先輩が倒された。そこでようやく体が調子を取り戻したけど、メンバーが撃破されてからじゃ何の意味もない。
悔しさを感じる私を他所に、女の子は、マジ子に照準を定めていた。私は私で、盾や囮くらいにはなれるかもって思って、マジ子の方へ走った。
「おっしゃー!こーい!」
マジ子の元に向かいながら、あいつの声を聞く。受けて立つ気なのか、あの馬鹿!先輩がどうなったのか、見てなかったのか!?
女の子がマジ子に迫って、腕を突き出す。攻撃体勢だ。
「バカ!逃げろ!」
走りながら、叫ぶ。
「だいじょおおおおぶ!マジで!」
私の声が聞こえたのか、マジ子がまた声を上げる。大丈夫って何がだ。まさか根拠なんて無くて、ただなんとなくそう言ってるだけなんじゃねえだろうな!だってあいつ馬鹿だし…!
そうこうしてる間に、女の子の手のひらが、マジ子の体に触れた。やられる…!
「なんのー!」
「はぁ!?」
目の前の光景に目を見張って、思わず足を止めてしまった。私がもうダメだって思った瞬間、マジ子の全身が水になって、ザバァッと音を立てながら、地面に落ちた。女の子があいつを見失って、首を傾げている。
対して、私は合点がいった。そういえば、魔女の結界で私と先輩の合わせ技を避けられたのは、固有魔法のお陰だって言ってた。なら、今見たのが、マジ子の固有魔法。それっぽく言うなら、「液化」とかになるのか。
「隙ありー!」
「!」
キョロキョロと視線を彷徨わせて、あの馬鹿を探す女の子。ガラ空きになった背後に水が集まって、人の形になる。固有魔法を解いたマジ子が、女の子の首に腕を回して、締め上げた。
いきなり背後から襲撃されて、女の子は少し驚いているように見える。顔がいいから、基本的にどんな顔しても絵になるな…。
「って、そうじゃなくて!おい、マジ子ォ!!」
「んぬ〜!赤ちんー!ここは私に任せて逃げてー!」
ギリギリと音を立てて…はいないけど、とにかく力一杯、女の子の首を締め上げるマジ子。気持ちはまぁ嬉しいけど、残念ながら相手には効いてない。すっげえ涼しい顔で、平然としている。
「馬鹿!魔法少女三人の攻撃を何発食らっても、平気で動くやつだぞ!そんなことしたって効くわけねえだろ!」
「マジでぇ!?あー、でも、考えてみたら…」
「!」
「ぶへぇっ!?」
私に言われて、ようやく気付いたって顔をしたマジ子の腹に、女の子が肘鉄を入れた。話す時間はやったぞと言わんばかりに、急に動き出した。
「!」
「えっ?あ!おわあああああ!!」
ムッとした表情でマジ子に振り返って、両の手のひらを押し当てる。マズいと思ってまた走り出した私だったけど、もう遅い。強力過ぎる攻撃を受けて、マジ子は吹っ飛んだ。
「マジ子!!」
やがて地面に叩きつけられたマジ子が、「んー」とか「うー」とか唸りながら、何とか立ち上がろうとしてるのが見える。
でも無理だ…実際に一発貰った私には分かる。手のひらを当てられただけなのに、とんでもない威力だったんだ。それを二発も受けたら…。
二人を片付けてしまった女の子は、こっちに振り返って、今度こそ、私に狙いを定めた。もう急ぐ必要なんてないのか、ゆっくりとした足取りで、こっちに歩いてくる。
(クソッ…!何が盾?何が囮?結局足は止まっちまって、そのせいであの馬鹿がやられた!)
「自分にもまだやれることがあるかも」なんて考えて動いたくせに、現実はこう。少しイレギュラーにぶち当たっただけで、私はこのザマだ。
「くっ……!」
悔しさと情けなさ、そして恐ろしさ。色々なものがない混ぜになって、涙が滲んでくる。迫ってくる謎の美少女相手に、なす術を持たない私は、後退りをすることしか出来なかった。
やがて、女の子が私のすぐ目の前に来て、両手を私の肩に乗せる。いやに紅潮した、嬉しそうな顔が近付いてくる。
何故か攻撃されなかったことよりも、相手への恐怖でいっぱいになってしまった私は、せめてもの抵抗として、目をぎゅっと閉じることしか、出来なかった。
真っ暗になった視界の中、心臓がバクバクと、激しく鼓動を鳴らしているのが分かる。
唐突に、私の口に何か、酷く柔らかい感触が触れた。鼻から入ってくる、ほんのりと甘い香りも、同時に感じていた。
・マギレコ本編の出来事
絶交階段を撃破。いろはとももこ達の4人で、レナが仲直りにと用意したプリンを食べた。