七つの魔剣が支配する~夜明けの魔法使い~ 作:HAL1993
ルネ=サリヴァーンの才能の結晶と呼ばれる作品は幾つもあるが、これはその代表作といえた。
彼の
これこそ天球儀、ルネが開発した異界観測用の設備だ。この世界を中心として異世界の動きを正確に調べる天文学の傑作である。
この魔法道具の管理者である
といっても内容は天球儀が観測した情報が送られてくる水晶板を眺めることだったが。情報の精査は別の
彼が行っているのは天球儀が置いてある部屋の隣で異常な報告を待つことだった。部屋の壁には木枠に嵌め込まれた大きな水晶板が幾つもかけられており、そこには異界観測の結果が常に映し出されていた。
他にはテーブルと椅子が一つばかり。それだけの部屋だった。
椅子に腰かけた
天球儀は異界の動きを完璧に把握しており自然発生する門の発生は、その日時も規模も半年単位で分かっていた。誤差は僅か。これは計算上どうしても発生してしまうもので実際にはゼロと断言しても過言ではなかった。
異常な報告とはこの予測にない異界との接触だ。
つまりは
本来なら
そうした予兆の発生源や規模からどれほどの侵攻がどこで起こるのかが実際に侵攻が始まるずっと前から分かるわけである。
もちろん誤差がないわけではないし、魔法道具の出した報告の確認者や連絡要員は必要であるのでこうして監視用の
ルネが複数運用している
かといって彼は怠惰であるわけではない。じっと魔法道具が異常な報告を出すのを待っていた。
そして、その時は来た。
手元の水晶板に予測外の異界との接触を確認したとの報告が出る。
それによるとどうやら小規模の門が開いたらしい。これくらいなら通ってきても異界の魔獣くらいだ。自然発生の渡りと規模は変わらなかったし、
しかし発生源を確認して
「キンバリー天文学科に繋いでください」
彼がそう言うと連絡用の魔法道具が発言を認識し、キンバリー天文学科の監視員が持つ魔法道具に連絡を取る。
すぐさま壁にかけた水晶板に相手の姿が映った。若い女性の天文学科職員だ。相手も手に持った水晶板を操作している。
「そちらも同じ状況でしょうか
『はい、
天球儀はルネが所有するもの以外にも
そのそれぞれに監視員がいた。発生した門の規模によってはすぐに上席へと報告を上げることになるが、小規模の場合は現場で処理してからの報告となることが多かった。
「そうですか。ではそちらで確認後にまた連絡をください。
『分かりました。では失礼します』
こういうやり取りはたまにあった。申請忘れの生徒が勝手に門を開いたかそれとも魔に呑まれた生徒がやらかしたか。
数時間後に届いた報告書では後者だった。どうやら異界への好奇心から門を開いて向こう側へ行ってしまったらしい。
ルネが入学する直前に魔に呑まれ、二ヶ月ほど姿を消していた上級生だった。彼が消息を絶った後に造った工房で門を開いたらしい。
すぐに門を閉じるよう教員が派遣されるとのことだった。
報告書を読み終えたルネはそれを記録する。たった一枚の用紙で終わる話だった。