《完結》魔王「拾った汚いガキを最高にカッコいい勇者にするはずが、いつの間にか娘になってたんやが?」   作:やーなん

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魔王「誰が行き当たりばったりや!!」

 

「魔王様、お耳に入れて頂きたいことが」

 

 ん? バンブスやんけ。

 こいつは、バンブス。わての四天王の一人で、お母ん達の神官や。

 

 わてのお母んと、メアリース様は二柱で一つの信仰の対象なんやな。

 そんでな、特にメアリース様は神官の質にこだわっとる。

 人格、能力、実績、等々が優れとらんと神官に成れへんねん。

 

 それはなぜか、お母ん達の神官は教師や裁判官、役人も兼ねるからや。

 文明とは教育のことだと、メアリース様は仰っとる。だから妥協はせんのやな。

 

 そんで、なんやバンブス。

 

「はい、実はスズさんのことに関してなんですが」

 

 は? あのガキがなんや? 

 

「どうやら彼女、学校のクラスで孤立しているようなのです」

 

 ……ほーん。

 

「この帝国の侵攻の際に、部下たちに好き放題させたので未だ確執が残っているのです」

 

 まあ、この国を利用するなんて、最初は考えとらんかったからな。

 ほな、それでイジメられとんのか? 

 

「まさか、そんな低レベルな犯罪は許しませんよ。

 メアリースの敷く法において、またその恩恵に誓って」

 

 お前がそう言うんならそうなんやろな。

 イジメやパワハラはコンプライアンス違反やし。

 

 とは言え、人間っちゅう生き物は序列を作り、集団で弱者をいたぶる生き物や。

 まあ、どうしてもやるんやったら、それが出来ない環境に墜ちるだけや。

 

「現在は学校ごとに等級を作り、それらが発覚した場合、担任の教師が見て見ぬ振りしたのなら鉱山労働送りとなってます。

 同級生や生徒が報告しないなら、中心人物と同罪。

 安易な監視社会は歓迎できませんが、現状は仕方がないかと」

 

 せやな、まあどうせ十年後にはこの世界は無いんや。

 国民どもの将来はその後の移住先で決めるやろ。

 

「それに現状、各学校は士官学校も兼ねています。そう言う名目で予算を組んでいます。

 生徒を戦わせる予定はありませんが、訓練はさせています。

 スズさんはあの連中に鍛えられただけあって、その実力は群を抜いている」

 

 そら、素質の段階からレベルが違うからな。

 そこらの一般人が石ころなら、スズは金の原石や。

 

「そもそも、彼女を教育するだけならあの連中ではなく、この私に預けて下さればよかったと言うのに。

 あんな無茶苦茶なやり方はハッキリ言って許容できない」

 

 お、おう。あのイカレた配下どもと接してると、お前のまともさに癒されるわ。

 

「そう言う意味でも、彼女を学校に通わせると言うのは賛成でした。

 ですがまあ、現在はいろいろと突貫工事の真っ最中なので、歪みが各所で出てきていると言ったところでしょう」

 

 ……あれ、これもしかして、わてが責められとるん? 

 

「ええ、行き当たりばったりで、中途半端な行いはお控え頂きたいと申し上げています」

 

 バンブスがわてを睨む。

 わては顔を逸らした。

 別にええやん、最終的に全部滅ぼすんやから。

 

「魔王様!! あなたは彼女の保護者としての責任があるんですよ!!」

 

 ええい、お前はわてのお母んか!! 

 わかったわかった、そんなら、適当にレベルの合うダチを見繕ってやればええやん。

 同性で年齢も近ければいろいろと話せるやろ。

 

「年も近く、レベルが合う人間ですか……それでいて同性となると」

 

 わかりました、とバンブスは頷いて退出するのを見て、わてはホッと胸を撫で下ろした。

 流石はメアリース様の選んだ神官や。わて相手にも物怖じせん。

 まあ、そう言うところを信頼しとるんやけどな。堅物やけど。

 

 せやけど、わてには好都合や。

 この国の人間は少なからず、わてらを恐れとる。

 だってこの世界は人間種しかおらんからな、配下どもは異形ばかりやし。

 姿が違う相手とは分かり合えんのが人間や。

 

 せやから、スズも同じレベルの年の近い友人が出来れば、後の戦友になってわてらに挑んでくるかもしれんからな。

 いい加減スズを勇者にしたてあげるのも諦めようかと思うんやが、今更どう接すれば良いかわからんやん? 

 別にこの仕事の間に固執する理由もあらへんし。

 最高にカッコええ勇者に期待するのは、別に次の仕事先でもええわけやし。

 

 そう思うたら、何だか面倒臭くになってきたわ。

 軽く憂さ晴らしでもしたいわ。

 

 せや、そういやこの国にようやく攻め込んでくる連中がおるって話やんけ。

 弱い者いじめはつまらんが、自分たちが置かれてる試練の難しさを教えてやるのもええやろう。

 

 

 

 §§§

 

 

「皇帝陛下、そろそろお休みになった方が……」

「今は忙しい時期だ、休むわけにはいかない」

 

 侍女の言葉に、私は頭を振った。

 

 必要最低限以外のモノが何も置かれていない、この寂しい執務室が私の領域だ。

 世界最大の帝国の国主というのも、所詮はお飾りに過ぎない。

 

 私はジークリンデ、帝国最後の皇帝となった女。

 

 

 このルートシア帝国は、かつて世界最強を誇ったと言う勇者が建国したと言う。

 自分こそが世界そのもの、と言わんばかりの初代皇帝は、暴虐を尽くしたと歴史書が語っている。

 我が帝国の舵取りは、その時点で決定していたのかもしれない。

 

 我が国は諸外国と年中戦争していると思われているが、それは誤解だ。

 この国の疲弊の主な原因は、長く続く内乱にある。

 

 奪い奪われ、それを繰り返し、元々がどこまで誰の領地か分からない。

 諸侯は独立を繰り返し、略奪を正当化する。そうしないと生きていられないからだ。

 そういった独立した諸侯の平定も、帝国の仕事だ。

 彼らの暴虐も、敵国では我が国の仕業と喧伝されている。馬鹿め、やれるならもっと直接的な手段で攻撃するわ!! 

 

 ここ数十年、敵国とは小競り合いでしか、戦闘は起こっていない。

 いや、小競り合いで牽制し、世界樹の恩恵を貪るあの豚どもから、食料をせびるのが皇帝の仕事だ。

 物乞いか強盗の所業だ。この無様さ、こうして皇帝の椅子を押し付けられるまで知らなかった。知りたくも無かった。

 

 皇帝、と言うと絶対的な独裁者と思われるかもしれんが、この帝国において皇帝とは諸侯のまとめ役のようなモノに過ぎない。

 帝都とは別の領主の地域に行けば、その領地は別の国のようにしか思えないだろう。元々他国を侵攻し併合してきたこの国の性質のようなモノだ。

 

 結局のところ、誰でも良かったのだ、皇帝など。

 私のような小娘だろうと。

 

 事実、皇帝不在の期間が十数年続いた時もあるらしい。

 誰もが面倒で、帝位に付かなかったと聞けば、この帝国の実情も見えてくるだろう。

 

「皇帝陛下、四天王ホームホーム様がお目通りを願っています」

「通せ」

 

 私の執務室に連絡を入れて来た者に、そう伝えた。

 すぐに、彼女がやってきた。

 

「皇帝陛下に置かれましては、ご機嫌麗しゅう」

「前置きなどよろしい。女神の化身たる貴女にこちらを敬う必要などないでしょう」

 

 これはちょっとした嫌味だった。

 仕事を増やしてくれたのは彼女なのだから。

 

「所詮、私は有象無象の端末の一つにすぎません。

 神の被造物に過ぎなければ、立場はあなた方と同じですよ」

 

 無感情、無表情、無機質の三拍子が揃った、人形の如き美女は言う。

 そう、この女だ。この女が帝都にやってきて、全てが変わった。

 

 一か月前、あの日、この女が率いるバケモノの軍勢が帝都を蹂躙した。

 殺戮、破壊、凌辱、略奪。戦争で見れるありとあらゆる醜さを、その軍勢はその見た目通りを体現した。

 私は、自分の命を捧げるつもりで降伏した。

 だが結局、私は帝都と都民の為といって生き残ってしまった。

 

 そうして、魔王が全面降伏したこの城にやってきた。

 あの時の恐怖と屈辱は、忘れられない。

 絶対的な強者とは、かの御方のことを言うのだろう。

 

「それで、何の用でしょうか」

「貴女の定められた今月の労働時間を超過しています。

 別の誰かに引き継ぐかしてください。それ以上はコンプライアンス違反です」

 

 私は思わず、書類仕事の手を止めた。

 それは、皇帝と言う立場である私に言ったのだろうか? 

 

「我が主上の庇護下にある者に、例外はありません。

 不正、横領、ブラック勤務、サービス残業、パワハラセクハラ、全て許されません。

 全ての人間は管理され、十全なパフォーマンスを決められた労働時間に発揮してもらわなければなりません」

 

 冷徹な彼女の視線が、私を見つめる。

 これまでの徹夜は見逃してやっているんだぞ、と言わんばかりの視線だった。

 

「……代わりが居ない」

「では、恐れながら私が代行しましょう。

 代官の育成が終わるまでは、私がサポートします」

 

 どうやら、本気のようだった。

 横目で、懇願するような侍女の表情が見えた。

 

「わかった、どうかお頼み申す」

 

 こうして、私は最後の自分の領域から追い出されてしまった。

 

 

 

「皇帝陛下、少々時間を頂けるでしょうか」

 

 仕事場を追い出された私が途方に暮れていると、別の誰かが声を掛けてきた。

 彼は、この国では珍しい浅黒い肌をしていた。

 見た目だけなら、人間に近い。だがその頭には捻じれたヤギの角が生えていた。

 

 魔王四天王のバンブス殿だった。

 デーモン種と言う、悪魔の親類らしい。

 燕尾服に眼鏡を付けた、知的な印象を受ける男だった。

 

「バンブス殿、いかな用向きか」

「ええ、少々会っていただきたい方が」

 

 はて、他国の外交官あたりだろうか。

 どうせやることも無いので、私は付き従うことにした。

 

 道中、城外に出た。

 帝都の城下町は、魔王軍によってその三割が破壊され、現在は復興中だった。

 

「魔王陛下は、何故に我らに支援をしてくださるのだろうか」

 

 私は、かの御方の考えが良く分からない。

 ただひとつ、分かることと言えば、かの御方の手駒になることでしか、生き残るすべはないと言うことだ。

 

「こういうことを言うのは酷でしょうが、この支援はタダではありません。

 我らが主上、メアリース様は相応の見返りを期待しています。

 それが出来なければ、あなた方はこの世界よりもより過酷な環境に追いやられ、労働を強いられるでしょう」

「…………これは借金だと、そう言うわけか」

「その認識で間違えは無いかと」

「そうか」

 

 残酷な話だ。魔王軍の帝都襲撃から免れたスラムの住人などは、大いなる女神の慈悲を有難がっている。

 しかしそれは、より深い絶望への片道馬車かもしれないのだ。

 

「しかし彼らも、ここでの経験は財産になるでしょう。

 その為の教育を進めているのです、十年後移住先でやっていけるように」

 

 本当に、私には絶対者たちの考えが分からん。

 魔王様も、女神様も。

 

 

 やってきたのは、スラム街の有った区画だった。

 その中に作られた学校の一つ。

 

「会わせたいと言うのは、彼女です」

 

 私は彼女を見て、息を呑んだ。

 学校に併設されている訓練場で、彼女は見事な演武をしていた。

 見たことのない流派の剣術で、既に実戦を積んでいることが窺えた。

 

「スズ、こちらへ」

「はい。バンブスさん」

 

 彼女はバンブス殿に呼ばれると、すぐにこちらにやって来た。

 

「彼女はこの国の皇帝、ジークリンデ様だ。

 丁度これから、今月いっぱいは休暇となる予定だ。話し相手を務めて差し上げろ」

「はい、了解しました」

 

 そのやり取りを見て、監視か、と私は勘繰った。

 

「どうも、皇帝陛下。スズと申します」

「陛下、スズは魔王様が娘のように目を掛けております。

 そして皇帝陛下と同じように、勇者の素質を秘められておられる」

 

 勇者の資質、と聞いて失笑しなかった自分を褒めたい。

 私が皇帝になったのも、自分がその粗暴な勇者の直系で、一番の素養があったからだ。

 その結果、こうして無意味な冠を押し付けられている。

 

「よろしくお願いします、皇帝陛下」

「どうか、行く先々にて護衛にでもお使いください」

 

 私は、ぺこりと頭を下げる彼女と、笑みを浮かべているバンブス殿を交互に見ることしかできなかった。

 

 

 

「スズ、と言ったか、この国の出身ではないな」

 

 その名前から、この国の出身ではないと私は思った。

 

「聖樹教国の辺境の農村に住んでいました」

「なるほど、聖樹教国か」

 

 この帝国の、不倶戴天の敵である。

 寄進と称して金をせびる物乞いどもだ。世界樹の根元にある国の一つで、その恩恵に寄生する虫けらども。

 世界的に影響力のある国の一つで、かつて我が国で破門された時は国内の聖樹教徒が暴動を行い、内乱は頻発したと言う。

 ちなみに破門された理由は、寄進を断ったから。そんな余裕、当時の我が国には無かった。

 以来、何かと我が国に難癖をつけてくる。

 

「それにしても勇者の素質、か。

 世界樹の恩恵を聖なる力に変える素質は、主要各国の王族にのみ現れると言う。

 なぜなら、それぞれがかつて伝承の勇者の末裔だからだ。

 何ゆえに貴殿に、その素質があるのだろうな」

「魔王様が仰っているだけです。

 私は、ただ気まぐれで魔王様に拾われたにすぎません」

「ほう。なら試してみようか」

 

 私は戯れを思いついて、この帝国の宝物庫に出向いた。

 宝物庫の中は、換金できる宝石の類は無い。

 歴史的な価値がある、カネに変えられない代物ばかりだ。

 その奥に、この国の至宝が存在する。

 

「これは芯に世界樹の樹木を使用された聖剣だ。

 勇者の素質を持つ者が手にすれば、たちまち光り輝くと言う」

 

 それを証明するように、私が聖剣を手に取るとその刀身が魔力の光を帯びた。

 私の、皇帝の役目は、いざと言う時にこの聖剣を携え、外敵と戦うことだ。

 尤も、先の魔王軍の帝都襲撃の際には、私個人の武勇ではどうにもならない急襲を受けてなすすべも無かったが。

 

「これが、世界樹の聖剣……」

 

 スズが、恐る恐る私の手から聖剣を受け取った。

 すると、聖剣は私が手にした時よりもより大きく輝きを増した。

 

「これで、証明されたな」

 

 勇者の直系であった私よりも、資質を示した農村の娘。

 その出生は気になりもするが、もはやどうでもいいことだろう。

 魔王がその資質を見抜き、娘のように目を掛けている。その事実の前に、驚愕の真実などあるまい。

 

「スズ、貴殿は魔王の事をどう思っている」

 

 私は、聖剣の輝きに魅入られている彼女に尋ねた。

 彼女がその聖剣にて、何を斬るのか。

 

 魔王か、或いは人間か。

 

「私は、許されるなら魔王様を本当の父親としてお慕い申し上げたい」

 

 彼女はぽつりとそう言った。

 

「あの御方に、今の私の全てを与えて頂きました。

 私は貰うばかりで何もしていない。何かを返さなければいけない」

「そうか、私も同じだ。

 我が国民の為に、魔王様にはお返しをしないといけない」

 

 私と、彼女はどこか似ていた。

 

 

「皇帝陛下、火急の要件ゆえに無礼をお許しください!!」

 

 宝物庫から出てスズと親交を深めていると、薄汚れた伝令兵が城内に駆け込んできた。

 

「何事だ」

「帝国領内に、聖樹教国からの軍勢を確認しました!! 

 敵軍はおよそ三千!! 世界樹を破壊した魔王憎し、と声高に叫んでおります!!」

 

 そうか、ついに来たか。いや連中からすれば、遅いくらいだった。

 幸いと言いたくは無いが、先日の魔王軍の急襲で失ったのは帝都の警備兵ぐらいだ。

 

「魔王様に伺いを立てて、兵力の打診をせよ。

 血に飢えたケダモノどもに餌をくれてやれ」

「了解しました!!」

 

 命令を終えて、私は深くため息を吐いた。

 分かっていたこととは言え、私の代に全面戦争をすることになろうとは。

 

「陛下は、どうなされますか」

「今は休暇中だ。なら、別に前線まで散歩しても構わぬだろう」

「私もお供します」

「良いのか?」

「魔王様も、それをお望みでしょう。

 あの御方に相応しい勇者としての働きを、私に期待なされているのですから」

 

 そうか、ならば何も言うまい。

 

「では、スズ。お前に我が国の至宝を、聖剣の鞘持ちとして侍る栄誉を与える」

「ありがとうございます」

 

 そうして、私達の初陣が始まった。

 

 

 

 

 




長年ハーメルンで執筆活動してますが、初めて0評価貰ってしまってちょっとショック。
しょうがないよね、目に触れる人が多ければそう言うこともある!!
気持ち切り替えて次話も頑張って書きますね!!

でもモチベーション維持と需要調査の為にアンケート設置しましたのでよければお願いします。
感想もくれると励みになります。

では、また次回!!

>>ちなみに、皇帝ちゃんはロリ系です。(作者の性癖<<

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