知られることのない話   作:まるイワ

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ハロウィンイベ開催中なので初投稿です。





第4章:ウワサの追い人
4-1 あの子の内側


 

 

 

『……………』

 

 

神社で私達が大変な思いをしてから、数日が経った。で、今は先輩ん家に集まって、料理。私達流の、チームワーク強化の為の特訓を兼ねたもの。

 

料理が完成したから、皆でいただきますして食べてみた。でも私達三人とも、シーンとして何も言わないまま。いやぁ…まぁ、そうなるよなぁ…。

 

 

「……なんか言いなさいな、貴女達」

 

「言うことねーんだもん…」

 

「何回目なんだろね、これ…」

 

 

今までに何回か、こうやって皆で飯を作ったことはあった。でも、いつも結果は同じ。今回もそうだった。だから感想も変わらない。

 

 

「美味しくない…」

 

「ええ…。びっっくりするくらい不味いですわね…」

 

「マジでさー、先輩の好きな、あのお店で食べた方がマシだよねー…」

 

 

つまり50点以下だと。まぁ、あの店の料理って普通に食べられるもんね。飛び抜けて美味しいわけじゃないにしても、真っ当に食えはするんだから大したもんだよ。

 

比べて、私達の作る料理はダメだ。他人に食わせようもんなら、殴られても文句言えないと思う。

 

 

「そもそも、失敗するのっておかしくありません?カレーですわよ、カレー」

 

「つっても、トマト使ったやつだろ。普通に作ればいいのに、ちょっと変わったやつにしようとしてさぁ」

 

「水が要らないっていうんであれば、確かめてみたくもなるじゃありませんの!」

 

「つってこのカレー、動画と違ってスゲー水っぽかったんだけど。ぜってー途中で水足したよなぁ!?」

 

「それはマジ子さんがやったんです!」

 

「だってさー、なんかほんとに出来るか分かんなくて、不安だったんだもん…。焦げやすいとか言ってたし」

 

「そこは信じなさいな!経験者が動画で実演してるんですから!」

 

「仲間でもない、しかも画面の向こうの他人なんて信じらんないよ、マジで…」

 

「なんかいきなり暗くなるのやめてもらえる?」

 

 

あーでもない こーでもないって、言い合いになる。無理もないかな。食事ってのは本来、心っていうか、体っていうか、そういうのが満たされる時間なはずなのに、肝心の飯が不味いんじゃあね…。

 

 

「はぁ……。やめましょうか、こんな不毛なのは。食事の質は何としても改善するとして、とりあえず、このカレーは食べてしまいましょ」

 

「不味いのに?」

 

「作っちゃったんですもの。残さず食べなければ…」

 

「うえー…」

 

「一応きっちり三人分になるようによそったから、鍋には残ってないのが救いかな…」

 

「てかさ、アタシが水入れただけじゃなくないこれ?赤ちんはチョコとかケチャップとか足してたし、先輩は使うトマトの数増やしてたし…」

 

「ちょ、もー!いいですからそういうのは!」

 

 

結局、その後も騒がしくしながら、夕飯を食べた。ほんと、いつになったらまともな飯が食えるようになるんだか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、お話なんですけど」

 

「あい」

 

「うん」

 

 

そりゃあもう不味い食事で腹だけが満たされた、その後。皿を洗う先輩に、ちょっと大きい声で話しかけられる。

 

 

「うわさのこと、調べませんか」

 

「はぁ?」

 

「うわさって、前の神社のやつみたいな?」

 

「ええ、まぁ。それと、絶叫ロールでしたっけ」

 

 

あれは、マジ子のやつの聞き間違いってことも充分あり得るけどな。…ていうか、またうわさかぁ…。

 

 

「関わりたくないけどなぁ…。できればさ」

 

「また、あんなとんでもないの出てきたら困るもんねー…」

 

 

スマホを弄りながら、マジ子が言う。でも、適当に話を聞いてるってわけじゃなさそう。

 

 

「何してんの」

 

「ウワサ話調べてんの。神浜の」

 

 

いや、何してんだお前。

 

 

「あのさ、お前 今、困るっつったよね?じゃあ何で調べてんの?バカかよ。あ、バカだったわそういや」

 

「えー、ひど。だってさー、気にならない?うわさ」

 

「ならない」

 

「ヤバい目にはあったけどさー、あんなんばっかってことないって。次はだいじょぶだいじょぶ」

 

「だからってなー、お前…。わざわざ自分から危ないもんに首突っ込んで…」

 

 

負う必要のないリスクなんて、そのまま遠ざけとけばいいんだって。魔女相手でもないんだから、私達が危険な目に遭わなくたって…。

 

 

「ぶー」

 

「…なに」

 

 

むくれたマジ子が、不満そうにこっちを睨んでる。

 

 

「ビビり」

 

「は?」

 

「赤ちん、怖がりさん!」

 

「お!?」

 

「ぺったんこ!ドひんにゅー!」

 

「ひんっ…」

 

 

何つったお前!ビビってるだぁ?私が?冗談!乳がどうとかは何とでも言ってくれていいけどさ!

 

 

「私が、うわさとかいうのにビビるわけねーだろ!自分から怪我しに行くようなことすんのは、バカのすることじゃねえのかっつってんの。分かったか、デカ乳」

 

「でかちち…」

 

「いや、むしろバカ乳」

 

「ばかちち!」

 

 

うん。自分でも何言ってんのかよく分かんない。でも、デカいもん、マジ子のおっぱい。で、こいつはバカだからバカ乳。ピッタリ。

 

 

「そんなこと言ったら先輩もでっかいじゃん!この間、一緒にお風呂入った時に見たけどさー、アタシよりおっきかったよ!」

 

「知ってるよ。私も何回か見たことあるし」

 

 

先輩が風呂から上がるのを待つのが面倒な時もあるから、そういう時は一緒に入ってる。先輩も、構わないって言ってくれたから。

 

 

「何の話をしてるんですか、貴女達は…」

 

「お、先輩 皿洗い終わったんだ。やー、先輩のおっぱいデッカいねーって」

 

「知ってますわよ!やめていただけます?人の身体についてあれこれと…」

 

 

ちょっと顔を赤くした先輩が、台所から戻ってきた。洗い物は終わったらしい。

 

 

「胸だの乳だのは置いといてですね、赤さん」

 

「なに」

 

「気乗りしないのは分かります。私も、出来ることなら、積極的に関わるべきではないと思いますし」

 

「だよなぁ?」

 

「ええ。ですが、赤さん。この、怪しさに満ちたものをこのまま放置しておくというのも、それはそれで危険だと思いませんか?」

 

「…………」

 

 

まぁ、一理ある。私達だけがどうこうなるってんならまだしも、一般の人にまで危害が及んだりするかもだし…。ていうか、前の神社のうわさがそうだったんだよな…。

 

結局、捕われた人達を助けられなかったのを思い出して、モヤッとする。この神浜に、まだいっぱいあるかもしれないんだよな。ああいう、危ない噂話が…。

 

 

「知らねーよ、そんなの。…って言えたら、よかったんだけどなぁ」

 

「では…」

 

「でも、だからって、危ないことになんのは嫌だろ。私だけじゃなくて…ほら。二人も、そんなことになったらさ…」

 

 

先輩とマジ子を、チラッと見る。

 

 

「んー…赤ちんさ」

 

「あ?」

 

「心配してくれてるん?アタシ達のこと」

 

「あ、そうなんですの?」

 

「……ちげーよ、バカ」

 

 

なんか図星を突かれた気分になって、目を逸らす。照れ臭い気がするのも、顔がほんのちょっと熱いのも、きっと気のせい。

 

 

「とにかく、うわさの出所というか、根元というか、それを突き止めようと思うんです。ダメですか?」

 

「それって、前の神社のこと、引っ掛かってるから?眠ってた人達、置いてきちゃったこと」

 

「それもあります。ですが、決して一般人を守るという一心で、そうしようと思ったのではありません」

 

「じゃ、何で?」

 

「何よりも、チーム全員の身を守る為でもあります。私達は知らなさ過ぎるんですわよ。うわさのこと。その発信源のこと…」

 

 

発信源、ね。そういや前に言ってたっけ。うわさ意図的に広めてるやつが居るかもって。

 

 

「少しでも明らかにすることが出来れば、今後の対応や対策を、具体的に決めることも出来るでしょう。また未知の怪物に遭遇するかもというリスクは当然ありますが、やってみる価値はあるかと」

 

「んー……」

 

「アタシはやるよー。危ないのとか痛いのとかはヤだけど、赤ちんも先輩も居てくれるし」

 

 

サラッと私も頭数に入れられてる。まだやるって言ってないんだけど…。あーもう…。

 

 

「……わかった。やる。やるよ」

 

「おっ、マジかぁ」

 

「では、決まりということで」

 

 

うわさと、その元について、詳しく調べることが決まった。嫌だって突っぱねることも出来たはずなのに、私はそうしなかった。二人だけで調査に行かせて、何かあったらって思ったら、モヤモヤしたから。

 

 

「じゃーさ、さっそく明日から…」

 

 

そうマジ子が切り出したところで、スマホの通知音が響いた。私のじゃない。先輩のでもない。ってことは…。

 

 

「あ、アタシのか。……あー、姉ちゃんからだ。ゴメン、もう帰んなきゃ」

 

「あら。まぁ、もういい時間ですものね。」

 

 

料理やら話やらで、それなりに時間が経ってたらしい。外に目を向けると、もう夜だった。身支度を整えたマジ子を見送りに、玄関まで移動する。

 

 

「ほんとさー。マジで空気読めないんだから、姉ちゃんも」

 

 

靴を履きながら、マジ子が話す。

 

 

「この間だって、先輩に勉強見てもらってること話したら、嬉しそーな顔してさー。『じゃあ、家では私が勉強見てあげるー』とか言って…」

 

「気にかけてくれてるんですわ。大事な妹さんで、家族なんですもの」

 

「そっかなー…」

 

 

家族…。家族かぁ。先輩もマジ子も家族が居て、ぶつくさ言いながらでも、本人なりに向き合ってるんだよなぁ。親から逃げて、違う家で寝泊まりしてる私とは違う。

 

前に、先輩の親と電話で話した時に、親父さんが言っていたことを思い出す。

 

 

『本当なら毎日でも電話をかけて、あの子と話がしたいけど、中々時間が取れない』

 

『私達両親と離ればなれで、寂しい時もきっとあると思う。そういう時は、一緒に住んでいる君が支えてあげてほしい』

 

 

支えるとは言っても、そういう寂しさなんてのを、私が埋めてやることなんて出来るのか。家族と会えないことで生まれた寂しさなら、それをどうにかしてやれるのって、家族だけなんじゃ…。

 

私にも、家族が居なくなって出来た穴があるから、何となくそう思うのかも。凄く大きい穴。埋まる日なんて来ないんじゃないかってくらいの、大きくて、深くて、暗いやつが、心の奥に。

 

そこまで考えて、疑問が湧いた。その穴が出来たのは、私がお母さんを失って、もう二度と、お母さんに会えなくなったから。会えないから埋まらないってことは、つまり、私って…

 

 

 

「私………寂しいのかな?」

 

 

 

ポロッと、口に出してみる。

 

 

「え……なんです、赤さん?」

 

「寂しいって?」

 

 

二人が反応してくる。そりゃあ、そうなるよな。ワケ分かんねーもん。いきなり、寂しいとかって。

 

 

「や、何でもない。忘れて」

 

「それなら、まぁいいですけど…」

 

「ん。なんか分かんないけど…じゃ、アタシ帰るねー」

 

 

適当に誤魔化したところで、マジ子がドアを開けて、外に出た。

 

 

「あんま姉ちゃんに心配かけんなよ。面倒見てくれてんだから」

 

「お姉さんも喜んでくれているようですし、これからも続けましょうね、勉強会」

 

「あー、うん。まー…そだね。じゃ、また明日ねー!」

 

 

元気に別れの挨拶をして、マジ子は自宅に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

赤ちんと先輩にバイバイして、アタシは、家に帰ってる途中。電車を使った方がハヤいのはわかってるけど、今はテクテク歩きたいキブンだった。遅くなるから、姉ちゃんには怒られるかもね。

 

先輩達の家から帰るチョクゼンに、二人から言われたことを、アタシは思い出す。

 

メンドー見てくれてるから心配かけるな。

 

喜んでくれてるから、これからもベンキョーしよう。

 

 

(わかってるよ…)

 

 

姉ちゃんがどんなキモチなのか。なんでアタシに細かく色々言ってくるのかなんて、アタシはよく分かってる。心配してくれてるんだってことも。

 

姉ちゃんはガクセーの時から頭良くて、働くようになってからも、上手くいってるみたい。時々、すごく疲れてたり、イライラしたりして帰ってくることもあるけど。

 

シャカイはすっごい大変だって、何回か話してくれたことがある。ユーシューな姉ちゃんでもそう思うんだから、バカなアタシにとっては、その何倍も大変なところなんだろうなぁ。

 

 

(だから、姉ちゃんはアタシのこと、心配してるんだよね…)

 

 

アタシは勉強が嫌いで、毎日毎日、遊んでばっかり。おかげでセーセキはヒドいもんだし、その他にも色々…。ほら、アタシ、バカだし。

 

だから、アタシがバカなまんまソツギョーして、その後でとんでもなく苦労するんじゃないかって、姉ちゃんはそれが不安なんだと思う。

 

 

(姉ちゃんの気持ちはわかるよ。でもさー…。でも……)

 

 

そう思ってくれるのはすっごい嬉しい。ありがとーって思う。でもアタシにとっては、遊ぶのだって大事で、ホントに楽しくて…。特に今は、赤ちんと先輩にも会えたし、チームにもなれたし、ヨケーに…。

 

 

(なんか、キュークツだなー…)

 

 

タメ息が出た。色んな気持ちでギューギューに押されてるみたいな感じ。自由になりたいって思ってケーヤクしたのに、これじゃ全然だよ。

 

願いを叶えてもらった時は、あー、これで色んなことから自由になれたんだーって思った。誰にも邪魔されないし、自分のやりたいこと、思いっきりやれるんだって。

 

でも、ジッサイはこう。アタシは今もガッコーに行ってるし、姉ちゃんの言うことも、シブシブ聞いてる。まぁそれは、アタシが自分から、そうやって縛られに行ってるからなんだけど。

 

だって、よくよく考えたら、自由ってなに?って思ったんだもん。言うこと聞かないで好き勝手すること?ガッコーをサボること?なりたいショクギョーでガンバること?

 

うん。確かに自由だと思う。それっぽいと思う。

 

でもさー、それって別に、願いを叶えてもらって、魔法少女にならなくたって、出来ることじゃん。何言われたって、自分の好きにすればいいってことじゃん。

 

そこまで考えて、アタシは気付いちゃった。つまり、アタシは元々自由だったんだって。

 

 

(なのに、自由になりたいなんてお願いしてさー…。ホント、バカだなー。アタシ)

 

 

勿論、全部ブン投げて、自分の好きにするってのも考えた。でも、そうやったら姉ちゃんとか、お母さん、お父さん、友達、センセー…。とにかく色んな人が心配したり、メーワクになったりすんのかなーって思ったら、なんだか悲しくなった。

 

そんなのダメだよねって思って、だからアタシは、今まで通りに過ごしてる。ガッコー行って、友達と遊んで、姉ちゃんの言うこと聞いて…。

 

でも、今のまんまでもダメだって、アタシは思ってる。バカなまんまじゃ、結局、家族は心配するから。

 

キラいなベンキョーを、先輩に見てもらいながらガンバってるのは、そういうこと。

 

 

 

 

「ダメだって、分かってるよ。アタシ……」

 

 

 

 

口に出してみたけど、聞く人は居なかった。そう言った、アタシ以外には。

 

 

 





マギレコ本編の出来事

・みかづき荘で、引っ越しのことについて話す いろやち。寮の部屋は空いておらず、次の日曜までに決めなきゃならないと話すいろは。22と書いてある紙が突然降ってきたことに気付いたやちよは、いろはが何かに巻き込まれた可能性があることを、本人に告げた。

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