知られることのない話   作:まるイワ

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ハロウィンイベが復刻するので初投稿です。





3-9 絵馬ージェンシー

 

 

 

知らない間に、神社の至る所に人の姿が増えていた。何故か倒れてる人ばっかりだけど。

 

 

「たぶん、私達が話している間に、ポツポツと増えていたのでしょうかね」

 

「どういうこったよ、これ。だいたい、何で私達だけ…」

 

「えーっと…とりま、どうにかしなきゃ!怪我とかしてるかもしんないし!」

 

 

マジ子の言う通り。流石に倒れてる人を放置しておくわけにもいかないし、傷を負っている人が居たら大変だ。近くに寄って、一人一人確認してみる。

 

 

「外傷らしきものは、どなたにも特に見られませんわね」

 

「だな…でも、なんか…」

 

 

倒れてるにしてはなんかこう…やけにリラックスしてるように見えるっていうか…。どいつもこいつもなんつーか、なぁ。

 

 

「どっちかってーと、なんか寝てるみたいだよね?」

 

 

そう。たぶんこの人達は皆、気絶したりとかで倒れてるわけじゃない。よく見れば、主にお腹の辺りが規則的に膨らんだり萎んだりしてる。マジ子の言う通り、寝てるってことだ。

 

 

「つっても変だよな。睡眠にしたって、そんないつまでも寝てらんねえよ。起きる人が居てもいいはずだろ」

 

「………幸せ過ぎて、帰れなくなる」

 

「ん?どゆこと、それ?」

 

「うわさの内容にあったでしょう。『だけどだけどもゴヨージン!幸せ過ぎて…』って」

 

「あー、そういやそーだっけ」

 

「するってーと、なにか。まさか、倒れてる人達って、全員…」

 

「ええ。おそらく、帰れなくなってしまったんでしょう。名前を書いて、参拝をして、会いたい人に会えて、それがすごく幸せで…」

 

 

なるほど。どうりで誰も彼も、やたらと幸せそうな顔してるわけだ。大方、今も各々が絵馬に書いた名前の人物と一緒に、楽しい時間を過ごしてるに違いない。ただし、夢の中で。

 

 

「現れた人物がしきりに一緒に居ようと言ってくるのも、この状態に持っていく為なのでしょうね。承諾してしまえば、眠りから醒めなくなる」

 

「ひぇー…。ソッコーぶっ飛ばしといてよかったーアタシ…」

 

「なるほどね。…で、どうするこれから。つか、どうなるんだ、私達は」

 

 

ご丁寧に用意された偽物もぶっ潰しちまって、お陰でおねんねもしてない。マジ子が聞いてきた噂話には、その場合、どうなるのかは書かれてないし…。

 

 

「さぁ…私には何も。ですが、少なくない人がこうして、噂話という名の何かに囚われているのです。それはなんとかしなくてはいけません」

 

「んじゃあ…時間かかりそーだけど、一人ずつ運ぶとか?」

 

「ええ。ただ、住所などは分かりませんから、公園のベンチなどに寝かせておくくらいしか…」

 

「まぁ、生きてはいるみたいだし、最悪ちょっと風邪ひくくらいで済むだろ…」

 

「うし!じゃー、いっちょ頑張って…」

 

 

話は纏まって、とりあえず自分の近くに居る人から運ぼうと、体を起こそうと手をかけた、その時だった。

 

 

「!?え、あれ!?え?」

 

「何なんだよ…またいきなりこんな…」

 

「…………」

 

 

辺りにたくさん居た人達が、まるで最初から居なかったように消えちまって、また私達だけになった。しかもそれだけじゃなくて、夕方だったはずなのに、真っ暗になってる。夜に変わったのか…?

 

 

「えー、どゆことこれ!?さっきまで夕方だったじゃん!人もいっぱい居たのに…!あ!めっちゃ早く夜になったのかな!?それで、皆起きて帰ったとか!?」

 

「なわけねーだろ…落ち着けバカ。先輩、これって」

 

「夜になった…というか、戻ってきた…?いいえ。追い出された、といったところでしょうか…」

 

 

要するに、あの夕方の神社は現実の空間ではないもので、私達はそこから吐き出されたんじゃないか、ってことか。

 

 

「そーなん?でも、なんでいきなりそうなったの?アタシ達、別になんもしてないよね?」

 

「何処まで言っても推測ですから、はっきりとしたことは言えませんが…」

 

「いいって。まず聞かせて」

 

「そうですか?では」

 

 

先輩が、話そうとする。

 

 

「!?待って、先輩!」

 

 

でもその途端に、それは起こった。私達の周囲が何かに覆われて、塗り変わっていく。

 

 

「え…マジで!?ねぇ、これ、あの時の…!」

 

「普通ではない…けれども外が見える…間違いありませんわね…!」

 

 

忘れもしない。あの結界だ。あの日、海浜公園で戦った、謎の女の子。あの子が展開した結界と、同じもの。今回はもしかしたら、この神社の敷地全体が覆われてるのかもしれない。

 

 

「赤さん、変身!」

 

「分かってる!」

 

 

即座に魔法少女に変身して武器を構えるけど、私は酷く不安になった。この結界が張られているってことは、そういうことなのか。また、あの女の子が、私達の前に…?

 

そう思っていた私だったけど、次の瞬間には、その考えは、幸か不幸か否定されることになる。

 

 

「!?」

 

「わあああ!なんかいっぱい出てきたんだけど!」

 

「あの女の子ではない…!?ですが、これは…」

 

 

そこら中から雨後の筍かよって感じで出てきた、例の女の子とは違う、何か。見た目はなんか絵馬みたいだけど、派手な飾りをして、フワフワ漂ってて…。まるで、生きてるみたいだ。

 

そしてそれは、あれよあれよって間に増えていって、気付けば私達は、完全に囲まれちまっていた。

 

何があってもいいように、全員で密集して、背中を預けあう。とりあえず、これで背後を突かれることはない。

 

 

「使い魔…に見えますけれど」

 

「でも、なんか違うよ…。魔力とか」

 

「わからん結界に、わからん何かかぁ…」

 

 

視線は逸らさないまま、話す。

 

 

「…この使い魔のような何かが、うわさに関わっているのだとしたら、納得がいくかもしれません。あの夕方の空間から追い出された理由が」

 

「えーと…それってつまり、どゆこと!?」

 

 

話を理解できてないらしいマジ子が、先輩に聞く。

 

 

「怒りを買ったんですわよ。何故、神社の噂話という形で神浜に広まっているのかは分かりませんが、この絵馬のような奴等にはきっと、何か目的があるんです。その為に人を集め、異空間に閉じ込めて、眠らせる」

 

「…なら、それに抗って偽物を倒して、しかも捕らえた獲物まで逃がそうとする私達は、敵だってことか」

 

「そういうことですわね…!」

 

 

あー…調査を始めたばっかりの時に漏らした不安が、まさかこうして的中するなんて。こんなことなら、うわさの調査なんてしない方がよかったか…?

 

絵馬モドキ共が一斉にこっちに向かってくるのを見て、私はそう思った。

 

 

「っ!あぁ、もう…!」

 

「とりあえず一発っ…!」

 

 

構えたパイルに魔力を込める。何にせよ、こんなところでやられるわけにはいかない。少しでも数が減ってくれればって祈りながら、杭を打ち込んで、衝撃派を撃ち出す。そしたら目の前の絵馬モドキが数体吹き飛んで、思いの外あっさり消滅した。

 

私のパイルは、杭打ちの時に発生する衝撃波を、砲弾みたいに飛ばすことも出来る。でもそれは遠くまで届く代わり、直に当てるよりも威力は低くなる。それでも倒せたってことは、ヤツらの耐久力はそれほどでもないのか?

 

 

「この絵馬、案外なんとかなるかも…!」

 

「ならないよー!アタシの武器じゃ無理ぃ!」

 

「まぁ、アタッシュケースではね!ふっ!」

 

 

チラッと見ると、先輩もマジ子も、自分の武器で応戦してる。先輩は爆弾だから、一度に何体か巻き込めて楽そうだけど、マジ子のやつはひーこら言いながら、必死こいてケースを投げてる。そりゃそうなるか…。

 

 

「鬱陶しいですわねぇ…!このまま数で圧倒されるのは困ります。なら!」

 

 

チマチマ倒してるのが焦れったくなったのか、先輩がカンテラを巨大化させた。海浜公園の時に見たやつよりも、ちょっと大きい。

 

 

「うへぇ!でっか!」

 

「爆風に気を付けて下さいな!」

 

 

先輩は両腕で抱えたカンテラを、自分の目の前にワラワラと集まるモドキ達に向けて、力一杯に投げる。カンテラ爆弾は奴らに無事当たったようで、次の瞬間にはデカい爆発が起きた。

 

 

「うぁ…!っく…」

 

 

熱と風がこっちにまで届いて、思わず顔をしかめる。だけど、これで結構数を減らせたはず。煙も大量に出て、辺りも見えづらくなった。そしてそれは、まだ残ってる絵馬モドキ達も同じこと。

 

 

「今です!走って!」

 

「えー!?でも、なんも見えないじゃん!」

 

「おバカ!私が爆弾を投げた方向なら、敵は幾らか減っているでしょ!」

 

「じゃ、アイツらと偶然会っちゃったら!?」

 

「グーパンチでもくれておやんなさいな!」

 

「うっそぉ〜…!」

 

 

「ほら、早く!」って先輩に急かされて、3人揃って走り出す。先輩が先導してくれて、私とマジ子は見失わないように付いていく。

 

 

「ぶっ!」

 

「赤さん!?何か!?」

 

「いや、別に!」

 

「そう!」

 

 

本当は顔面にモドキがぶつかって来たんだけど、今はそれよりも敵さんから距離を離す方が大事だ。

 

つーか、なんだろうなこれ。モサッとしたような、それでいてスベスベしてるような…。飾りっぽい部分が顔に当たってるんだと思うんだけど、何で出来てるんだこいつら。

 

 

「っ!止まって!」

 

「おっ…つぉ」

 

 

そのうちに煙から抜けて、神社の入り口が目に入る。偶然だけど、文字通り逃げ道に向かって走ってたらしい。

 

 

「………んっ」

 

 

もういいだろって思って、未だに私の顔にベッタリな絵馬(仮)を掴む。無造作に地面に投げ捨ててやると、カンッと木製の物体がぶつかった時のような音がして、絵馬っぽい何かは消滅した。

 

貼り付いてる間もしきりにワサワサ動きやがってさ。くすぐったいんだよこの野郎。

 

 

「あー…!なんとかなったぁん…」

 

「もう、情けない声を出さないの」

 

「だぁってさぁ〜…。てかさ、これ入り口まで来てんだったら、アタシ達逃げられるってことじゃね!?じゃ、今すぐ逃げた方が…!」

 

「いけません」

 

「なんでぇ!」

 

「この結界の規模も出口も分かりませんし、出られるかがまず不明ですわよ。囚われた方々も、出来ればどうにか致しませんと…」

 

「じゃ、どーするの?」

 

「逃げる気はないってんなら、まぁ倒すしかないよなぁ。全部」

 

「そっかぁー…」

 

 

マジ子のやつはげんなりしてるけど、私は元々逃げる気はなかった。先輩が言うように、捕まってる人達のこともある。でもそれ以上に、腹が立ってるからだ。

 

だってそうだろ。どんな手品なのか知らんけど、偽物なんか出して、人様を騙しやがってさ。大事な人に会いたいと思う気持ちを弄んで、食い物にして…。私の奥底にある一番大事な思い出を、土足で踏み躙りやがって!

 

絵馬にお母さんの名前を書くって決めたのは自分だろってのは、この際無視だ無視。八つ当たりかもしれないとか、そんなこと知るか。とにかくあの絵馬モドキ共をブチのめしてやらないと、私の気が済まないんだよ!

 

 

「じゃ、どうする!前みたいに、乗算とカンテラ合わせて一気に行くか!」

 

「え、どしたの赤ちん…。なんか怖」

 

「別に!」

 

「それもいいんですが、今は3人居るのです。ここは一つ、より確実な方法で行きましょう」

 

「ふぅん?」

 

「一人増えるのですから、その分魔力の量だって増しますわよ。威力も然りです」

 

「なるほどね」

 

「煙はいつまでも目眩ししてはくれませんから、早速説明致しますわよ。お二人共、よく聞いてください」

 

 

先輩が話す。私達全員の力を合わせて、残った敵を根こそぎブチのめす為の、その作戦を。

 

 

「んー…理屈は分かったけど、大丈夫かな。ぶっつけ本番な要素多いし」

 

「それは、まぁ」

 

「いやいや、大丈夫でしょこれ!マジいけるって!」

 

「何でそう思う」

 

「いけるって思ったから!」

 

「…アホがよ」

 

 

要するにただの勘かよ。でも、そうやってやたら自信満々に言われちゃあ、なんか本当に大丈夫な気がするから不思議で、少しだけ笑っちまった。

 

 

 

 

 

 

先輩が立てた作戦の準備を急いで進めている内に、煙が完全に晴れた。小娘共を見失っていただろう絵馬モドキ達も、すぐに私達の姿を見つけたみたいだ。

 

先輩の攻撃は効果覿面だったらしくて、かなりの数が減ってるように見えた。それでもまだ多いって言えるくらい残ってるけど、関係ない。次で終わりだから。

 

 

「先輩!」

 

「分かってます!マジ子さん、やってしまって!」

 

「おうさぁ!いっきまあああああす!!」

 

 

言われて、マジ子がアタッシュケースを投げる。目一杯力を込めて、モドキ達が密集する、その頭上に向けて。

 

モドキ達はそれに気を取られたのか、飛んでいくアタッシュケースに、一斉に視線を向けた…ような気がする。目なんてあるのか知らんけど。

 

 

「マジ子さん、今!」

 

「しゃあっ!開けー!」

 

 

先輩の合図を受けて、マジ子が叫ぶ。そしたらアタッシュケースのロックが外れて、蓋が開いた。中からザバッと音を立てて、水が飛び出してくる。

 

 

「そんでー…これで、おしまいっ!」

 

 

マジ子がそう言うと、絵馬モドキ達の頭上に撒き散らされたはずの水が纏まり始めて、形を成していく。水はあっという間に一滴残らず何処かに行って、代わりに大量の爆弾が、ヤツらに降り注いだ。先輩が使う、カンテラ型のそれが。

 

爆弾は次々爆発して、呆けていたモドキ共を焼いていく。一つ一つは小さくても、あれだけの量を食らえば、まず無事じゃいられない。チェックメイトってやつかな。

 

 

「よっしゃー!どうだこんにゃろー!」

 

「上手く行きましたわね…。何よりですわ」

 

「マジで何とかなっちまうなんてなぁ…。大したもんだよ、ほんと」

 

 

これが先輩の作戦。三人の固有魔法や魔力を合わせた、範囲攻撃。こうして結果を見せられると、数が多い相手には有効だってのが、嫌でもわかる。

 

まずは先輩が、少しずつ魔力を込めた、小さいカンテラを大量に作る。それらに私が「乗算」をかけて、威力を強化。次にマジ子がカンテラを全部「液化」して、アタッシュケースに流し込む。

 

後はさっき見た通り。マジ子が敵の頭上にケースを投げて、ロックを解除。飛び出してきた水は、「液化」が解除されてカンテラに戻る。で、爆発。「液化」の時にマジ子の魔力もカンテラに注がれてるから、威力も増してるってことらしい。

 

 

「や、アタシもビックリしたー。先輩のバクダンまで水にできると思わんかったし」

 

「マジ子さんは、自分の武器や魔法について知らなさ過ぎです」

 

「ケースの開閉も、水になったものも、任意のタイミングで元に戻せるって分かっただけよかったけどさぁ…」

 

「あはは…それは、うん。ごめぇん…」

 

 

苦笑いするマジ子。今回は上手くいったからいいけど、叶うならぶっつけ本番はこれっきりにしてほしいところ。

 

 

「で、作戦はどうにか成功したわけですけど」

 

「とりあえずスカッとはした。今ので全部倒せてりゃあいいんだけどなぁ…」

 

「結界解けてないもんねー…。ちょっと残っちゃったのかなぁ?」

 

 

なんて言ってる内に、魔力の残りカスで出来た煙が晴れてきた。爆心地がどうなったのか、段々と露わになってくる。さぁ、モドキ達はどうなった…?

 

 

 

「煙もほぼ晴れましたわね。さ、あの絵馬のような………………あれ?」

 

 

「どったの先輩………ん?…んん!?」

 

 

「あぁ…?え。いや、なんだあれ…!?」

 

 

 

敵はあいつら。結界の主もあいつら。だからこの後どうするかは、煙が晴れた時に、あいつらが居るか居ないかで決めればいい。

 

そんな風に考えていたからなのか。

 

 

「いやいやいやいや…冗談だろ…」

 

 

目の前で起きたことに、少しの間脳みそが追いつかなかった。

 

 

「なんでー!?あいつら倒したじゃん!」

 

「えぇ…。絵馬は居なくなってますわね。絵馬は」

 

 

さっきまで居た絵馬モドキとは比較にならないような、デカい魔力。それも、魔女のものとは違う、異質な感覚。

 

 

「なぁんかさ…こんなんばっかだな、お参りしてから…!」

 

「今日はサプライズが沢山ですわ…。些かパターンですけどね…!」

 

「こんなサプライズいらないよー!もぉー!」

 

 

冷や汗が顔を伝ってるし、心臓はヤバいくらいにドクドクいってるし、マジ子に至っては涙をちょちょぎらせてる。それが、目の前にいるヤツの恐ろしさを、端的に表してるんだと思った。

 

 

 

満を辞して姿を現したそれ。こいつがボスで、モドキ達の首領で、結界の主人。

 

 

 

 

怪物としか表現できない何かが、現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アラもう聞いた?誰から聞いた?

 

マチビト馬のそのウワサ

 

神社を支えるその神は、ファンシーでナイスなジェントル馬ン!

 

皆の願いを叶えるために、会いたい人に会わせてくれる粋なヤツ!

 

だけど残念、それは幻覚。気付いて否定しちゃったら、ジェントル馬ンがギャングスターに変わっちゃうって、水名区の人の間ではもっぱらのウワサ!

 

カッテスギー!

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第3章三話 終了後〜第3章四話 開始前
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