知られることのない話   作:まるイワ

1 / 72


ほんへでは拾わない設定なので初投稿です。





魔法少女ストーリー
近くて遠くて、出会わない人


 

 

 

 

「ねー、見てみこれー。ね!」

 

「あー?」

 

 

休日。今日も先輩の家に集まった私達だったけど、何をするわけでもなく、のんべんだらりして過ごしてた。

 

そんな時、マジ子のやつが無駄にはしゃぎながら、自分のスマホの画面を見せてきた。そこに映ってたものったら…

 

 

「なんですこれ。赤ちゃんですけど」

 

「まさか…マジ子ちゃん、の…?」

 

「えー!んなわきゃないじゃーん!」

 

 

カワイイっしょ〜?なんてニヤニヤしながら、赤ちゃんの画像を更に見せびらかす。まぁ、なぁ。可愛いは可愛いだろ、そりゃあ。

 

 

「で、それはなに。出所さんは?」

 

「親戚!の、子供!去年産まれたんだけど、一歳になった記念にサツエーしたシャシン、見せてもらったんだって。おかーさんがメールで言ってる」

 

「へー」

 

 

は〜。産まれたてのバブちゃんかぁ。その親戚の人も、我が子が可愛いだろうなぁ。

 

この写真の子は両親からの愛情を受けて、親子の思い出を重ねながら育つんだなって思うと、なんか羨ましいっつーか。色々思い出してこう…ね。

 

 

(いや、今はやめとこ)

 

 

軽く首を横に振って、気分をリセットする。めでたい話題の時に、こんな気持ちになるもんじゃない。

 

 

「なんか、良いですわね。こういうの」

 

「こういうのって?」

 

「こうして何かあれば近況を伝え合って、温かい気持ちになって…。赤の他人の私ですらそうなるのですから、マジ子さんのお母様ともなれば尚更」

 

「そういうもんですかねぇ」

 

 

頬杖ついて、チビが言う。まぁ 学生の身じゃ理解しづらいよなぁ、そういうのって。かくいう私も、親戚に対してどうこうなんて気持ちは全然だし。

 

自分が楽しかったり面白かったり、それが一番大事って年頃ってことなんかな。今はまだ。

 

 

「あ、そーだ!シンセキって言えばさー」

 

「うん?」

 

「実はカミハマにも居るんだよね、アタシの親戚」

 

「へー。てことはなに、こっち来てから会ったりとかしたわけ?」

 

「んーん。どこに住んでるか分かんないから…」

 

 

え、なにそれ。住所が分からんってことか?

 

 

「その親戚の方がお引越しをして、そのまま…とか?」

 

「や、それがさー。何年か前までちゃんと親子ソロって暮らしてたみたいなんだけど、なんかいきなり…」

 

「親子ね。子供の歳は?」

 

「今は10…2、3とか、そのくらいかも。キレーなキンパツでさ!サイゴに会った時は、ウシさんのぬいぐるみダイジそうにしてて」

 

「牛」

 

「家族でボクジョー…だったかな。そこに行った時に買ってもらったやつなんだって!」

 

 

宝物…ってやつか。子供らしいじゃん?まぁ、それはそれとしてさ。

 

 

「で?結局、その親戚、今はどうしてんだよ?聞く限りじゃ、お子さんはまだ中学に上がったばっかくらいだろ?」

 

「住所が分からないのでしたら、マジ子さんのご家族にでも尋ねるとか…」

 

「や、だから!マジで分かんないんだって!アタシのお母さんともたまにレンラク取り合ってたはずなのに、ほんと、なんかいきなりさ…」

 

「ふーん…」

 

「まだカミハマに居るんだったら、会ってみたいんだけどな〜。顔見たらゼッタイ分かると思うし!」

 

 

『そーいや、チームに入る前に一回だけイッショに遊んだ、ヨーヘイやってるっていう魔法少女がその子にマジ似てたんだよね!タニンの皿煮?ってやつだろーけどさー』

 

マジ子のやつは、そうやって話を締め括った。なんつーか、元気だといいよな。住所不明なのも、変な理由じゃなきゃいいけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのさ、みんなのシンセキってどーなん?話してたら、なんかマジで聞いてみたくなっちゃった!」

 

「んー?」

 

 

マジ子の話を聞いてから、少し経った後。年長さんの作った、いわゆる3時のおやつってやつを堪能したところで、マジ子が切り出した。

 

 

「そう面白いエピソードがあるわけでもないのですが…」

 

「いーの!アタシが聞きたいから。センパイのとこってどんな感じ?」

 

「私の親戚、ですか…」

 

 

先輩は閉じた口元に人差し指を添える仕草をしてから、また口を開く。

 

 

「その…香春グループって、ご存知ですわよね?」

 

「さぁ」

 

「知らないです」

 

「ハル…ハルマキ?」

 

「おバカさん達…」

 

 

先輩の顰めっ面。失礼だな。なんだよお前、グループだかを一つ知らないくらいで。

 

 

「あ…知ってる、と、思う。あれだよね?すっごい、有名な、その…お金持ち?」

 

「流石年長さん。ええ、そうです。この神浜でも有数の一大グループ。分かりやすく言えば、スーパーセレブといったところでしょうか」

 

「ふーん…そういや、先輩も金持ちの家だもんな。冷食とか食ってばっかだから忘れてたわ」

 

「…ま、いいでしょう。事実ですものね」

 

 

今は年長さんの美味い飯ばっか食ってるけど、時たまあの味が恋しくなるんだよな。それはともかくとして。

 

 

「で、そのグループが親戚ってことなんです?」

 

「ええ。そこの御令嬢が、私と歳も近くて。通っていらっしゃるのは、聖リリアンナなのですが」

 

「へー、マジで超お嬢様じゃないですか。すっげー」

 

「おチビさん貴女、せめてスマホの画面からは目を離して…」

 

「その…どういう、人。なの?お嬢様…」

 

「あ、はい。それはもう、所作や言動から育ちの良さが窺い知れる立派な方で…」

 

 

『年に一度くらいはお会いする機会もありますし、なによりあの知名度でしょう?マジ子さんのように安否を気にする…ということもありませんわね』

 

先輩の話は、そんな感じで締められた。話をしている時の先輩は、ちょっと嬉しそうな顔をしてた気がする。

 

 

 

 

「じゃ、次は年長さん!聞かして聞かして〜!」

 

「あ、うん…。いい、けど…」

 

 

マジ子が体を左右に揺らしながら、話をせがんでる。ちょっとうざったい動き。

 

私はといえば、ただ話を聞いてるのも暇になってきたから、チビのやってるスマホゲームの画面を眺めてた。

 

 

「えと、私…実は、全然会ったこと、ない…」

 

「シンセキ?一回も?」

 

「あ、その…一回、だけ。子供が居て、その子…すごい小さい頃、に…」

 

 

あー、そういうパターンね。先輩ともマジ子とも違う、交流が極端に少ないやつか。

 

 

「でも、その。住んでる、から…ここ。神浜、に」

 

「あら。でしたら、お会いしに出向いたりとか…?」

 

「ん…。休みの日に、一回。話も、した。…お子さん、会えなかった…けど」

 

「あら、それは…」

 

 

『出掛けていて会えなかった』って、年長さんは続けた。

 

どうもその家の子供、最近は休日の外出が増えて、平日には帰りが遅くなることもあるらしい。工匠学舎に通ってるんだそうだけど…。部活動かなにかかね。

 

 

「その、プログラム…とか。あと、ロボット…とか。そういうの、好きなんだって。一緒に住んでる、おじいさん…にも。懐いてて」

 

「ハイテクじいちゃんっ子かぁ〜。アタマよさそ〜!チョークールなテンサイだね!マジで!」

 

「どーですかねー。案外根暗でオタク気質な陰キャかもしれませんよー」

 

「もう…。失礼ですわよっ」

 

「うん…。良い子、だよ。絶対。会ったこと、ないけど。きっと…」

 

 

『あんまり、オープンな子じゃないみたい…だから。会ったの、あの子がまだ赤ちゃんの頃…だったし。覚えて、ない…だろう、から』

 

子供の方には会わないのかって聞いたら返ってきた、年長さんの答えがそれだった。年長さんは、ちょっと寂しそうだったけどね。

 

 

 

 

「じゃ、次はおチビちゃんのばーん!」

 

「んー?」

 

「ちょ、もー!マジでゲームばっかやってないでさー!」

 

 

マジ子、先輩、年長さんときて、どうやら次はチビのターンらしい。や、本人まだゲーム弄ってるんだけど。

 

 

「ふー。しゃーなしですね。いいですよ、ちょうどデイリー消化のハシゴも、イベ周回も終わりましたし」

 

 

息を吐き出したチビはスマホをスリープモードにして、自分の親戚について語った。

 

 

「蛇の宮ってとこがあって」

 

「それ、街の名前ですか?」

 

「まぁ、そんなようなもんです」

 

「…っ」

 

 

おっと、蛇の宮。蛇の宮と来たか。生まれ故郷の名前を出されて、ちょっと吹き出しそうになったのを抑えた。

 

 

「私の親戚の一家が、そこに住んでて」

 

「うん…」

 

「住んでるんですよ。はい」

 

「………え、終わり!?」

 

「はい」

 

「マジで!?」

 

 

潔いなこの小学生…。まぁ 語るべき思い出も碌に無いってんなら、なんも言えないけどさあ。

 

 

「ま、それは冗談として。そこのお宅の人とはあんまり会ったことないんですよね。親戚の集まりに参加してはいたんでしょうけど、気付かなくて」

 

「お前はその集まりで、ゲームも漫画もアニメも無いもんだから、シャイガールなフリして縮こまってたと」

 

「………」

 

 

図星か…。や、まぁ…。用意された菓子の飲み食いくらいしかすることないかもだしな。話に花を咲かせるのは大体が大人達だから。私にも覚えがある。

 

 

「…あ、でも」

 

「ん。なになに?」

 

「1…か2回くらいでしたかね。珍しく蛇の宮に集まった時に、会ったことがある人が居て」

 

「若い人?」

 

「はい。歳上のお姉さんなんですけど、なんか気まずそうにしてて。母親から、私の面倒見るように頼まれた時も嫌そうで…」

 

「あー…」

 

 

歳下の扱いってどうしたらいいか分かんねんだよな。特にチビみたいなのは。こいつがメンバーになった時期のことを思い出す。

 

 

「で、まぁその人の部屋に渋々通されるわけじゃないですか。そしたらその後、特に会話も無くですね」

 

「うわぁ…」

 

「ただ、貸してもらったゲームは楽しかったです」

 

「ゲームって」

 

「一人用のゲーム機を貸してもらって、それぞれ独りで遊びました。ゲームが好きだったみたいで、ハードもソフトも部屋中にいっぱい…」

 

 

そりゃあ…なんとも残念というか、「えぇ…」みたいな…。

 

 

「時々私の方チラチラ見てた辺り、本当は二人でやりたかったのかな〜なんて、今になって思ったりしますねえ」

 

 

『お互い住んでる場所が遠いし、あのお姉さん個人の連絡先も知りませんからね。確かめようもありませんよ』

 

 

チビはそう言ってた。そのゲーム好きの親戚のことは、特にどうとも思ってなさそうに。いつ会うかも分からない人間のことだ。そんなもんかもな…。

 

 

 

 

 

 

「んじゃ、最後ね!赤ちん、どーぞ!」

 

「私ぃ〜?」

 

「赤ちんだけ聞かないわけにはいかないっしょ〜!ほーら、マジで答えちゃってって!」

 

「ん〜…」

 

 

皆の親戚話を聞いてたら、なんだかんだでもう夕方だ。

 

解散の時間も近いし、私には語れるようなエピソードなんてないし、このまま…なんて思ったけど、そうもいかないらしい。

 

いやぁ、でもなぁ…。んん〜……。

 

 

「あれ、どったの?聞かせてよ。赤ちんの親戚のこと」

 

「………知らねー」

 

「えー?」

 

「知らねーの。ねーよ、親戚の思い出なんて!」

 

 

話を強引に打ち切って、立ち上がる。ちょうど催してたのもあって、花摘みにでも行くことにした。

 

 

「あー!ちょっと!この人逃げる気ですよ!」

 

「ずーるーいー!赤ちんずーるーいー!」

 

「あー、はいはい。うるせーうるせー」

 

 

お子様二人の抗議の声は適当にあしらって、リビングを出た。

廊下を歩く最中、考える。

 

 

(本当に無いんだよなぁ…。親戚の話)

 

 

なんでかってそりゃあ、私が幼過ぎて記憶がぼんやりしまくってるのもある。でも、それだけじゃないんだ。

 

 

(私の幼少期は…)

 

 

親を…、大好きだったお母さんを失って、ひたすら塞ぎ込んでた時間だったんだ。傷ってやつだよ。

 

そこに触れるようなこと、自分から話したいわけないだろ?

 

 

(…や、待てよ?一つだけ…)

 

 

目的地を示すドアの前に立ったところで、思い出した。私の、親戚のエピソード。話すことはしないだろうけど、挙げるとすればこれかなっていうもの。

 

 

「あれは…葬式…?」

 

 

葬式。そう、確か葬式だった。お母さんの。

 

お母さんを失った直後だったのもあって、私は人目も憚らずにそりゃあもうビービー泣いてた。

 

心配してくれた人もいたはずなのに、とにかく悲しくて、それを泣き叫んで形にすることしか知らなかった当時の私には、気付くことなんて出来なかったんだろうな。

 

 

(でも、一人だけ気付けた…はず)

 

 

「泣かないで」って、すっごいか細い声だった。それだけはよく覚えてる。

 

後は、親。親…のはずだ。親に大事そうに抱っこされてた…ような。髪は黒…?黒…だよな?

 

正直親戚かどうかも確証はないんだけど、自分とこの子供も連れて葬儀に出てくるってことはまぁ、親戚なんじゃないのかなぁ…。

 

 

「だーめだ。思い出せね…」

 

 

涙やら鼻水やらで視界もはっきりしなかったし、チラッと顔向けて、またすぐ塞ぎ込んじゃったしなぁ…。

 

 

「ん〜…子供の名前、聞かされた気がするんだけどなぁ。なんつったか…」

 

 

結局それは思い出せないまま、用を足す為に、私はドアを開けた。

 

 

 

 

 






『なんだっけかなぁ…なんかこう、カッコいい名前だったんだよ!こう………「燃え上がれー!!」みたいな!』


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。