「ボクって凄いと思わないー? ほんっとやれば何でもできちゃうんだから」
腰に手を当て、褒めて褒めてーと凄いドヤ顔を披露するのはトウカイテイオー。
実際に凄く、ついこの間まで米を一粒一粒洗おうとしていた奴と同一ウマ娘とは思えない豪勢なお弁当を持ってきた。
(一瞬ルドルフに作ってもらったのか? と聞きそうになってしまった)
一度縁あってルドルフに作ってもらった弁当は、男が好きな茶色のがっつりしたものだった。
それに比べるとテイオーが作ってきたのは、プロが作ってきました感がでる写真映えしそうな彩り鮮やかな弁当だ。
「もぐもぐ――んっ――ごほっ」
「もう、なにやってんのトレーナー! はいお茶!」
ありがとうと目で訴え、渡された水筒の蓋に入ったお茶を飲み干す。
美味し過ぎて頬張り過ぎてのどに詰まったトレーナーの背をさすさすと擦り、まったくしょうがないなーと言いつつ笑うテイオー。
「料理が出来て、気が利いて、その上優しい。テイオーは良いお嫁さんになるね」
「ええ!? そ、そうかなー? ボクってお嫁さんに向いてる?」
「ああ、将来は良い旦那を見つけなよ」
「……むう」
唯一恋心を自覚していないテイオーであったが、何となく嫌な気持ちになった。
「ボクって家がお金持ちだし自分で言うと嫌味になっちゃうけど、ものすごく可愛いよねー?」
「? ああそうだね」
何が言いたいのか分からなかったが、取りあえず肯定する。
「引く手数多だよー、これは大変だねー」
「?」
「でもでも、困っちゃうよねー? ウマ娘のこと分からない男の人に囲まれるとねー」
「?」
本当に何が言いたいのか。
「ああ誰かウマ娘に理解あってー、優しくてー、格好良くなくてもいいからボクを一番に考えてくれる男の人居ないかなー?」
冷静に展開を見定め、好位置からスパートを掛ける。
先行を得意とするテイオーは引くことも、掛かり過ぎることもしない。
所謂『何があっても対処できる』距離感を肌で感じ、冷静に同棲レースに挑む。
「いやぁ、探せばいr」
「あ! 目の前にいるじゃーん!!」
「え?」
そう言ってテイオーは彼の首に腕を回して抱き着く。
天才肌のテイオーは解るのだ、この男相手に受け身に回ったり回りくどいと意味を成さないと。
頭を擦り付け、体を密着させる。
「トレーナー……ボクじゃ魅力無いかなー? ボクじゃだめぇ?」
上目遣いで甘える様に、温かい体温を武器に攻める。
「うーん……せめて後五年は待ってくれないとね……その時に返事じゃだめ?」
「むぅ……そう言う奴には……こうだ!!」
テイオーは彼のYシャツの中に下から頭を突っ込み、素肌に密着する。
彼のスーツの胸部分がテイオーの頭で膨らむ。
「テイオー?」
身構えるトレーナーだが、その先には何もアクションを起こさないテイオー。
シャツの中を窺うとコアラの様に抱き着き、ぐっすり眠るテイオーの姿があった。
(こうして見ると本当に可愛いな……こんな娘が欲しいなぁ……ルドルフと結婚したらテイオーみたいな子が産まれないかな?)
まったく恋愛対象としてみていない男である。
スーツの上から眠るテイオーの頭を撫で、父性むき出しで微笑む。
そうしていると予鈴が鳴る。
「起こすべきか、しかし――よし、サボらせよう」
学生を預かるトレーナーとしては最低だが、テイオーの可愛い寝顔を見て起こすのを憚れた彼はそのまま寝かせることにした。
余談だが後日、担任とルドルフに怒られた。
トウカイテイオー、お嫁アピール失敗。
?「これはあたしの出番ね!! いっちょやっちゃうからねー」
情けない後輩たちに、ついに大人の女が動く。