《完結》魔王「拾った汚いガキを最高にカッコいい勇者にするはずが、いつの間にか娘になってたんやが?」   作:やーなん

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あとがきで報告があります。
是非、最後まで読んでください!!



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 番外編①「新たな魔王の誕生」

 

 

 私のバイタルを表示する機械の音が、淡々となり続ける病室。

 その医療用の治療ポットの薬液の中で、私は微睡んでいた。

 

 全治数か月の大怪我。

 寿命が大幅に減るほどの消耗。

 それが、あの時身を委ねてしまった力の代償だった。

 

 あの時、私はあの力を拒むことをできた。

 不断の決意を以て、邪悪の誘惑を跳ね除けることはできた。

 

 だが、結局はこのざまだった。

 女神メアリースの恩寵によって高度に医療も発展したこの世界でさえ、治療に時間を要するほどの大怪我。

 

 そして、何より許せないのは。

 

「魔王様が、亡くなられた。

 魔王様に挑んだ勇者に敗れ、その座を降りられた。

 私は気絶していてその最期は見届けられなかったが、ご立派な最期であったそうだ」

 

 ジークがそう伝えた時、私は思わず全身に繋がるコード類を引きちぎってしまった。

 異常を検知した医者や看護婦たちが駆け付けてきて、薬を投与して私の自由を奪う。

 しかしそれでも、私の意思は奪えない。

 

「その眼は、私も覚えがある。

 魔王様を下した勇者たちに復讐するのは簡単だ。

 彼らは今も荒廃した世界を復興すべく奔走している。

 戦わずとも、やり返す方法は幾らでもある」

 

 仮にも魔王に挑み、打ち破った勇者たちだ。

 真正面から報復するのは下策ではある。

 

「だが、それをした時、お前は魔王様の神聖な戦いを穢すことになる。

 魔王様は遺言として、世界の復興に私財を当てるように言い残された。

 娘のお前や、忠臣たるバンブス殿には何も無いのに、な。

 そして、それは魔王様がお前に期待した価値を著しく下げるモノだ。

 まずはスズ、お前はその傷を癒すことを専念するんだ」

 

 友の言葉に、私はうなだれる他なかった。

 私は二度も父を亡くし、その悲しみを呑み込むほかなかったのだ。

 

「私は、また別の魔王様の下で戦うことになるだろう。

 ふふッ、敗戦したというのに、他の魔王一族の方々からの評価は勝った時よりも良かったそうだ。

 恐らく、引く手あまたであろう。これも我々に魔王様が遺して下さった財産だろうな」

 

 そう言って自嘲気味に笑う程度には、ジークは内心複雑そうであった。

 

「もし許されるのなら、その時はまた共に戦おう。

 なに、共に戦う口実など幾らでもあるさ」

 

 私は頷いた。

 酸素吸入器で身動きが取りずらいけど、肯定の意は彼女にも伝わったようだ。

 

「ではな。またお見舞いにくるよ」

 

 そうして、ジークは去って行った。

 

 人づてに、お父様の死が伝えられた時は実感が無かった。

 しかし、こうしてジークに伝えられると、私はようやく第二の父を永遠に喪失したのだと思い知ることになった。

 あの御方は、何一つ遺品を残さなかった。

 魔王と言う地位は、女神メアリース様の管理下で絶対なる成功者であるのに、魔王と言うだけでどんな億万長者よりも財産を蓄えられるのに。

 

 我が父は、着の身着のままで十分とでも言うように、何も持っていなかった。

 勿論、復興に当てられる電子マネーの類は目が飛び出るほどの金額があったそうだが、それ以外は何もない。

 

 それはどうしてだろうか。

 

『それは、あの子はいつでも、死を覚悟していたからだ』

 

 その時だった。

 私の目の前に、暗黒の瘴気が吹き上がる。

 

 邪悪そのものを身に纏う、朱い奈落の双眸。

 女神リェーサセッタ。邪悪と悪逆を司る者。

 そして、魔王一族の母神。

 

 私は、ごぽごぽ、と口を動かして謝罪を述べようとした。

 あの御方を、お父様を守れなかったことを、謝らなければならなかった。

 だが、薬液に満たされた治療ポッドの中ではそれもままならない。

 

『そのままでいい、楽にしていなさい。

 我が子が娘と接したお前に、どうしてこの私が無下にできよう』

 

 そう言って、リェーサセッタ様は片手で薙ぐようにその身に纏う瘴気を払った。

 女神メアリース様は、ホームホームさんを始めとする数多の分体から見慣れてすらいる。

 完成された人形のように、非人間的でさえある美貌の持ち主だ。

 

 だが、瘴気の暗黒から現れたリェーサセッタ様の姿は、どこにでもいる平凡な容姿の女性だった。

 しいて言うなら愛嬌がある顔つきだが、万人が目を奪われる容姿ではなかった。

 

『我が権能は、悪逆をも許す。

 お前が我が子の復讐をしたいと言うなら、私はそれを赦そう』

 

 しかし、それを言った彼女は心底引きつった笑みを浮かべていた。

 自分で言って、何とも馬鹿らしいとでも言いたげに。

 

『お父様を殺した勇者に、復讐を許可して下さるのですか?』

 

 他ならぬ、お父様の母上がその言葉を口にした。

 私は何とか念話の魔法を使って、尋ねた。

 

『我が権能の象徴であるこの短剣を授けよう。

 その復讐が正当ならば、その一撃は絶対なる一刺しとなって怨敵を穿ち殺す。

 他の誰が赦さずとも、この女神が復讐を赦す。この神がその悪逆を赦すのだ』

 

 そう言って、女神様は黒塗りの短剣を創り出した。

 それは、彼女の紋章が刻まれている。尾を噛むヘビを、短剣で一刺ししている紋章だ。

 

『だが、私が復讐を赦すのは、その連鎖を断つ為。

 この短剣を使用した時、お前の命は絶たれるだろう』

 

 私は、その短剣に手を伸ばした。

 復讐の神器は、医療ポッドのガラスをすり抜けて、私の手元にたどり着いた。

 

『それを使い、お前がどうするのか見届けよう』

 

 少しズルい言い方になってしまったか、とぼやく女神は踵を返すと、その姿は消え去っていた。

 

 そして私は、その日のうちに病院から脱走していた。

 

 

 

「あなたはサイコロを振るまでも無く、行動の結果が分かりやすいですねー」

 

 そんな彼女を見ていた、天秤を持った幼い女神はそう呟いていた。

 

 

 

 

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 ~~~~

 ~~~~~

 

 

「よーし、瓦礫をそこに集めろ!! 

 そのデカいのは後で俺がどかすからみんな無理すんなよ」

 

 スズの復讐の対象は、探すまでも無かった。

 夜中だと言うのにかつて王都があった廃墟で、昼夜問わず交代制で撤去作業が行われていた。

 

 もはや睡眠すら必要のない彼は、世界樹のリコールの際に生じた地震や崩落とでほぼ全壊した三国を寝ないで復興して回っていた。

 

 ──マスター

 

「……ああ」

 

 彼は相棒の呼びかけに、言われるまでも無く気づいていた。

 

 病院の病衣のまま、黒塗りの短剣を握った少女が復興作業をしている男たちに紛れているのを。

 

 そして、視線をやった彼と、少女の目が合った。

 

「……どうした、来ないのかよ」

 

 それは、挑発のつもりで言ったつもりではなかった。

 ある種の諦念で、彼女はそれをする権利が有ると思ったからだ。

 

 彼も聞いていたのだ、復興を任されたホームホームから、魔王が死したことを。

 

「……あ、あ、ああ、あああああああああ!!」

 

 本来ならまだまだ治療が必要で、リハビリもままならぬ彼女は神器を両手で持って彼に襲い掛かった。

 

 

 だが、ほんの一ミリでさえ、彼の皮膚にその刃が刺さることは無かった。

 

 神が言っているのだ。

 その報復は、正当ではない、と。

 

「どうして、どうしてですかぁッ、リェーサセッタ様ぁ!!」

 

 短剣を取りこぼし、悲嘆にくれる少女を彼は見ていられなかった。

 

「我が子を亡くしたあなたが!! 

 どうしてッ、この行いを認めてくださらないんですかぁ!!」

「もう、いいだろ」

 

 ──渡航履歴逆算完了。いつでも行けます。

 

「ああ、次はお互い冷静になって話し合おうぜ」

 

 そうして、彼はスズが元いた世界に送り返した。

 結局彼女は病院の職員に発見され、再び治療ポッドの中に収容された。

 

 

 

『お前の行動は、見させてもらった』

 

 今度は脱走できないように、拘束されたままのスズを見上げる影が病室に現れた。

 邪悪と悪逆の女神リェーサセッタだった。

 

『なぜ、何の意味も無い道具を渡したか? 

 何の意味も無くはないさ。あれは本当に、復讐の対象には効果を発揮する。

 尤も、それが正当なモノであったらお前の命も尽きていただろうが』

 

 睨まれているのを自覚している女神は、溜息を吐いた。

 

『だがそれも、復讐の対象が“あの御方”なら何の意味も無いのも同然だが』

『あの、御方?』

『お前は真実を知る権利がある。

 ただし、その事実はお前を永遠に苦しめるだろう。

 お前は何も知らずに生きることも出来る。人として生きて死ぬことが出来る。

 だが、知ってしまえばお前は後戻りできない』

 

 それでも知りたいか、と女神は問う。

 

 少女は、首肯を返した。

 

『よかろう。

 我が子アテルは、神々の誰もが平伏するほかない全知全能の神王に挑んだ。

 その名は■■■■■■■■。

 見た者、知る者、願う者を一人残さず殺さずにはいられない“暴君”なり』

 

 その瞬間だった。

 薄緑の液体に満たされた医療ポッドが真っ赤に染まる。

 バイタルを示す機械が、ピーッとなり続ける。

 

 少女は拘束具をギチギチと鳴らし、限界まで目を見開き液中で雄叫びを上げながら悶え苦しむ。

 そして、動かなくなった。

 発狂死。次元が違う情報量が彼女に流れ込み、その未熟な精神が木っ端みじんに砕け散ったのだ。

 

「リューちゃん、案外酷いことするんですね」

 

 サイコロを弄ぶ幼い女神が、呆れたようにそう言った。

 

「どうして、みんな自分から苦しい方を選ぶんでしょうね。

 ただの人間として死ねること以上に、幸運なことは無いのに」

『生きたまま神域に至ったお前が言うと説得力が違うな』

 

 そんな彼女を横目でみやり、邪悪の女神は命尽きた少女を抱きしめる。

 

 

『さあ、私がお前を産みなおしてあげよう』

 

 

 

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「魔王スズ様。初仕事の完了、おめでとうございます」

 

 砕け散った世界の崩壊を見届け、スズは父の代から仕える忠臣の言葉に頷く。

 

「母上が簡単な仕事を任せてくださいましたからね。

 住人の九割がうつ病で蔓延した世界なんて、滅ぼしたところで誰も自慢できない」

「所詮、この仕事はメアリース様の失敗作を片付ける仕事だからな。

 歯ごたえのある反抗をしてくれる連中なんて中々ないぜ」

 

 四天王のハイボールは、その馴れ馴れしい態度を咎められ義父に殴られた。

 

「しかしああまでなって働き続けるとか理解できぬな。

 我らの軍勢が蹂躙し始めても、連中は仕事机にしがみついていたぞ」

 

 メドラウド卿も今しがた皆殺しにした連中に呆れ果てていた。

 

「スズッ、いえスズ様。次の仕事の件でリェーサセッタ様から通信だ!!」

 

 そのジークリンデの言葉に、全員が居住まいを正した。

 

『我が新しき娘よ。

 首尾はどうだったか?』

「問題なかったです。

 第二形態も問題なく移行できました。

 次はもっと私の価値を高め、示せる仕事が欲しいです」

 

 魔王となったスズは、貪欲だった。

 亡き父の望み通り、彼女は自らの価値を証明すべく活動するつもりだった。

 

『そうか、ならば統治任務はどうだろうか。

 魔王の仕事は伐採作業だけにあらずだ。

 丁度、あの娘が我が盟友の怒りを買い穴埋めが必要だったのだ』

「姉さんの誰かが、メアリース様に粗相を?」

 

 通信画面の奥で、女神リェーサセッタは溜息を吐いた。

 

『お前も良く知る、あのローティだよ。

 あの子も、我が子アテルの死を悲しんでいた。お陰で今精神的に不安定なのだ。

 しばらくは使い物にならないだろうから、その間は彼女の補佐をしてやれ』

「ローティ姉さんですか。

 分かりました、喜んで拝命します」

 

 スズは今となっては姉となった存在に複雑な心境だったが、仕事に私情を挟むつもりは無かった。

 別に憎らしいとも思ってないし、できれば仲良くしたいとも思ってはいた。

 他の兄弟や姉妹たちも、彼女に良くしてくれている。

 魔王アテルに借りがあったと、何人もの一族の者が後援してくれてもいる。

 

「魔王ならば人々の統治も肝要でございます。

 知恵と力、両方備わり真の王なのです。

 お父上も優れた統治者として実績をお持ちです。スズ様におかれましては、期待も寄せられましょう」

「では精々父の名を穢さぬよう努力しましょう」

 

 厳しさと期待を込めて激励する忠臣バンブスの言葉に、スズも頷いた。

 

 しかし、まさか彼女も予想していなかっただろう。

 しばらくは使い物にならない、その意味を次の仕事先で彼女は思い知ることになるのだ。

 

 

 

 番外編②「新たな物語の始まり」

 

 

853:名も無き住人

 転生して、異世界から故郷に戻ったら魔王軍に占領されてる件について

 

854:名も無き住人

 詳しくww

 それは災難だったなww

 

855:名も無き住人

 それどういう状況だ? 

 魔王様が侵攻中じゃないのか? 

 

856:853

 俺もよくわからん

 でも、相棒はこの状況は珍しいって言ってる

 侵攻して虐殺してるわけでもなく、世界規模で占領してるなんて

 

857:名も無き住人

 魔王様の試練の方針かもな

 担当の魔王様は誰だ? 

 

858:853

 ハーレって名前だって

 ヒト捉まえて聞いたら教えてくれた

 

859:名も無き住人

 序列第四位やんけ!! 

 めっちゃ有名人やん!! 

 

860:名も無き住人

 あの御方か!! 

 原住民を煽り散らかす、あの強者の余裕よ

 

861:名も無き住人

 職業の加護をわざわざ最弱候補の道化師にしてるくらいだしな

 あれ、ほとんどのステータス補正マイナスなんだぜ? 

 それで序列四位よ。パネェよな

 

862:名も無き住人

 あの御方はエンターテイナーを自称してるからな

 でもちょっとあの御方のエンターテイメントは理解できん

 

863:名も無き住人

 まあ芸事ならそこらの芸人の方が面白いからな

 あの御方はあくまで魔王だし

 

864:853

 あれ、空飛んで観察してたら、なんか出迎えされた

 

 え、うそだろ

 

865:名も無き住人

 うん? どうした? 

 

866:名も無き住人

 出迎えとかどうした? 

 853はまさか大物か? 

 

867:名も無き住人

 大物はこんな古臭いコミュニティーツールなんて使わんやろ

 

868:名も無き住人

 暇潰せるならネタでもいいわ

 ここ最近、話のネタに飢えてるからな

 継続的に話題提供してくれるやついないかなぁ

 

869:853

 なんか歓迎されてる

 魔王ハーレにも会えるみたい

 今から会ってみる、あとで報告するわ

 

870:名も無き住人

 おいおい、マジかよ!? 

 

871:名も無き住人

 どうせ釣りだろ

 ハーレ様にそう簡単に会えるか

 

872:名も無き住人

 せやな、まあ期待せずに報告待ってるか

 

 

873:名も無き住人

 なあ、愚痴ってここで吐き出せば良いんだよな? 

 

 

 

次回作に続く

 




はい!! 次回作の予告編というか、前日譚みたいなお話でした!!
読者の皆様におかれましては、なんだよ予告かよ!!
と、思われるでしょうが。

既に次回作、四話ぐらい書いてるんです……。
そのタイトルはなんと「ポンコツ勇者 VS クソガキ魔王 VS ダークライダー」というネタ全振りのタイトルですね!!
掲示板ものなんでサクサク投稿できました。
小説パートもそのうち充実させる予定です。

あと、今作であまり目立たなかったキャラを入れようとしたら、なんだか今作の続編みたいになっちゃったんですよね。相変わらずプロットとか無しでフィーリングで書いてるので。
だからローティちゃんが実質ヒロインみたいになってるんで。
興味があるなら、是非読んでみてください!!

それでは、今度こそ、今作は終了となります。
また次回作でお目見え致しましょう!!
では、また!!
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