知られることのない話   作:まるイワ

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今日も頑張ってキモチ戦を終えたので初投稿です。





3-11 再びの彼女

 

 

怪物が私達を見失って、その辺をキョロキョロ見回したり、首を捻ったりしてるのが見える。そりゃそうだろうな。魔力は感じるのに、その魔力の元が見当たらないんじゃあね。

 

油断できない状況なのは変わらないんだけど、それでも、してやったりって気分。

 

 

『おー。見てよ。すっげ探してるよ、アタシ達のこと』

 

『どうやら、上手くいったようですわね。よかった』

 

『とりあえずはって感じかな…』

 

 

ひとまず一息つけた。問題は、ここからどうするかって話だけど。ていうか、今の私達の状態で、何かをどうこう出来るもんなのかな。

 

 

『なんていうか…不思議だなぁ』

 

『この状態が、ですか?』

 

『だよねー。アタシもわけわかんないよ』

 

『や、お前の魔法だろ…』

 

『だって、こんなんなるって思ってなかったしさー』

 

 

私達は今、マジ子のやつの固有魔法で、水になっている。

 

自分って存在が全身丸ごと形を失って、透明になって。でも意識ははっきりしてるし、一緒に水になった二人のことも、ちゃんと感じられるし…。上手く言えないけど、不思議な感覚だと思う。

 

 

『てか、水になっちゃうと喋れないんだよね。フベン…』

 

『テレパシーで会話が出来るのは助かりますわね。こういう時だと』

 

 

お互いに姿は見えないのに、一緒に居るって分かる。そばに居るって感じじゃない。自分と相手が重なってるっていうか、一つになってるっていうか。なんだろう、混ざってる感じ?

 

 

『………』

 

『どうしました。黙っちゃって』

 

『いやぁ、これさ…』

 

『んん?』

 

『元に戻ったら、三人がぐっちゃぐちゃに融合してるとかっていうのは…』

 

『………』

 

『えー……』

 

 

二人共、すごい顔してる。いや、見えないけど。でも絶対そんな顔してる。しょうがないだろ、そう考えちゃったものは…。

 

 

『…それはこう…何とかしますわよ』

 

『マジか。さっすが先輩』

 

『マジ子さんが』

 

『あ、アタシなんだ…』

 

 

いやまぁ、魔法使ってる本人なら何とかなるだろ。自分だけ先に元に戻してみるとかさ…。

 

 

『んんっ。とりあえず、その話は後で。それよりも、これからのことです』

 

『いつまでもこのまんまって訳にもいかないもんなぁ…』

 

『魔力も減ってってるんだよねー。ゴメン、アタシ一人ならケッコー長く水ってられるんだけど…』

 

 

水ってるとかいう謎の表現は置いとくとして、ずっとこのままでいて、怪物っていう嵐が過ぎ去るのを待つ…ってのは出来ないわけだ。どうしたもんか。

 

 

『魔法を解いて戦うってのは…』

 

『出来ると思います?』

 

『いや…』

 

 

私と先輩の十八番を食らわせてやっても、あの怪物は何ともなってなかった。結構な威力の出る攻撃のはずなのに、それすら通じないってのをこうして分からせられるのは、割とショック。

 

 

『じゃあ、その……やっぱ、ダメなの…?』

 

『……ええ』

 

『逃げるしかない、かぁ……。はぁ…』

 

 

思わず溜息。囚われた人達が居て、その人達を助けられそうなのに、それが出来ない。見捨てて、自分達はスタコラってことだもんな。

 

悔しいっていうか、やり切れないっていうか…。どうしてもモヤモヤしちまうよ、それは。

 

 

『仕方ない…って言うつもりはありませんが、私達の攻撃があの化物に通じないのは事実ですもの…。私自身 納得は出来ませんが、他に出来ることは、何も……』

 

『うぅー………なんか悔しー!』

 

『負け…か』

 

 

我ながら、まさしくそうだと思う。怪物に追い詰められて、こうして魔法でヤツを騙すことしか出来ない。挙げ句の果てに他に打つ手は無くて、何とか逃げおおせるしかないときてる。これが負けじゃなくてなんなんだか…。ほんと情けないよ、私達…。

 

 

『反省は後でたっぷり致しましょう。とにかく、今は逃げるんです。この神社から』

 

『ぬー…。わかった…』

 

『でもさ、先輩。逃げるのはいいけど、どうすんの。動けんのか?今の私達』

 

『それは…どうです?マジ子さん』

 

『水ってるのがアタシ一人ならともかく、三人分だとどうだかわかんないけど…』

 

『そう。なら、実践といきましょう。このまま逃げるんです』

 

『え、マジ?』

 

『マジです。さ、早く!神社の出口へ!』

 

『マジかぁ…。でも、わかった!じゃあいきまーす!』

 

 

無駄に元気よく答えたマジ子に身を任せて、水になったままの、私達の逃走が始まった。

 

 

『よいしょおー!』

 

 

自分の身体が流れて、音もなく引っぱられていく感覚を覚える。怪物が少しずつ遠ざかり始めて、景色も流れてく。確かに移動してるらしい。どういう理屈なんだろう、これ。

 

 

『んぬー…ゴメン二人とも。やっぱちょっと重い感じする』

 

『それでも、順調に出口には向かってますわ。結界から出られるのかはまだ分かりませんが…』

 

『まぁ、それはそっから考えるしか……あれ』

 

『?どうかしまして、赤さん』

 

『いや…なんか…見てるなーって』

 

『え、本当で………うわぁ…』

 

 

さっきまで私達を探して、首やら顔やらあっちこっちに向けて忙しなかった怪物が、今度はこっちをジーッと見つめてる。これは…怪しまれてる…?

 

 

『あの…ヤバくねーかこれ』

 

『いえ…でもほら、バレてしまったのかは、まだ何とも…』

 

『だってさぁ…魔力の反応は無くなんねーんだぞ。それが動いてるんだったら、反応を追いかければ…』

 

『………』

 

 

一緒に戦う中、固有魔法で水になるマジ子を何度か見て、分かったことだ。自分を水にしても、魔力の反応が消えるわけじゃない。そんでそれは、自分以外の魔法少女を水にしても同じなんだろうな。

 

怪物がそれに気付いたわけじゃないだろうけど、魔力を発してる水溜りが移動してるのを発見すれば、怪しむのは当たり前だよな…。

 

 

『あ、うわ、ちょ、こっち来た。マジこっち来たんだけど、ねぇ!』

 

 

車輪をゴロゴロ動かして、怪物が近づいてきた。マジ子が怖がったのか、こっちの移動速度も上がったけど、向こうの方が早い。すぐに追い付かれた。

 

 

『うーわー…。見てる。すっげこっち見てるよ。これ絶対ぇバレただろ…!見て、あの真っ黒な目…』

 

『いや、まだ!まだ分かりませんから!何か変な水溜りあるなーこんな場所でレアだなーって思ってるだけですから!』

 

『何もない場所に水溜りがいきなり湧いた時点でおかしいってわかるだろ、アホ先輩!』

 

『アホ…!?』

 

 

アホ先輩っていうかアホ輩だよ。アホパイだアホパイ。デカいの二つブラ下げてんだから丁度いいだろ。パイだけに。

 

つーか何がレアだよ。ボケてる場合じゃねーんだよ!

 

 

『あっ!ちょっとマジでヤバい!叩いてきた!バシャバシャしてきたって!』

 

 

私と先輩がバカやってると、怪物が両方の耳を使って、水になった私達をベンベンと叩いてきた。飛沫が飛び散る。これ、マジでいよいよマズいぞ…!

 

 

『おい、どうすんだこれ!』

 

『あれ、あのー…!だいじょーぶだよ赤ちん!こーやって攻撃されても、痛くないから!』

 

『それは分かりますけど、だからってこのままじゃ…!』

 

『えーっと……とにかく逃げよ!逃げるっきゃないって!』

 

 

言って、更に出口へ急ぐ私達。もうバレたようなもんだけど、ここまで来たら、何が何でも逃げるしかないか…!

 

 

『っ!おい!』

 

『今度は何です!』

 

『止まったんだよ!』

 

 

怪物は、いきなりその場に停止して、追いかけてくるのをやめた。まさかここにきて追跡をやめました、なんてことはないと思うけど…。

 

 

『あ!アイツまたフーセン膨らましてる!』

 

 

いや、案の定かよ くそったれ!

 

 

『落ち着いて下さいな!鼻ちょうちんと言っても、一発だけならまだ何とか…!』

 

『……先輩、あれ見てみ』

 

『あれ……って…。……えぇー、ちょっと…』

 

 

先輩がそう言いたくなるのも無理ない。一発でも結構痛かったのに、今度はそれを複数飛ばして来た。もう確定だろこれ。バレたんだよ、水に化けてんのが。

 

……いや、待てよ。

 

 

『とりあえず攻撃は大丈夫なんじゃないの?だって、水になってりゃ無敵状態なんだろ?』

 

 

何だよ、慌てて損したなぁ。ピンチは継続中だけど、これなら打開策を練る時間も…

 

 

『あー、それか…や、ゴメン赤ちん』

 

『あ?何が』

 

『アタシ、やったことあるから分かるんだけどさ、これ、水っぽいもんにはカンショーされるっつーか…』

 

『………ん?』

 

『だからね?こーやって水になってても、川とかに入ったら冷たいってなるし、お湯とか混ざったらアッツいとかそういう…』

 

『…えー……っと……』

 

 

つまりあれか。鼻ちょうちんってのもまぁ水っぽいもんではあるから、普通に干渉はされるかもとかそういう……ってぇ!

 

 

『いやお前ぇ!それ早く言…!』

 

 

ツッコミの言葉をくれてやろうとしたけど、次の瞬間には、怪物の放った鼻ちょうちんが一斉に破裂した。水溜りになった私達にちょうちんが接触した瞬間、攻撃性を持ったヤツの魔力が、滝みたいに流れ込んでくる。

 

衝撃と痛みに掻き乱されたと思ったら、気付けば元の姿に戻って、地べたを這いつくばってた。先輩はもちろん、マジ子もアレには耐えられなかったらしい。だから液化を維持できなかったんだ。

 

 

「うっ、がっ…。ってぇ…!」

 

「お二人、とも…逃げっ…あっ…」

 

「あぅ…いだい〜……げほっ」

 

 

一気にブチのめされちまった。あちこち痛くて仕方ない。それでも、私はまだ逃げようとする。倒れた体をどうにか起こして、そのまま立とうと踏ん張る。

 

 

「……………!」

 

 

だけど、そんなことさせるわけねえだろってばかりに、私達の前に立ちはだかってくる怪物。余裕綽綽なのか、何もしないでこっちを見下ろしてるばかり。

 

 

「っ……だあああああああああ!!」

 

 

それがとにかく気に食わなかった。だからパイルを起動して、イラつきを吐き捨てるみたいに思いっきり叫びながら、ブチかました。

 

残った魔力をありったけ込めた甲斐もあって、さっきパイルを打ち込んだ時よりも威力が出たらしい。怪物の身体に、大穴が空いた。

 

空いた途端に、塞がった。

 

 

「………」

 

 

あぁ、なるほどね。こんなんじゃ攻撃なんて通じないわけだ。頭ではそう考えて、でも口は動かなかった。はっきりとした結果を見せられて、気力も元気も、急激に萎んじまったから。

 

 

「っ……!ぁ………」

 

 

攻撃が終わって、そのままボケッと突っ立ってたもんだから、怪物から反撃を貰った。ふざけた見た目の耳に、頭を横から叩かれて、地面に赤い斑模様が出来た。

 

鉄みたいな臭いがし始めた。何かが顔を伝ってるのも分かる。多分、血が出たんだ。当たりどころが悪かったのかな。

 

怪物が、今度は両方の耳を振りかぶってるのが見える。だけど、避けるとか防ぐとか、そんなことすらもう私には出来ない。

 

単純にそうするだけの体力がもう無いのか、それとも、もう無理かもっていう諦めがそうさせてるのか。

 

どっちにしろ、今の私に出来ることは、自分に向かって勢いよく迫ってくる怪物の両耳を、受け入れることだけ。そう思った。

 

 

「………?」

 

 

なのに、怪物はどっちの耳も、いきなりビタッと止めた。何でだ。私を更にボコボコにしてやるんじゃないのか。

 

 

怪物の意味不明な行動を見せられて、頭に?を浮かべる私の前に何かが降って来たのは、その時だった。

 

 

「…………あ?」

 

 

いきなり何だよって顔を顰めたのも束の間。降ってきた何かを見て、私の頭は少し混乱した。はっきり言って、訳が分からなかった。

 

 

「…………」

 

 

間違いない。あの時の女の子だ。私達が海浜公園で散々な目に遭わされた、あの謎の美少女が、今、私の目の前に出てきてる。

 

 

私に背を向けたまま、両腕を目一杯横に広げてる姿は、まるで、怪物から私を守ろうとしてるみたいだった。

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第3章三話 終了後〜第3章四話 開始前
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