明日のマギアデイが楽しみなので初投稿です。
「えー…っとぉ…」
「?どしたの先輩」
「その…マジ子さん?聞き間違いでしょうか。何かこう、随分と非常識な物言いを…。念の為、もう一度聞かせていただいても?」
「え、だから入ろうって」
「何処に?」
「神社」
「いつ」
「今から!」
「んんんんんんんん!」
先輩が眉間にシワ寄せてすごい唸り方してる。気持ちは分かるし、聞き間違いであって欲しかったよ、私も…。
「あのですね、マジ子さん。わかってます?夜ですよ?他所の建物ですわよ?」
「うん」
「しかもほら、見えますわよね?門が閉まってます」
「だね」
「じゃあもう入れないってことです。また開いてる時にお越し下さいって言ってるんですよ」
「やだなー先輩。幾らアタシがバカでも、そんくらい分かるって」
「じゃ、なんで入ろうなんて言うんです」
「セーシュンの1ページ…みたいな?」
「チッ」
やたらキリッとした顔で訳のわからんことを宣うマジ子。先輩は理解し難くて仕方ないのか、目を手で覆いながら天を仰いでる。何かイラッと来たのか、舌打ちまでしてるし。
「あのな。もし誰かに見られでもしたらどうすんだ。補導とかされるかもしんねえんだぞ」
「マジで?ケーサツの人来る?」
「そうかもって言ってんの」
「そしたら逃げよーよ。追いかけっことかになっても、それはそれでセーシュンの思い出になるじゃん?」
「私はそんなロックな青春いらねーんだよ」
「えー…」
むくれたって無駄だぞ。第一、私達は今、制服を着てる。そんなことになれば、家族に話が行くだけじゃない。最悪、各々の通う学校のイメージに影響を及ぼす原因にもなりかねない。
「じゃあ、うわさ!うわさ調べってことでもダメ?」
「や、まず夜の神社に無断で入るのがダメなんだっつーの…」
そもそも、調査はとっくに終わっただろ。別に続けてもいいかとは思ってるけど、それは今日これからじゃなくたっていいし…。
「第一、水名神社で成果なんて出なかったじゃねえか」
「今はいけるかもしんないじゃん?」
「馬鹿。昼間はダメだけど夜はOKですなんて、そんな都合良くなぁ…」
「………いえ、意外と的を射ているかもしれません」
呆れているところに、先輩からの思いがけない言葉。ちょっとだけ、空気が変わった気がした。
「あ?そりゃまた、何で」
「結論から言ってしまえば、そういう考え方も出来るよねってことなんですが」
「いいよ」
「わかりました。では話しますけど……うわさの内容を思い出して下さい」
内容…。絵馬に名前書いて、ちゃんとお参りして、そしたら会いたい人に会えるってやつだな。
「それとマジ子が言ったこととの関係は?」
「書いてあるのは、人に会うための手順のみ。他には何もありませんわ」
「……それって」
「ええ」
先輩の言わんとしてることが分かった。人に会う方法。書いてあるのはそれだけだ。幸せ過ぎてどうこうは今は置いといて、例えば服装とか時間帯とか、そういう細かいことに関しては、何も指定されてない。てことはだ。
「参拝するのは何時でもいいのかもしれないし、身なりにも特に決まりは無いのかもしれない。逆に、その両方、もしくは片方には特定の条件が指定されているのかもしれない。それだけの話ですわ」
要するに単なる推測。先輩の言った通り、そういう考え方も出来るって話。特に決められてないから、どうとでも捉えられるっていう。もしかしたらただの屁理屈かも。
「でもそう考えると…」
「ええ。検証してみる価値も…まぁ無いとは言えないと思います」
本音を言えば面倒だし、馬鹿馬鹿しいって切り捨てて帰るのは簡単。でもそれは、調べるのを私から放棄するってこと。言い出しっぺこそマジ子だけど、調査に付き合うって決めたのは自分で、そして今、目の前には調査対象がある。なら…
「門が閉まってるのはどうする」
「あら、いいんですの?さっきまで難色示してましたのに」
「お互いにな。…気が変わった。そんだけだよ」
「そう」
さっきはさっき。今は今だ。腹が決まった以上、見つからない内にさっさと済ませるしかないだろ。
「なんかよくわかんないけど、調べるのオッケーってこと?」
「ええ。マジ子さんのお陰でそうなりましてよ」
「え、マジで?」
「マジです。もしかしたら貴女天才かも」
「ほんと?テストで100点取れる!?」
「あ、いえ、それは…」
「え、ひど」
こうして、私達は調査の為、再度水名神社を訪れることになった。夜に、しかも無断で。なんて悪い子だ。良い子になったつもりもないけどさ。
神社の中に入って、人が居ないか警戒する。見渡す限り、人影らしきものはない。一先ずは安心か。
閉まった門をどうするかに関しては、シンプルに飛び越えて中に入ることで解決した。忘れそうになることもあるけど、魔法少女になった私達は、身体能力が飛躍的に上がってる。この程度は容易い。
「ほあー。これが夜の神社…」
「昼間とはまた違った趣がありますわね」
「ねー!雰囲気あるよこれぇ」
「何でもいいけど、調べるなら早くするぞ」
神社に人が残ってないとも限らないんだし、さっさとやることやっちまわないと。なるべく静かに、それでいて迅速にだ。
「絵馬ってどうなん?昼に書いてったやつあるからオッケー?」
「無効になっている可能性も否定できません。昼間買った予備に、改めて書きましょ」
「ん。おっけ」
先輩とマジ子が、サラサラと淀みなく名前を書いていく。私はというと、昼間の時と同じで、どうするか迷ってしまっていた。
他の神社を巡っている時は、成果が出ずに投げやりになってたのもあって適当な名前を書いていたけど、今は違う。もしかしたら調査に進展があるかもしれないんだ。
「…………」
もちろん、このうわさ自体が眉唾物だってことは、依然として変わらない。でもそれと同時に、ガセだと言い切ることが出来ないのも、私の気持ちとしてあった。
だから迷っちまう。私にとって、一番大切な人の名前を書くべきなのか、そうするべきではないのか。うわさは嘘だと思うし、本当かもって思う。大切な人に会いたいけど、会いたくない。そんな相反する気持ちが、私を余計に迷わせてる。
「赤さん?」
「もしかして、また迷ってる?」
筆を動かす様子もない私を見かねて、二人が声をかけてくる。クソ、これも昼間と同じじゃんかよ…。
「書くよ。書くから…!」
意気地の無い自分にイラついて、少しだけ語気が強くなった。昼とは違う意味で長居はしたくないんだから、さっさと決めて書けよ、私。
(ビビるな。結果がどうでも、少し心が痛くなるだけ…。本当に会えても、そうじゃなくても、後でちょっとの間ヘコむだけなんだからさ…!)
そう思いながら、絵馬に名前を書き終える。最初の参拝で塗り潰してしまった名前を、今度はちゃんとフルネームで書いた。
「ごめん。さっさとお参りしよう」
急いで三人分の絵馬を奉納して、拝殿に向かう。何度も繰り返したお陰で、最早ガイドなんて不要になってしまった参拝を、誰からともなく行った。
二礼、二拍手。そして最後の一礼をする中で、私は目を閉じて、考えごとに耽ってしまった。
(あぁ……よかったのかなぁ…書いちゃって…)
絵馬に書いた名前のことだ。思い切ってそうしたこととはいえ、やっぱりそれなりに後悔とか不安ってものはあるわけで。
(なんかもう、ヤケで書いたみたいなとこあったもんなぁ…。自分で自分に言い聞かせて、虚勢張っちまっただけなんじゃねえのか…?)
心が傷付く覚悟が出来たフリして、勢いであんな…あーもうやだ…。つって、もう書いちゃったんだからアレだけどさぁ…。
「はぁ…もういいや…」
いつまでもウジウジしてたって仕方ないんだ。参拝は終わった。そんで、今回もどうせ何も起こってないに決まってる。今度こそ今日は解散だ。帰ろ帰ろ。ついでに、皆でなんか食ってこうか。
「あのさー、この後晩飯…」
そう言いながら、顔を上げる私。参拝する前と何も変わらない、夜の暗さに彩られた神社内の光景が広がってるんだなって、そう思ってた。
「…………え、なにこれ」
でも私の目の前に広がったのは、想像していたものと、全く違うものだった。
「…………………」
思考がフリーズする。だって神社なんだもん。いや、何言ってんだ私は。
「なんで、夕方…?」
そう、夕方だ。神社は神社。参拝前と何も変わらない。問題は夜じゃないこと。さっきの参拝で、何か起きたのは明白だった。
(っ!そうだ、先輩は!マジ子は!?)
何とか頭を再起動。二人が居ないことに気付いて、思わず辺りをキョロキョロと、忙しなく見渡す。だけど、周りには人っ子一人見当たらない。完全に私一人だ。
(これ…どういうことなんだ…?)
素直に考えたら、うわさが本当で、何かが起きたからこうなったってことなんだろうけど…。
(もしくは、偶然魔女が通り掛かって、私達を結界に取り込んで幻覚でも見せてるとか…?)
んー……考えても分からない。仮に魔女が何か仕掛けてきているとしても、いつまでも襲ってこないのが解せない。私を孤立させることは成功してるわけだし、各個撃破を狙ってるなら今しかないと思うんだけど…。
そうやって、うんうんと唸りながら頭をこねくり回している時だった。
「どうしたの、そんな声出して。何か悩みごと?」
声が聞こえた。多分、後ろから。私はその声を聞いた時、今まで思考していたことの全てが吹っ飛んで、頭が真っ白になった。
(今の声……!)
最後に聞いたのは、もう何年前になるんだろう。その時の私は幼かったけど、それでも、今聞こえてきた声とその主の事を、今の今まで忘れたことはないし、忘れられるわけがない。ないけど…
(いや…でも、そんな……!そうだよ、私の聞き間違い…幻聴ってことも…!)
そうだ。今更あの声が聞こえてくるはずがないんだ。だって…だってもう…!
「もう…折角久しぶりに会えたんだよ。ほーら、顔見せて?」
「っ…!」
そんなわけないんだって、必死にそう考えてる最中に、また声が聞こえてきた。その声を耳にして、今度こそ思い知らされた。聞き間違いなんかじゃない。居るんだ。私の背後に。
そう確信した途端、感情が暴れ出して、今にも私の体を突き破って溢れ出しそうになるような感覚に陥る。もう辛抱堪らなくて、私は勢いよく振り返った。
「!!」
そうすると、居た。声の主が。私が頭に思い浮かべていたものと、寸分違わない姿で。驚きで、声が出ない。
幼かったあの日、私が失ったもの。もう、戻ることはない存在。もう、二度と会うことは出来ない人。私の中の眩しい思い出で、私に残された癒えない傷跡が、今、私の目の前に在る。
私のお母さんが、目の前にいる。
マギレコ本編の出来事
・いろはが駅で鶴乃と合流。互いに成果を報告し合うが、うわさに繋がるようなものはなし。明日も手伝うと申し出る中、鶴乃に疲労を見抜かれた。