青と空のツートーン   作:金塊星艦

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プロローグ

 帝国暦468年、宇宙暦にして777年。ある帝国領内にて赤子が生まれ、産声を上げた。

 その子は赤子ながら特徴的な青い髪を有し、その赤子は誕生を見守っていた者達からしたら決して望まれた生ではなかった。しかし──―

 

「やっと……生まれた。私の愛おしい子」

 

 ──―妊婦は違う。

 自身がお腹を痛め、産み落とした子を優し気な表情で宥める青い長髪の女性。大層幸せそうな様子のその女性は我が子を大事な宝の様に抱え、これからこの子と歩む未来に希望を見出していた。

 

 そしてその様子をしり目に部屋を去る死んだ魚のような目をした黒髪の男。たいそう不服そうな雰囲気を醸し出すその男は額は血管を浮かべ、過去の自分を恥じ後悔を隠しきれてはいない。

 

 こんな温度差が激しい空間の中、その中心人物である赤子はスヤスヤと規則正しい寝息を立てながら眠っているのであった。

 

※※※

 

 皆、銀河英雄伝説と言う物語はご存じだろうか? 

 日本で最も有名なSFの一つであり、自由惑星同盟と銀河帝国との戦争内にて巻き起こるある二人の男の物語だ。

 

 まぁ俺はアニメを流し見しただけなので細かな内容は憶えていない。っというか前世の事は一部しか覚えていないだよなぁ……っとっとと、そういえば俺の事を話していなかったな。まぁ、なんとなく察してはいるだろうけれど俺は転生者だ。それも銀河英雄伝説へのね。

 

 帝国暦468年、俺はある歴史ある家系の愛人の子として生まれたらしい。自分の出生が予想以上にハードっぽくて細かくは育ての父に聞きたださなかったけど、俺の母は戦死したって話だし滅茶苦茶特殊な家系だったんだろうなぁ~ってのは予想できるわ。だって帝国は女を軍人として採用してないからね。

 そんなこったである意味の隠し子として生まれた俺は一般家庭にてすくすくと育ってたりする。

 

 そんなある日俺は信じられない……ある意味見たくもない人物を目撃してしまう。

 

 いやぁー、最初はビックリしたよ。確かに近所になぁーんだか聞いた事のあるような名字で赤毛の青年が住んでるなぁ~程度に思ってたけれど、目撃し。その人物へと接触してみてらビックリ、キルヒアイス君じゃありませんか。

 いやぁーあの時失ったはずの肝っ玉が確実に冷えたね。今世は一般家庭にて近所のパン屋に就職し、真っ当な人生を歩もうと画策してたのに物語の中核と成す人物の片割れがご近所さんだなんて……ビックリだよ。

 

話てみるとまぁ良い奴でなぁ。流石は準主人公、人当たりも性格もなんなら頭だって良い。そんな彼を俺は気に入り今世での親友第一号となった。よく遊び、よく学んでいた俺達。それも長くは続かなかった―――ってこの書き方じゃ悪いい方になるな。俺とキルヒアイス‥‥‥‥ジークとの友情にもう一人メンバーが加わる事となった。それはある太陽が眩しく、俺が焼いたバターたっぷりで焼いたクロワッサンから良い匂いが漂っていた時であろうか。

 

「ねぇ、あの子って―――」

 

「ふむ、どうやらジークの母上が言っていたお引越しして来たお隣さんって奴だろうな」

 

俺達の見つめる先には金髪の似合う、将来イッケメーンになりそうな容姿をしている美少年。瞳は青くまだ小さい俺と同じぐらいの背丈であるその少年は俺達の事を見つけるとこちらへやって来る。ふむ、どっかで見た事のある容姿だな。

 

「俺はラインハルト・フォン・ミューゼル。貴様らは?」

 

その少年はなんとも生意気な態度でこちらをまるで下の存在と言っているかの様な態度をみせる。っけ、生意気な小僧だぜ。あれだろうか、親の教育不足が祟ってこのような性格に変貌したんだろうか……まったく哀れだぜ。

 

「ジークフリード・キルヒアイスです」

 

ジークは初めての相手に緊張しているのだろう。彼らしくない敬語を使う。ジーク、そんな生意気な奴にそんな気遣い無用だ――――

 

「ジークフリードって何だか俗な名前だな」

 

―――ぜ……って今コイツ何て言いやがった??

 

「そしでその子の名は?」

 

俺に対して何か言ってるようだが俺の耳には生意気な小僧の言葉は届かない。だって俺は―――――――キレているからだ。

 

「おっとこれは失礼しましたミューゼル様」

 

俺はゆっくりと頭を下げる。記憶の隅に眠る使う事はないだろうとたかをくくっていたお父様から習った作法に習い()()()()の端をつまむような仕草を見せ頭を下げるその態度を真横で見ていたジークは焦ったような表情を受けべるが、もう遅い。俺は止まれらねぇ、この思いは止める事など誰にも出来ねぇ。俺の態度からある程度の立場の人間と気付いたんだろう、けれども俺はそんなたいそう大層な立場じゃない。まぁ、それは今重要じゃない。

 

「私――――」

 

一歩踏み込み小僧の近くへと急接近を果すし直後、その気取った態度でいる小僧の胸倉を掴み上げる。突然の行動にガキは驚きの表情を浮かべ、ジークは顔色を青く変える。っへ、なに青くしてんだジーク。俺はただいつも道理の事をするだけだぞ。―――そういえば俺の名を言っていなかったな。

 

「―――ヒメル・フォン・リィターと申しますの、以後よろしくですわク・ソ・ガ・キ」

 

ヒメル・フォン・リィター。旧姓、ヒメル・フォン・オーベルシュタイン。それが今世での俺の名だ。

聞いた話によるとあのオーベルシュタインの腹違いの子として俺は今世で生まれらしい。細かなことは知らないが。

そぉーんな事を考えながら股間を蹴り上げ、なんとも言えない感触にちょっと気持ち悪くなるのであった。あ、コイツ漏らしやがった……ば、ばっちいぃ。

 

 

※※※

 

あの子、ヒルメ・フォン・リィターはこう……何とも言えない感想を抱かせる子だった。

 

「オイ、そこの赤毛。ちょっとお姉さんと楽しい事しないか?」

 

最初の印象はこう、生意気というか、自身ありげな態度に僕は困惑した。だってどう見たって僕よりも年下の女の子がだよ、無い胸――って言うと殺されるから今だ未発達とここでは言うけれどそんな子が胸を張り自信ありげに僕を見つめているんだから言葉を失う。

 

「なんだ、赤毛。お話しする脳味噌…って言うと失礼か。お頭……もダメ。ん~、言葉と言う物は難しいな」

 

けど一つだけ思った事がある。この女の子は僕の事を赤毛と呼ぶのかとね。

 

「ぼ、ぼくの名前はジークフリード・キルヒアイスだ、赤毛じゃない!」

 

 僕が声は怒りを込め、思わず大きな声で叫んでしまった。その直後、僕は明らかに年下の子に叫んでしまっているんだろうと正気に戻る。それに弱い者いじめで僕が最も嫌う事、これじゃただの嫌な奴じゃないか。帝国市民としてあるまじき恥ずべき行動。泣き出すのではないかとビクビクしているとその子は―――

 

「あはははは!」

 

 

―――突然、豪快に笑いだした。その大きな笑い声に僕はビックリ、頭がフリーズしてその様子を見つめていると笑いは収まったようでお腹を押さえ、浮かべた涙を指で拭く。

 

「す、すまない。確かにお前は赤毛は赤毛でも名前がある。そうだな、そうだよな、すまん!」

 

彼女は何かに自分自身で納得したようでうんうんと頷いた後、女の子らしくない大きな声で僕へと謝罪した。な、何なんだ子は。

 

「ではジーク。私と、ヒルメと一緒にご近所探検と言う冒険へ赴こうではないか!」

 

僕の手を掴み走り出す女の子。その行動力の高さに僕は漠然としてるしかなかった。それからはアレよアレよと僕はこの子、ヒルメと過ごす事なる。そしてそれはトラブルの連続もあった。

 

「ジークやらかした! 助けてくれ!」

 

ある時は学校で僕をいじめる子達を完膚なきまでに叩きのめしたり。

 

「ジーク! 眠い、ベッドを借りる―――zZ」

 

ある時は僕の家に忍び込み、僕の部屋で寝て居たり。

 

「ジーク焼けたぞ、食え食え。私特製のクロワッサン」

 

またある時は美味しい美味しいクロワッサンを作ってくれたりとトラブルもありながら楽しい毎日を過ごす事となった。

ヒルメは怒った時はすっごく怖く直ぐに手が出るような子だけど、それ以外の時はただ男の子のような性格をした女の子。友達の居なかった僕にとって初めての友達である。二年ぐらい一緒に過ごして性格も把握したとたりと大分わかっては来たけどさ――――――

 

 

「―――ヒメル・フォン・リィターと申しますの、以後よろしくですわク・ソ・ガ・キ」

 

まさか初対面の人間に対して金的食らわせるとは思ってみなかったし、君が貴族だったとはビックリだよ!

 

 


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