知られることのない話   作:まるイワ

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昴かずみが実装されて嬉しいので初投稿です。





3-12 決着は苦味たっぷり

 

 

 

「あの子、あの時の…!何でっ…?」

 

「もしかして、また赤ちんのこと…。っ…」

 

 

思いがけない乱入者登場に困惑してると、先輩とマジ子の声が聞こえて、ハッとした。全く喋らないから不安だったけど、どうにか無事だったらしい。

 

見ると、まだ怪物の攻撃によるダメージが残ってるらしくて、地面に倒れたままだった。しゃがんで、声をかける。

 

 

「っ!二人共、だいじょぶか?怪我とかは…!」

 

「大丈夫なら、今頃這いつくばってませんわよ…」

 

「生きてるからいいけどさー…うー、痛いよぉ…」

 

 

返事が返ってきて、安心した。顔も私の方に向けられてるし、意識もはっきりしてる。私みたいに血が出てるってことも無さそうだ。

 

 

「で…どうなってますの、状況は。何故、あの女の子が…」

 

「アタシらのこと、守ってくれてんのかな…?あぁ…アタシらってか、赤ちんかも…」

 

 

二人の言葉を聞いて、顔をあの女の子の方に向ける。相変わらず、私達を怪物から庇う様にして立っているのが見えるだけだけど。

 

 

「さぁね…。わからんて、私にも」

 

 

ほんと、何がどうして、何の因果があればこんなことになるんだか。あの子には前に三人揃ってボコボコにされたっつーのに、今度は私達を助けに来たみたいに見えるってんだから。

 

あれか。昨日の敵は今日の友とか、そういうの?いやぁ、そんなわけ…。

 

 

「何にしても、気が抜けないんじゃない?まださ…」

 

「…………」

 

 

特に何も返してはこないけど、先輩も同意見らしい。神妙な顔をしてる。

 

二人の無事を確認出来たのは良いことだけど、だからって、目の前の脅威が取り除かれたわけじゃない。私はすぐに、女の子と怪物に視線を戻した。

 

 

「…………」

 

 

女の子は何も喋らない。ワケの分からん化物の前に立ってるっていうのに、さっきから一歩も退かないでいる。

 

特に怖がったり強がったりしてるような雰囲気も無いし、それどころか、時々首を横に振ったりしてる。私達を襲っちゃダメだって、怪物に知らせてるのか…?

 

 

(まさか、マジでアタシ達を守ろうとしてるってのか…)

 

 

確かにアイツの馬鹿げた強さなら、あの出鱈目な怪物をどうにか出来るのかもしれない。でも、そうすることで女の子に何の得があるっていうんだか。

 

…いや、少なくとも守る意味はあるのかも。それは別に、良いものではないかもだけど。例えば、「こいつらは私の獲物だ」的な…。

 

もしくは、「こいつら」じゃなくて、私個人が標的だから、とか。だってあの子、海浜公園の時も妙に私に迫って来たし…。つーか、手籠にされたようなもんでしょうよアレは…。

 

 

(あーもう…あんま思い出したくないことを…)

 

 

ちょっとげんなりした。まぁ、それはいいよこの際…。結局 私達はどうなるんだ、これから。状況はさっきから動かないし、どう判断したらいいんだか。

 

 

(あの子は首ブンブンしてるし、バケモンはそれ見て首傾げてばっかだし…。とにかく何でもいいから動きがあれば……。っ!?)

 

 

私のそんな願望が天にでも届いたのか、すぐに状況に変化が生まれた。

 

 

「ひゃっ…」

 

「ぅわっ…。なになにぃ!?」

 

 

女の子が、もの凄い量の魔力を勢い良く放出し始めて、それがこっちにも伝わってくる。ピリッとした強い圧みたいなのが伝わってきて、思わず顔を顰めた。

 

 

(なんだ、いきなり…!威嚇か何かか…!?)

 

 

これには流石に怪物もビックリしたらしい。少し後ずさったのが見えた。

 

 

(怯んだ?もしかしたらこのまま…)

 

 

本当に何とかしちまうのか?してくれるならありがたいはありがたいけど…。

 

他人任せなんて情けない話。けど、それでもようやく活路が開けそうなんだ。出来るなら、このままどうにか…!

 

 

「ぶがっ…!」

 

「何です!?魔力がっ…うぐ…」

 

 

そんな甘えた考えは許さんって感じで、魔力による圧力が、更に強まったのを感じた。潰されてぺちゃんこになるんじゃないかって思うレベル。しかも、息苦しさも感じるようになってきた。

 

女の子の放出する魔力がそうさせてるんじゃない。いや、原因の一つではあるんだけど、それだけじゃない。

 

怪物だ。ヤツが、女の子に対抗して魔力を放出し始めて、魔力同士がぶつかったからだと思う。それで押し合い圧し合いしてるんだ。

 

怪物が出した魔力の量も、女の子のそれに負けず劣らずだ。デカい魔力同士がぶつかり合えば、周囲にも相応の影響が出るってことなんだろ。現に今出てるし…!

 

 

『おい、先輩!先輩!』

 

『聴こえてますわよ!なに!?』

 

 

声を上手く出せる自信が無くて、テレパシーで話しかけた。返事が返ってくる。

 

 

『どうすんだ!何とかなりそうって思ったけど、これじゃ…!』

 

『分かってます!…怪物に、あの女の子。どちらも私達にとっては危険ですが…』

 

『でもさ、今は大丈夫なんじゃない!?あの変な子、アタシ達のこと守ろうとしてくれてんでしょ!』

 

『どうでしょうね…。ですが、あの怪物と対立しているのは事実なんでしょう。でしたら…!』

 

『敵の敵は味方ってか…!?』

 

『そういうことですわ……っね!!』

 

 

先輩がそう言った次の瞬間、状況が動いた。その変化は怪物にとっては想定外で、女の子からすれば好機だったと思う。

 

怪物はそれに驚いたっていうか、混乱したのか、放出してた魔力を引っ込めちまったらしい。圧迫感が弱まった。

 

 

「!」

 

 

その隙を、あの女の子は見逃さなかったみたい。あの子の出す魔力の勢いが、爆発的に増した。

 

 

「だぁーっ!ちょっとっ…!!」

 

「なんて魔力を…!こんなの、耐えられな…!」

 

 

魔力自体が発する光で視界を埋め尽くされて、思わず両腕で顔を庇う。バカみたいに激しい力の流れを全身で感じながら、何かが割れるような、崩れるような音を、私は聞いたような気がした。

 

 

 

 

 

 

「………?」

 

 

ちょっとだけ長い間、そうしてたと思う。私はギュッと目を閉じてて、片膝を付いてた。要するに、さっきまでと同じ体勢のまま。

 

気付いたら、さっきまで嫌ってくらい感じてた魔力の反応が、さっぱり無くなってた。顔を庇っていた腕を下ろして、おっかなびっくり目を開けた。

 

 

「神社…」

 

 

そう、神社だ。神浜市の水名区にある、水名神社。その景色だ。暗いのは、今が夜だから。

 

今の今まで魔力がぶつかり合ったりで滅茶苦茶だったはずなのに、今はそれが、嘘だったみたいに静まり返ってる。

 

で、私の目の前には、女の子の背中。怪物は、どこにも居なかった。

 

 

(……あの時)

 

 

謎の女の子が、魔力の勢いを強める直前のことだった。私は見た。体勢を崩して、盛大によろけた怪物と、その原因を。

 

 

(地面が、沈んでた)

 

 

怪物の足元が不自然にへこんでた。それがヤツの不意を打つことになって、隙が生まれたんだと思う。

 

何でって思ったけど、すぐに思い当たった。先輩がやってくれたんだ。あの人が固有魔法で、怪物が立ってた場所の地面を、フニャフニャに柔らかくした。

 

 

「っ!そうだ、先輩…マジ子も…」

 

 

後ろを振り返ると、倒れたままの二人が居る。すぐに無事を確かめたくて、膝立ちのままで近寄った。

 

 

「おい。先輩、マジ子。おいって」

 

 

呼びかけて、肩の辺りを軽く叩いてると、二人共唸って、その後に目を覚ました。よかった。何とか生きてるみたい。

 

 

「うぅん…赤さん?」

 

「おう」

 

「どーなったんー…。なんか、あの変な子が魔力をバーンッってやったけど…」

 

「あれでどうにかしたんだろ。あのバケモンも、変な結界も、どっか行っちゃった」

 

「マジか…」

 

 

マジだよ。一旦二人から目を離して、女の子の方を見る。私が聞いた、何かが壊れるような音。あれは気のせいじゃなくて、実際にあの子が、あの変な結界を壊した音だったんだろうな。バカみたいにデカい魔力で、無理矢理に。

 

 

「とりあえずさ、助かったんだよ私ら…。んで、それは先輩が『軟化』を使ってくれたから…っと」

 

「いや、それは…。私もこう、必死で…。んん…」

 

「その必死さに助けられたんだからさ。まぁ、なんだろ。ありがと」

 

「………はい」

 

 

言いながら二人に向き直って、体を起こすのを手伝う。まだ少しダメージが残ってるかもだし、立たせるのはやめといた。

 

 

「はぁ…ありがと、赤ちん」

 

「私も、ありがとうございます」

 

「ん」

 

 

二人から感謝の言葉を受け取ってから、のっそり立ち上がる。そのまま、女の子の方に向かって歩き出した。

 

 

「赤さん…?」

 

「危ないってのは分かってんだけどさ、一応助けて貰ったんだし…。一言あってもいいかなって」

 

 

本当は話しかけたくないけどな。ホントに。マジで。別にビビッてるわけじゃねーし。ねえったらねえ。

 

 

「赤ちん、気ぃ付けてね」

 

「わかってる」

 

 

女の子に近付く。間近まで行くのは危ないかもだから、間隔は空けておく。

 

 

「………あの、さ」

 

 

恐る恐るで、話しかける。女の子が、こっちに振り返った。

 

 

「っ……」

 

 

思わず身構えそうになったけど、踏みとどまる。ピンチを救ってもらった礼をしようってんだから、変な態度は良くない。

 

 

「……………」

 

 

女の子は何も言わない。初めて会った時と同じだ。やたら可愛い顔で、ニコニコした表情。赤くなったほっぺた。

 

私がもし男子だったら、コロッといってたんじゃないかなって感じの美少女だ。

 

 

「えーっとー、そのー…さ…」

 

「…………」

 

 

なんか、上手く言葉が出てこない。前の戦いが軽いトラウマにでもなってるからなのか、得体の知れない相手に話しかけて、緊張してるからなのか。

 

 

「あの、なんつーか、ホラ……あー…ありがとな」

 

「?」

 

 

何とか言えたけど、言われた本人はキョトンとしてる。「なんで?」って顔だ。

 

 

「その…あんたとは、前に派手にやり合ったけど、今回はさ、助けてくれたから。だから、ありがとうって」

 

「!」

 

 

私が説明して納得がいったのか、女の子はちょっと驚いたような顔になって、直後に笑顔になった。こっちの感謝の気持ちが伝わったのかもしれない。

 

 

「まぁ、ホントに助けてくれたのかってのは、正直分かんないけど…。ほら、あんた、何でか喋らないから……って」

 

 

なんか照れ臭くなって、誤魔化すみたいに喋り出したとこで、異変に気付く。

 

 

「あーのー…」

 

「…………」

 

 

話しかけてみる。女の子は嬉しそうな顔のままだ。

 

 

「えーっ……と……なんか、さ」

 

「…………」

 

 

話しかける。女の子はニコニコしてるし、ほっぺがほんのりと赤くなってる。

 

 

「………近付いてきてない?」

 

「!!」

 

 

話しかけた。目の前には頬を赤くして、目も潤ませてる女の子。

 

嫌な予感がしたけど、時既に遅し。とびっきり嬉しそうな笑顔を浮かべた女の子が、私に飛びついてきた。しかもそのまま首に腕を回されて、逃げ道を塞がれる。

 

女の子を支えきれなくて、私が地面に尻餅をつくのと、女の子が私に二度目の熱烈なキスを寄越したのは、ほぼ同時だった。

 

 

「んン!?んー!んー!!」

 

「…………」

 

 

びっくりするやら、痛いやら、恥ずかしいやら…。色んな気持ちをごっちゃにしながら、とりあえず女の子の背中を思いっきり手で叩く。今すぐやめてくれ…!

 

でも女の子は全く堪えてないみたいで、お構いなしにブチューッとしてくる。

 

 

「うわぁ〜……すっごい」

 

「またですか、赤さん…」

 

 

後ろから、先輩とマジ子の声。いや、またですか赤さんってなんだよ。私がそういう趣味持ってるみたいな言い方すんのはやめろ!

 

 

「んー…!んんんんん……!ぷへぁっ!やめろって…!」

 

 

目一杯腕に力を入れて、どうにか女の子を引き剥がす。こんにゃろ…ちょっと舌入れて来やがった…!

 

ハァハァって肩で息しながら、キスしてきた当人の顔を見てやると、不満そうにほっぺを膨らませてた。いや、そんな顔されてもさ…。

 

 

「赤ちーん、頑張れー」

 

「女の子同士はノーカウントって話もありますわよー。ふぁーいとっ」

 

「ノーカンって何!?つーか面白がってるだろお前ら!」

 

 

他人事だと思いやがってよぉ…。

 

 

「…………はぁ…。分かったよ…」

 

「?」

 

 

溜息を吐きながら、女の子を見る。まだ不満そうな顔だ。

 

 

「あんたが命の恩人なのは事実だしね。いいよ、その…………ちゅーしても」

 

「!」

 

 

そう言われた途端、パァッと明るい顔になった女の子。あーもー、恥ずかしいって、こんなこと言うの…。

 

 

「でも!一回。一回だけ!もう夜だし、私達も疲れてる。帰りたいんだよ」

 

「…………」

 

「だから、私達が帰るのを見逃してくれるなら、その……一回だけ…いいから」

 

「!!」

 

 

首をすごい勢いで縦にブンブン。それでいいんだ…。つか、そこまで嬉しいの…?

 

 

「…………」

 

「っ………」

 

 

OKが出たからには、早速致したいらしい。尻もちついた私に乗り掛かったまま、両手を私のほっぺに添える。今までとは違って、優しい手つきだ。

 

女の子が優しく微笑んだまま、顔を近付けてくる。腹を括って、目を閉じた。

 

 

「んむ……」

 

 

そしたらすぐに、唇に柔らかい感触が襲ってきた。キスされてる。これで三度目かぁ…。

 

 

(んんんんー……恥ずかしい。めっちゃ恥ずかしいってこれ……)

 

 

どんだけ初心なんだ私はって、我ながら呆れるけど、恥ずかしいもんは恥ずかしいんだ。顔は熱いし、心臓はうるさいし…。

 

 

(でも………)

 

 

でも何でだろう。今回のキスは、今までとは違う感じがした。なんつーか、包まれてるっていうか、安心するっつーか…。

 

一応は合意の上だからなのかな…。いやいや、そんなバカな…。だってホラ、女同士だよ?

 

…だけどなぁ…。なんか気持ちいいしなぁ…。暖かいし、柔っこいし、唇をはむはむって軽く食んでくるのも、結構悪くないかもっていうか…。

 

 

「………?」

 

 

未知の感覚を味わってボケッとしてる内に、柔い感触は口から離れていった。女の子は、満足したみたい。

 

目を開ける。すごく嬉しそうな笑顔の、女の子が見えた。

 

女の子が私の体からどいて、立つ。私も、同じように立ち上がった。

 

 

「もう、いいの…?」

 

 

何でそんなこと聞いたのか、自分自身でも分からなかった。ただの確認であって、私がもっと、あの感覚を味わっていたいから とかじゃ断じてない…と、思いたい。

 

 

「…………」

 

 

女の子はゆっくり頷いて、それから、空気に溶け込むみたいに消えていった。最後まで、微笑んだまま。

 

こうして怪物も、女の子も居なくなった。後に残ったのは、夜の神社の景色と、ボロクソになった魔法少女が三人だけ。

 

 

『……………』

 

 

後ろに振り返って、先輩とマジ子を見る。色々と言いたいことがあるはずなのに、皆が皆、黙ったまま。

 

二つの嵐が一気に過ぎていって、完全に気が抜けたんだろうな。体はあちこち痛むし、アホみたいに疲れてるし。私に至っては、大分恥ずかしいことにもなってさ…。何だったんだよ、マジで…。

 

悲鳴を上げる体に鞭打って、二人に近付く。私と同じように疲れ切ってるであろう顔でこっちを見上げてくるチームメンバー達に向かって、私は言った。

 

 

「…………帰ろ」

 

「………ええ」

 

「うん………」

 

 

二人に手を貸して、どうにか立たせる。私も含めて皆フラフラだったから、お互いに体を支え合って帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……結局、捕まった人達はそのまんまか…」

 

「仕方ありませんわ…。悔しいですし、納得もいきませんけど…」

 

「うん…。アタシ達じゃ、あのバケモノに勝てないんだよね…」

 

「はぁ………」

 

 

溜息が出る。そりゃそうだ。終わってみれば全員傷だらけ。しかも人は助けられないで、謎は残ったままってんじゃあ…。

 

 

「…はい」

 

「ん?グリーフシード?」

 

「マジ子さんも」

 

「あ、うん…」

 

 

先輩から渡された。そういえば、浄化は戦ってる時に一回だけしかしてなかったっけ…。

 

 

「色々と話したいことも、話すべきこともありますわよね。でも、今日はもう休みましょう……」

 

「……………」

 

「何もかも明日です。明日…」

 

 

濁ったソウルジェムを浄化しつつも、苦い気持ちを抱えながら、私達は帰宅した。

 

 

 

あの女の子とキスをした時に感じていた気持ちや、生き残れたことから来る安堵はすっかり心の隅に追いやられて、無力感と後悔と悲しさが、私を満たしていた。

 

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・第一部 第3章三話 終了後〜第3章四話 開始前
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