期限は予定通りにお願いするわ」

 

 ち、致命的に一言二言三言多すぎる……。

 ジークは国民を数字で見る為政者にならないでね。うんうん、と彼女は頷いてくれた。

 

 そうして、メアリース様は去った。

 ホームホームさんが玉座から立ってペコリと頭を下げて空気のように脇に控えた。

 

「あ、あれが、あれがッ!! 我らの信じていた、神なのかッ……」

「人間とは、他者の痛みを理解できぬものだ。

 裕福な国に産まれたお前は帝国の人間の貧しさを理解できたか? 同じことだ。人間そのものの女神たる、メアリース様にとっては」

 

 お父様がちょっと疲れた様子で、この世の無情に嘆き悲しむメドラウド卿に慰めにもならない言葉を投げかけていた。

 

「娘に会ってこい、そのざまで仕事に出られては困る。

 スズ、案内してやれ」

「分かりました、お父様」

 

 私はお父様の指示に頷いた。

 よしよし、とジークの背を撫でて彼女を引きはがすと、私はメドラウド卿を案内することにした。

 

 

 

「パパー、やっと迎えに来てくれたんだね!!」

 

 リースちゃんは、メドラウド卿が現れると一目散に彼に抱き着いた。

 

「リース、本当に病気は治ったんだな……」

「うん、今は学校にも通えているんだよ!! 

 お友達もいっぱいできて、毎日いっしょに部活動もしてるんだ!!」

「そうか、そうか、良かった……」

 

 彼はリースちゃんを抱きしめた。

 それだけがこの世界で唯一の救いであるかのように。

 

「師匠は、あなたの倒した四天王の最期はどうでしたか?」

 

 リースちゃんが宿題をしに自室に戻ると、私は彼に尋ねた。

 

「聖剣があったならまだしも、捨て身故に相打てた。

 あとは……」

「私の技を見ていたから、何とか対処できた、でしょう?」

「…………彼は剣士として、とても恐ろしい相手だった。それだけだ」

 

 やっぱり、このヒトは真面目な良いヒトだった。

 だって、こんな状態で私に気遣えるのだから。

 

「わかりました」

 

 私は踵を返した。

 師匠の仕事の引継ぎをしないといけない。

 せめてこの仕事を立派にやり遂げることが、師匠への手向けになることを祈って。

 

 

 そしてその日、魔王軍に新たなる四天王、“黒騎士”モルドレッドが着任したと報じられた。

 

 

 




今作は全二十話を予定していますが、もうちょっとキャラの掘り下げとか必要でしょうかね?
そのあたり、読者の皆様にアンケートしたいと思っています。良ければ、ご協力下さると幸いです。

ちなみに、四天王の元ネタですが。

エンズ → 炎頭 → 赤頭
バンブス → 竹 → 大嶽
ハイボール  →   高丸
と、なっています。悪路王で関連付けられる鬼とかが名前の元ネタですね。
メドラウド卿も、モルドレッドの別読みですし。つまり彼は約束された裏切者でした。どういう裏切り方をするかまでは殆どアドリブでしたけど。
私は基本プロットは書かないので。プロット通りやったのは『ラウンドテーブル』を書いた時でしょうか。

それでは、また次回!!
アンケート、よろしくお願いいたします。

完結まで、何話ぐらいが最適でしょうか? あくまで参考までに。

  • 予定通り、20話くらい
  • もっとキャラ掘り下げて25話ほど
  • いっそ、30話ぐらいまで書いていいのよ?
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