知られることのない話   作:まるイワ

3 / 72
0-2 ピンチと先輩

 

 

 

 

意識が覚醒する。そうなったってことは、今まで気絶でもしていたってことなのか。まだ少し寝ボケ気味な脳みそを奮い立たせて、あれやこれや思い出そうとする。…そうだよ、魔女と戦ってたんだ。そんで…、私と魔女の攻撃がぶつかって…。

 

 

(とにかく起きなきゃな…!)

 

 

何はともあれ確認だ。状況を把握しなきゃいかん。そう思って身体を起こしていくけど、なんだか妙に重さを感じて、少しだけ手間取った。ざぁーっと音を立てて、積もった砂が落ちる。重さの原因はこれか。私の上に、随分砂が乗っていた。

 

 

「………」

 

 

あの時お互いの攻撃がぶつかって、その衝撃で吹っ飛ばされて、その辺の砂を引っ被ったんだろう。体は少し痛むけど、その程度で済んだのは魔法少女様様と言うべきなのか。

 

服や髪についた砂を払って、地面に立つ。結界を見渡す。魔女は居なかった。

 

 

(逃げた?…無いか。仕留めたと思い込んで、どっか行っちまったかな)

 

 

それとも…

 

 

(あの人の方に行った…?)

 

 

だとしたらマズい。使い魔を引き付けてもらってて、ただでさえ手一杯のはず。そこに親玉なんて来ちまったら…。戻らなきゃ。そう思って走り出した時だった。

 

ドバァッと盛大に吹き上がる地面の砂が、私の行く手を塞いだ。何だよと思ってよく見れば、さっきの魔女がそこに居た。

 

 

ザリ…ザリ…!

 

 

見つけたぞとでも言いたげだ。私が姿を見せるのを待ってたんだな。というか、その巨体を隠せるだけの深さがあるのか、この地面は。いや、当たり前か。結界は棲家で、魔女は創造主。自宅くらい、自分の都合の良いように作る。

 

 

(心配が杞憂に終わったのは良しとして)

 

 

いや、良かない。さっきのカチ合いで魔力を使い過ぎた。倒せるならと思って多めに込めたのにこれだよ。チラッとソウルジェムを確認すると、案の定濁っていた。

 

 

「やるしかないか」

 

 

静かに呟いて、気持ちを切り替える。まぁ、やるっつっても倒すってわけじゃない。そもそも、さっきのぶつかり合いで目立った傷も付けられていない時点で、私一人で勝てる相手じゃないのはハッキリしてる。無理をしてでも、味方に合流するんだ。二人ならまだどうにか出来る。はず。

 

魔女が次々放ってくる砂をどうにか避けながら、魔女の横側を通り抜けようと走る。地面の砂が舞い上がるけど、どうせ私を隠してはくれない。気にせず走った。

 

 

「んっ!」

 

 

逃げようとしたのが分かったのか、魔女が私の進路を塞ぐように腕を振り下ろした。何とか踏み止まる。当たらずに済んだぞ、バカめ!

 

内心小馬鹿にしながら、降ろされた腕に飛び乗る。勝った。これは勝った。そう確信して、脚に力を込めて勢い良く飛ぶと同時に、まんまと出し抜かれた、お間抜けな魔女様の御尊顔でも拝んでやろうと、頭を後ろに向けたその瞬間、顔に何かぶつかった。

 

「んぶぇ」なんてアホ丸出しな声を出しながら、自身が落下する感覚を覚える。次の瞬間には柔いんだか硬いんだかな感触。地面に落ちたんだ。ダメージはあるけど、無事っちゃ無事だ。良かったよ、砂だらけの結界で。

 

 

「んん"……何だっつーのほんと…」

 

 

呻き声を上げながら立ち上がる。いや、原因は分かってる。ぶつかって来たのは多分顔だ。でも魔女のじゃない。あの瞬間、私は見た。奴の肩の辺りだ。目を凝らして、さっき飛び乗った腕から肩へと視線を移す。

 

やっぱり居た。魔女と同じく砂で出来た、芋虫のような体躯。使い魔だ。奴が狙い澄ましたみたいに、私の顔にあのジャリジャリしたドタマをすっ飛ばしやがったんだ。

 

 

(過ぎたことは仕方ねえ。魔力は取っときたかったけど、一発ブチ込んでその隙に…!)

 

 

そう思って得物を構えるけど、魔女の方が早く動いて、砂で腕ごと弾かれた。これってもしかしなくても…

 

 

「詰んだかな」

 

 

冷や汗を流して後ずさる。魔女は私に再び武器を構えさせまいと、威圧するみたいに砂を巻き上げ始める。ついでに使い魔も魔女から下りて、こっちににじり寄ってくる。体を軽くクネらせて、心なしか嬉しそう。よかったな!

 

 

「良いわけないじゃん!!」

 

 

半ばヤケになって天に吠えても、誰も応えるわけがない。あーダメ。もう死ぬ。死んじゃう。魔女は攻撃体制に入ってるし、使い魔は嬉しさのあまりか、奇妙な小躍りを始めている。何だアイツは…

 

そうして諦めの境地に完全に至ろうとした時、私と魔女の間に何か割り込んできた。洒落たデザインのフレームと、嵌め込まれた硝子。そしてその中に灯る明かり。カンテラだ。しかも見覚えのあるやつ。

 

これから起きることを察して、腕で顔を庇う。次の瞬間カンテラは勢い良く爆ぜて、中に詰まった魔力があちこちに散らばる。あろうことか私の方にも飛んできて、その熱を伝えて来た。

 

 

「あっつ…!や、あつ、熱い!!」

 

 

堪らず勢いよく後ろに転がって、服や髪が燃えていないか確認する。とりあえず問題無いこと、命拾いしたことに対して深く溜め息を吐いた、その直後。

 

 

「生きてますこと?」

 

「死んでるように見える?」

 

「そうなってたかもしれませんでしょ」

 

「…ああそうだよ」

 

 

軽口を言い合って、話しかけて来たやつの方を見る。ここに来たってことは、使い魔は倒すなり撒くなりしたってことか。

 

灰色がかった紫色の髪。ふわふわ波打ったロングヘアーを、右サイドで結んである髪型。フード付きのマントを纏って、パープル系のカラーで統一されてる衣装は、コスプレなんかじゃない。魔法少女の証だ。

 

フリルが使われたゆったりめの衣装だけど、魔法少女って言葉のイメージに反して派手じゃない。でも似合ってるんだよね。

 

 

神浜に来て1年くらい。今やすっかり見慣れた顔が、そこにはあった。私が「先輩」と呼ぶ、魔法少女の姿が。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。