ハロウィンイベをやる時間が上手いこと取れないので初投稿です。
絵馬モドキ達を倒した。そう思って安心しかけた私達に冷や水ぶっかけるみたいに、突然姿を現した謎の怪物。変な見た目とデカい魔力が相まって、かなり不気味だ。
「うわー…なんかおっかない感じ…」
「ええ。魔力もとても大きい。それに、顔……顔…?はにこやかですが、ただならない雰囲気です。騙されないようにしなくては…」
先輩もマジ子も、目の前にいるやつのヤバさを感じてるらしい。会話してるのに、目は相手から離してないのが、その証拠。
「これさ、やっぱアイツがボスってこと?」
「あの絵馬みたいなやつの、ってことですか」
「ま、そうなんだろ…。トサカにキてんだよ、自分のシマで好き勝手されて…」
少なくともモドキと無関係ってことはないだろうな。こんな厄ネタみたいなのが偶然通りかかったもんですなんて、そんなことあってたまるか。
「いやいや、何言ってんの赤ちん」
「え」
「トサカなんてあるわけないじゃん。馬にさぁ」
「は?」
マジ子がこっちを向く。馬…?いや、なんでいきなり馬?何言ってんだこのバカ…。
「馬なわけねーだろ。よく見ろお前、あれはあの…あーっと…ほら、あの…」
「や、どう見ても馬じゃん、ほら!」
いや、指さされても馬に見えないもんは見えないって。耳はなんかカエルっぽいし、脚の代わりに車輪みたいなの付いてるし…。
「ほらってお前…。第一、あんなドギツいカラーの馬なんていねえだろ」
「バケモンなんだから、普通の色なんてしてないっしょ」
「何だそれ。大体、馬要素どこよ。口元の紐っぽいのはまだそれっぽいかもだけど」
「馬だよ!ねー、馬だよねー」
「ウン、ボクウマダヨ-」
「ほらぁ!」
「何が!先輩も悪ノリしなくていいんだっつーの!」
喋らないから、馬がどうだのなんてどうでもいいんだろうなって思ってたらこれだよ。時々変なところでボケかましてくるんだよね、先輩って…。基本、常識人っぽいのに。
「つーか、どうでもいいんだよ、アイツが馬かどうかってのは!それよりこの状況を…」
敵が目の前に居るんだから、漫才みたいなことやってる場合じゃないんだ。こうやってバカやってる間に、ヤツが何か仕掛けてきたら…!
そんなふうに焦りを覚えながら、ヤツの方を見た。
「………あれ」
「んー?」
「えー…っと?」
三人揃って素っ頓狂な声を出す。そりゃそうだ。奴さんはてっきり、そっちのけにされて、キレるなり呆れるなりしてるもんだと思ってたのに、微動だにしてない。それどころか…
「あれさ、寝てんのかな…」
「そう…なんでしょうか。鼻ちょうちんまで出してますし」
戦うのかと思ったら、自分をほったらかしでワーワー言い合いだもんなぁ。そうなっても仕方ない…のか?
終いには鼻ちょうちんが本体を離れて、フヨフヨ漂い始める。空気の流れとか多分そういうのに乗ったのか、こっちに近付いてきた。
「あーあー…。こんなになるまで放ったらかしちまって」
「何となく、申し訳なさを覚えなくもないですわね…」
「でも、これって逃げるチャンスじゃん?ムリして戦わなくてもよくない?」
「それはさ、捕まってる人達が…っと」
話し合ってる間に、鼻ちょうちんが私達のすぐ近くまで来てたから避ける。危険は無さそうっつっても、鼻っぽい場所から出てきたもんだからなぁ。汚いかもだし…
なんて、油断しきってたのがいけなかったのか。
「っ!?ぐぁっ…!」
「だあっ!なに!?」
何かが破裂するような音が鳴ったのと同時に、体に激しい衝撃が襲ってきて、軽く宙に浮きながら後退させられる。すぐに着地して、どうにか体勢を整える。
「何だってんだよ、今の…!」
「鼻ちょうちんです!あれが破裂して、こちらにダメージを…!」
「うっそぉ!マジでぇ!?」
そんなアホな…。いくらワケの分からん敵だからって、攻撃方法まで妙ちきりんにしなくても…。
ていうか、攻撃なのかこれ。だってアイツは今寝てるんじゃ…
「!お二人共、見てください!」
先輩に言われて、敵の方を見る。ヤツは車輪をギャリギャリ回転させてて、今にもこっちに突撃してきそうに見えた。
「アイツ、寝てたんじゃないの!?」
「その認識がそもそも迂闊だったのかもしれませんわ…!相手は人じゃない。魔女と同じく、怪物なんですから!」
アイツは別に寝てなんかないし、あの鼻ちょうちんは、いつまでもこっちが仕掛けてこないのをいい事に、ヤツがブッ放してきた攻撃ってことか…。クソ…!私達は何回バカやってピンチになれば気が済むんだよ!
「っ!いけない、突っ込んで来ますわよ!」
「あぁもう、次から次に!」
怪物はさっきよりも車輪を勢い良く回して、ついにこっちに突進してきた。内心で毒づく暇もくれないらしい。
「うわ、マジじゃん!ヤッバ…!」
「皆さん、これを!」
「グリーフシード!?」
「このままじゃ保ちませんわ。さぁ、散って!」
先輩にグリーフシードを持たされた、私とマジ子。その後は言う通りにして、全員がバラバラの方向に退避した。そのすぐ後に怪物が通り過ぎていったから、結構ギリギリだったのかも。
「もうやるしかありませんわね…。回復して、攻撃しましょう!」
「うー…わかったぁ!」
渡されたグリーフシードで、濁りを取り除く。なんかものすごい浄化されてる気がしたけど、考えてみれば、さっきは偽物関係でちょっと荒れたし、モドキ達に大技も撃ったしで、実はかなり危なかったのかも知れない。
「よーし。ジョーカ終わった…ってか、アイツまたチョーチン膨らましてる!」
マジ子の言う通り、怪物はこっちに顔を向けて、鼻ちょうちんをプクーッとさせてる。速度は遅めだけど、威力は充分ってのはさっきのでよく分かってる。二度は食らいたくない。
「マジ子、ケース!」
「へぇ!?」
「ケース投げて、ちょうちんにぶつけろ!」
「あ、そっか!よーし…」
マジ子が急いで武器を構える。怪物は攻撃の準備が完了したみたいで、充分膨らんだ鼻ちょうちんを放ってきた。
「ヤバい、マジ子!」
「おっけ!おー…りゃあっ!」
マジ子が投げたアタッシュケースが、怪物の攻撃とぶつかる。やっぱり威力は相当のものらしくて、ちょうちんは割れたけど、同時にマジ子のケースも消滅した。
「先輩、私もやるか!?」
「今の攻撃は恐らく連射がきかない。なら、今がチャンスです!」
「よし!」
魔力をパイルに通して、起動させる。怪物は遠距離攻撃じゃ埒が開かないって思ったのか、また車輪を動かして突進してきてる。しかも御丁寧に、私の方に向かって。
「赤ちん!ヤバくない!?」
「いいんだよ、これで!」
確かに、こっちに勢いよく向かって来てるのは危機感を感じる。でも、私にだってパイルがある。吹っ飛ばすとか転倒とかまではいかなくても、足を止めるくらいは…!
「オラァ!!」
程々に引きつけたところで、パイルを打ち込む。私の武器は衝撃波を飛ばすことで、一応遠距離にも対応できる。直に当てるより威力は落ちるけど、それでも食らえば無事じゃいられないはず。
衝撃波は怪物に真っ直ぐ向かっていって、そのまま直撃。これで勢いを削げれば…
「!?マジかよ…!」
私の願望は裏切られて、怪物は無傷のまま。何もなかったみたいに、勢いを落とさないで突撃して来る。
「チッ…!」
だから急いで体を動かして避けたけど、完全にとはいかなかった。
「ぐっ…!づぁ…っ!」
少し引っ掛けちまったのが災いして、体勢を崩した体が、地面に強く打ち付けられた。マズい、この隙は致命的…!
倒れた体を急いで起こしたけど、相手もチャンスを見逃すような馬鹿じゃない。既に私の目の前まで接近していて、そのカエルの手足みたいな形の耳で、私を横殴りにしようとしてた。
「くっそ!」
もう避けられないなら、せめてダメージは…!そう思って、防御の姿勢を取った。攻撃が、私に当たる。
「っ……!」
でも、クリーンヒットしたはずの一撃は、私にダメージを与えなかった。ちょっとした衝撃はあったけど、それだけ。怪物の耳はめちゃくちゃ柔っこかった。
「赤さん、退避して!」
「!」
先輩の声が聞こえてきて、私は急いで立ち上がる。首を傾げる怪物を尻目にして、思いっきり距離を離す為にジャンプ。直後に、怪物の周囲で爆発が起きて、ヤツが煙で覆い隠される。
無事に地面に着地して、怪物から離れられたところに、先輩とマジ子が合流してきた。
「赤さん、無事ですか!」
「何とか…」
「先輩が魔法使ったんだって!柔らかくするやつ!」
「前も似たようなことあったし、なんかすぐ分かったわ。ありがと」
「間に合って何よりですわ…はぁぁぁぁぁぁ…」
先輩は随分肝を冷やしてたみたいで、安心したのか、深い溜息を吐いた。「軟化」の固有魔法に、また助けられちまったなぁ…。
「てかさ、どーしよー…。見てたけど、赤ちんの攻撃、きいてなかったよね?」
「一番高い火力を持つ赤さんでダメだったとなると、これは絶望的ですわね…」
二人が神妙な顔になる。そうなんだよなぁ…。あの野郎、ピンピンしてやがった。これ以上ってなると…
「また、あの合体技やる?」
「いえ、準備の時間を確保できません。それに、あれは各々の魔力を大きく使います」
「いざって時に困る、か…」
通用するかもわかんないしなぁ。その時に何も出来ないのはヤバすぎる。
「最悪、その……言いにくいんですが…。逃走も視野に入れるべきかな…と…」
「それって…」
「ええ。囚われている人達を放置して、逃げるってことです…」
「………」
言われて、言葉に詰まる。でも、先輩の気持ちもなんとなく分かる。分かっちまう。
ここまで来て全滅なんてことになったら、助けられるものも助けられない。悔しくないって言ったら嘘になるし、出来るなら諦めたくないなって思うけど、仕方ないのか…。
「でも、それはあくまで最終手段です。とにかくまずは、赤さん単体よりも更に高い火力をぶつけますわよ!」
「え。でも合体技の時間ないって」
「それは三人での話です。私と赤さんの二人でやるなら、すぐ済みますわ」
「なるほどね。あれなら、確かに」
「じゃあ、アタシなにしたら…」
「それは考えてありますわ。セーフティというか、予防線というか…とにかく大事なことです」
「ほんと?」
そう聞かれて、先輩が「ええ」って答えたところで、怪物を覆っていた煙が散った。耳を振り回して、強引に吹っ飛ばしたのか。
「時間切れですわね…。早速始めますわよ!」
「あいよ!」
パイルを構えて、怪物を真っ直ぐ見る。ヤツは今度こそって感じで車輪をガンガンにブン回して、すごい速さでこっちに突っこんできてた。
「赤さん!」
「いつでも!」
先輩が、カンテラを放る。パイルと重なった瞬間に「乗算」をキッチリ発動させて、杭を打ち込んだ。
衝撃波に叩かれたカンテラ爆弾は勢い良く飛んでいって、その中で魔力が膨れ上がってく。もう何度も見た光景だ。
一直線に飛んでった爆弾は、こっちに向かってくる怪物に直撃。デカい爆発が起こった。
「さ、ここからです。マジ子さん!」
「うん。アタシ、なんでもやるよ!」
どうやら、先輩の言うセーフティってのを実行する時が来たらしい。何をする気かは知らないけど、先輩のやることだ。ここは信じてもいいって、素直にそう思えた。
その怪物は、ウワサと呼ばれる存在だった。己の母であり、創造主である少女に、「マチビト馬のウワサ」という名前と体、そして役割と力を与えられ、やがて水名という地の神社での仕事を任された。
詳しいことはよくわからないし、ウワサとしての本能に逆らうことも出来ないが、それでも自分の仕事さえ果たしていれば、外の世界を堪能できる。創造主達の役にだって立てる。そんな毎日を、マチビト馬は気に入っていた。
だがある日、そんな穏やかな日常を乱す者達が現れる。黙って見ていれば、なんと、用意した偽物を打ち消し、その上、今まで夢の世界に誘った人間達まで、勝手に解放しようとしているではないか。
どうやら創造主である少女と同じで、魔法少女のようだが、それはそれ。ウワサの内容に反してもらっては困るから、終いには自らが現れてみせて、少女達を追いつめていった。
少女らには抵抗されたが、魔法少女の攻撃に耐性を持つように作られたウワサである以上、何をされても堪えはしない。巨大な魔力を帯びた爆弾のようなものをぶつけられて、煙で視界を奪われたのは鬱陶しいが、攻撃自体は痛くも痒くもない。
度々上手く躱されはしたが、それもここまで。今度こそ排除させてもらおう。そう思って煙を突っ切り、魔法少女達の眼前へと迫ったと確信する。ようやく追いつめたと、マチビト馬は思った。
だがしかし、マチビト馬の前に三人の少女の姿はなく、見慣れた神社の景色が映るのみ。
いつの間にか地面に広がっていた水溜りが、首を傾げるマチビト馬の姿を映すばかりだった。
マギレコ本編の出来事
・第一部 第3章三話 終了後〜第3章四話 開始前