奇術師達のアルカディア   作:チャイマン

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勇者の帰路④

 

同刻、ニコラ達がいる場所とは別の異空間。

 

ハロルドが構えた右手の剣で深く突く。それはレグルスの鎧の間に伸びる配線を狙った一撃。

レグルスが軽く体を捩ると、剣は金属鎧に当たり滑るように軌道を変える。けたたましく鳴り響く甲高い金属音、激しく飛び散る赤い火花。

 

その瞬間、ハロルドの左右に銀と金の二色の閃光。レグルスの振るう二対の刀が迫る。

瞬間的に一歩引き、ハロルドが構えたのは左手の大盾。剣は盾に阻まれ、鳴り響くのは先程よりも大きな金属音。全身に力を込め、ハロルドが剣ごとレグルスを後方に弾く。

 

しかしレグルスの背中から現れたのは無数のブースター。噴出音が鳴ると同時に一瞬で距離を詰め、すかさず二対の刀で左右上空から切り下ろす。

 

「ッ!」

 

辛うじて盾を両手に持ち防ぐも、動きを封じられるハロルド。押し戻そうと試みるが、歴戦の戦士でさえも圧倒的な推進力に勝つ事は出来ない。強い負荷が掛かり、嫌な音を立てる盾と重鎧。

 

『……素晴らしい!これは剣術の使い手というより、盾術の使い手と呼ぶべきですね!』

 

「レグルス……お前は此処で倒す!」

 

『その心意気です!貴方の本気を見せて下さい!』

 

「黙れ!」

 

その瞬間ハロルドは盾から右手を離し、片手に剣を構えた。当然レグルスはその隙を見逃さず、刀で盾を切り払おうとする。

 

(……おや、動きませんか!)

 

しかし、予想外にも刀は盾と力を釣り合わせたまま微塵も動く様子はない。そして迫るはハロルドの剣。先程と同じく狙いは鎧の間、無数に伸びるレグルスの配線。

 

「!」

 

レグルスは刀に加える力を弱め、大きく背後に飛び退いた。ハロルドの剣は虚空を突く。そのままレグルスの刀は鎧の中に収納された。

 

『そう、戦いとはこうでなくてはなりません!ただぶつかるだけではなく、戦略を以って相手を打ち倒すも味というものです!』

 

「……」

 

答えはない。ハロルドはただレグルスを見つめ、レグルスは首を傾げる様な仕草をする。

 

『あまり乗り気ではありませんね!戦士である貴方がその様な態度を取るとは、些かおかしな話ではありませんか?』

 

「戦いなんて無いに越した事はない……分からないのか?」

 

『分かりはしますが、好みはしません!理想を掲げるのなら、貴方がその体現者になるべきでしょう!でなければ、その理想はただの夢物語で終わりますよ!』

 

ハロルドが剣をレグルスに向ける。

 

「ならば打ち倒すまで。その方が手っ取り早いだろ?」

 

『同感です!話し合うよりも圧倒的に現実的ですからね!』

 

そう言いながら片手を伸ばすと、鎧の間から刀が排出される。しかしその長さは先程の刀の長さと比べて約二倍。レグルスは銀と金の双の刀ではなく、銀と金の二色を持つ一本の長刀を構える。

 

「刀を繋げて長刀に……?」

 

『空に輝く星を点と見るか、それらを繋げて線と見るか、或いはその空全てを夜空と見るか。何事も解釈次第でしょうが、必要なのは見方を変える柔軟性です!』

 

「何が言いたい。」

 

『大した事ではありません!単純に……』

 

「……ッ!?」

 

悪寒。反射的にハロルドが盾を前に突き出すと、盾が文字通り横真っ二つに両断される。振われたのは獅子の一刀。音すらも置き去りにし、全てを断ち斬る神速の刃。

 

『貴方が私の刀を受けるのは、もう叶わないというだけです。万事休すですね?』

 

長刀を軽々と片手で構え、そう宣言するレグルス。最早使い物にならない盾を捨て、片手剣を構えるハロルド。その間に流れるは長い沈黙。しかし一瞬でも気を抜けば、互いに斬り払われるという事実。

 

そして次の瞬間、互いの刀が振われた。

 

 

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