七つの魔剣が支配する~夜明けの魔法使い~ 作:HAL1993
カタカタと金属的な打音が室内に響く。ルネ=サリヴァーンの
ルネは机に向かい、鍵盤のようなものを指先で叩いていた。そのたびに彼の前にある水晶板に文字が映し出されていく。
よく鍵盤を見てみると文字が刻印されていた。それを押せば、同じ文字が水晶板に登場する。
その動きは素早くあっという間に水晶板は文字で埋め尽くされるが、すぐに文字のない状態になる。もちろん文章が消えたわけではなく、本で例えるなら次のページに移っただけである。
魔法使いが文章を書き上げる時には手書きか、口頭や意思で働く魔法のペンを使うかなど色々とあるが、ルネはこのタイプライタを使うことを好んでいた。
彼自身の筆記は精緻でかなり達者なものであるが、この独特なタイプ音を彼は気に入っていたからだ。
使っているタイプライタは市販のものではなく彼自身が作り上げたものだった。一般的なタイプライタはインクを使って用紙に文字を打ちつけていくものだが、ルネの作品はインクも紙も使わない。記録用の水晶板に文字が表示され、そこに文章が保存されていく。
なので打ち間違いなどがあっても修正用の白インクは必要なく、消去用の鍵盤を押せばその部分だけ消すことができたし、水晶板の高い記憶能力のおかげで膨大な紙の資料が部屋を埋め尽くすこともなかった。もし紙に印字したい場合でも専用の魔法道具を使えばスイッチ一つでできた。
執務室に鳴っていた素早いタイプ音は突如終わりを迎えた。報告書を書き上げたルネが推敲に入ったからである。
彼は装飾された木枠にはめ込まれた水晶板をタイプライタから取り外すと、指先でその表面をなぞっていた。そうするとページが移動できるのだ。
先ほどからルネが書いていたのは調査報告書である。授業の課題や、彼が個人的に教授陣から与えられた試験などではなかった。彼独自の調査報告だ。
基本的に彼以外が目にすることのないものだが、こうして文章で残すことをルネは好んでいた。現実に出力して、改めて考えに浸るわけである。
内容に問題はなさそうだったのか、ルネは水晶板を操作して書き上げた資料を個別保存していった。この魔法道具はただ乱雑に文章を登録するような機械ではなく、それぞれ管理することもできるのだ。
迷宮内環境報告書、迷宮内施設の利用状況、不死鳥の団の仲間達の進捗状況、そんな風にタイトル分けされた資料集に書き終えた文章を登録していった。
そして最後の報告書を登録し終えたところで、彼はある資料集を読み直し始める。これまで幾つも保存した資料を最初から確認していき、最新版まで読み終え、ルネは一つの結論を出した。
「──そろそろでしょうか」
そう呟くと彼は再びタイプライタに向き合った。水晶板を取りつけ、再び鍵盤を叩いていく。
書いているのは計画書だ。狩りに向けて取り揃えておくものが幾つもあったからである。保存用の容器や特別な装置などなど。新たに設計しておかなければならないものも含めて列挙していく。
必要な
書類を作るルネは楽しんでいた。
またキンバリーで活躍するのだ。それを考えると微笑みが止まらなかった。鍵盤を叩く指の早さも増していく。
ルネ=サリヴァーン、キンバリー入学後おおよそ半年の姿であった。
森の中の開けた場所でルネとカティは訓練に励んでいた。止まり木に足をかけている鳥竜を見つめるカティと、そんな彼女の隣にいるルネだ。
カティは鳥竜に向かって呪文を唱え、杖を振っている。
しばらくその効果が出るのを待つが。予告された正確な一撃がカティの額を突いた。「いたっ・・・・・・」と彼女はほんの少し声を漏らす。すかさずルネが告げた。
「杖を手に彼に呼びかけるのです。狙いはその目だけでも頭だけでもありません。皮膚の内側にある霊体にも声を届けるのです。支配するにしろ落ち着かせるにしろ、まずはそこから始まります」
ルネの落ち着いた声を聞いてカティは一息吐きつつも目の前の鳥竜から目を離さない。相手の鳥竜も丸くて大きな目をじっとカティに向けていた。竜種の縦長の瞳と、カティの丸々とした瞳が見つめ合う。
迷宮第二層『賑わいの森』にてルネとカティは訓練に励んでいた。今日の内容はカティ風に言えば「魔法生物に言うことを聞いてもらう方法」である。ルネ風に言えば「魔法生物の支配術」だったが。
止まり木の上にいる鳥竜はルネに操られていた。正確に三分ごとにカティを突っつくよう命じられている。
当然だが本気ではない。この鳥竜は骨ばった小さい魔法生物だが、その嘴の鋭さは錐のようである。魔法で操られずにあるがままでカティを突いたら「いたっ・・・・・・」どころでは済まない。皮膚が破れ、肉が抉られるだろう。
そうならないのはルネがこの鳥竜を完全に支配しているからだった。逃げるという選択肢を奪い、攻撃も小突くくらいの威力で止めさせていた。
その支配から解き放ち、攻撃を止めさせることがカティの課題である。
しかし一時間経っても上手くいかなかった。二十回も頭を突かれたカティだが、杖を片手に呪文を唱えてもどうしても鳥竜の攻撃を止めさせることができない。
「
カティの唱えた呪文が波動となって杖先から放たれ、鳥竜の体や霊体へと干渉を始めるが。何かにその干渉力を遮られた。あしらうように波動が弾かれ、同時に定刻になったため鳥竜の一撃が振り下ろされた。
彼女の呪文ではルネの支配呪文を消し去ることができなかったわけだ。
もちろんこれは課題であり、答えのある授業である。カティが基準以上の呪文を扱えばルネの支配呪文はあっさり解けるようになっていた。
何も変わらないのはカティがまだそこまでたどり着いていないというだけのことだ。
「いたた・・・・・・」
カティは額を撫でる。跡も残らないくらいの攻撃だが、痛みはあるからだ。
こうして一向に課題は進まないものの、ルネに焦っている様子やがっかりした様子はない。
「少し休みましょうか」
そう言うと鳥竜が止まり木から彼の肩の上に飛び移った。無言で支配呪文を使い、操ったのだ。現にこの魔法生物は鉤爪でルネの制服を傷つけないようひっそりと移動する。
カティは息を吐いてリラックスし、地面に座った。ルネはその隣に立ち、肩の上の鳥竜を指差して彼女にアドバイスする。
「重要なのはこの子をしっかりと感じ取ることなのです。魔力を用いて肉体と霊体の働きを感じ取りましょう。でなければ命の全てを呪文で支配することはできません。どう動くか分からないものを、どうやって操るのでしょうか。
ゆくゆくは見ただけで、もしくは君の魔力の感知範囲内にいる生命を支配できるようにならなければ。君はいずれ数多くの危険な魔法生物とその生息域で交流することになるのですから。環境も状況も君の味方になってくれるとは限りません。
その時には今のように優しく突っついてはくれませんよ。君の柔らかいお肉を啄むために本気になってくることでしょう」
「はい」
カティは素直に返事を口にした。
不死鳥の団が結成してから、おおよそ五ヶ月だ。
この訓練を含め、与えられる課題は全て自分のためのものなのだから。しっかり取り組まねば。そんな意識がカティの中にあった。
どんな魔法生物と対した時でも、ひとまず殺されないようにするための技術を磨くことは急務だからである。
特に信条によって攻撃性の呪文による制圧を避けたかったカティにとって、今訓練している支配呪文や鎮静呪文などの習得は必須だった。
他にもまだまだ学ぶべきことは多くある。ルネは呪文を含め、魔法生物の解剖学や治療技術などの授業もしていた。
カティの目的に合わせたカリキュラムを組んであるのだ。魔法生物医の資格取得である。
彼女なりのキンバリーでの適応を考えた結果だ。ここで活動するには何かしらの実績が必要であることはマルコの件で痛感していた。
言葉だけで何かを訴えても意味がないのだと。能力のある者の口から発せられた言葉でなければ誰も聞いてくれない。
では具体的に魔法生物達のために自分は何ができるかを考え、魔法生物達を癒し治す能力を求めたのだった。
休憩に入ったカティは水筒から水をごくごくと飲む。思っていたよりも喉が渇いていたのか、あっという間に飲み干してしまった。
振っても水が出てこなくなったので、水筒から口を離して大きく息を吐く。と同時に今日から練習を始めた呪文の感想も口にした。
「ふー。でも難しいね、この呪文。ルネからもらった感覚があるっていうのに全然コツが掴めない」
「支配呪文そのものが難易度の高い呪文ですからね。少なくとも一年生でやる内容ではありません」
「あのピンクのもやもやがなかったら、そもそも使えなかったのね」
カティは、あっさりとルネの桃色の霧を受け入れていた。
オリバー達はもう少し考えた方が、と忠告したのだが。資料を読み込んで問題がないと判断したカティは、団が結成してから三日後にルネの感覚を自分の体に取り入れていたのである。
難しいことも痛いことも何もなかった。ただあの桃色の霧を頭から被せられただけだ。
違和感はなかった。ほんのりと温かいものに体が包まれたと思っただけである。毛布に包まったような感覚に似ていた。
少なくとも何かが体に入ったという感覚は全くなかった。その光景を見学したオリバー達によると霧が染み込むように体の中に入っていったようなのだが。
たったそれだけだというのに結果は上々だった。
まずルネの診断でもオリバー達に受けさせられた医務室での診断でも、肉体にも霊体にも副作用的なものはなかった。
そして作用として、魔力や呪文がどうやって働くのかが以前よりも具体的に感じられるようになった。
凄い。というのがカティの感想だ。ルネはこんな風に魔法が見えていたのか、と。どおりで魔法が上手いわけだと。
今練習している支配呪文でこそ手こずっているが、鎮静呪文を含めた他の魔法技術に関しては習得が進んでいた。以前の自分では扱えない規模、正確さで魔法を扱えるようになっていたのだ。
また魔法以外では、杖剣の扱いも以前よりずっと分かるようになった。総じて魔法使いとしての能力が上がっていたのである。
これらはルネの助力を得た団員の全てに起きたことだ。結果、不死鳥の団の評価は変わった。ルネ以外はぱっとしないという評価から、天才に率いられる現在急成長中の派閥へと。
特に実技が多く試合という形で実力が他生徒の目に入りやすい魔法剣の授業において、流れで団員となったはずのアステリアが目立っていた。
それまで彼女の杖剣の腕前はいまいちであったのだが、着実に成長して今や苛烈な杖剣捌きの使い手となっていた。
霧を受け入れた後に「目覚めたわ」と杖剣にのめり込んでいたアステリアは試合での勝利という形で実力を示していたのである。
一方で霧を与えられなかった団員もいた。ナナオである。霧を欲しがって貰えなかったのは彼女だけだった。
拒否されたナナオはえらく不満げだった。苦手な呪文学がこれで解決すると思っていたからである。
ちなみに拒否した理由はルネの意地悪でもなんでもなく、彼女の後見人が許してくれなかったからだった。ミシェーラ=マクファーレンの父親であり、キンバリーの非常勤講師であるセオドール=マクファーレンが、だ。
団員達に霊体、血から取り出した自身の感性を与え、能力向上を図るという話は呪文学教授のギルクリストや魔法剣師範のガーランドにしていたので、二人のどちらかかもしくは両方からセオドールへと話が漏れたらしい。
彼は
確かに規則によれば後見人であるセオドールにはナナオの保護責任があった。異国、特に非魔法文化圏から生徒を連れてきた際には言葉や文化の壁を含め、生徒をケアすることが後見人の役割なのだ。
しかし後見人の役目は死文化されており、彼らが役目や責任を果たすことはあまりなかった。
現にナナオは入学前に詰め込み教育で言葉を辛うじて覚えさせられたくらいで、他には制服すら貰えずに入学式に参加したのだから。
自主性を重んじるキンバリーには馴染まないという理由だが、要するに面倒ということなのだろう。
セオドールもその通りでずっとナナオを放置していたわけである。それがどうしてだが今回だけ口を挟んできたのだ。
曰く「彼女の個性を大切にしてあげたい」とのことだった。もちろんルネは論文や資料を片手に霧が彼女の魂を汚染するわけではない、よって人間性に影響が出ることはないと説明したのだが。
万一のことがあるからと許しが出なかったのである。かなり意固地なほどにセオドールは許さなかった。
一応制度として形の残っている後見人の立場から言われるとルネも強く出られなかったわけだ。ナナオも渋々従った。
なのでナナオには霧は与えられなかったわけである。団員の中で彼女だけが元の状態のままルネの指導を受けていた。
もっともそれは教育という面だけではなく、彼女の不満解消も含まれていたが。
「シィッ!!」
「おやおや。今日は随分と気が立っていますね。まるで獣のようです」
ナナオの振り下ろしを軽い動きで避けるルネ。彼の杖剣の動きは更に素早く、ナナオに防ぐ余裕を与えずに鋭い一閃が彼女の腹に走った。
「ッ!」
「また私の一本ですね」
カティが森の中で鳥竜とにらめっこをしている最中、ナナオは拠点である夜明けの城の中でルネと杖剣の試合を行っていた。城内地下にある闘技場である。
もちろんただの地下施設ではなく、高度な魔法によって広さや環境が変わる特別な施設だった。一層にある
巻き添えを防ぐため他の団員は立ち入り禁止にしたその中で二人は戦っていた。殺し合いに近い試合を。
杖剣に不殺の呪文は全くかけておらず、抜き身の刃である。今もナナオは腹を斬られ、傷口から血を噴き出しながら地面に倒れた。
しかし背の高い草の中を何度か転がるとすぐに立ち上がる。傷もあっという間に塞がった。だが、痛みはあるのかナナオの上がった息は戻らない。
彼女が地面を転げている間に治癒の呪文を使ったわけではない。そんな魔法技術は彼女にはなかった。傷が治ったのはこの闘技場に施された呪文のおかげである。
ここで起こった負傷は即死でなければ一瞬で治癒される。傷も残らない。しかし痛みや斬られた感覚はしっかりと残る。
ルネはナナオのためにこの場所を作っていた。オリバーと殺し合いができない彼女に自分と殺し合いをさせるための施設だ。
ナナオが団員になってから、彼女に求められるたびにここで決闘していた。毎日あることではない。週に一度か、二度程度である。
不殺の呪文を使わないのはいつものことだ。そうでなければ意味がないからである。彼女の殺意を収めるためにはそうするしかなかった。
激しい剣戟によって血塗れになるナナオだが、すぐさま傷は治される。同じようにルネも無傷だが、彼の場合はこの施設のおかげではない。
ナナオの刃が、傷をつけるほどにルネに届いていないからだった。
彼女からするとルネは決して壊れない玩具なのだろう。今日は早朝から既に二時間近くやり合っているが、ナナオは満足しないのか何度もルネに立ち向かってきた。
そのたびに彼は杖剣を振るう。この野獣を宥めるために。
彼女は声にならない言葉で叫んでいた。太刀筋が声をあげる。「ああ、これがオリバーとなら」「オリバー」「オリバー・・・・・・」「オリバー!」と。
何と分かりやすい。だからこそルネも全力で彼女を受け止めた。ナナオが殺意に狂わないようにするためにも。
朝食時にカティとナナオは夜明けの城の食堂は使わず、校舎の食堂を使うことが多かった。理由はもちろんオリバー達と同じテーブルで食べたいからである。
「
「
パンもベーコンもフルーツも口に掻き込み、口を食べ物で一杯にしながら友人達との会話も楽しむ。学生としても青年としても素晴らしい時期を満喫していた。
一方でオリバー達は頬が朝食で一杯に膨らんだ二人を見て苦笑するばかりだが。
朝の訓練でたっぷり集中力と呪文を使ったカティも、死に物狂いで戦ったナナオも入学時の倍近い量の食事を取っていた。
それらをあっという間に消費していく。食べたら食べた分だけ全てが彼女らの力になっていくのだ。決して贅肉にはならなかった。
「はーッ! それでね──」
「相も変わらず拙者も魔法と剣技の鍛練ばかりにござる」
カティはジュースで口に含んだものを飲み込むと、大きな息を吐いて話し始める。
対してナナオは訓練についてあまり話さなかった。オリバーと戦う代わりにルネと殺し合っているとは口が裂けても言えなかったからである。
そんな彼女らの指導者であるルネはにこにこと椅子に腰かけて朝の食卓を眺めていた。彼の前にはお茶の一つもなかったが、ただカティ達が楽しそうにしているのを嬉しそうに見つめている。
それだけ見ると心優しい指導者なのだが。実態は神秘のベールに包まれた魔法使いそのものである。
カティ達に施した継承なる技術はまさに神秘だった。誰が想像できるだろうか。あんなピンクのふわふわを頭から被せられただけで力を得られるだなんて。
つい数ヶ月前までのカティ達と比べれば明白だ。不死鳥の団の団員達の成長は魔法使いの常識を越えていた。
そんなに簡単で良いのか? これまでキンバリーでどれだけの学生達が死ぬ思いで、そして実際に死にながら魔法使いの道を進んできたのか。
そうやって自他の死を積み重ねて、ようやく魔道は成長していくというのに。
魔法界の旧家の長女としてミシェーラもこれまで見たくもない魔道の深奥というものを目の当たりにしてきた。
オリバーもそうだ。魔法使いの業というものを見せ続けられてきた。力を得るためにどれだけのものを切り捨ててきたか。
なのにルネはまるで子供に優しく飴玉を配るかのように団員や受講者達に利益を与えていく。
誰も彼女らが楽をしていると糾弾したいわけではない。カティ達が努力をしていないわけではないのだ。むしろ努力をしたからこそ、与えられたルネの感覚が彼女らに影響を与えて実力へとなっていくのである。
継承とはそういう仕組みで成り立っていた。ルネが霊体と肉体について知識や技術を極めたからこそ優秀な魔法使いの感覚を取り出して他人に与えられるのだ。
そんなことは分かっていた。二人はそれが分かるだけの頭脳があった。
しかし、だ。思うところがないわけではない。心が理解を拒んでいた。
ルネは親切心でやっているようにしか見えなかったのだ。仲間に手を差し伸べ、彼らの力になっている。
これが詐欺ならどれだけ良かったか。開発者当人が喧伝するだけで何の効果もない魔法は世の中に多くある。
しかし今や継承はキンバリーが、いや魔法界の大勢が知る術式の一つとなっていた。
継承に関しては既にルネから学校側へ技術的な説明がされていたからだ。霊体技術の一つの成果として報告されていた。団を結成するずっと前だ。
呪文学、天文学教授達は提出された論文・資料を精査し、継承が高い霊体操作技術などを必要とする高度な魔法でありルネ以外は使えない絶技であると結論し公表した。
不死鳥の団が結成された翌日である。結果、継承は優れた霊体技術の一つとして魔法界に認められたのだ。
そんな思わぬか隠し玉があったことで自分も力が欲しいと、不死鳥の団の結成後も新たな団員希望者は後を絶たないが。
彼は今のところ団員を増やすつもりがないのか希望者全員を断っていた。代わりに彼は魔道倶楽部をより精力的に取り組んでいる。
その場においても継承は行っていないようだが、彼は大勢の学生の指導者として魔道を共に歩んでいた。学校の課題においても、自身の魔道の課題においてもルネに助けられたキンバリー生は既に大勢いるはずだ。
目立っていた。そもそもルネ=サリヴァーンは新入生ながらそれまでの実績で一人の魔法使いとして既に一目置かれていたわけだが、魔道倶楽部や不死鳥の団を率いたことで学生間の権力構造にまで入り込むことになったのである。
良くも悪くも目立っているルネは当然キンバリーにおける既存勢力から様々な評価を受けていた。主に要注意人物として。未だ底知れぬ神秘を多数抱えた魔法使いである。
今後どうしていくのか。生徒会を含めて数多くの上級生達がルネの動向に注目していた。
それはオリバーも同じであり、また学内にいる新聞部も同じであった。
わいわいと騒ぐカティ達を優しく見守りながら、ルネは新聞を広げる。ゴシップ誌として有名な第三新聞部によるものだ。
見出しには大きくルネが名指しされていた。「グレンヴィル教授失踪! ルネ=サリヴァーンとの確執か!?」と。