七つの魔剣が支配する~夜明けの魔法使い~ 作:HAL1993
「──以上が君に与える罰則だ。今後は反省をして、このようなことをしないように」
「はい。かしこまりました」
「話は以上だ」
「はい。それでは失礼します」
生徒会室で行われる形式的なやり取り。アルヴィン=ゴッドフレイとルネ=サリヴァーンの形ばかりの会話だった。
その様子を見守る生徒会メンバーの表情は硬い。納得している様子はかけらもなかったが、彼らにはこうするしかなかったのである。
ルネ=サリヴァーンが素直に捕らえられた後にどうなったのかといえば、特筆すべきことは何もなかった。生徒会室に連行された後に事情聴取をされ、口頭注意と食堂、図書室の一週間の利用禁止が科せられて解放となったのである。
しかしルネはさほど与えられた罰を重く受け止めてはいなかった。もちろんその様子は生徒会の面々にもよく分かっていた。彼らは丁寧に頭を下げて退室するルネを悔しく見送るばかりだった。
「……分かっていたとはいえ、直面すると悔しいものだな」
レセディがそうぽつりと呟く。彼女の発言を否定するメンバーは誰もいなかった。誰もが彼女と同じようにやるせない表情だったからである。
彼らは施設利用禁止以上の罰則を与えなかった。いや、できなかったのである。
もし謹慎などの重たい罰則を与えたい場合には教授会へと報告書を出し、教授達の判断が必要になるのだ。
となるとルネ=サリヴァーンは無罪放免となるだろう。もし教授会が無罪判決を出すと生徒会もそれ以上何も言えなくなるのだ。
それを察した上での軽い罰則だった。施設利用の禁止、反省文といった軽い罰だけなら生徒会の判断だけで出せるのだ。
「どうやっても教授会の味方は増えそうにないの?」
「ああ、無理だ。今回の場合、サリヴァーンを非難することは生徒達の自己防衛を否定することになりかねん。種を蒔いたのは彼かもしれないが、保守派も受けて立ったのだからな」
カルロスの問いにゴッドフレイはそう答える。どちらも不満そうな表情を隠してはいなかった。
当然彼らもルネに与えた罰則に納得しているわけではない。吊るされたアンドリューズの姿や二百名以上の被害者を見ているのだ。より重い罰則を本当は与えたかったのだが。
「味方になりそうなのはヘッジズ先生くらいか」「
キンバリーの校風から勝者であるルネを裁くような判断を教授会はしないであろうし、ルネ自身が教授会の有力教授達と仲が良いのである。フランシス=ギルクリスト教授、エンリコ=フォルギェーリ教授といった有力者が彼の敵に回ることはまずないのだ。
それでもどうにか思いつく限り生徒会に賛同してくれそうな教授を思い浮かべたが、とても多数派を覆せない。どうやっても教授会はルネの味方に回るだろう。
「生徒に罰を与えるのが好きなオールディス先生も今回はダメだろうな」
「ああ、よりによって魔法生物学での成果を上げたからな。あの先生もサリヴァーンの味方だ」
有力教授の中で生徒の罰則に積極的な人物も今回ばかりは役に立たないと生徒会は諦めた。
亜人種の知能向上に関する研究はルネの存在で大きく進むだろう。その期待を込めているバネッサ=オールディス教授も生徒会の味方にはなってくれない。
結局、どれだけ頭を捻っても生徒会は独自に出せる軽い罰のみでルネを帰らせるしかなかったのである。
このように教授会が実力のある生徒を可愛がるのは例年のことであるし、その辺りを生徒会もよく理解していた。
理解はしているが、納得はしていない。それはゴッドフレイを含めた生徒会メンバーの表情を見れば明らかである。
しかも今回は生徒会総出で当たった事件なのだ。にもかかわらず一週間の施設利用禁止程度の罰則しか出せないだなんて。
キンバリーではよくある光景だったが、今回のそれは特に生徒会に重くのしかかった。彼らは改めてこの学校の狂気に直面し、その理不尽と立ち向かっていくことを誓うのだった。
「~♪」
そんな生徒会の決意とは裏腹にルネはご機嫌だ。鼻歌交じりに歩いている。
キンバリーへと入学したのだと今もまだ実感しているからである。
難問に立ち向かって答えを手に入れ、大勢の生徒達とぶつかり合って勝利を手にしたのだ。これほどキンバリー生であることに浸れる機会はなかった。
この気分と引き換えなら施設利用の制限も安いものだとも思っていた。そもそも彼は校舎の食堂を利用しないし、
また、もし利用したいと思えば彼にとってできないことは何一つとしてないのだから。キンバリーではそれが許されるのである。
ルネは生徒会から解放されたすぐ後に食堂へとやって来ていた。下級生達が利用する友誼の間である。
入り口には既に大勢の生徒達が朝食を目指してやってきていた。朝という時間帯であるからか彼らの足取りは決して軽やかではない。のろのろと眠気に負けている様子で歩いていた。
しかし、ルネの姿を見た途端にまったり歩いていた生徒達は飛び込むように食堂へと入っていった。彼らは昨夜の被害者であり、その時は見せなかった抜群の反射神経だ。
まるで兎が狐を前にして巣穴に逃げ帰ったようだった。ルネは狩りする狐の気持ちで、わくわくした気分を隠せずに巣穴を──食堂の中を覗き込んだ。
そこはまさに兎の巣穴だった。狐の登場は食堂内で既にトップの話題に躍り出ており、被害者達の怯えた表情が幾つも入口へと向けられた。
ルネに斬られた大勢の生徒達だ。傷は生徒会に治癒呪文で治してもらったが、心の傷は全く癒えていない。どうにか落ち着いて朝食をと思った矢先に加害者との遭遇である。
一方で面白がっている生徒達もいた。昨夜の件に何の関わりもない野次馬である。
慄く兎と、何も気にしていない狐を楽しんでいるようだった。わくわくしている顔はここでの決闘や刀傷沙汰を望んでいるのだろう。
「おいおい。何のつもりだよ」「また何かするつもりなんじゃないの?」
兎達はそう口々に警戒し、杖や杖剣に手が伸びていた。が、そうしない兎も大勢いた。
「いやいや。そう早まるなよ」「そうよ。新聞、読まなかったの?」
彼らの手の中には学内に複数ある新聞部が作った朝刊がある。昨晩の事件のことを正確に報道する新聞もあれば色恋沙汰と絡ませたゴシップ誌もあったが、共通して彼の処分は正しく伝えていた。
ルネは食堂の利用制限を受けている。それは兎である彼らを安心させる唯一の情報だった。ゆえに彼の登場に緊張はしても不安視はしていなかった。
彼があっさりと食堂に入ってくるまでは。
その動きは薄布を退けたようにも見えなかった。ただ出入り口をくぐっただけ。自分達と同じように。全く彼の入室を邪魔するものはないように見えたのだ。
施設の利用制限は校内にかけられた古い呪文を応用している。本当ならルネは見えない壁に行く手を阻まれるはずなのである。
それなのに、彼は何か呪文を解いた素振りも見せずに入ってきた。何にも遮られず、傷一つなく。
つまり校舎の呪文は、古くて強いはずの偉大な呪文はルネに通じなかったのだ。また一つ彼は自身の才能を示したのである。
「みなさん、おはようございます」
そうルネは朗らかに挨拶した。にこやかな挨拶だったが、友誼の間は凍りついた。叫ぶことも動きこともできずに目の前の事態に硬直するばかりだ。
「おはようございます」
「な……あ……?」
近くの席に就いていた生徒にもそう挨拶したが、彼はルネを見上げるだけで何の返事もしてこない。同じテーブルで朝食を食べていた彼の友人達も全く同じであった。
「傷は綺麗に戻ったようですね。君は喉とお腹、君達はお腹と右手を貫いたはずですが今は綺麗だ。生徒会の先輩方は流石です。治癒呪文も丁寧ですね」
全員が昨晩の会場にいた一年生達だ。もちろんルネは彼らのことを覚えていた。声をかけた生徒は喉と腹を斬り、他の二人は貫通呪文で撃ち抜いたのだ。
その傷はもうない。が、確かに彼らは斬られて撃たれたのだ。まるで傷を撫でるように言われた言葉に三人は頭に血が上ったが、もし杖を抜けばどうなるかは既に分かっていた。
昨夜もそうだったのだから。立ち上がる間もなく全員がやられたのである。
その再現が行われることは分かり切っていた。きっと全員が立ち上がる前に、また体が切り刻まれて撃ち抜かれるだろう。
ゆえに彼らは顔を赤くしつつも席から立ち上がろうともしない。ルネを睨み、手にした食器やテーブルの端を強く握るくらいだった。
「では、また」
そう声をかけるとルネはそれ以上の興味を示さずに目的のテーブルへとまっすぐ向かう。
先ほどまで安堵していた生徒達は恐怖に顔を引きつらせていた。勇ましく杖剣に手を伸ばそうとしていた生徒達も、直前の威勢の良さを発揮できずに硬直する。
固まる生徒達に視線を向けられながらルネが行く先は一つだ。カティ達が座るテーブルである。
この展開を予想していたのか、それとも諦めの境地に達したのか。彼らはただ静かにルネを見つめ、彼が自分達の輪に加わるのを止めることもしなかった。
そうしても無駄である。それは諦めだった。
「おはようございます」
そう一言口にして、ルネは自分の席を引いて座る。彼の前には既にティーカップが現れており、中にはたっぷりと温かいミルクティーが注がれていた。
それを手に取り、テーブルの面々を眺めながら言った。
「みなさん眠たそうですね。しかし魔道を突き進めば徹夜もへっちゃらになるでしょう。私のように」
オリバー達の表情は疲れ切っていた。ルネの登場だけでなく彼の言う通り徹夜明けだったからだ。対してルネはいつも通りの微笑みである。気力十分といった様子だ。
にこにこと普段通りの微笑みを見せる彼にようやく食堂内の凍結は解除される。昨夜の恨みを晴らすか、もはや正当防衛といわんばかりに大勢の生徒達が立ち上がって杖や杖剣を抜くが。
彼らが後ろに蹴飛ばした椅子達がひとりでに動き出して彼らの膝裏に体当たりし、立ち上がった全員をあっという間に座らせた。転げるように椅子の上に落ちた生徒達の前にはたっぷりの朝食が現れる。
その間にルネがしたことは指先一つを立てただけだ。たったそれだけで全員の椅子を魔法で動かし、食事を用意したのである。
もちろんこれは警告である。これ以上のことができるという。そして起こるのは昨夜の再現であると。
これ以上やっても血の雨しか降らないことを察した生徒達は、苦々しい表情を隠しもせずにとりあえず目の前の朝食をやけ食いするのだった。
彼らにとってもはやルネの存在は大嵐のようなものだった。血の大雨を伴い、暴力の風を伴う巨大な嵐なのである。
そんな災害を前にして彼らができることはただ被害が出ないように祈り隠れて、家屋すら吹き飛ばす激しい雨風が過ぎ去るのを待つことだけなのだった。
しかしオリバー達にとっては違う。ルネは一人の生徒なのだ。だからこうして目の前に座られたら過ぎ去るのを待つという選択肢はない。
「──それは凄いな、ルネ」
話をしなければいつまでも状況は変わらない。そう思ったオリバーは率先してルネと会話を始めた。
ミシェーラは冷静に彼と話せないし、ガイやピートもだ。カティ、ナナオはこういった際に積極性を見せないので結局はオリバーが話すことになる。
彼を警戒し睨みつつも食事と会話を再開した。
「ええ、そうでしょう」
ルネはオリバーの見え透いた軽い賛辞にも喜びを見せた。そしてガイ、ミシェーラの敵意に満ちた目つきを気にする様子もない。
ミルクティーを一口飲み、にこにことオリバー達を眺めた。露骨に視線を逸らすオリバーにミシェーラ、ガイ、ピート。複雑そうな表情を浮かべるカティ、ナナオ。
「それで。俺達に何か話でもあるのか?」
「ええ、もちろん。手短に済ませましょう。校舎の呪文を静かにさせることは簡単ですが、生徒会の方々がやってくることを防ぐのは大変ですから」
そう言うとルネは友誼の間の出入り口に視線を向けた。ちょうど走って出ていく生徒の背中が見える。行き先は分かり切っている。生徒会室だ。
近場の生徒会のメンバーでは力不足と思ったのか、実力者である上級生達に頼るのだろう。もちろんゴッドフレイ達である。
視線を友人達に戻すとルネは手早く本題に入った。
「今日の放課後に今後の私の活動についてお知らせしたいと思っているのです。昨夜の
それだけ言うとルネはティーカップをテーブルに置き、オリバー達の返事も聞かずに立ち上がると颯爽と友誼の間から出て行く。
まさに過ぎ去る嵐のようだった。その後にゴッドフレイ達が走ってきたが、ルネはとうにいなくなった後だった。
ゴッドフレイ達は深いため息の後に話し合いを始める。
「どうする? また呼び出すか?」
「そうしたところでまた注意しかできんだろう。それに施設利用禁止の術式を破る新入生がいるなんて前代未聞だ。それに対する罰則は存在しないんだからな」
「一応これは教授会に報告しておこうかしら。ま、あの人達のことだから術式を破った方法を訊いたらそれで無罪放免になるでしょうけど」
結論は統括に求められる。全員の視線を受け、ゴッドフレイが話を纏めた。
「ではこの件は教授会に報告するとして──それで彼は何をしにここへ?」
ゴッドフレイはオリバー達に尋ねる。オリバーはそのままを伝えた。
「今日の放課後に昨日の闘技場で集会を開くと言っていました。どうも彼の今後の活動予定に話すとか」
「……なるほど。話は聞いたな。放課後に昨日の
「了解」
「ゴッドフレイ統括。そもそも集会を開かせないようにすることは不可能ですの? 昨日あんなことがあったというのに」
ミシェーラの提案にゴッドフレイは首を横に振った。
「
ゴッドフレイは後輩の提案を申し訳なさそうに却下する。
「しかし、もう昨日のようなことは起こさせないし、多分起きないだろう。あれが何を話すつもりなのかは分からないが、一応俺達も参加させてもらうから安心してくれ」
いったい何が起こるのか。全員がはちゃめちゃに材料を放り込んだ鍋を見守るように不安な気分に陥った。
だがルネはそんな彼らの気持ちは知ったことではないらしい。その後も授業中や授業後にいつも通りの調子で接してきた。
どれだけ彼らの表情が暗くなったり、ガイやピートが舌打ちしたりと悪感情を見せてもルネは気にしなかったのだ。
「君は気にならないのか? 俺達は君がやったことを全く良く思っていないんだぞ」
あまりにも気になったオリバーがとうとう尋ねた。それをしたら負けだと思っていたが、訊かざるを得なかった。
するとルネはあっさりとこう答えた。
「それはもちろん分かっていますよ。しかし君達に理解してもらえないわけではないとも思っています。実際私のやったことは結果をもたらしたのですから」
「……ッ、──」
オリバーは何か反論をしたかったが結局言葉が出てこなかった。言える立場になかった。それを彼らは自覚していたのだ。
ルネがやったこと。それはすなわちマルコを救い、そしてカティに自由を与えたのだ。どれだけオリバー達がルネを無視しようともそれは事実だった。
マルコを喋らせるために彼すら騙し、カティを傷つけたわけだが。カティの自由のためにアンドリューズを含め二百人以上の生徒を傷つけたわけだが。
しかし、それらの結果マルコは実験動物としてではあるが即殺処分から命を救われたし、カティは彼を研究する自由を手に入れたのだ。
これまで何度となく思っていた敗北感だが、改めて彼らは今日一日でそれを味わった。
周囲の反応で理解したのである。ルネは正しくないのかもしれないが、間違っていたわけではないのだと。
「おい、あれ。人権派の」
「よせ。サリヴァーンの奴に何されるか分かったもんじゃないぞ」
「でもさ。あの強さはマジだよね」「そうそう。それに逆らえないあたしらが悪いって感じかもね。ここじゃ」
「流石サリヴァーンの次期当主ってことか。普通人上がりの癖に」「あのミネルヴァ=サリヴァーンが熱を上げるのも分かるな」
「それは見た目でしょ」「そうよね。ほんと、見た目だけならあんなに可愛くて綺麗なのにね」
彼らはもう誰も人権派だからという理由でカティに嫌がらせをしない。彼女の背後に常にルネを感じるからだ。例え姿がなかったとしてもである。
もし彼女に何かあれば次に吊るされるのは自分だ。
新聞部はアンドリューズが吊るされた時の写真は持っていなかったが、想像で絵を描くことはできた。痛々しく吊し上げられた無残な姿の彼の絵は多くの新聞に載っているのだ。
それを見た生徒達は思った。次は自分かもしれない。自分がこうなるかもしれない。その恐怖心はこそこそと囁かれる声の弱さに繋がっている。恐怖心がカティへの関心を削いでいた。
こうして人権派であるカティは保守派の巣窟であるキンバリーにおいて自由を得たわけである。
もちろん彼女にとってこの自由は不本意だった。本来なら周囲と議論、争いをしつつも分かりあいたいと思っていたのだ。暴力によって手に入れた自由はカティを複雑な心境にする。
「ねえ、誰かあれを止められないの?」「そうよね。このままやりたい放題にさせるわけ?」
「できるのかよ。あのサルヴァドーリ先輩すらやられたって話だぜ」「そうそう。兄貴に相談したら『やだ』って速攻で断られたぞ」
「リヴァーモア先輩もな。あのやばい二人が、それも瞬殺されたって噂だ」「今回のことも生徒会はどうしようもなかったみたいだしね。ゴッドフレイ先輩が率いるあの面子でよ」
また周囲にはルネの強さを称える声があるのも事実だった。あくまでキンバリーにおいてという価値観ではあったが。
オフィーリア=サルヴァドーリ、サイラス=リヴァーモアという迷宮内トップクラスの危険人物を一蹴した事実も校内に広く知られるようになっていた。そして生徒会すらも彼の暴挙を止められなかったという話もだ。
つまりルネが言っていた「キンバリーの裏側への挨拶」は成功していたのである。
彼は結果を得たのだ。だからといって昨日の今日でルネと和やかに接するほどオリバー達は魔法使いではなかったが。
しかし彼を否定しようとしてもできない。ここキンバリーにおいては。魔法使いの社会の中では。
言葉に詰まったオリバーにルネは優しく接する。
「みなさん、どうか悩んでください。そして結論を出したのであれば、それを私は受け入れましょう。たとえ私から離れることになったとしても。もちろん残念ではありますが」
何よりもルネは彼らの複雑な感情を誰よりも尊重していた。彼ら自身よりもだ。その辺りも余計にオリバー達を困惑させる部分だった。
ルネは自分が正しいと思っているし、キンバリーがそう判断することも知っている。しかしそれを友人達に押しつけなかった。
自分は正しいのだから納得しようともそうでなくとも従うべき。そのような態度を一度も取らなかった。
自身の正しさは主張するが、それだけだ。ただオリバー達が納得するまで待ち、彼らが答えを出すまで交流を絶たないようにしている。
耳をすませばルネへの畏敬の囁きが聞こえる。その中で彼は微笑みを絶やさない。
オリバー達は思う。彼が結果を得られないような愚かな魔法使いであったら簡単に関係を断ち切れたのにと。彼が支配的で強権的な魔法使いであれば逃げ出せたのにと。
だが、ルネは違った。つまるところオリバー達がとても困るのはルネがどうしても魅力的だからだ。