ウマ娘――。
馬が存在しない世界で、ウマソウルを宿す存在。
別の世界で活躍した競走馬の名を受け継ぐ、超常存在。
そんな彼女たちが活躍するトゥインクルシリーズ。
今日もまた通称『トレセン学園』では、そこで活躍するためにウマ娘たちが信頼するトレーナーと共に切磋琢磨、上へと邁進していく。
「――と言う訳で、今日で契約が終わった訳だが……私から離れる気は無いと?」
バインダーに挟まれたいくつかの資料に目を通し、スーツを着た中肉中背の優男は目の前に居るウマ娘に問う。
「答えはイエスです。私、ミホノブルボンはこれからもマスターと共に在りたいと望みます」
長い髪に無機質とも取れる無表情なウマ娘、とんでもないスタイルを誇る絶世の美少女。ミホノブルボンは胸に手をやり、真っ直ぐ優男――トレーナーを見据える。
ウマ娘は基本的にトレーナーと専属の契約を結ばないと公式のレースに出場は叶わない。
しかしウマ娘の総数に反してトレーナーの数は少ない。
故に優秀なトレーナーは複数のウマ娘を担当に持つ。
三年契約を結んだトレーナーとミホノブルボンの三年間は、今日終わりを迎えた。
「君もか……君もとなると今後は新しいウマ娘と契約を結ぶのは難しくなるな。――あっ、もちろん嫌味では無いよ」
このトレーナーはミホノブルボンを含め5人ものウマ娘を担当に持っている。これ以上となると一人ひとりへの対応が疎かになり、非効率であり失礼である。
トレーナーが最初に担当に持ったウマ娘はマルゼンスキー。
新人が持てるレベルのウマ娘では無かったが、ウマ娘第一主義の彼とレースを楽しむ主義の彼女は意気投合して契約を結んだ。
(なお、実は彼はシンボリルドルフと結びたかったのは内緒)
その次の年にはタマモクロスと言う小さな葦毛のウマ娘と、その次の年には圧倒的むn、スタミナのスーパークリーク、その次は天才トウカイテイオー、そして最後がミホノブルボンであった。
ブルボン以降は流石に面倒を見きれないと契約を結ばなかった。
マルゼンスキーは新人と組んだ故か、クラシック三冠に出場が叶わなかったがその分他の重賞を暴れまわった。そして一つ上のレジェンドリーグに向かえど彼からは離れなかった。
タマモクロスは二人目であったためか育成に粗が目立ち、クラシック年を棒に振るってしまった。しかし慣れてきた彼と共にシニア年で無双した。給料が良いレジェンドリーグに向かえど彼とは離れない。
スーパークリークは新人だった故の甘さの目立つ彼と、そこからの上二人とのノウハウで成長したギャップにやられ調子を崩してクラシック年を半分棒に振るうも最後の一冠を手にした。ライバルと時代を牽引して最後にはレジェンドリーグに向かえど彼とは離れなかった。
トウカイテイオーは天才と称される実力をこれでもかと見せつけ、無敗で二冠を手にした。そこからのケガとの戦いではトレーナーとの二人三脚で見事復活を果たし、今年を最後にレジェンドリーグに向かう予定である。なお、彼とは離れる気は無い。
ミホノブルボンはテイオーと並んで二年連続の無敗二冠となった。そこからはケガをして一年を棒に振るうも今年、契約最後の一年はテイオーと一緒に暴れた。
新人時代から5人連続で名ウマ娘を育成した彼の評価は二分されている。
優秀だが、あと一歩届かせられない男。
すぐ担当をケガさせる無能。
自分でもそう思っていた。だから彼には理解が出来なかった。
(どうして彼女たちは契約を再び結んでくれるのかな?)
目の前で真っ直ぐこちらを見つめて、無表情ながら尻尾をブンブン振り回すミホノブルボンを見ながら首を傾げる。
マルゼンスキーはニコニコとコーヒーを淹れながら、トレーナー室で向かい合っている二人を見ている。
彼はコーヒーが好きだ。自分だけなら淹れるのは面倒臭いが、彼の為なら苦にならない。
(フフフ、ブルボンちゃんは可愛いわね~。ゲキマブね!)
タマモクロスは何故か置かれているベッドに腰を掛け、脚をぶらつかせながらアイスを頬張る。
(はぁ……どいつもこいつも色付きおってからに、ウチがしっかりせんとな!)
スーパークリークは頬に手をやり、微笑みながら二人を見守る。
(ふふふ、二人とも可愛いですね~。後で頭を撫でてあげましょうね~)
トウカイテイオーは何とも言えない表情ではちみーを飲む。
(胸がざわつくなぁ……なんだろう?)
ミホノブルボンは体温の上昇と、心音の高鳴りを観測しつつも冷静に事を運ぶ。
(この後はミッション『実家にお連れしなさいブルボン、イエスお父さん』をスタート)
5人が心でいろいろ考えていると――。
「ふぅ……分かった、これからもよろしくなブルボン」
握手をし、契約書の準備をしながら彼は呟いた。
「あ、そう言えば今日はスーパーでセールだったな……めんどくさいなぁ、こういう時には同棲して美味しいご飯を用意してくれるような彼女が欲しいよな~」
(((((――!!??)))))
人間を上回る聴力を有する彼女たちは聞き逃さない。
(誰かに作ってあげる時は頑張れるのよね~)
(うちの節約料理は量は優れとるしな、成人の男には堪らんやろ)
(まあまあ! これは腕がなりますね~!)
(ボクってこう見えても最近料理頑張ってるんだよね~)
(適量とバランスは得意です、目標のチェンジを申請)
(((((私(ボク)(うち)が同棲してあげなきゃ!)))))