知られることのない話   作:まるイワ

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アニレコ2期も無事に最終回なので初投稿です。


3-8 夕暮れの中

 

 

「学校で友達は?できたの?」

 

「いやぁ、別に…。全然だよ、全然」

 

「あら。ダメだよ、そんな寂しいこと言ってぇ」

 

「なぁんでよ。いいじゃん別にさ」

 

 

夕陽が照らす神社の中で、笑いながら話す私達。内容はさして重要なものでもないけど、とにかく話題が尽きなくて、黙ってる時間の方が少ないくらい。

 

自分の口からもどんどん言葉が飛び出してくるから、私ってこんな饒舌だったかなぁって、自分でも不思議に思う。

 

もうどれくらいこうしてるんだろう。何秒か、何分か、それとも何時間か。時間というものを忘れそうになるくらい、私はお母さんと話すのを楽しんでる。

 

夕陽が眩しいとか、直接地面に座ってるから服が汚れるかもとか、そんなことだって、今は気にならない。

 

 

「あははは…。いやー、楽しいね。ただ話してるだけなのに」

 

「ん…。私も、そうだなって」

 

「ねー。やっぱりさ、家族との時間って特別なんだよ」

 

 

そう。楽しい。楽しくて、特別。気を許しているから。自分に近しい人だから。大切だから。

 

だから話すだけでも楽しいし、なんか安心するんだと思う。こんなに穏やかな気持ちになれるんだから、きっとそうなんだよな。

 

 

「…こんな、さ」

 

「うん?」

 

「こんな時間がさ。ずーっと、続けばいいのになーって」

 

 

だからつい、そんなことを言っちまった。この時間が、お母さんと話して笑い合っていられるこの瞬間が、何よりも幸せで、尊いものだって感じられたから。

 

 

「でも無理だよなぁ、そんなの。わかってるんだけど」

 

 

そうだよ。そんなことは出来ない。幾ら嬉しいったって、こんなのいつまでも続くわけがない。だって、お母さんはもう故人なんだ。死んだ人が生きてる人とこうやって会うのは、本来ありえないこと。

 

この現象が何の仕業であるにしても、一生このままだとか、これからは神社で何時でも会えるようになっただとか、そんな都合の良いことはなくて、タイムリミットみたいなものが必ずあるはず。そう思うと、なんか寂しいな…。

 

 

「なぁんだ、そんなこと」

 

「なんだってなんだよ。大事だろ。だってこんな機会、もう二度と…」

 

「じゃあ、一緒に居ようよ」

 

「は?」

 

 

しんみりしてる私に、お母さんがそんなことを言い出す。一緒に居る?それって、これからずっとってこと?そんなのどうやって…

 

 

「大丈夫だよ、難しいこと考えなくて。だって一緒なんだよ?ずっと一緒に居て、ずっとお話できて、ずっと幸せなんだから」

 

「え、いや」

 

「お母さんと居るの、嫌?」

 

「そんなわけないじゃん。でもさ?流石に」

 

「じゃあ、いいんだね」

 

「や、だから…」

 

 

それをどうするのかを具体的に教えてもらいたいのに、何かいきなり押しが強くなってきて、ちょっと困惑する。

 

 

「お母さんはもう死んでんだから、つまりその…幽霊的なアレなわけだろ?だったら、いつまでもこの世に留まってられるわけじゃ」

 

「いいの、そんなことは。ここでなら大丈夫なんだから」

 

 

え、そうなの?なんかサラッと私のタイムリミット説がブチ壊されたんだけど。てか、それはそれで、なんで水名神社ならOKなのかが分からない。

 

 

「ね?だからいいでしょ?一緒に居よ?ね?」

 

 

より一層押しが強まった気がするお母さんが、私の手をガシッと握ってきた。…えーっと、なんかおかしくないかこれ…。

 

 

「え、あ、やー…あのー、お母さん?」

 

「ね?」

 

「あーのー…ですからね、ホラ。とりあえず一旦落ち着い」

 

「ね??」

 

「おち」

 

「ね!?」

 

「……………」

 

 

あれ、なんか怖いんだけど。どんどん語気も強くなってきてる感じするし…。こんな人だったっけ、私のお母さんって…?

 

 

「返答無し…ってことは、OKってことだね!沈黙は肯定!」

 

「え、は?いやいやいやいや!」

 

 

とうとうこっちの意思はお構いなしの強硬ときた。マズい…!なんかわからんけどとにかくマズい気がする…!

 

 

「一名様、ごあんなーい!ずーっと、ずーっと、一緒に居ようねぇ」

 

「いや、居たいは居たいけども!でもなんかダメだから!これはなんか…!ちょ、誰かー!誰かー!!」

 

 

ここに来て本能が警鐘を鳴らしまくり、思わず助けを求めちまった。情けないとは思ったけど、そんなこと言ってられないくらいヤバい何かが、私を待ち受けている気がしたから。

 

でも幾ら叫んだって、周りに誰も居ないのはとっくの昔に分かってること。万事休すってやつか…!?

 

 

 

「はああああああい!!誰かでえええええっす!!」

 

 

 

そうやって私が諦めかけた時、聞こえるはずのない声が聞こえてきた。そんな。人っ子一人いなかったはずなのに、なんでいきなり?

 

そう思いつつ声のした方に顔を向けると、こっちに走ってくる人間を見つけた。マジ子だ。声からしてわかってはいたんだけど、まぁ、案の定あのバカだった。

 

 

「マジ子!なんでお前…!」

 

「ぬおー!!赤ちんをー……離せええええい!!」

 

 

私の質問を他所に、すごい勢いでダッシュしてきたマジ子は、次の瞬間には跳躍。その動きを目で追った先に見えたのは、マジ子の膝で思いっきり顔をひしゃげさせたお母さんの姿。

 

 

「え」

 

 

いきなりのことでたった一言しか出てこなかった私を置き去りして、マジ子の膝蹴りを浴びたお母さんは、それはもう綺麗に吹っ飛んで、それから透けるようにして消えちまった。

 

 

……………………。

 

 

「え、あ……え、えええええええええええ!?」

 

 

目の前で起こったことにやっと理解が追いついて、私は叫んだ。まともな言葉にすらなってないけど。

 

 

「えええええ…いや、お前これ……ええ…?」

 

「ふいー。キキイッパツ…!って感じ?」

 

「……………」

 

 

私の隣に立つマジ子を見る。自分じゃわかんないけど、今の私は呆然としてるに違いない。開いた口が塞がらないってのはこういうことか…。

 

 

「大丈夫、赤ちん?あのニセモノに変なことされてない?」

 

 

そう言いながら、私の身体をあちこちペタペタ触ってくる。どうやってここにとか、ニセモノとかなんとか、聞きたいことは色々あるけど、とりあえず差し当たっては…

 

 

「ん、だいじょぶそう。よかったー何もなくて」

 

「………」

 

「あ、てかさ。赤ちんてマジでぺったんこなんだねー。もっといっぱいご飯食べた方が」

 

「ぬっ!!」

 

「ぃぶぇっ」

 

「おめーの全身ぺったんこにしてやろうか おらぁ!!」

 

 

マジ子の腹を思いっきりブン殴ってやった。助けに来てくれたことには感謝してるよ。でも、いきなり人の親にとんでもない暴行を働いてくれたんだから、これくらいされたって文句は言えねえよなぁ!?

 

 

「うぇ〜…あがぢんヒドい〜…」

 

「変身してんだからマシだろが!つーかな!どうしてくれんだよお前よぉ!人の母親にあんな!!」

 

「おあああああ!ちょ、赤ちん!赤ちん!落ち着いてってマジで!」

 

 

言いながら、続いてマジ子の肩を掴んで思いっきり揺さぶる。あんなことしたのは何か理由でもあるのか知らんけど、事と次第によってはほんと許さんぞお前!

 

 

「うええええええ…。ちょ…マジ聞いてって赤ちん…!」

 

「あ?」

 

「だからー…ニセモノなんだってあれ!」

 

「偽物だぁ?」

 

 

マジ子の言葉を聞いて、揺さぶるのをやめる。そういやそんなこと言ってよな。つまり、お前が吹っ飛ばした私のお母さんは本物ではない何かで、だからあんなことしても問題は無かったってか?

 

 

「証拠は」

 

「えー、またショーコ…?まぁ、いっか。えっとねー、まずアタシ、さっきさー」

 

 

それから私は、マジ子が体験したことを一部始終聞いた。お参りしたらいきなり一人になってたこと、夕方になっていたこと、遠くに住んでる祖母が、何故かいきなり現れたこと、等々…。

 

 

「………」

 

「んで、ニセばーちゃんが消えたら、赤ちんが誰かと話してんのが見えるようになったの。いきなりね」

 

「そうか…」

 

 

今聞いた話を踏まえて、考えてみる。なるほど。今も存命で、かつ神浜に住んでない人が唐突に現れて…。そう考えると、偽物ってのも納得できるかも。

 

個人的な用で神浜に来たんだとしても、連絡くらいは入れそうなもんだし、孫に対してのサプライズで…とかも考えられるけど、それなら神社じゃなくて、こいつの自宅に来るだろうしなぁ…。で、終いには…

 

 

「神社にずっと、か…」

 

「うん。赤ちんもやっぱ言われた?」

 

「ああ…」

 

 

私もマジ子も、ここに居ろってしきりに言われたり、迫られたりしたのは同じ。しかもお婆さんは、自分の住まいよりもこの場所を選んだような発言をしたらしい。んー…ますます偽物っぽい。

 

というか、ここまで来たらもう間違いないかもしれない。

 

 

「偽物、かぁ……」

 

 

フゥーっと深く長く息を吐く。完全に冷静さを取り戻したのと同時に、残念なような悲しいような、なんというか、ある種の諦めみたいな気持ちでいっぱいになる。

 

 

(そうだよなぁ…。そんなことあるわけないんだよなぁ…)

 

 

当たり前だ。死んだ人は、死んだ人。生き返ったりはしない。存在しないし、目に見えることも、喋ることもない。そりゃそうだろ。

 

 

「っ…」

 

 

なんて、傷付いた自分を必死に誤魔化そうとしてみるけど、まぁ無駄だった。絵馬に名前を書いたのは自分だし、何にせよ傷付くだろうなって分かってもいたはずなんだけど、それでも辛いものは辛い。

 

 

「赤ちん、なんか泣きそう?だいじょぶ?」

 

「…いや、何でもない」

 

「ほんと?ちょっと休んでもいいよ?」

 

「バカ。んなことしてる間に、また何かあったらヤベえだろ」

 

 

もう、この事態を単なる噂話の産物として片付けることは出来ない。明らかに異常なことが起きていて、それは確かに私達に牙を剥いてきてるんだから、どうにかしなくちゃならない。

 

 

「とりあえず、今すぐ先輩と合流する」

 

「あ、マジか。でもどうすんの?アタシの時は、ニセモノ倒したら赤ちんに会えたけど…」

 

「それが正解ってことなんだろ」

 

「?どゆこと?」

 

 

頭に?を浮かべてそうなマジ子の背後を、私は指で指し示してやる。そしたら気付いたみたいで、「マジで?」って顔になる。マジなんだよなぁ。

 

 

「えー…。あー!」

 

「どうも」

 

「ほんとだ、せんぱぁい!」

 

「マジ子さん、無事で何よりで…ちょ、強い強い!抱きつく力強いですから」

 

 

恐る恐る振り返って、本当に先輩が居ると分かるや否や、嬉しいからか、思いっきり抱きついたマジ子。合流するとは言ったものの、実際にはもう合流してましたっていう。

 

 

「もー、居るんなら声かけてくれたらいいじゃーん」

 

「すいません。でも、お二人共、お話中でしたから」

 

「そりゃどーも。で?大丈夫だったわけ?」

 

「大丈夫だから今ここに居るんでしょう」

 

「そりゃそうか」

 

 

少しだけ笑う。正直に言えばそれなりに心配してたから、こうしてまた会えて安心したかも。絶対口には出してやらないけど。

 

 

「んー、てか先輩、アタシ達のとこに来れたってことは、やっぱ倒したの?」

 

「偽物ですか?ええ、もうパパッと」

 

「おー…。アタシはばーちゃんのニセモノだったんだけど、先輩はどうだったん?」

 

「ま、隠すことでもありませんか。両親ですわよ。私の」

 

 

先輩も家族の名前を書いたのか。チーム全員、揃いも揃って家族愛に溢れてるようで何より。まぁでも、離れて暮らしてるんだから、会いたくもなるよな。私の場合は、特殊とかいうレベルじゃないけど…。

 

 

「辛くなかったの?見てくれは両親そのものなわけだろ」

 

「それは、まぁ。気が引けるところはありましたけど」

 

 

だよなぁ?

 

 

「でも、話してる内になんか変な方向に話題が行きまして。やれ、一緒にずっとここに居ようだの、そうすることで幸せになれるだの…」

 

「あ、それは私もそうだったな」

 

「アタシもー。やっぱみんな一緒なんだね」

 

「あら、本当?で、まぁ、それは拒否したんですけど、そこからあまりにしつこくなって。最後には生気の無い顔で「ずっと一緒にここに居よう」としか言わなくなりましたわね」

 

「うへぇ…」

 

「もう面倒くさくて仕方がないので、思い切って爆破してきました」

 

 

そうですか…。思い切りがいいんだか、適当なんだか…。

 

 

「本物だったらどうしようとか、思わなかったわけ?」

 

「もちろん、それも考えました。ですけど、明らかに異常なんですもの。だったらもういっそ、本物ではないと判断しても問題ないかと思いまして。それに……」

 

「?」

 

「結果的には、私の判断は正しかったってことになるのかしらね」

 

 

先輩がいきなり私達に背中を向けて、辺りを見回す。私達も釣られて、同じように周囲に目を向ける。そしたら…

 

 

「っ!…なんだこれ。いつの間に…」

 

「さっきまでアタシ達以外、居なかったよね…?」

 

 

マジ子の言う通り、私達以外は誰も居なかった、夕暮れの神社の内部。その至る所に、今は人がたくさん居た。いつの間にか、私達が気付かない内に。

 

老若男女、たくさんの人達が、あちこちに倒れていた。

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第3章三話 終了後〜第3章四話 開始前
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