ハイスクールREAL×EYES   作:オクトリアン

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皆さん、本気を出して2週間以内に書きあげた結果、文字数が過去一番長くなったオクトリアンです!
今回は早く投稿出来ましたけど、次がどうなるかが分かりませんが、なるべく早く投稿したいと思います。
さて、前回はとうとうリアス達にゼロワンとして正体がバレてしまった歩夢、そんな歩夢は自分の秘密をリアス達に打ち明けるのだった···。
そして、その裏では黒い影が···!
続きは本編でどうぞ!
最後に、質問や感想は随時募集していますが、最低限のマナーを守ってお書きください。


第三話「オレは社長、飛電歩夢」

「ふあぁ〜···。昨日は興奮してあまり寝れなかった···。」

 

そう言いながら制服に着替えながら欠伸をしている歩夢の姿があった。

 

というのも、昨日は様々なことがあり、歩夢も色々考えてしまい、寝れなかったのだ。

 

歩夢がこれからの事を考えながらリビングへと向かい、いるであろうイズに声をかける。

 

「おはようイズ。」

 

「おはようございます、歩夢様。」

 

歩夢が朝の挨拶の言葉を言うと、直ぐにイズから返事が返される。

 

歩夢にとって、朝のいつもの光景だ。

 

 

 

 

 

「おはようございます、歩夢くん。···あらあら、朝は弱いのですね。」

 

「···ん?」

 

しかし、今日はいつもと違い、家で聞こえるはずのない声が聞こえた。

 

歩夢が目を擦って周りを見渡すと···、そこには味噌汁を煮込んでいる姫島朱乃がそこにはいた。

 

「···えーーーっと···お、おはよう···ございます···。···イズ、ちょっとで良いからこっちに来て?」

 

「?かしこまりました。」

 

歩夢が困惑しながら挨拶を姫島に返し、イズを廊下の方へ呼ぶ。

 

「なあイズ、何故ここに姫島先輩がここにいるのでしょうか?」

 

「昨日、歩夢様が仰っていたではありませんか。明日は姫島様がこちらにいらっしゃると、その為歩夢様が起きるのを待っていたのですが、姫島様が早く来られました。歩夢様の準備が終わるのを外で待たせるのも申し訳ないので、家に上げ、待ってもらうことにしました。」

 

「家にいる理由は分かったけど···何で姫島さんは朝ごはんを作っているんだ?」

 

歩夢はイズの説明を聞き、姫島が家にいる理由を理解するが、それでも何故朝ごはんを作っているのかは分からない為、イズに聞く。

 

「それが···、

 

 

 

 

 

姫島様が家に上がった時、玄関に飾ってある写真を見た時に驚いた素振りを見せた後、歩夢様は何処にいるかと聞いたので、自室にいらっしゃるとお答えしたら、そこに案内して欲しいと仰られました。そして歩夢様のお部屋の前に案内致しました。すると姫島様が、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開き、歩夢様の部屋へと静かに入っていきました。」

 

「姫島先輩が俺の部屋にはいってきたのぉ!?何でぇ!?」

 

歩夢はイズが説明した姫島の行動に驚く。

 

「そ、それで···姫島先輩はその後どうしたの···?」

 

「はい、私も姫島様の後を静かにつけ、歩夢様に危害を与えようなら直ぐに庇える位置まで近づきました。

 

すると、姫島様はカーテンを少し開き、明かりを少し入れ、歩夢様の顔が見える様にしました。その後歩夢様の側へと行き、ゆっくりとしゃがみ、歩夢様の顔をじっくりと見始めました。暫くすると、姫島様が何かを呟いた後、歩夢様に手を伸ばし、歩夢様の髪を優しく撫でていました。数秒撫でた後、撫でるのを辞め、ポケットから携帯電話を取り出し、歩夢様の寝顔を撮っていました。すると姫島様が静かに立ち上がり、歩夢様の部屋を出ました。

 

姫島様を追って私も部屋を出た後、姫島様から感謝の言葉を仰られました。『私を歩夢様の部屋に入れて下さり、ありがとうございます』と···その後、歩夢様の朝食がまだかと聞かれ、まだ済まされていないことを伝えると、歩夢様の部屋に案内してくださったお礼と称して、朝ごはんを作り始めました。···ということが今、姫島様が朝ごはんを作られている理由です。いかが致しましょう?」

 

イズから話された姫島の行動と朝ごはんを作っている理由を聞いた歩夢は···、

 

「うーん···姫島先輩が朝ごはんを作る理由は辛うじて理解出来たけど、姫島先輩が何でそんな事をしたのかは分からない···だけど、今一番気になっていることは···!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺の部屋に姫島先輩が入ってきたことだよぉぉぉぉ!!!!!

 

頭を抱えながら思わず叫んだ。

 

「うわぁぁぁ超恥ずかしい!!机の上昨日のままだから片付けて無いから汚いままだったし、何より俺の寝顔を見られたぁぁぁ!!!恥ずかしすぎるぅぅぅ!!!」

 

歩夢は頭を抱えながらのたうち回る。

 

「はぁ···はぁ···落ち着け俺···!こんな時にすることはぁ···ただ一つぅ···!はぁ···良し!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝からこんなことがおきて驚いた!びっくりしたなぁモ〜ニングゥ〜〜!!!はぁい!アユムじゃあ〜〜ナイトォ!

 

歩夢はクネクネした動きをし、最後は自分の後ろに向けて人差し指をビシッと立てる。

 

「今のギャグは『朝』と、朝の英語である『モーニング』と、『驚いた事』の三つをかけた、素晴らしいギャグですね。」

 

「そうだけどお願いだからギャグを説明しないで〜〜!!!」

 

イズは歩夢のギャグを冷静に説明すると、歩夢が大声で説明することをやめて欲しいことを叫ぶ。

 

「ふふっ、あらあら。とても二人は仲がよろしいんですね。」

 

歩夢とイズが漫才じみたことをしていると、不意に姫島から声をかけられる。

 

「ウェア!?ひ、姫島先輩!?す、すいません。うるさかったでしょうか···?」

 

「ふふっ、いえいえ。賑やかな家は私も好きですわ。私が来たのは注意しに来たのではなく、朝食が出来たので呼びに来たからですわ。」

 

「そっ、そうですか!なら温かいうちに食べましょう!」

 

姫島から声をかけられた理由が注意では無く、朝食が出来たからであることに安堵した歩夢は、リビングへと入って行く。

 

 

 

 

 

「美味しい···!このお味噌汁、すっごく美味しいです!姫島先輩!!」

 

歩夢は姫島から出された朝ごはんに舌鼓を打っていた。

 

「お口に合っていただけたなら、私も嬉しいですわ。」

 

そんな歩夢の姿を見て姫島は微笑み、そう言う。

 

「···歩夢くん。朝ごはんの途中だけど質問をさせて貰っても···?」

 

すると突然、姫島からそんな言葉を発した。

 

「ん?俺に答えられることならば良いですよ。」

 

歩夢は口に入っているものを飲み込んでそう言った。

 

「それでは質問をさせて頂きますわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

其雄(それお)様はお元気にしていますか、『あーくん』?」

 

ぶふっ!?

 

姫島からの突然の質問の内容に思わず歩夢が吹き出した。

 

「ひ、姫島さん!?何で俺の父さんのことを!?それに···あーくんって!?」

 

姫島から投げかけられた質問に、歩夢は少し混乱する。

 

「私が何故其雄様のことを知っているのかは、私の『苗字』と、『私の髪型』をあーくんが覚えていれば分かりますよ。」

 

そう言って姫島は微笑む。

 

「本当に何で姫島先輩が父さんのことを···?

 

 

 

 

 

いや、待てよ···?何か記憶の片隅にあるような···?『姫島』···『ポニーテール』···『あーくん』···そして父さんを知っている数少ない人物···。」

 

ボソボソと言いながら歩夢は思考に浸る。

 

「·····、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああああああああぁぁぁ!!!!も、もしかして····、

 

 

 

 

 

 

 

あーちゃん』!!??」

 

突然歩夢は叫び声を上げ、姫島のことを、『あーちゃん』と呼んだ。

 

「ふふっ···、

 

 

 

九年ぶりですね、あーくん。」

 

姫島は微笑みながらそう言う。

 

「うわぁぁ懐かしいなぁ!本当に久しぶり、あーちゃん!でも、どうして駒王町に?それに何で俺だって分かったの?」

 

「実はあーくんと其雄様から別れた後、諸事情によって駒王町に引っ越すことになり、それで私達は駒王町に来たという訳ですわ。そして何故あーくんとわかったのは玄関に置いてあった写真からですわ。私の家族とあーくんと其雄様と一緒に撮った写真を持っているのは、私の家族とあーくんだけだからですわ。」

 

玄関に置いてある写真の中には、身長が余り変わりない男の子と女の子と一緒に、耳にイズと同じデバイスを付けている壮年の男性と、ポニーテールにしている和服の女性と並んでいる着物を着た壮年の男性と一緒に撮った写真があるのだが、そこに写っている人達が歩夢一家と、姫島一家という訳だ。

 

「それで、あーくんに会えたので其雄様にもご挨拶をと思ったのですが···あーくんは其雄様は何処に居るのか分かりますか?」

 

姫島は再び、歩夢に其雄の居場所を聞こうとする。

 

「···実は···、

 

 

 

 

 

 

 

···駒王学園に入学するにあたって一人暮らしを始めたから、父さんとは離れて暮らしてるんだ。それに、最近忙しいみたいで余り連絡をとりあえないんだ。」

 

頭を掻きながら歩夢はそう言った。

 

「まあ、それは残念ですわ。其雄様にも会いたかったのですが···。」

 

「···でも、どうにかして連絡を取れるようにするよ。その時にあーちゃんに会えたことを伝えるよ。父さんすっごく驚くと思うよ。」

 

「ありがとう、あーくん。」

 

「···歩夢様、姫島様。お話の途中なのは承知しておりますが、後十分以内に家を出なければ待ち合わせ時間に間に合わなくなってしまいます。」

 

歩夢と姫島が話していると、イズが家を出る予定時刻が迫っていることを知らせる。

 

「えっ!?もうそんな時間か!」

 

「あらあら、時間が過ぎるのははやいですわね。あーくん、洗面所を借りても良い?」

 

「全然良いよ。イズ、あーちゃんを洗面所まで案内してくれないか?」

 

「かしこまりました。姫島様、こちらへどうぞ。」

 

歩夢がイズに洗面所への案内を頼むと、姫島を連れて、洗面所の方へと向かって行った。

 

 

 

(ごめん、あーちゃん···でも今は···父さんの事は···!)

 

歩夢は心の中で姫島に向けて謝罪をした。

 

 

 

 

 

 

 

家から出た歩夢と姫島とイズは三人で通学路を並んで歩いている。

 

イズには首に『駒王学園入校許可証』をかけている。

 

そして現在、歩夢は二つの意味でドキドキしている。

 

一つ目の理由は、現在歩夢は姫島とイズに挟まれる形で登校していることだ。

 

姫島もイズも二人ともとても美人な為、イズとは並んで歩いたことは何度もあるが、このような美人な二人に挟まれて歩くことを経験したことが一度もないため、ドキドキしている。

 

そして二つ目の理由は、周りにある。

 

 

 

「ねえ、あれって姫島お姉様じゃない!?」「今日もお美しいですわ!」「でも、何故紫電君と歩いているの!?」「でも、紫電君もギャグを言わなかったらかっこいいしね···お似合いかも。」「そうね、ギャグを言わなかったら紫電君はかっこいいもの。」「それでも、紫電の隣にいるあの人は誰なんだ?入校許可証を首にかけてるけど?」「あの人も綺麗だなー。」「くそっ!両手に花を持ちやがって!イケメン死すべし!!」

 

 

 

 

 

···等と、駒王学園の生徒とすれ違う度に様々な黄色い声や、怨嗟の声が聞こえてくる。

 

尚歩夢は心の中で···、

 

 

 

(ギャグがつまらなくて悪かったなぁちくしょおおお!!いつか絶っっっっっっ対に聞いた人が全員笑うような爆笑ギャグをかんがえてやるからなぁぁぁぁーーー!!!)

 

そう心の中で叫んでいた···。

 

そんな事を考えている歩夢を見て、姫島はクスッと微笑んでいた。

 

 

 

朝から様々なことが起きた歩夢は、少し疲れながらも駒王学園の校門を抜ける。そしてそのまま生徒会室へと直行する。

 

姫島に案内され生徒会室の前に来た歩夢は一度深呼吸し、扉をノックする。

 

「失礼します!二年B組の紫電歩夢です!三年生のリアス·グレモリー先輩にここに来るようにと言われましたので来ました!」

 

扉の前で歩夢は大声で言った。

 

「···待っていましたよ、どうぞお入りください。」

 

暫くすると、中から声が聞こえた。

 

歩夢はもう一度「失礼します」と言って生徒会室に入る。

 

入った先には、眼鏡をかけたスレンダーな女性が立っていた。

 

「お久しぶりです、『支取生徒会長』。本日はよろしくお願いいたします。」

 

そう、彼女が歩夢達の通う駒王学園の生徒会長、三年生の『支取 蒼那(しとり そうな)』である。知的でスレンダーな彼女は、学内で三番目に人気のある女子生徒だ。ちなみに一番目はリアス·グレモリーで、二番目は今歩夢の隣にいる姫島朱乃である。

 

「お久しぶりですね、歩夢君。そして···初めまして、私は駒王学園の生徒会長をしています、支取蒼那と申します。よろしくお願いいたします、イズさん。」

 

支取は歩夢に挨拶をした後、イズにも挨拶をし、頭を軽く下げる。

 

「お初にお目にかかります、支取様。私は、秘書型ヒューマギアの『イズ』と申します。本日はよろしくお願いいたします。」

 

支取の挨拶にイズも挨拶を返し、頭を軽く下げる。

 

「支取生徒会長、イズのことをよろしくお願いします。それとイズ、いい機会だから生徒会の仕事を見て、データだけでは分からない部分を見つけてみれば良いんじゃないか?」

 

「それは良い考えですね。是非そうさせていただきます。」

 

歩夢は支取にお願いした後、イズに生徒会の仕事を見るように提案をすると、イズもその案に賛成する。

 

「それでは支取生徒会長、また放課後に来ます。」

 

「ええ、待っていますよ。」

 

そう言って歩夢は頭を下げ、扉の方へと向かい、「失礼しました」と言い、生徒会室を後にした。

 

「それじゃああーくん、また放課後で会いましょう。」

 

そう言って姫島も自分の教室の方へと向かって行く。

 

歩夢も手を振って見送った後、自身の教室へと向かった。

 

ちなみに放課後までの授業と休み時間の間は、歩夢はイズのことが心配でソワソワしていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

放課後、歩夢は教室でじっと待っていると突然、教室の前の方と廊下で女子生徒の黄色い声が聞こえてきた。歩夢は其方の方を見ると、そこには木場がいた。そして直ぐに歩夢は理解した、彼が自分と一誠を迎えに来た人だと。

 

木場は女子生徒に声をかけ、通してもらい一誠の方へと向かうって行く。

 

「や。どうも」

 

木場は一誠にそう声をかける。

 

「で、なんのご用ですかね。」

 

一誠は木場に向けて面白くなさそうに返す。しかし木場は変わらず笑顔で一誠に話しかけている。

 

「リアス·グレモリー先輩の使いできたんだ。」

 

木場がそう言うと一誠は表情を変え、一誠も状況を理解した様だった。

 

「···OKOK、で、俺はどうしたらいい?」

 

「僕についてきてほしい。」

 

一誠と木場の会話に女子生徒から悲鳴が上がる。

 

 

 

「そ、そんな木場くんと兵藤が一緒に歩くなんて!」「汚れてしまうわ、木場くん!」「木場くん×兵藤なんてカップリング許さない!」「ううん、もしかしたら兵藤×木場くんかも!」

 

 

 

···等と騒がれている。一誠は心底迷惑そうな顔をしている。

 

そんな一誠の顔を見て歩夢は二割は同情する。ちなみに八割は一誠の自業自得だと思っている。

 

「あー、わかった。」

 

一誠は了解して立ち上がった。

 

「紫電くんも来て欲しいけど···いいかい?」

 

すると、木場から歩夢に向けて声をかけられる。

 

「···俺は一誠のついでですか?」

 

「そういうことじゃ無いんだけど···。」

 

「ふっ、冗談ですよ、冗談。木場さんを見た時に、直ぐに迎えだと俺は分かっていましたよ。」

 

「ははっ、これは一本取られたね。」

 

歩夢と木場がそんな会話をしていると、今度は外から黄色い声が聞こえる。

 

 

 

「イケメン同士の会話···絵になるわ!」「紫電くんもギャグを言わなければカッコイイわ!」「木場くん×紫電くん···ご飯三杯はいけるわ!」「それとも紫電くん×木場くん···大変!手が止まらないわ!」

 

「それとも紫電くん×兵藤×木場くん···嫌いじゃないわ!!」

 

 

 

···等と外から声が聞こえる。歩夢はスルーしているが、心の中では『ギャグは言わなければは余計だ!』と、思っていた。

 

「それじゃ、生徒会室によってから向かいましょう。」

 

そう言って歩夢は鞄を持って立ち上がり、歩き出した木場に歩夢と一誠はついて行く。

 

「お、おい、イッセー!歩夢!」

 

木場と一緒に歩き出した二人を松田は呼び止める。

 

「心配するな、友よ。決闘とかじゃないから。」

 

「俺も同じだよ。」

 

一誠と歩夢は松田に向けてそう言う。

 

「これ!『僕と痴漢と時々うどん』をどうするんだ!」

 

松田はそう言ってエロDVDを天にかざした。

 

そんな松田の姿に一誠は天を仰ぎ、歩夢は走り出し、松田に怪我が無いように計算されたドロップキックを放ち、松田は軽く吹っ飛んだ。

 

 

 

「失礼します!二年B組の紫電歩夢です!放課後になったので、イズを迎えに来ました!」

 

教室の一悶着の後、三人は生徒会室へ向かい、イズを迎えに来ていた。

 

「どうぞ、お入りください。」

 

中から声が聞こえた為、歩夢は一誠と木場に少しだけ待っていて欲しいと伝え、生徒会室へと入って行く。

 

「本日もお疲れ様でした、歩夢様。」

 

歩夢が生徒会室に入ると、イズからそう声をかけられる。

 

「ありがとう。それでイズ、生徒会の仕事を見てどうだった?」

 

「データにはない姿をいくつか見られました。大変有意義な体験をさせて頂きました。」

 

「それは良かった。生徒会の皆さん、イズのこと、ありがとうございました。」

 

歩夢は生徒会室にいる人達に向けて頭を下げる。

 

「いえ、こちらもイズさんに教科書には載っていないヒューマギアのことを話してもらい、とても有意義な話を聞かせて貰いました。こちらこそありがとうございました。」

 

そう言って支取が立ち上がり、歩夢とイズに向けて頭を下げる。

 

それに続いて、他の生徒会の面々も立ち上がり、頭を下げる。

 

「それでは俺たちは行きます。また、イズのことを頼むことがあると思いますので、その時はよろしくお願いいたします。」

 

「生徒会の皆様、本日はありがとうございました。」

 

歩夢とイズはそう言って頭を下げ、二人で生徒会室を後にする。

 

「あっ、イズさん!お久しぶりです!」

 

外に出ると、一誠はイズに挨拶をする。

 

「お久しぶりです、一誠様。お元気そうで何よりです。」

 

イズも一誠に挨拶を交わす。

 

もう分かっていると思うが、一誠は、いや、一誠達二年B組のクラスメイトの殆どは、イズのことを知っている。一年前の授業参観の時に、イズが来て、教室の注目を浴びていた。

 

そして、授業参観が終わった後、イズが歩夢の家族関係の人だと分かると、一誠と松田と元浜は歩夢にイズを紹介して欲しいと頼んだのだ。

 

勿論、歩夢は三人の下心が丸わかりなので、静かな怒りの言葉と、関節技で、丁重にお断りした。

 

「それじゃあ、行こうか。」

 

三人で話していると、木場からそう声をかけられ、歩き出した木場を追うように三人は歩き出した。

 

 

 

木場の後について行くと、向かった先は校舎の裏手だった。木々に囲まれた場所には旧校舎と呼ばれる、現在使用されていない建物があった。

 

昔、この学園で使われていた校舎なのだが、人気がなく、学園七不思議があるぐらいの不気味な佇まいだ。

 

「ここに部長がいるんだよ。」

 

旧校舎を見ていた三人に木場はそう告げる。

 

「部長?リアス先輩って部活に所属しているんですか?ということは木場さんも?」

 

「まあね。」

 

歩夢この質問に木場は静かに返す。そして木場は旧校舎へと入って行く。その後を三人はついて行く。二階建ての木造校舎を進み、階段を上る。更に二階の奥まで歩を進めた。

 

「···妙ですね。ここまで見てきましたが、古い建物の割には廊下も綺麗です。使われていない教室にも塵や埃が見当たりませんでした。どうやらマメに掃除はされているようです。」

 

旧校舎を見ていたイズがそう言った。イズの言う通り、古い建物にありがちな蜘蛛の巣や埃と言ったものは見当たら無かった。誰かが掃除をしているというのは目に見えて明らかだった。

 

そうこうしているうちに、木場の足がとある教室の前で止まった。どうやら目的の場所に着いたようだ。その教室の戸には『オカルト研究部』と書かれたプレートがかけられていた。

 

歩夢と一誠は首を傾げる。昨日見たリアスにこのような部活に入っているイメージが湧かないのだ。

 

「部長、連れてきました。」

 

引き戸の前から木場が中に確認を取ると、「ええ、入ってちょうだい。」と中からリアスの声が聞こえた。木場が戸を開け、三人は後に続いて室内に入ると、三人は部屋の中に驚いた。

 

「うおぉ···オカルト研究部という名の通り不気味な内装だ。部屋の一面全部に見たことの無い文字が書かれているし、それに···この巨大な魔法陣も何かは分からないけど不気味だ···。」

 

歩夢は部屋の内装を見てそう言う。そんな室内にはソファーとデスクがいくつか存在する。

 

そしてよく見ると、ソファーに一人の女子生徒が座っていた。

 

その女子生徒は黙々と羊羹を食べていた。

 

「あっ、塔城さん!」

 

ソファーに座っていたのは昨日出会った、塔城小猫だった。

 

その声でこちらに気づいたのか、三人に視線を向ける。

 

「こちら、兵藤一誠くんに紫電歩夢くん、そしてイズさん。」

 

木場が三人を紹介すると、塔城はペコリと頭を下げる。

 

「あ、どうも。」「こんにちは。」「よろしくお願いいたします、塔城小猫様。」

 

三者三葉の言葉を返し、頭を下げる。それを確認すると、また黙々と羊羹を食べるのを再会する。

 

すると、部屋の奥から水が流れる音が聞こえ出す。

 

見れば室内の奥にはシャワーカーテンがあり、カーテンには陰影が映っていた。よく見るとそれは女性の肢体だった。それに気づいた歩夢は顔を赤くしながらバッと素早く後ろを向く。

 

水を止める音が聞こえる。

 

「部長、これを」

 

カーテンの奥からもう一人の声が聞こえる。

 

その声は女性の人で、歩夢とイズは今朝から聞いた声だった。

 

「ありがとう、朱乃。」

 

どうやらカーテンの奥には姫島もいることが分かった。

 

歩夢がふと一誠気になり、隣の方を見ると、一誠が嫌らしい顔をして、カーテンの方を見ていた。それに気づいた歩夢は、軽く足を踏む。

 

いっ!!何すんだよ歩夢!」

 

「嫌らしい顔をしていた、お前が悪い。」

 

一誠が歩夢に怒鳴るが歩夢は淡々とかえす。

 

「···いやらしい顔。」

 

ぼそりと呟く声が聞こえ、声のした方を二人が見るとそこには塔城がいた。当の本人は羊羹を食べているだけだ。

 

塔城の言葉に答えたのか、一誠も反省している様だった。

 

すると、カーテンが開く音が聞こえた。歩夢はゆっくりと振り返り、リアスが制服を着ていることを確認するとリアス達の方へと向き直る。

 

リアスは歩夢達を見かけるなり、微笑む。

 

「ゴメンなさい。昨夜、イッセーのお家にお泊まりして、シャワーを浴びてなかったから、今汗を流していたの。」

 

リアスがそう言うと、歩夢は一誠に近寄り、

 

「おい、リアス先輩に何もしてないよな?」

 

そう聞いた。

 

「なっ、なにもしてねぇよ!」

 

一誠は昨夜のことを思い出しながらそう言う。

 

「···ならいいんだが。」

 

歩夢は一誠をジトーっと見つめながら離れる。

 

すると一誠は、姫島に気づいたのか驚く表情を見せる。

 

「あらあら。はじめまして、私、姫島朱乃と申します。どうぞ、以後、お見知りおきを。」

 

一誠に気づいたのか姫島はニコニコ顔で丁寧なあいさつをする。

 

「こ、これはどうも。兵藤一誠です。こ、こちらこそ、はじめまして!」

 

一誠は緊張しながら挨拶を交わす。

 

それを「うん」とリアスは確認する。

 

「これで全員揃ったわね。兵藤一誠くん、紫電歩夢くん、そしてイズさん。いえ、イッセー、歩夢。」

 

「「は、はい。」」

 

「私達、オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ。」

 

「え、ああ、はい。」「「ありがとうございます。」」

 

悪魔としてね。

 

この言葉により、僅かに空気が変わったことに気づく二人だった。

 

 

 

 

 

「粗茶です。」

 

「あっどうも。」「ありがとうございます、姫島先輩。」

 

姫島がお茶を淹れ、それを歩夢達に渡し、二人はそれぞれ礼を言う。

 

そして二人はお茶を一口飲む。

 

「美味いです。」「美味しいです、姫島先輩。」

 

「あらあら、ありがとうございます。」

 

二人の言葉にうふふと、嬉しそうに笑う姫島だった。

 

「朱乃、あなたもこちらに座ってちょうだい。」

 

「はい、部長。」

 

リアスにそう言われ、姫島は歩夢達の向かい側に座る。

 

「さて、改めて言わせてもらうけど私達オカルト研究部はあなた達を歓迎するわ。でも、オカルト研究部は仮の姿。私の趣味みたいなものよ。」

 

「そ、それはどういう···?」

 

リアスの言葉に、一誠が戸惑う。

 

「単刀直入に言わせてもらうわ、私たちは悪魔なの。」

 

「そ、それはとても単刀直入ですね。」

 

一誠の言葉が歩夢の気持ちを代弁していた。

 

「昨日の黒い翼の男を見たでしょう?あれは堕天使。」

 

「ッ!?」

 

リアスの言葉に一誠が目を開く。

 

「元々は神に仕えていた天使だったんだけど、邪な感情を持っていたため冥界に堕ちてしまった存在。私達悪魔の敵でもあるわ。

 

彼らは人間を操りながら、私達悪魔を滅ぼそうとしている。太古の昔から冥界ー人間界で言うところの『地獄』の覇権を巡ってね。堕天使以外にも、神のめいを受けて、悪魔を倒しに来る天使もいるわ。いわゆる三すくみの状態って訳。」

 

「···なかなかとんでもない話だな?」

 

「ゼアのデータベースにもそんな情報、一切載っておりません。」

 

「そりゃあ載ってたらおかしいからな?」

 

歩夢とイズは二人で静かに話し合う。

 

「ここまでは理解出来たかしら?」

 

リアスがそう言うので、歩夢はチラッと一誠の方を見ると、顔を歪めているのがよく分かった。

 

「一誠、とんでもない話ってのは分かるが、もう少し理解できるようにはしろよ。」

 

「うっ···わ、わかったよ···!」

 

歩夢は一誠に向けてそう言い、一誠も言葉を返す。

 

「···あ、あの〜普通の高校生には、ちょっと難易度が高いお話っていうか···。」

 

一誠は頭をかきながらそう言う。

 

 

 

「『天野夕麻』」

 

「「っ!!??」」

 

急に出されたその名前に、一誠は、否、一誠だけでは無い。歩夢も目を見開いて驚く。

 

「忘れてはいないでしょう、デートまでしたのですもの。」

 

リアスの言葉に、一誠は俯く。

 

「···ど、どこでその名前を知ったかは知りませんけど、冗談ならここで終えてください。正直、その話はこういう雰囲気で話したくない。」

 

「一誠···。」

 

初めて見る一誠の様子に、歩夢も戸惑う。

 

そう言う一誠を見ながら、リアスは自身の後ろに置いてある棚に手を伸ばし、その上に置いてあるものを取り、机の上に置く。

 

それは写真だった。その写真には···、

 

「っ!?夕麻ちゃん···!」

 

一誠と天野夕麻が仲良く話し合う様子が撮られていた。

 

その写真を前に、一誠は震え出す。

 

この写真には歩夢も息を飲む。

 

彼女は存在していたわ、確かにね。

 

二人に向けてリアスはハッキリと言う。

 

「二人に、一応聞いておくけど、この子よね?天野夕麻ちゃんって。」

 

「そっ、そうです!」

 

「はい、間違いありません。でもどうやってこの写真を···。」

 

二人は天野夕麻で間違い無いと言うが、一誠と歩夢は、彼女に関する周りの記憶と、写真が無くなった筈なのに、何故ここにあるのかが気になっている。

 

「この子は、いえ、これは堕天使。」

 

「「っ!?」」

 

リアスの言葉に二人は目を見開いて驚く。

 

「昨夜、あなた達を襲った存在と同質の者よ。」

 

「で、でも!松田や元浜だって彼女のことを覚えていなかったし!携帯のアドレスだって!」

 

「力を使ったのよ。」

 

「力···ですか?」

 

一誠の疑問をリアスが返すと、リアスの言葉に疑問を持ったイズが質問する。

 

「一誠、私があなたのご両親にしたようにね。」

 

「っ!?」

 

「なあ一誠、どういうことだ?」

 

「···リアス先輩が俺の家にいた時、リアス先輩が無茶苦茶なことを言ったんだ。俺も、そんな無茶苦茶なことを通らないと思ったんだけど···その言葉を信じたんだ。俺の両親が物分りが良くなったと思ったんだけどよ···。」

 

「···なるほどな。その力で松田や元浜の記憶や、携帯のアドレスを消したって訳か。」

 

歩夢が一誠に何が起きたかを聞き、暫く考えると、歩夢とイズは納得をする。

 

「その堕天使は目的を果たしたから、あなた達の周囲から自分の記憶と記録を消させたの。」

 

「も、目的···?」「それは一体···?」

 

「あなた達を、殺すことよ。」

 

「···何故俺たちが殺されようとしなければならないんですか?」

 

リアスの言葉に歩夢が純粋な疑問をぶつける。

 

「あなた達の身体に、物騒な物が無いかを確認するため。それが確認されたから、あなた達を殺そうとしたのよ。でも、紫電くんの方は、失敗したようだけどね。でも一誠、あなたは殺されてしまった。光の槍に貫かれてね。」

 

「っ!?一誠が···殺された···!?」

 

「では一体···何故一誠様は生きて···?」

 

リアスから話された衝撃の真実に、歩夢は驚愕する。

 

そしてイズも何故一誠が生きているのかを考える。

 

「···そういえば夕麻ちゃんがあの時、セイ何とかって言ってたっけ···。」

 

件の一誠はデートのことを思い出し、覚えていることを言う。

 

神 器(セイクリッド·ギア)。」

 

リアスがそう言った。

 

「特定の人間に宿る規格外の力。歴史上に残る人物の多くが、それを所有していたと言われていますわ。」

 

「時には、悪魔や堕天使の存在を脅かす程の力を持った物もあるの。」

 

神器の説明を姫島とリアスがする。

 

「···なるほどな、ゼロワンドライバーは俺しか持っていなくて、普通に考えるととんでもない力なわけだな。だからアイツらは俺のゼロワンドライバーを神器だって言っていたのか···。」

 

歩夢は疑問に思っていたことが一つ解決し、ため息を吐く。

 

そして、一度考えるのをやめ周りを見ると、一誠が左手を掲げ、何かをしていた。

 

「ぷはぁー!!これ以上は、無理っす···!」

 

「良いわ、まだ難しいみたいね。」

 

歩夢は後で何をしていたかを聞こうと思った。

 

「···でもやっぱ、何かの間違いなんじゃ?」

 

「堕天使がそれを恐れて殺しにかかったのも事実よ。」

 

「で、でもそれが事実なら、俺がこうして生きているのって、可笑しくないっすか?」

 

一誠がリアスに向けて、歩夢とイズが一番知りたいことを質問する。

 

「コレよ。」

 

そう言って取り出したのは、『あなたの願い叶えます!』と書かれ、魔法陣が描かれた一枚の紙だった。

 

「それは···!」

 

一誠には心当たりがあるようだった。

 

「命の尽きる寸前、貴方はこのチラシから、私を召喚した。イッセー、あなたは私、上級悪魔であるグレモリー公爵の娘、『リアス·グレモリー』の眷属として生まれ変わったの。」

 

リアスはそう言って背中から蝙蝠のような翼を出した。

 

「私の下僕の、悪魔としてね。」

 

とんでもないカミングアウトに、一誠だけでは無く、歩夢とイズも驚愕している。

 

すると、姫島、木場、塔城も立ち上がり、三人共リアスの方へ近づく。

 

そして、一誠達の方へ向くと、一人一人その背中からリアスと同じ翼を出す。

 

三人は驚き、席を立ち上がる。

 

すると突然、一誠の背中からも四人と同じ翼が出てきた。

 

「マジ···かよ···!?」「一誠様が···悪魔に···?」

 

歩夢とイズは驚き過ぎて、身体が固まっている。

 

「よろしくね、一誠。」

 

リアスが一誠に向けてそう言う。

 

 

 

 

 

「さて、こんな空気になって言うことじゃないんだけど···次はあなたの番よ、紫電歩夢くん?」

 

リアスはそう言って、歩夢とイズの方を見る。

 

「···本当に、こんな空気で言うことじゃないですし、悪魔や堕天使や、一誠が悪魔になったことに比べると、大した話では無いですよ···。」

 

そう言いながら、歩夢は立ち上がり、自身のバックを持って、前に出る。リアス達は既にソファーに座っている。

 

「えーっと、まず、皆さんに俺の事を話すために、俺の秘密を話します。」

 

「秘密···?」

 

歩夢の言葉に一誠がぼそっと言う。

 

「それは···、

 

 

 

 

 

俺の苗字が、本当は違うことです。」

 

歩夢はリアス達に向けてそう言った。

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ歩夢!『紫電』がお前の苗字じゃないのか!?」

 

一誠は立ち上がり、そう言った。

 

「悪い、一誠。皆を騙す気は無かったんだ。でも、そうしなきゃ行けなかった理由があるんだ。でも、その理由はおいおい話します。なら、俺の本当の苗字は何なのかは···この、『ゼロワンドライバー』に秘密があります。ですが、この秘密は他言無用でお願い致します。俺が信頼する人にしか話さないことです。」

 

そう言って歩夢は周りを見る。そして、全員が頷くのを確認した。

 

「この『ゼロワンドライバー』は誰でも装着は可能なのですが、変身出来るのは、ある条件をクリアしていなければ行けないんです。その条件は···、

 

 

 

 

 

 

 

飛電の社長』であることです。」

 

歩夢は前を真っ直ぐ見てそう言った。

 

「飛電の社長···それってつまり···!」

 

リアスは少し考えると、驚いた顔を見せる。

 

「ど、どういうことだよ、歩夢!」

 

一誠は歩夢に向けてそう言う。

 

「···察しのいい人はもうわかっていますね。そう、俺の本当の苗字は···『飛電』。俺の本当の姿は···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『飛電 歩夢』。二代目株式会社飛電インテリジェンス代表取締役社長です。

 

歩夢は、堂々とそう言った。

 

「あ、歩夢が···社長···!?そ、それに···飛電インテリジェンスって···歴史の教科書にも載ってある大企業じゃねえか!!!」

 

一誠は立ち上がり、そう叫んだ。

 

「これは驚いたね···まさか社長だったなんて。」

 

「凄い···です。」

 

「あらあら、歩夢くんが社長なら、もしかしてイズさんは?」

 

木場達もそれぞれの反応を見せる。すると姫島は歩夢のそばにいるイズのことに注目する。

 

「そうだな、イズのことも紹介しなきゃな。イズ、自己紹介を頼む。」

 

「お任せ下さい、歩夢社長。」

 

イズはそう言って前に一歩出る。

 

「改めて自己紹介をさせていただきます。私は、飛電インテリジェンス先代社長であり、歩夢社長の祖父にあたる『飛電 是之助(ひでん これのすけ)』様により作られました。秘書型ヒューマギアの『イズ』と申します。主な仕事は歩夢社長の秘書です。ですがご自宅でお留守番をしている時は家事をやっています。以後、よろしくお願い致します。」

 

そう言って頭を下げる。

 

「イ、イズさんが、歩夢の秘書ぉ!?」

 

一誠は再び大声を出して驚く。

 

「あらあら、イズさんも中々、素晴らしい仕事をしておられるのですね。」

 

姫島は頬に手を当て、そう言った。

 

「で、でもよ歩夢。お前が凄いやつだってのはわかったんだけどよ···でも何で苗字を変えるようになったんだ?」

 

一誠は周りが気になっていることを聞く。

 

「···それはな、養父さんときめたことなんだ。俺が飛電インテリジェンスの関係者とバレないようにする事と、一人暮らしを許してもらえるための条件なんだ。」

 

歩夢は少し間を開けて、そう言った。

 

「ねえ、よろしければ、あなたのご家族について教えてくれる?」

 

リアスは歩夢にそう言う。

 

「···そうですね、いずれ分かることですし、今、俺の家族のこと···駒王学園に入学するまでのことを話しておきます。」

 

そう言って歩夢は何度か深呼吸をする。

 

「···俺は、父さんである『飛電 其雄(ひでん それお)』と、母さんである『飛電 嘉乃(ひでん よしの)』の間に産まれました。···でも、俺は二人のことは余り知りません。」

 

「···もしかして。」

 

「···はい、父さんと母さんは···俺が物心つく前に、二人共···事故で亡くなりました。」

 

歩夢の告白に、一同が黙り込む。

 

「でも···そんな俺を心配して、俺のじいちゃんが、俺のために、あるヒューマギアを作ってくれました。それが···父さんを元に作られた父型ヒューマギア、『飛電 其雄』でした。」

 

「もしかして歩夢···お前、ヒューマギアに育てられたのか!?」

 

一誠は歩夢にそう聞くと、歩夢は静かに頷く。

 

「でも、何も不自由は無かった。父さんとは血は繋がっていなかったけど···ココで、繋がっていたから···本当の父さんの様だったから···俺は幸せだった。」

 

歩夢は胸に触れながらそう言った。

 

「でも、そんな父さんにも、秘密があったんだ。それは···、

 

 

 

 

 

 

 

父さんは···『仮面ライダー』だったんだ。」

 

その言葉に、イズと姫島以外が驚く。

 

「お、お前のお父さん···仮面ライダーだったのか!?」

 

一誠は本日何度目か分からない大声でそう言う。

 

「ああ、俺は昔、ヒューマギア運用実験都市に住んでいたんだけど···父さんは俺を寝かした後、こっそりと家から抜け出して、『仮面ライダー一型』として活動していたみたいなんだ。」

 

「···そう言うことだったのですね。」

 

「朱乃···?」

 

歩夢の言葉に納得をしている姫島の姿にリアスは疑問を覚える。

 

「···ある時、父さんが紹介したい人がいるって、俺をとある場所へ連れていってくれました。そこは和風な大きな家で、そこには、三人の家族が仲良く暮らしている家でした。俺と父さんは、何度かその家に行って、俺はその家の子供である、女の子とよく遊んで、父さんとその家のお父さんは、よく俺と女の子のことを話し合っていたそうです。でも···、ある時、その一家が遠くへ引っ越すことになったんです。俺とその子はお互いに泣いて···また会うことを約束して、最後に俺と父さん、そしてその一家の皆さんと一緒に写真を撮って、その家族とは離れてしまいました。

 

 

 

 

 

でも、お互いに気付かずに、俺と女の子は再会をしていました。」

 

歩夢の最後のカミングアウトに、一誠達は驚く。

 

「そ、それで!?誰だったんだよ!」

 

「それはな···、今朝、お互いにわかったばっかりだったんだよ···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだよね、姫島先輩···いや、あーちゃん?」

 

歩夢はそういうと、全員は驚きながら姫島の方へと向く。

 

「···私も最初は驚きましたわ。歩夢くん···いえ、あーくんのお家に向かった時、あーくんの家の玄関に、最後に私達と撮った写真が飾られていたんです。その時に気づきました。彼が、あーくんだって···。」

 

そう言って姫島は微笑む。

 

「でも、あーくんの顔をよく考えて見てみると、何処か其雄様の面影があるのに気づきましたわ。」

 

「俺もあーちゃんの髪型、あーちゃんって分かったあと、直ぐにあーちゃんのお母さんと同じ髪型だってわかったよ。」

 

「ゴッホン!」

 

歩夢と姫島の和気あいあいとした会話をリアスが咳き込みで無理やり切る。

 

「会えて嬉しいから思い出話や身の回りについて話したい気持ちもわかるわ。でも、まずは歩夢のことを聞いてからにしてちょうだい。」

 

リアスは歩夢と姫島を見てそう言う。その言葉に、二人はいそいそと元の場所に戻る。

 

ちなみに戻る途中に歩夢が一誠の顔を見て見ると、歩夢の話に感動していたのか、先程の光景を嫉妬していたのか分からないが、変な顔になって、涙を流していた。

 

「ま、まあ話を戻しますけど···俺は、父さんとそんな生活が楽しかったです。父さんを心から笑わせることを夢にして、幸せに暮らしていました。

 

 

 

 

 

 

 

···あの日までは···なあ一誠、ヒューマギア運用実験都市の主な出来事を歴史の教科書に載っていたことで良いから覚えていないか?」

 

一誠は急に歩夢から話を振られたことで、顔が戻った。

 

「えっ!?そ、そんなこと言われても···うーーん···確か···ヒューマギアの高速餅つきだろ?それから···モデルのヒューマギアだろぉ〜、それから···っ!!」

 

一誠は歴史の教科書に載っていたことをゆっくり思い出していると、一つの出来事を思い出した瞬間、頭が冷える感覚を感じた。

 

「···どうやらわかったみたいだな。そう、俺の幸せな日常は···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『デイブレイク』によって、崩壊しました。」

 

『デイブレイク』···それは、ヒューマギア運用実験都市の開発区域にあるヒューマギア工場の整備ミスによる爆発が、同じ開発区域にあった動力炉に誘爆して起こった爆発事故だ。

 

「そして、当時俺は···父さんの職場である、開発区域にいました。その時に、デイブレイクが起きました···。

 

ですが、不思議だと思いませんか?デイブレイクが起きた中心の部分で、どうして無事だったのか。それは···ある人が、俺を庇ってくれたからです···。」

 

「ま、まさか···。」

 

歩夢の言葉に姫島は口を抑える。

 

「···あーちゃんの予想通りだよ···俺が無事だったのは···、

 

 

 

 

 

 

 

父さんが···俺を、庇ってくれたからなんだ···。

 

歩夢の言葉に、全員が様々な反応をする。

 

一誠は目を見開いて固まっている。

 

リアスと木場、小猫は俯いている。

 

姫島は口を抑え、目からポロポロと涙が零れている。

 

姫島たちの姿を見た歩夢は、目から涙が流れ出すのを感じる···。

 

「俺を庇った父さんは、俺に···『夢に向かって···跳べ』···と言葉を残して···亡くなりました···その日は12月27日···俺の···誕生日でした···。」

 

歩夢は俯き涙を流しながら、そう言った。

 

「···ゴメン、あーちゃん···俺、あの時に伝えるべきだったんだ。でも、俺···あーちゃんを···悲しませたくなくて···。」

 

「···いいえ、大丈夫です。それに···何となく其雄様がもういないというのは、朝のあーくんの雰囲気で、何となく理解出来ましたわ··。あーくん···話して下さり、どうもありがとうございます···。」

 

姫島はそう言うと、歩夢に頭を下げる。

 

「歩夢···辛いことを思い出させて、ごめんなさい···。」

 

リアスからも謝罪の言葉が聞こえ、リアスは頭を下げる。

 

「な、なあ歩夢!!」

 

すると突然、一誠が大声をあげる。

 

「···俺に出来ることが何かあれば、言ってくれ!!俺は···お前を助けたい!!だから頼む!何か頼って欲しいことがあったら、俺の事を頼ってくれ!頼む!!」

 

一誠はそう言って地面に頭が着くような勢いで頭を下げる。

 

「一誠···ありがとな。もし、その時が来たら···頼らせてもらうよ。」

 

歩夢は微笑んでそう言った。

 

「···歩夢先輩。その後、どうしたんですか···?」

 

すると小猫が、恐る恐る歩夢に聞く。

 

「···そうだね、せめて俺の昔の話は終わらせないとな···。あの後、俺は飛電インテリジェンスに呼び戻されたんだ。その後、じいちゃんと一緒に過ごしていましたが···デイブレイクの翌年、じいちゃんも···病気で亡くなってしまいました···。」

 

歩夢は俯いてそう言った。

 

その言葉に、一同もまた俯く。

 

「その後···じいちゃんの告別式が行われました。そして、じいちゃんの荷物を整理していたら···じいちゃんの遺書が出てきたんです。そして、その遺書に書いてあったことで···一悶着がありました。」

 

「一体···何が書いてあったんだい?」

 

歩夢の言葉に木場が疑問を出す。

 

「そのことは···イズ、皆に遺書の内容を伝えてくれないか?」

 

「かしこまりました。」

 

歩夢のお願いにイズは頷く。

 

「是之助社長の遺書には、このようなことが書かれていました。

 

···『そう遠くない未来、我が社は重大な危機に直面する。我が社が派遣しているヒューマギアが、心無き存在に悪用され、人類を襲う···。』」

 

「一体誰が···何のために···?」

 

イズの言う是之助の遺書の内容に一誠が不思議に思う。

 

「『対抗手段はただ一つ。『ゼロワンドライバー』と、『プログライズキー』だ。我々人間の手によって、ヒューマギアをコントロールする為の、新世代セキュリティシステムが内蔵されている。』」

 

「··なるほどね。歩夢が持っていたあの機械は神器では無く、貴方の会社で作られた物だったのね?」

 

「はい、ゼロワンドライバーとプログライズキーは飛電インテリジェンスで作られた物です。···イズ、続きを頼む。」

 

「はい、歩夢社長。···『使用権限があるのは、我が社の社長のみ。そして、二代目社長に···

 

 

 

 

 

孫である、『飛電歩夢』を任命する。···社員一丸となって、会社の危機を乗り越えて貰いたい、以上。』···これが、是之助社長の遺書の内容です。」

 

「···俺はこの時、次の社長は···『福添(ふくぞえ)副社長』だと思っていました···でも、じいちゃんが次の社長に選んだのは···俺でした···。」

 

「···そんなことがあったのですね···。」

 

イズと歩夢の話を聞いた姫島が言葉を零す。

 

「···その遺書での内容を聞いた周りの人達は···全員、納得がいっていませんでした···同族経由で会社を私物化する気かとも言われました···。

 

そりゃあ当然ですよね。俺みたいな子供が社長になる何て···色々言われて、当たり前ですよね···。」

 

「歩夢···。」

 

「···でも、そんな反対意見の中、一人が俺が社長になることに賛成をしました。その人は···じいちゃんがまだ生きていた時に、じいちゃんとよく一緒に話していた人で、飛電インテリジェンスのことを愛しているとよく言っていた人でした。それが···、

 

 

 

 

 

ZAIA(ザイア)エンタープライズ》の社長、『天津 垓(あまつ がい)』でした。」

 

「《ZAIAエンタープライズ》に『天津垓』ぃ!?また教科書に載っているでかい会社と人物じゃねえか!」

 

歩夢が言ったビックネームに、一誠は驚く。

 

「その時に天津社長は···『貴方達は、是之助社長の遺言を無下にする気ですか?きっと是之助社長には、歩夢君を選んだ意図が1000%存在するはず···それを目先の地位だけしか考えない等···本当に貴方達は是之助社長を支えていた社員ですか?』···と仰り、皆様の口を閉ざしていたそうです。」

 

イズはその時に天津垓が言っていた言葉を言う。

 

「ですが···それでも納得いっていない人の顔を見た天津社長はこう言ったんだ··。

 

 

 

 

 

 

 

『ならば私が、皆様全員が歩夢君を1000%社長と認めていただくために、歩夢君を教育し、立派な飛電の社長にしてみせましょう。』···と言ったんだ。勿論、周りの人は困惑したりしてたよ。

 

···でも、天津社長は飛電インテリジェンスからとても信頼されていたから、任せても大丈夫では無いかっという意見もチラホラ出てたんだ。

 

そんな中、天津社長は俺に···『決断を決めるのは、歩夢君自身だ。』と言いました。そして俺は考え···、

 

 

 

 

 

俺はその言葉を了承しました。そして俺は手続きを済ませ、天津社長の《養子》になりました。

 

そして俺は、福添副社長に『社長代理』として社長の権限を渡し···俺は天津社長···いえ、養父さんの会社である、ZAIAエンタープライズの方へ行き、そこで社長の事や、経済のことだけでなく、様々なことを学びました。···そして養父さんの元で、中学校を卒業した時に、俺は養父さんから一人暮らしを許してもらい、俺は引越しをし、駒王町に来ました···これが、俺が駒王町に来るまでの話です。」

 

「···一つ一つの出来事が、とても壮大です···。」

 

歩夢の過去に、小猫がポツリと言葉を零す。

 

「歩夢、聞きたいことがあるのだけど···貴方はいつイズさんと出会って、いつ飛電インテリジェンスの社長の座を正式に継承したの?」

 

「イズと出会ったのは、俺が中学三年生の時です。そしてその時に、俺はゼロワンドライバーを受け取り、正式に飛電の社長になりました。」

 

「あれ?待ってくれ歩夢。お前は天津垓社長の元に行く時にその···ゼロワンドライバーを持って行かなかったのか?」

 

「まだその時は正式に社長として継承されていなかったから持っていく必要は無かったんだ。それに···ゼロワンドライバーを使うには、まだ俺が未熟だったからな。」

 

リアスと一誠の質問に歩夢は答えていく。

 

「···ここまでの話で、貴方が何者なのかはよく分かったわ。それで歩夢、貴方の目的は何なの?」

 

「俺の目的···というか、将来叶えたい夢があります。それは···、

 

 

 

 

 

 

 

人間と、ヒューマギアが共存出来る世界を作ること』です。その夢がどれだけ大変な夢なのかも理解しています。でも、俺と父さんが一緒に家族として過ごせていたように···人間とヒューマギアは、共存し、心を通わせられることを、俺は信じています。」

 

リアスの質問に、歩夢はリアスの目をじっと見つめ、そう言った。

 

「···そう、ならば私達は貴方の夢を応援するわ。そうでしょう、皆?」

 

歩夢の目を見たリアスはふっと微笑み、歩夢の夢を応援することを言う。そして、周りに声をかける。

 

「はい、私もあーくんの夢を、応援しますわ。」「僕も、そんな世界を見てみたいな。」「私もです···。」「俺もだぜ歩夢!お前の夢の世界···実現するのを超楽しみに待っておくぜ!」

 

四人はそれぞれの反応を見せる。

 

「皆···ありがとう!

 

改めて、二年B組、『飛電 歩夢』です!よろしくお願いします!」

 

そう言って歩夢は頭を下げた。

 

「···良かったですね、歩夢社長···。」

 

その後ろで、イズは優しく微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

帰り道、リアス達悪魔との話を終えた歩夢とイズは、リアス達が作ったチラシを帰り道にある家のポストに入れながら帰っていた。

 

「何か···悪魔の仕事も、俺たちと同じく、地道なことの積み重ねなんだな。」

 

歩夢はそう言いながら、チラシをポストに入れていく。

 

あの後、リアスから悪魔の事情を聞き、少しでも契約の手伝いをすると歩夢が言い、このようなことをしているのだ。

 

「どのようなことも最初は小さなことからです。リアス様たちも、そのことをわかっているのでしょう。」

 

「···そうだな。」

 

イズと歩夢が話しながらポストに入れていくと、受け取っていた分のチラシを配り終えていた。

 

「あ、終わったようだな。そんじゃ、帰るかイズ。」

 

「はい。」

 

二人は並んで自宅へと帰っていく。

 

しばらく歩くと自宅の近くに来た···しかし、歩夢達の自宅の前に車が止まっていた。

 

「···何だろ?」

 

そう言って近づいていくと、車の扉が開き、中から一人の男がトランクを持って出てきた。

 

「『飛電インテリジェンス』代表取締役社長、飛電歩夢様でお間違えありませんね?」

 

「···あの〜···貴方は?」

 

突然男から話しかけられた歩夢は警戒しながら返事を返す。

 

「申し遅れました。私は、『ZAIAエンタープライズ』本社開発部の幹部を務めています。『与多垣(よたがき) ウィリアムソン』と申します。本日は、歩夢様に、新しいプログライズキーと、プログライズキー用のデータを天津垓社長の指示により、届けに参りました。」

 

「えっ!?養父さんから!?···というかすいません、こんな時間まで待ってもらって···。」

 

「いえ、歩夢社長には学業に励んでもらうことが第一です。余り気にしないで下さい。」

 

与多垣はそう言いながら、トランクを歩夢の前に出し、トランクを開く。

 

「こちらが、本日歩夢社長に渡すために持ってきた···、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フリージングベアープログライズキー』と、新しいプログライズキーを作る為に用意されたデータになります。どうぞ、お受け取り下さい。」

 

与多垣が取り出したものは、ホッキョクグマが描かれた、水色のプログライズキーと、少し形状が変わったプログライズキーのような形をした物だった。

 

「あっ、ありがとうございます!」

 

歩夢はそう言って二つのプログライズキーを受け取る。

 

「そして、もう一つ天津垓社長からの伝言があります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

···『(ほろび)が、また現れた』···との事です。」

 

与多垣の言葉に歩夢が目を見開いて、固まる。

 

「···それでは、私は仕事に戻ります。歩夢社長の、これからのご活躍に期待しております。」

 

与多垣はそう言って、車に乗り込み、車を走らせて行った。

 

「···歩夢社長。」

 

「···この町まで被害を出す気なのか···!『滅』···!」

 

イズの言葉に答えず、歩夢は二つのプログライズキーを握りしめながら、震えた声を出していた···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャアアアアア!!!」

 

周囲は背の高い草木が生い茂った場所にある廃屋となった建物から、異様な叫び声が響く···。

 

叫び声を出したのは上半身が裸の女性だった。しかし、フラフラと立ち上がった女性の体は宙に浮いていた。その姿は、女性の上半身とバケモノの下半身を持った、形容のしがたい異形の存在だった。

 

しかし、その異形な存在は自分の目線の先の闇を恐れている。

 

否、その闇の中にいる存在に恐れを抱いている。

 

すると、廃屋内に足音が響く···。その足音は、異形の存在の目の前の闇の中から聞こえてくる···。

 

そして···、闇の中からその存在は現れた。

 

 

 

 

 

 

 

その存在は、バイオレット色のパワードスーツの上に黒い装甲を身につけ、黄色の複眼が光る存在だった。その手には弓らしき武器を握っており、腰には黄色と黒がメインの機械を取り付けていた。そして、その機械にはバイオレット色のプログライズキーが装填されていた。

 

「くぅ!こざかしいぃぃぃぃ!!!貴様を喰ってやるぅぅぅぅ!!!」

 

異形の存在は叫び声を上げながら、紫色の存在へと突撃していく。

 

そんな中、紫色の存在は静かに腰に手を伸ばし、そこから薄緑色のプログライズキーを取り出す。

 

《STRONG!》

 

そして、薄緑色のプログライズキーを起動し、持っている弓に装填する。

 

《Progrise key confirmed. Ready to utilize.》

 

《ヘラクレスビートルズアビリティ!》

 

そしてゆっくりと弓を引きながら、異形の存在に照準を合わせる。

 

照準を合わせている時に、エネルギーで出来た薄緑色の矢ができていた。

 

そしてその矢を···、

 

 

 

 

 

《ストロングカバンシュート!》

 

 

 

異形の存在に向けて放った。

 

そして、放った矢はまるでカブトムシの角のような形になり、異形の存在を貫いた。

 

「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

異形の存在は叫び声を上げながら吹き飛び、仰向けになりながら倒れる。

 

倒れていく異形の存在を見た紫色の存在は、ゆっくりと異形の存在へと近づいていく。

 

「ひっ!く、来るな···!」

 

顔だけを上げた異形の存在は、近づいてくる紫色の存在に恐怖していた。

 

その紫色の存在は近づきながら、腰に付けてある機械に手を伸ばし、その機械に取り付けてあるレバーを押し込む。

 

すると、その機械から音が鳴り出す。そして···レバーを引っ張る。

 

 

 

《スティングディストピア!》

 

 

 

その音声と共に、背中から機械で出来た針が出てきた。それはまるで、サソリの毒針のようなものだった。

 

その機械でできた毒針は、紫色の存在の右足に絡まっていく。

 

そして異形の存在の前に行き···、

 

「はあっ!」

 

異形の存在の眉間に右足を突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スティング

 

ディストピア

 

 

 

「がっ···」

 

紫色の存在の一撃をくらった異形の存在は、その言葉が口から漏れた。

 

そして紫色の存在は静かに右足を下ろすと、異形の存在は頭を地面に落とした。そして、二度と動くことは無かった···。

 

 

 

「···駒王町の端にある廃屋の占領···完了だ···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ては···アークの意志のままに···。

 

紫色の存在は、廃屋の中で静かにそう言った···。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『滅』···ですって?」

 

次の日の放課後、与多垣から聞いた情報をリアス達に伝えていた。

 

「なあ歩夢···その、滅って奴は何者なんだ?」

 

一誠が滅のことを歩夢にたずねる。

 

「···イズ、滅の姿を見せてくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

イズはそう言うと、オカルト研究部の壁に、滅のすがたを映す。

 

「今映っているのが···滅です。」

 

その姿は、バイオレット色のパワードスーツの上に黒い装甲を身に付けており、黄色の複眼を持った存在だった。

 

「こいつが···滅···!」

 

その姿に、誰もが息を飲む。

 

「···あら?あーくん、一つ聞きたいのですが···あの滅という存在が付けているあの機械···其雄様が付けていた機械と瓜二つなのですが···。」

 

姫島が滅の腰に装着されている機械に注目をする。

 

「ああ···あの機械は、『フォースライザー』···といって、俺のゼロワンドライバーと同じく、仮面ライダーに変身する機能を持っているんだ。」

 

「か、仮面ライダーになれるのか!?それじゃあ···あいつのあの姿は···か、『仮面ライダー滅』ってことかぁ!?」

 

驚いた一誠の言葉に歩夢は静かに頷く。

 

「ちなみに、俺の父さんが使っていたのは、あの『フォースライザー』を改良して、父さん専用にしたもの···『サイクロンライザー』なんだ。」

 

「そうだったのですね···。」

 

姫島は歩夢の説明に納得がいった。

 

「そして、滅の目的は···、

 

 

 

 

 

 

 

『人類の滅亡』です···。」

 

歩夢から聞いた滅の目的に、一同は驚愕する。

 

「人類の滅亡ですって!?」

 

「それでは滅を放って置けば、お母様も···!」

 

「これは···放って置けなくなったね···!」

 

「恐ろしいです···。」

 

「まさか滅って野郎は···俺の父さんや母さん···松田や元浜も···お前の会社の人達も、全員滅亡させるってのか!?」

 

「···ああ。」

 

「っ!ゆ、許せねぇ···!そんな良くわからないやつなんかに、俺の親と親友を殺させてたまるかってんだ!」

 

滅の目的に一誠は大声で怒りを叫ぶ。

 

「なあ歩夢!滅ってヤローはどんな奴はなんだ!」

 

「···それが、変身者の情報が、一切無いんだ。俺も昨日のうちに幾つか仮説をたててみたんだが···一つ、人類に怒りを持っているヒューマギアの仕業···二つ、この世に怒りを表す人間の仕業···3つ目が、悪魔や天使···堕天使等の存在···この三つが、俺とイズが考えた滅の正体なのですが···どの仮説も可能性があるため、決めれませんでした···。それに、滅は···、

 

 

 

 

 

 

 

この駒王町にいる可能性もあるんです···!」

 

っ!それならなお私も許せないわ···!この町は私の管轄なの···!それを土足で踏みあらそうだなんて···絶対に許さない···!

 

歩夢の考察に、リアスは怒りを滲み出す。

 

「リアス部長の怒りも分かります。でも···滅を見つけた時には、戦わずに、まず、俺を呼んでください。」

 

「···何か、理由があるのかい?」

 

歩夢の言葉に、木場が疑問を持つ。

 

「滅には、生半可な攻撃は効きません。それに···過去に、俺は何度か滅と戦ったことがあるのですが、あいつは次に戦う時には、俺がそれまでに使った技や動きなどを全て覚えて、対処してくるんです。皆さんが強いっていうのはわかっています···でも、あいつに皆さんの···悪魔の力を見せてしまうと、それこそ不味いことになってしまう気がするんです···!」

 

歩夢の言葉に、一同は黙る···。

 

「···分かったわ、約束する。万が一、私たちが滅を見かけた時はすぐに歩夢に報告するわ。」

 

「御協力、感謝します。」

 

リアスの言葉に、歩夢は頭を下げる。

 

「それではリアス部長、これから俺はゼロワンの調整、そして、この町に滅がいないか等の探索をします。その為、しばらくオカルト研究部に来れない日が続きます。すいません、それでは。」

 

歩夢はそう言って荷物を持って歩いて行き、イズも映写機能を辞め、歩夢について行く。

 

「歩夢!手伝って欲しい時は、遠慮なく言ってくれよ!」

 

「···おう!ありがとうな、一誠!」

 

一誠の言葉に歩夢は笑顔で返す。

 

「···この町を、皆を···皆の日常を必ず、守ってみせる···!」

 

歩夢は拳を握りしめて、そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ〜···。あれから数日色んな所を回ってみたけど、全然滅の情報が掴めないなぁ···。」

 

リアス達に滅のことを教えて数日後、あれから歩夢は駒王町の至る所を見たり聞いたりしていたが、滅に関する情報は、一切得られなかったのだ。

 

「それでも少しづつですが、滅に近づいていると、私は思います。」

 

「そうだといいんだけどなぁー···ん?あれって···おおーい!おはよう一誠!!」

 

「···ん?おお、おはよう歩夢。」

 

歩夢がイズと話していると、目の先に一誠がいたので一誠に声を声をかけると、一誠も歩夢達に気づき、挨拶を返す。

 

「···どうした一誠、今日は何か元気ないな?」

 

だが、歩夢はいつもと比べて一誠の元気がないことに気づく。

 

「あ、ああ···実はな、部長に注意されちまったんだ···。」

 

「注意されたって···何をしたんだよ一誠?」

 

「いや、実は···昨日の夜に、契約の為に契約者の元に向かったんだが、契約を取れなくて落ち込んで帰っている途中で···堕天使に襲われちまったんだ。」

 

「堕天使に!?」

 

一誠の昨日のことを聞いた歩夢は目を見開き驚く。

 

「それで何とか攻撃を交わしていたんだが···足がもつれて転んじまって···もうダメかって思ったんだけど···その時に、部長に言われた言葉を思い出したんだ。集中する事と、イメージを浮かべること···それを極限まで集中をして、イメージを浮かべたんだ。そしたら···俺の左腕に、神器が現れたんだ。」

 

「神器が!?すげぇじゃねえか一誠!」

 

一誠に神器が現れたことを、歩夢は自分のことのように喜ぶ。

 

「ありがとな。でも···部長には、注意されちまった···。」

 

「何でだ?無事で良かったとか、よく神器が目覚めたとか褒められなかったのか?」

 

「いや、その言葉もちゃんと言われたんだ。でもな···俺が堕天使に生きてること、俺がグレモリー眷属になってることがバレたことを注意されてしまったんだ···。もっと周りのことに対する注意力を高めなさいって···。」

 

「···まあ、リアス部長の言う事も分からなくは無いな。それでお前は落ち込んで登校していたって訳か。」

 

「そういうことだ。はあ···俺の明るい悪魔ライフも、まだまだ先ってことか···。」

 

一誠はため息をつく。

 

「元気出せよ一誠···あ、そうだ。お前に渡したいものがあるんだ。神器が目覚めた記念として渡しておくよ。···お、あったあった。これだ。」

 

「歩夢、これって···、

 

 

 

 

 

チェスのルールブックじゃねえか?」

 

歩夢が一誠に渡したものは、チェスのルールブックだった。

 

「俺がたまーに家に来る養父さんと一緒にチェスをやったりするんだ。それにオカルト研究部の部室にもチェス盤もあったし···もし、お前がリアス部長とチェスの勝負に勝てば、リアス部長からご褒美が貰えるかもな?」

 

ほ、本当か!?よぉぉぉぉぉぉしっ!!俺も今日からチェスを始めるぞぉぉぉ!!!

 

一誠は歩夢から貰ったチェスのルールブックを掲げてそう叫ぶ。

 

(本当に、一誠って扱いやすいな···。でも、単純なところが、一誠の良い所のひとつなんだけどな。)

 

はわう!

 

歩夢がそんな事を考えていると、二人の横から突然声が聞こえた。

 

その時には声だけではなく、同時にボスンと路面に何かが転がる音がした。

 

歩夢達が声のした方へと向くと···、

 

 

 

 

 

そこには顔面から路面へ突っ伏しているシスターの姿があった。

 

そして、シスターの履いているスカートがめくれてしまい、下着が丸見えな状態になってしまっていた。

 

歩夢はそれに気づくと、顔を赤くしながらばっと顔を逸らす。

 

その時に一誠の方を見ると、シスターの姿を見ていやらしい顔をしていた。

 

歩夢はそんな一誠の姿に気づくと、一誠の鳩尾に拳を叩き込む。

 

ウッ!な、何すんだよ歩夢···!」

 

「いやらしい顔をするんじゃねぇ···!」

 

「あうぅ···どうして私は何も無い所で転けてしまうのでしょう···。」

 

歩夢と一誠がそんなケンカをしていたら、転けたシスターからそんな声が聞こえた。

 

「この言語は···英語か?」

 

歩夢はボソッとそう言う。

 

「あ、あの〜···だ、大丈夫ッスか?」

 

「だ、大丈夫ですか?何処か、怪我とか?」

 

一誠と歩夢はシスターに声をかける。

 

「···ああ、すみません。ありがとうございますぅぅ。」

 

シスターはそう言って自力で起き上がり、こちらの方へ顔を向けた。

 

その時に、彼女が被っていたヴェールが外れた。

 

 

 

ヴェールの外れたシスターは、金色の長髪がこぼれ、綺麗なグリーン色の双眸をしていた。

 

「「っ!!」」

 

二人はシスターの姿に、一瞬心を奪われていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日、このシスターとの出会いによって、歩夢達の物語は、更に加速していく···。




次回、ハイスクールREAL×RIZE

「何故貴様らは、人類を守っている?」

滅との邂逅···!

「私と友達になってくれて、本当にありがとうございます。」

シスターの涙···!

「下等な人間が!私に同情するなぁぁぁ!!!」

レイナーレの心の叫び声···!

「今、一誠を笑ったのか?」

次回、ハイスクールREAL×RIZE
第四話「シスターと闇と怒りの叫び」

歩夢に使い魔はいる?

  • いる
  • いらない

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