知られることのない話   作:まるイワ

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今更ですが赤さんのパイルは先の尖ったやつじゃなくてビッグオーのサドン・インパクトみたいなやつを想像してもらえたらいいので初投稿です。


3-4 お参りに向けて

 

 

騒々しくて不毛な言い合いもそこそこに、本来の用を済ませる為に、水名区の中を雁首揃えて歩く私達。一応は調査の為に来たはずなのに、魔女と戦うことになる辺り、流石は神浜市ってところか。

 

うわさとかいう、胡散臭いものの為に街中を行くのは、これが二度目。今回は前と違って、ちゃんと目的地は決めてたはず。

 

 

「水名神社行くんだっけか?」

 

「ええ。マジ子さんが得た情報から考えてみて、まずはあそこかなと」

 

「神社のうわさだもんねー。しかも内容も面白そーだしさ!」

 

 

内容……会いたい人に会えるっていうやつか。うわさはうわさでも、世間一般で囁かれるようなそれとは、ちょっと質が違う気がする。

 

なんていうか、「真偽は置いといても、まぁ有り得るかも?」って感じのしない、少し突飛で胡散臭くて、都市伝説とか七不思議とか、そっちの方が近いような。魔法少女が言うのもなんだけどさ。

 

 

「今度はちゃんと当たりだと思うんだよねー。ちゃんと聞いてたし、前のやつより色んな人から聞いた話だし!」

 

「と言っても、やっぱりうわさの域は出ませんのでしょ?」

 

「でもさー、ホントじゃなかったら、うわさがここまで広まるってことないんじゃない?」

 

「それはあるかもしれませんが…」

 

 

うわさ…うわさかぁ。今更だけど、本音を言えば、調べるのは気乗りしないんだよなぁ…。何でかってのは…まぁほら、アレだよ。

 

 

「実は危険な何かに繋がってる、とかだったらなぁ…。嫌だぞ私は」

 

「あれ。赤ちん、なんかビビってる?」

 

「…まぁ、何となく察しは付きますけれど」

 

 

…さぁ、何のことだか。知らんなぁそんなの。私には思い当たるフシなんて無いし、いやぁ全く存じ上げませんよ、ええ。

 

 

「あ、わかった。またあの変な子出てこないか不安なんでしょ」

 

「変な子だぁ?誰だよそれ、自己紹介かなにか?やめてくれって。ただでさえ、私の周りは変なやつばっかで」

 

「あら、あれはもしや海浜公園の子では」

 

 

おっと先輩、その手はくわないぞ。こっちの反応を見て遊ぼうとでもしたのか。残念だけど、そんな安い手に引っ掛かる私じゃないんだよなぁ。

 

 

「あ、赤ちん今ビクってなった」

 

「涼しい顔してるつもりでしょうけど、顔がちょっと強張ってますわよ」

 

「……………」

 

 

引っ掛かる私じゃ…

 

 

「まぁ、もちろん嘘なんですけど」

 

「ふぅぅぅぅぅ…」

 

「すっごい安心したような溜息ですわね…」

 

 

……………はい。

 

 

「なぁんだー。やっぱ怖いんじゃん?」

 

「ばっかお前、違うから。そんなんじゃないから。私はただなぁ…」

 

「やっぱちゅーされたから?」

 

「お前ぇ!」

 

「あぁ…赤さん、乱暴は…」

 

 

人が気にしないようにしてることをよぉ!思い出すだけで恥ずかしいわ、あの子の意図が読めずに不気味だわで、思わずマジ子に掴みかかった。

 

 

「大丈夫だよ赤ちん!ほら、女の子!女の子同士だからさ。ノーカン!ノーカン!」

 

「そういうことじゃないんだっつーの!」

 

「じゃあ、アタシ達みんなボコられちゃったの気にしてるとか?」

 

「っ…それは…」

 

「あの子、よくわかんない内に消えちゃったからアレだけど、あのまま戦ってたらアタシ達、全員死んじゃってたかもだし…」

 

「…………」

 

 

それは本当にそう。あの女の子が出てきてから消えるまで、徹頭徹尾わからないことだらけで、しかも私達は、揃って打ちのめされた。生きて帰って来られたのが、今でも不思議でならない。

 

カッとなった頭と心が急速に冷えて、マジ子から手を離した。

 

 

「……それも、あるけど」

 

「うん…?」

 

「お前の言う通り、その……死ぬかもとか、キ…されたこととか、色々あんだけどさ…」

 

「うん」

 

「それだけじゃなくて…あの…お前らがさ……」

 

 

そこまで言って、完全に言葉に詰まる。言えない。どうしても、この後に続く言葉を、口に出来ない。目の前で首を傾げるマジ子から目を背けて、二人から逃げるみたいに、一人で神社に向けてズカズカ歩き出してしまった。

 

 

「あ。赤ちん?」

 

「マジ子さん、そっとしてあげましょ」

 

「え、でも」

 

「あの子、この前の戦いのことで、ちょっとナーバスになってるのかもって思いますの。ですから、ね?」

 

「それってなんか冷たくない?仲間が困ってんだよ?」

 

「だからと言って、無理に話を聞き出すのもよろしくないかと…。仮に聞けたって、何かしてあげられるとはとても…」

 

「そりゃあ、そーかもだけど…。でもさぁ」

 

 

後ろから聞こえてくる、二人の話し声。二人共、私を気遣ってくれてるのが分かる。先輩もマジ子も、ちゃんと他人への優しさを持ってるんだ。

 

そんな二人が、もしあの海浜公園での戦いで命を落としていたら?うわさを調べる中で、またあの謎の女の子に出くわして、襲われたら?

 

そんなことを考え出すと、途端にうわさってものに関わるのが怖くなった。また同じことが起こるかもっていう不安が、私の中から消えてくれない。数日前からずっとこうだ。

 

そんな不安や恐怖を感じるのと同時に、何故か先輩やマジ子の事を、何かと気にするようにもなっちまった。私にはそれがわからない。

 

 

(何で……こんな気持ちになるんだろ……)

 

 

二人に何かあったらって思うと何だか落ち着かないし、二人と過ごす時間のことも、大事にしなくちゃって思っちまう。

 

 

(先輩と一緒に寝るのも、特訓に付き合うのも、そういう気持ちが根っこにあるから……だと、思う。多分…)

 

 

さっき言葉に詰まったのは、つまりはそういう気持ちを口にしようとしたからなんだけど、結果は言えず終い。自分が感じているこの気持ちを、上手く言葉に出来る自信が無かったから。

 

そして何より、らしくないことを口にしようとする自分自身に、戸惑ってしまったから。

 

 

(これじゃまるで、私が二人のこと大事に思ってるみたいじゃねえかよ…)

 

 

そういうのはもっとこう、友達とか家族とか、そういう関係を築いた人に対して抱く感情なんじゃないのか。私達はそんなんじゃないんだから、こんな気持ちになるわけがないんだよ。ないのに…。

 

 

(二人と積極的に過ごすようになったから、こうなったとか?)

 

 

具体的には、マジ子がチームに入ってからか。あいつはやたらと遊びたがるし、私と先輩がそれに付き合わされるのも、今やいつもの事だし。だったら、皆で居る時間だって、自然と増える。

 

 

(そうやって毎日過ごしてる内に、情が移ったってか?冗談…)

 

 

今まで付かず離れずでやって来といて、少し近付いた途端にそれか。もしそうなら、私はとんでもなくチョロいやつってことになるのか…?

 

 

(そんなわけねえだろ…。私、そんなガードのユルい人間じゃない……はずだし)

 

「………さん」

 

(…でも、一昨日先輩と一緒に寝た時にあれこれ話したのは、なんつーか…悪くない気分だったよな…)

 

「……かさん」

 

(あーもう!結局何なんだよこれ…!自分の事なのに、意味がわかんな…)

 

「ちょっと!赤さん!」

 

「!?」

 

 

先輩に強く呼びかけられて、ハッとする。いつの間にか考え事にどっぷりで、周りが見えなくなってしまってたらしい。振り返れば、私よりも少し遠くに、先輩とマジ子の姿があった。

 

 

「赤ちーん、もう水名神社着いたよ!通り過ぎちゃってる!」

 

「あ?……あ、ほんとだ」

 

「ボケーっとしてないの!ほら、戻って来なさいな!」

 

 

二人に合流する為に、小走りで引き返す。まだ色々と腑に落ちないままだけど、今まで考えてたことは、とりあえず頭の片隅に押しやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

水名神社の内側に入ると、まさしく和って感じの景色が、私達の目の前に広がった。私は暇潰しか散策くらいでしか来たことはないけど、結構広い場所だってのは、嫌でも印象に残ってる。

 

 

「やっぱ広いよねーここ。アタシ、何回か初詣に来たことあるよ」

 

「神浜に住んでる人は大抵この神社に来ますわよね。私もそうですし」

 

「人多そうで嫌だな…。私はやめとこ」

 

「えー、何で!元旦に来ようよ皆で!」

 

「面倒だろ。人混みとか」

 

「えー…」

 

 

マジ子を適当にあしらって、お参り、もとい、調査の為に準備する。うわさに対する不安は消えないけど、調査すること自体、チーム全体でそうするって決めたことだし、今更私だけ止めるなんて言わない。全員で、改めてうわさの内容を確認していくことにした。

 

 

「まずは絵馬に名前を書く必要がありますわね。私、買ってきます」

 

 

そう言って、先輩は一人で歩いていった。神社のことには詳しくないけど、絵馬くらい売ってるだろ。

 

 

「ねー、赤ちん。アタシ、ちゃんとしたお参りの仕方とかわかんないよ」

 

「あー?毎年来てんだろ?」

 

「姉ちゃんの真似してるだけだったからねー」

 

「お前…。まぁ、こういうのってどっかにやり方書いてあるもんじゃねえかな。大丈夫だろ」

 

 

実は私も、その辺をしっかり覚えてるわけじゃないのは内緒だけど。その後もマジ子とあれこれ話しながら、先輩を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせしました」

 

 

買い物を終えたみたいで、先輩が戻ってきた。なんか、抱えている絵馬の数が多いように見える。三つでいいはずなのに。

 

 

「あれ、なんか六つあるよ?」

 

「ほんとだ。こんなに要るか?」

 

「保険ですかね。書き損じるとダメとかだったら困りますし」

 

「あー」

 

 

納得して、絵馬を受け取る。まずはこいつに、会いたい人の名前を書く必要があるらしい。会いたい人…会いたい人か…。

 

 

「誰でもいいんかなー?」

 

「会いたい人であるなら、まぁ…。マジ子さん、居ますの?そういう方は」

 

「んー…。友達は連絡取ればいいし、お父さんとお母さんは地元帰ればいいしなー…」

 

「複数人は無効かもしれませんし、一人に絞った方がいいと思いますわよ……と、書けましたわ」

 

「マジかー。うーん……よし、決めた!えーっと…」

 

 

先輩もマジ子も、誰にするか決めたらしく、絵馬に書き込んでいってる。私はどうなのかというと、書きかけで少し手が止まってしまってるところだった。

 

別に、書き込む名前を誰のものにするかで悩んでるとか、そういうことじゃない。なんなら、会いたい人って聞いた時に、いの一番に浮かんだ顔と名前があったくらいだし。

 

 

(でも…)

 

 

本当にそれでいいのかって思う。真偽も分からないうわさなのに、会いたいからってだけで、私にとって一番大切な人の名前を絵馬に書いてしまうのが、果たして正しいのか…?

 

 

(本当はもう、二度と会えないのに……)

 

 

その名前を書いしまったら、きっと私は傷付く。うわさに期待してるわけじゃないけど、調査の結果がどうなっても、それは避けられないと思う。

 

 

「赤さん、書けまして?」

 

「そろそろお参りしよー!」

 

「ん…わかった。ちょっと待って、今書く」

 

 

二人に急かされて、手早く絵馬に名前を書く。そうだった。まだ調べものは始まったばっかりだし、この段階で時間をかけても仕方ないんだ。すぐに名前を書き終えて、三人で拝殿に向かった。

 

 

 

結局、書きかけの名前は塗り潰して、別の名前を書いた。自分で自分の心を傷付ける勇気が、私には無かったから。

 





マギレコ本編の出来事

・いろはがスタンプラリーを開始。ただの町おこしではと困惑するが、何がうわさに繋がっているか分からないからと奮起した。
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