2850円の出費
この物語の舞台は日本の東京……ではなく少し離れた人口の約八割が学生で構成された人工島……学園都市である。
表向きには大分近代的な街並み……科学が進んだ憧れの大都市。
俺としてはあちらこちらに設置された風車と、俺を監視する気分悪い統括理事長の視線が蔓延る気分悪い場所なんだがねぇ……吸ってないとやってらんねぇわ。
「あ、こら~!!!未成年がタバ……「タバコじゃねっつ~の……変わんねぇなぁ……センセイは」……はわゎ!?」
事の始まりは二週間前の深夜……一仕事終えてマイアミのアジトでのんびりしていたら自作PCに忌々しいアイツ、統括バカからメールが入った訳だ。
何の仕事かは詮索しないでもらえるとありがたい……さてそれはそれで話は置いといて……
簡素なメール……内容は “来い” の二字……思わずどこのマダオだよって突っ込みそうになったが、俺は基本ボケ担当なので抑えて、こうして学園都市まで来た。
何で入れたのかと言うと……それはあれだ、企業秘密ってやつだ。
で、指定された広場に来てみればこの珍妙なコンビの再会である。
片や超絶痩せ型老け顔ノッポ……片や超絶幼児体型幼顔ちびっこ……ナンダコレハ。
「で、センセイは何故ここに?」
ちなみにこのちびっこ……俺が2ヶ月程世話になった高校の教師である。
つまりだ……俺よりも歳食ってる。
にも関わらずだ……あちらは幼顔なのに俺は老け顔。どうも納得いかない。
どうこう言っても何もならないとはわかっているが……悔しいものである。
「転校生が来るので待ち合わせしなさいと……つまりお仕事中なのです!」
と、とてつもなく自信満々なドヤ顔を見せるアホなセンセイ……
「はれ?でも何で橘チャンが?」
「へ~……そりゃ俺だ」
「へ?」
「だ、か、ら、なぁ………転校生は、俺です、はい」
流れる沈黙……
まぁ……ボケとしては良い具合の感覚なんだがね。
さて……センセイはどう来るか?
「た、たち……橘チャンがててて、転校生!?」
「そう、俺が転校生……センセイ反応薄いねぇ……」
ここはこう……お前なのかよ!!!……みたいな?
そんな動揺リアクションは欲しくなかった……うん、まぁ……ノーリアクションよりはマシだけどさ……。
さて、こうして全米が泣いた感動(笑)の再会を果たした俺と小萌センセイ二十歳……から先は教えてもらえなかった……は、とりあえず立ち話もアレだという話の流れで喫茶店まで移動している。
「センセイはあれ、勤務中じゃぁなかったのか?」
「え、えっと……何の話ですか?」
「オイ……」
どうやらこのアホ……は見栄を張っていたらしい。
いや、別に悪い話ではないのだが……なぁ?
別に俺に見栄を張ることもないだろうに……
「気にしちゃダメなのです!」
「お~……おk?」
まぁ……良いでしょうよ……
「橘チャンは確か諸事情で……えっと……「ハワイ」そう!ハワイに行ったんでしたっけ?」
「まぁ……戻ってきた訳だけどねぇ……ん?」
ふと視線を感じ横を見てみればウェイターが……何だ?注文はさっきしたばかり……
「あの、お客様……店内禁煙ですのでおタバコは……」
「お前もか!?タバコじゃねえ!!!パイポだっっっ!!!」
タバコとパイポじゃ形状が明らかに違うし煙も出ない……全然違う。
それにコイツは接種するのはニコチンじゃなくてハッカ、つまりミントである。
ココだと妙に勘違いする奴が多い……センセイと会う前だって非番だったらしいジャッジメントに歩きタバコはダメだとかなんだとかで注意されたし……
「ま、まあまあ橘チャン……」
しかも不思議なことに未成年だからタバコはダメだと注意されることは一度もない。
おかしいよなこれは……
「お前さんだって……幼稚園児が一人で夜道を歩いて良いのか……とか、言われたらショックだろ?」
「それは……そうですけど……」
「慣れちゃいけない流れってのもあるんだ……わかるよな?」
「確かに慣れちゃってる節もあるかもしれません……」
「お前あれだべ?もうあの時みたいにタイミング良く助けてくれる奴なんていないからな?」
あの時ってのは、俺と小萌センセイのファーストコンタクト……ついでに俺が初めて紳士じゃないロリコンってやつに遭遇した時だ。
んじゃ、回想……
【回想】
「路地裏は良いな……タバコ注意されないからな……うんうん……」
「や、やめてください!!!」
「ふひひっ可愛いね……」
「うわぁ……これはヒドイ……ついてねぇ……」
路地裏でパイポを吸ってた時の事である……
まぁ、つまるところ……ココ(学園都市)にやって来たばかりでタバコ注意されるのに疲れた俺は路地裏に……で、嫌ァァァァな場面にTHE遭遇した訳である。
俺の目の前にはこの時も未来も変わらずちびっこの小萌センセイと、
「グヘへ……脱ぎ脱ぎしましょうね~」
まぁ、つまりそういう人間だ。
こんな時、アイツなら善意で助けるのだろうが……俺は正義のヒーローではないので、思念のみで助ける事に。
ズバリ、今回は加害者が気持ち悪いから助ける。である。
「おいお前さん……気色悪いからゴーホームな」
問答無用で加害者に貫手をする。
貫手ってのは、まぁ……手刀でモノを貫くって技で……いや、流石にコイツは貫いてねぇよ?やろうと思えば貫けるけどさ……ほら、流石にちびっこが見てる前で殺人はさ?
「ゲホォッッッ」
まぁ、貫かないにしてもそれなりにダメージは入るわけで……
「ピッポッパッパッ トンピンパラリノプゥ……もしもし?ジャッジメント?不審者、ロリコン、強制猥褻、変態、女の敵、ささっと○○学区の路地裏に来て回収しろ。尚、貫手で応戦した為負傷している……正当防衛である為犯罪には問われないモノと思われる。以上……俺は被害者を自宅に送り届けるんでそれじゃ……」
まぁ、その後センセイをボロアパートに送り届け……
【回想終わり】
「今に至ると……」
「んぅ?」
「気にするな……そのままケーキ喰って成長しろ……」
小萌センセイケーキ三皿目……
正直このままじゃ縦ではなく横に成長しそうだが……気にしないでおこう。
まぁ……多分横にも成長しないだろうからな。
「あ!!!今、失礼なこと考えましたね?」
「考えてねぇし……逆だし」
つまり太らねぇだろうなって事……背も伸びねぇだろうけど……プフッ
「で、学校はいつからだ?」
「へ?明日からですよ?」
「準備期間ってのはないのかよ……」
「ありませ~ん!」
なんというブラックさだ……しかし明日からってことは……
「うわぁ……ついてねぇ……じゃあもう解散な」
「へ?」
カランッとフォークを皿に落とすセンセイ……おい、周りに迷惑だろ。
「そりゃお前……明日からって事は今すぐにでも徹夜で準備しねぇと色々と間に合わねぇだろ?」
「そ、そうでしたね……うぅ……」
「ケーキならいつでも食えるっての……会計は俺が負担してやるから。んじゃな……」
「3850円……うわ、結構かかったな……」
「ケーキ三個で2850えン……って高ぇなおい!?」
「950×3………(税込)おい!?」
「まぁ……ポケットマネーで払えない事もないか……二000円札ガガガ……コレクション二枚から払うとか俺最強?」
「お釣り150円……カカオ100%超コレートドリンクが買えるな……ハハッ」
「ついてねぇ……」
「不幸だ~!!!!!」
「俺に似た心の叫びが聞こえた気がする……しかも随分と前に聞いた声が……」
「おわっ!?ガム踏んじまった………!!!」
「嘘だろ……ついてねぇ……」
この男、橘 零は……そう、ついていない。
パトレイバー零式の貫手が格好良いと思うのは普通の事だと思う。