気がついたら文章量が増えたりします
「ふん……なんと醜き有り様よ」
ギルガメッシュの前には炎に包まれた町並みが広がっていた。
あるものは逃げ惑い、またあるものは目の前の惨状に叫ぶ。
そこにあるのは理不尽なまでの呪い。
人々を焼き付くし、なおも止まない業火の炎。
「……退け」
そんななかをギルガメッシュは悠々と歩く。
まるで、自分の庭のように。
炎は彼の前で二つにわかれ、彼を阻むことはない。
「我を焼きたければ、これの100倍はもってこい。生ぬるいわ」
誰に言うわけでもなくギルガメッシュは呟いた。
それは誰に向かって発せられたのだろうか。
「見るに耐えんな。逃げ惑う雑種に醜き炎……これ以上は無駄か?」
ギルガメッシュは散策を打ち切ろうと歩みを止める。
その時、小さくも力強い声が耳にとどく。
「おぎゃー おぎゃー」
「……赤子か?」
瓦礫に潰された母体であろう女性に抱かれながら、赤子は力強くないていた。
「ほう……生にしがみつくか」
ギルガメッシュは赤子を拾い上げる。
赤子は彼の手の内でよりいっそう強くなく。
「ふふふ……ふーっはっはっはっ! よい! よいぞ赤子! その生への執着。気に入った! 貴様は千代先まで誇るが良い。この我の加護を受けられることをな!」
高らかに笑いながらギルガメッシュはその場を後にした。
ギルガメッシュが最初に行ったのは家の確保である。
惨劇地帯から幾ばくか離れ、比較的巨大な家を見つけ、ドアを蹴破り屋内へと侵入した。
「な、なんなんだ、お前は!」
いきなりの侵入者に家主は驚きの声をあげる。
しかし、ギルガメッシュは気にしたそぶりも見せずにその場に金をばらまいた。
「退け。ここは我の物だ。なに、雑種にも五分の魂。はした金をくれてやろう。ありがたく受けとれ」
目の前には億に届くほどの札束が散乱している。
なにがなんだかわからない家主は札束と目の前の男を交互に見る。
「二度は言わんぞ? そこの金と一緒にとっとと失せろ」
家主は戸惑いながらも札束をひろい集め家を出ていく。
その場で殺されるような危うさを感じたためだった。
両手をあげて逃げ出さずに札束をひろい集めたあたり、したたかな人間だったのかもしれない。
「ふん……ずいぶんと狭くこじんまりとした家だ。まあ、良い。最初から最高級なものを与えては今後の成長に悪影響だからな」
実際、そこら辺の家よりは巨大なうえに、一般家庭においては広すぎるものなのだか、ギルガメッシュは一言で切り捨てる。
「まずは、生活必需品か。全自動育成マシーンなるものも宝物庫にはあるにはあるが、それでは面白味にかける。近くの店ごとかいとって揃えるか……」
今後の成長に悪影響を及ぼすであろう行為を平然といってのけるギルガメッシュ。
そして、30分後にはそれを実行したのだった。
「いちいち会計など面倒だ。我が寄越せと言えば頭を垂れて献上せよ」
とんでもない持論を掲げながらギルガメッシュはおしめ、哺乳瓶等の生活必需品を揃えたのだ。
その顔は実に楽しげであった。
「ミルクは人肌で温め……人肌?」
育児指南書を片手にミルクを作るギルガメッシュ。
しかし、首をかしげる。
「宝物庫から人工生命体を取り出して温めさせればいいのか……? えぇい、面倒な! この我がなぜここまでしなければならない!」
ギルガメッシュに常識と言う言葉は通じない。
すべては彼が中心にまわっているのだ。
「貴様も、赤子のくせに贅沢なやつよのう!……む?」
ギャーギャーと喚くギルガメッシュの手を赤子は掴んだ。
そのちからはとても弱く、簡単に振りほどける。
しかし、ギルガメッシュはそれをしなかった。
「ふふふ……ふーっはっはっはっ! 良い! この我に贅沢を要求することを許そうぞ! 王に育てられるのだ。極上の贅沢を要求、享受せずしてなにが王の子かっ!」
ギルガメッシュはたいそう嬉しそうに笑う。
彼は心の底から笑っていた。
「極上の贅沢、それは王自らの育児に決まっておろう。機械など一度たりとも使ってやるものか! 良いぞ!興が乗った! このような気まぐれは久方ぶりだ! ふははははっ! 待っていろ! この王自ら貴様のために『みるく』とやらをいれてやろう!」
「神獣から直接絞り、諸々の処理ののち、人肌まであたためてやろう! 赤子よ、感謝するが良い!」
楽しそうに作業をするギルガメッシュを見て、赤子は小さく声をあげた。
「おむつの取り替え……この我に汚物の処理をさせようと言うのか? まあ、よい。これも親としての務めゆえ、目をつむろう出はないか」
「あやしかた……だと? ぐずることじたいないのだが……? ふっ、そういうことか、流石は我が育ててるだけはある。そこらの赤子とは比べ物にならんのだな」
早くも親バカの片鱗が見え隠れするギルガメッシュ。
そこにはもはや王の威厳は微塵も感じられない。
「良い! 実に良いぞ!」
彼の子育ては始まったばかりだ。
なんでも育児日記とやらが流行っているらしい
非常に面倒ではあるが王である我自ら育児日記を書いてやることにする。
拾った……否、我が保護した赤子はおおむね順調。
この我に身の回りの世話を要求してきた。
なんと言う罰当たりか。
だが、良い! 許そうぞ。
王の子たるもの極上の贅沢を要求、享受せずしてなにが王の子か!
我が育児は完璧。
寸分の狂いもない。
赤子が我が手を握った瞬間は今でも忘れられん。
なかなかに見所のある赤子だ。
名前を考えねばな……