誰だお前は状態です。
「このぼろ小屋もなれたな。住めば都、とはよくいったものだ」
ギルガメッシュは住まいを見渡す。
普通よりも大きく、サラリーマンならばなかなかすめはしないランクの家だ。
「うーうー」
「おお、どうした!」
子供の言葉とは言いがたいうめき声にギルガメッシュは超反応をする。
「なんだ!? おむつか!? ミルクか!? ご飯か!?」
この一年と言う歳月のうちにギルガメッシュはすっかりと赤子に骨抜きにされていた。
何度となく赤子を宝物庫に安置しようかと考えては踏みとどまる毎日。
完全に子煩悩である。
「ぐぅぅううう……なんと愛らしい。これに勝る宝物はどこにもありはしない……おぉ! あくびをしたぞ! シャッターチャンスだ!」
もはや誰だお前はという状態。
王の威厳はどこにいったのか。
カメラ片手に赤子を撮影する姿は英雄王と言うよりは溺愛王である。
「む、そろそろアルバムが一杯だな。新しいのを買わねば……」
ギルガメッシュが手に持っているのは我が子の成長日記vol8とかかれたアルバム。
子煩悩ここに極まりである。
「しかし……そろそろ変化が欲しいな。宝物庫から最上級の着物を出すか……? いや、しかし、あまり甘やかすのも良くない。王たるもの常にどっしりと構えて----」
「ぱーぱ」
瞬間、ギルガメッシュは雷に打たれたような衝撃を受ける。
「…………い、いま、なんと……?」
絞り出すようにギルガメッシュは呟くと子供の顔を見つめる。
「ぱーぱ?」
無垢な笑顔で子供は首をかしげる。
「お……おぉ! ……おぉぉおおおおお!? ぱぱぱぱぱ、パパとな!? なんと、なんと言うことだ!? ついに……ついに言語を操るようになったのか! 素晴らしい! 素晴らしいぞ、我が子よぉおおおお!」
狂喜乱舞するギルガメッシュ。
文字通り乱舞している。
解放される魔力に空気が震える。
「最初によくぞ我のことを口にしてくれたな! 良い! 良いぞ! これを喜ばずしてなにが親か! よ、よし、こうなれば名前を考えなければ……まっていろよ、我が子よぉおおおお!」
叫ぶなり奥の部屋に入るギルガメッシュ。
100冊以上はあろう名付けの辞書を開く。
「ふははは……ふーっはっはっはっ! 最高の名前をつけてやらねば!それが我が子への最大の褒美!」
ギルガメッシュは叫びながら不眠不休で名前を考え続け、ついに子供の名前が決定した。
「恭介……今よりそなたの名前は恭介だ! ふーっはっはっはっ! 喜ぶがいい! 称えるがいい! 涙を流し感謝せよ!」
「?……ぱーぱ! ぱーぱ!」
「ふはは……ふーっはっはっはっ! そうかそうか、そんなに嬉しいか! 」
よくわかっていなさそうな恭介に満面の笑顔のギルガメッシュ。
「さて、次は我の名前を覚えるのだ、恭介。ギルガメッシュ、さあ!」
「……?」
「どうした? 我の名前を呼ぶことを許可しよう。ギルガメッシュ、さあ!」
「うぃうぁくちゅ」
「おしい! おしいぞ、恭介! 感じはつかめてる、努力せよ!」
「うぃうあうぃちゅ」
「おぉ! 近づいたぞ! 近づいたぞ恭介ぇえええ!」
叫ぶギルガメッシュ。
そこにいるのはただの親バカな父親である。
「ギール! ギール!」
「ふむ、間延びしてるとはいえ、及第点か。その名で我を呼べるのは二人だけよ。感謝せよ」
「ギール! ギール!」
「……カメラを用意せねば」
ギルガメッシュはいそいそとカメラを用意した。
ついに我の子が言葉を発した。
ああ、なんと言うことだ。
こんなにも嬉しく感じるのは我も親と言うことか。
名前をつけるにあたって悩んだのは東洋の名前にしなければならないことか……
ギルバートやギルティーンなどもよかったが、日本人としてこの名前はおかしいだろう。
悩んだ結果、我が子の名前は恭介、とした。
ふーっはっはっはっ! これ以上素晴らしい名前はないだろう!
今日の日記はここで終わろう。