色んな魔王が集まる魔王オールスターに呼ばれたが、エロ同人出身魔王の私は肩身が狭い   作:名護十字郎

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麻央の魔法使いテスト!

普通のちっちゃい女の子だと思っていた子に戦略級大魔法を見せ付けられて。

殺されると思い込んで。

命乞いを決行したところ淫魔の力的なアレで思いっきり麻央ちゃんからエナジードレインしちゃいました。アリスフィリアです。

 

「ま、麻央ちゃーん……だ、大丈夫……?」

 

そう言って脚をガクガクさせて、恐らく下着もちょっと濡らしてるであろう麻央ちゃんの肩を支える。

周りの魔王の皆さんが冷ややかな目を向けてるけど、それ以上に『どの口が言うか』と私を責め立てるのは、他でもない私自身の脳内です。

 

「わ、わぁー麻央ちゃん魔力たっくさんあるんだね……」

 

私に冷や汗をかかせ続けるのは周囲の目でも良心の呵責でもなく、麻央ちゃんから流れ込んでくる魔力。

私たち淫魔は他者から力を奪っていく種族、だからついさっきの行為で麻央ちゃんから奪い取った(不本意)魔力が私に流れ込んでくるんだけど……多すぎる。

 

(ヤバいヤバいヤバいヤバい、パンクしちゃうこれ!)

 

さっきやったような囁き声で他人から吸い取れる魔力なんて本来高が知れてて、それこそ普通の魔法使い相手なら下級魔法一発分取れるかどうかのはずなんだけど……。

今流れ込んでくる魔力は量が多すぎてほんの僅か一端でも私を内側から弾けさせるに十分すぎるほど。

もうどうしようもない、背に腹は変えられないので麻央ちゃんに返すことにする。

本当は直接口同士でやるのが一番良いんだけど周囲の目がそろそろキツくなりそうだから……おでこ。

麻央ちゃんの身体がビクンビクン跳ねてるのは見なかったことにして、ようやく吸い取った魔力の9割を返還し、ようやく私の危機は去った。

 

ところでこれ、本来は「エナジードレイン」っていう攻撃を仕掛けたのは私のはずなんだけど何で死に掛けてるのは私なんだろう……?

 

「……フケツよ」

 

「おいおい、モラルとマナーは守ろうぜ?」

 

「貴様が私の部下なら懲罰房送りにしているところだ」

 

「お姉ちゃん、さいてー……」

 

そして次に私に迫りくるのはどんな氷魔法よりも冷たい視線の矢。

どう足掻いてもド正論。10:0で私が悪い。

それが分かりきっているから物凄く……辛いです……。

と、冷たい冷たい会議場への救世主は、意外なところからやってきた。

 

「でっ、伝令ーっ!プロデス様!勇者の一行が我が城目指して進軍中です!」

 

会議場に慌しく一体の魔物が駆け込んでくる。その顔には焦燥の汗。

その声に先ほどまでの非難モードの雰囲気は一気に払拭され、場に緊張感が走った。

つい今まで魔王のひとりひとりを品定めするように眺めていた大魔王プロデスから一気に愉悦の表情が消えたところからも、彼らと敵対する勇者がどれだけの強敵なのか窺い知れる。

 

「写せ、周囲の魔物は」

 

「はっ!遠視水晶はこちらに。魔物たちは瞬く間に隊長を失い、混乱の内に一方的に撃破されております!」

 

「下げさせよ。無駄な犠牲にしかならん」

 

「御意!」

 

配下の魔物が持ってきた水晶に写される光景はまさに蹂躙。

勇者一行四人組は時に剣で、時に魔法で容赦なく魔物達を蹴散らしていく。

大斧を振り回しながら突っ込んだ大柄な巨人が斧を振るう前に卓越した剣技で切断され、逃げ惑う魔獣の背には魔法の雷が次々と突き刺さる。

私の世界にいる、夢でエッチな体験をさせる場所(回想部屋)から一生出てこない勇者とは違って、本物の魔王の敵がそこにいた。

その勇者たちの進行を見て、私たち召喚魔王の中で最初に声を上げたのは……

 

「ねぇ大魔王さま、わたしあの人のところ行っちゃダメ?」

 

なんと麻央ちゃんだった。

今の蹂躙劇を見ても全く慄いていないところか、むしろ目の奥が明確な強い意思が燃えているのが分かる。

少なくとも先ほどのエナジードレインの疲弊など全く残っていないようだった。

 

「構わぬ。だが留意せよ」

 

その言葉を聞いた麻央ちゃんは返事もすることなく杖で大きく円を描くと、そこから開いた空間の穴に消えていった。

さっきの超強力なスカーレイジブレイザー、無尽蔵の魔力、そして転送魔法に飛び込むときに一瞬見えた覚悟を決めたような顔……私は、麻央ちゃんが何故ここに呼ばれたか、何故魔王と呼ばれていたかについて考えてなかったのかもしれなかった。

 

 

 

勇者の一員、魔法使いイオナは肩を降ろし、杖を下げた。

目指す魔王城まであと僅か、長く旅を共にした仲間たちにも自分にも、まだまだ消耗らしい消耗はない。

心優しい豪傑カイン。口うるさいが誰より仲間思いの僧侶のホミィ。

そして私たち三人を率いる、勇者ギデイン。

素晴らしい仲間と共に歩んだ長い旅はもう終わりを迎えようとしている。

必ずや魔王を倒し人の世に平穏を。

そう改めて心に誓ったときだった。

 

「こんにちは、魔法使いのお姉ちゃん」

 

ほんの一瞬、それすらの猶予すらあったか分からない間に自分たちの目の前に小さな少女が現れたのだ。

 

(……なんでこんな場所に女の子が?)

 

きっとそれは私たち四人全員が思ったことだろう。

魔物が蔓延るこの地に、小さな女の子がいるのは危険すぎる。

私と同じことを考えたであろうカインが大剣を下ろすと、少女に近づいた。

 

「嬢ちゃん、ここは危ないから逃げたほうが……」

 

「静かにしてて」

 

女の子はそう言うと手にしていた杖を軽く振る。

素振りというほどでもなく、それこと小さな子が木の棒を振り回して遊ぶような軽い一振り。

だが、

 

「ぐっ、ぐおおおおっ!?」

「ぎゃあああっ!?」

「ぬわーーーーっっ!!」

 

その一振りで私の仲間三人は……まるで私たちが先ほど倒した魔物達のように……軽く吹き飛ばされ、魔界の地を転がる。

それだけではなく、彼らが小さな結界に封じ込められたことが魔力の流れで分かった。

封印術。軽いものとはいえ一国を引き換えに行うような大魔法を、この子は相手を見ることすらなく行ったのだ。

 

「自己紹介するね!わたし、麻央・トライハート!お姉ちゃんのお名前も聞かせて?」

 

最低でも魔王軍の幹部クラスかそれ以上、もしかしたらその主にも並ぶ。

目の前の少女の魔力は、私には到底把握することすらできないだろう。

仲間を半ば人質に取られているようなこの状況、相手の意図が分からない以上、私は彼女の声に応じるしかなかった。

 

「……イオナ。そう、私こそが王国随一の大魔法使い、イオナ=エクリズン様よ!」

 

無理にでも啖呵を切り、自分を奮い立たせる。

目の前の女の子……マオが自分より遥かに強い魔法使いなのは認めざるを得ないが、だからと言って負けられない。

勇者の一員という誇りのためにも。そしてエクリズン家の名誉の為にも……!

私の誇りを掛けた名乗りに対してマオは笑いながらこう告げる。

 

「ねぇ、イオナお姉ちゃんはどうして魔法使いになったの?」

 

その問いかけは、生まれて始めて向けられた言葉かもしれなかった。

没落した一族なれど代々魔法使いの家、そこに生まれた私が魔法使いを志すのには何の疑問もなかった。

魔王を倒し人々を救いたいという思いは今の時代を生きる人間には誰しもあるものだし、何より……。

 

「決まってるわ。平和のため、そして何より……一族再興のためよ」

 

そう、没落したエクリズン家を再び興すため。

私は生まれてこの方、杖を握ることに迷いはない。

だが……。

 

「それだけ?」

 

マオは冷たくそう言い放つ。

彼女の杖を握る手に若干の力が入るのが分かった。

そして、先ほどまでの児戯のようなやり方ではなく、杖の先を明確にこちらに向けてくる。

 

「魔法っていうのはね?全能の力なの」

 

そこから感じられるのは強い敵意と怒り。

そして……決意。

小さな子供の体躯など関係ない。魔法を極め、そして恐らくは絶望した魔法使いが今目の前にいた。

 

「魔法にできないことなんてない。文字通り世界を自由に作りかえられる。だから……」

 

そして杖に魔力が篭っていくのが分かった。

それこそ王国とその周辺一体を丸ごと更地にできて尚使いきれないような膨大な量が。

その絶大な力は、きっと私が一生をかけて魔力を練っても半分も生み出せないだろう。

この子の魔法は人の域を遥かに超えている。

言うなれば……。

 

「だから、魔法は気軽に扱ってはいけないの。『神様になる』……それくらいの決意と覚悟が要るの。貴方にはその覚悟はある?」

 

……ない。

防げない。

かわせない。

届かない。

適わない。

そして……こんな化け物に、神に挑む覚悟なんて、ない。

 

「魔法管理局局長麻央・トライハートの名においてイオナ=エクリズンに宣告する。……これで頭を冷やして、もう一度考え直して」

 

魔物に蹂躙される人々を見て。住まいや家族を失う人たちの涙を見て。

それでも同じことが言えるのかと言いたい、言ってやりたい。

確かに私たちにとって魔法とはただ戦う力、それ以上の価値はない。

だけどその魔法でどれだけの人を救えたか、この傲慢ともいえる態度をとるマオに見せ付けてやりたい。

だが無意味だろう、きっとどれだけの惨劇を見てもこの子は考えを変えない。

私に向けられた杖には、それだけの覚悟が感じられた。

きっと本当に人類より魔法のほうが大事なのか、魔法による惨劇(・・・・・・・)を見続けてきたか……それは私には分からない。

今は彼女に突きつける言葉を持たない。だけどいつかは必ず届かせてやろう。

そう誓った私は、最後にこの言葉を投げかける。

 

「この…・・・魔王!」

 

「……スカー・レイジ・ブレイザー」

 

そして、私の視界と意識は、真紅の中に溶けていった。

 

 

 

「……異世界早々職務に励むとは、ご苦労なことだ」

 

麻央ちゃんの一方的な勇者蹂躙劇を遠視水晶から見ていたアバドンさんがそう呟いた。

勇者、戦士、僧侶の三人は敵とすら看做さず適当に縛り上げ、魔法使いの女だけは徹底的に全力の一撃を叩き込む。

水晶からは会話までは聞き取れなかったけど、麻央ちゃんがあの魔女に強く執着していたのは間違いない。

 

「あの……アバドンさん、麻央ちゃんはなんで、あんな戦い方を?」

 

「あいつの名乗りを覚えているか?」

 

私の問いに、怪魔王アバドンさんは静かにこう答える。

この人と麻央ちゃんの付き合いは長いらしく、彼にだけは麻央ちゃんの歪な戦いの意味が分かるのだろう。

 

「えっと、まほーかんりきょくで……」

 

「魔法管理局で悪い魔法使いと戦う、だ。……あいつの世界には溢れている。私欲のために魔法の力を振りかざす連中がな」

 

「つまり、あの勇者一味だった魔法使いが『良い魔法使い』か『悪い魔法使い』か見極めに行ったってトコね。……それにしても傲慢ね、魔法の神サマにでもなるつもりかしら?」

 

「あぁ、アイツはそのつもりだろう」

 

「ハッ……どの世界でも、ガキの考えることは同じね」

 

アバドンさんの問いに対し、タチオカ魔王はどこか呆れ気味に笑う。

この変態の言うことに同調するのは嫌だけど、正直なところ私も同じ意見。

『悪者』を一人でやっつける、世界中の悲劇を食い止め、被害を最小限にする。

そんな幼児の空想のような、見方によれば極めて自分勝手な絵空事に『挑む』だけの実力は、不幸なことに(・・・・・・)麻央ちゃんには備わっているのだろう。

誰もが仕方ないと目をそらす、理不尽に抗おうと思えてしまう力が。

 

「へぇ……神に、ね」

 

魔王セネトゥムはそう呟くと、クククと小さく笑い出した。

とは言っても笑う相手は他の誰でもなく、自分に向いた自嘲のようだったが。

この人も魔法か、神様かに何か強い拘りがあるのかもしれない。

 

……あれ?魔法と言えば私も使うけど確か……。

 

『もー魔王様!魔法でベッドの中に着替え運ばないの!』

『えーだってベッドの外寒いんだもん』

 

『もう魔王様!こんなにお部屋散らかして!いつも言ってるでしょう!』

『ご、ごめんなさい……このか弱いアリスフィリアを、どうか許して……(魅了魔法)』

『うっ……見過ごすのはこ、今回だけですからね!』

『はい……アリスフィリアはいい子になります……(ちょっろ)』

 

 

……私の私生活を麻央ちゃんに知られたら本当に死ぬな?

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